基礎物理学B(建築1)第9回 配付資料

第9回
4 . 定 常 電 流
電流のつくる磁場について学ぶ準備として電流の性質について調べる。
○ 定常電流とその保存則(電荷の定常的な流れに関する保存則)
導線を通過する定常電流の強さは,導線上のどの断面をとっても同じ値をとる。もし異なると断
面の間に電荷がたまり,この電荷のつくる電場によって電流が変化する(定常でなくなる)
電流: I = envS B面を単位時間に通過する電気量
=− 電子の電気量×領域ABに含まれる電子の数
単位体積中の自由電子の数: n
導線の断面積: S
電子の平均移動速度: v
電流密度:単位面積の断面を単位時間に通過する電荷の量
i=
I
S⊥
=
I
I = iS⊥ = iS cos θ = in S
⇒
S cos θ
I=
断面が曲面のときは
図 4.1 電流の強さと電流密度
∫ i dS
S
n
(4.1)
流れの向きも考えて電流密度ベクトル i で表すと
I=
∫ i ⋅ n dS
S
・積分形の定常電流の保存則
定常電流の電流密度: i = i (x) 電流密度の空間分布が時間変動しない 定常電流 → I1 = I 2
(4.2) ⇒
∫
S1
in dS =
1
∫
S2
in dS
2
⇓
∫
in dS = 0
∫
i⋅ n dS = 0
S0
S0
図 4.2 (a)定常電流の保存 (b)閉じた電流線
・ 微分形の定常電流の保存則 図 2.5 の微小直方体を囲む閉曲面を考えると ⎛ ∂ i x ∂ i y ∂ iz ⎞ 3
∫S in dS = ⎜⎝ ∂x + ∂y + ∂z ⎟⎠ Δ x = 0
0
∫
S0
in dS =
(4.3)
! = 0 → → div i = 0 ⇓
∂ ix
∂x
+
∂ iy
∂y
+
∂ iz
∂z
=0
(4.4)
・ 定常電流でない場合の保存則(電荷保存則,電気量保存則)
閉曲面 S0 から流れ出る電荷 = S0 で囲まれた領域に含まれる電荷の減少
∫
S0
⎛ ∂ i ∂ i y ∂ iz ⎞ 3
∂Q
∂ρ 3
in dS Δt = ⎜ x +
+
Δ x Δt = −ΔQ = −
Δt = −
Δ x Δt
⎟
⎝ ∂x ∂y ∂z ⎠
∂t
∂t
⇓
∂ ix
∂x
+
∂ iy
∂y
+
∂ iz
=−
∂z
微分形の電荷保存則: −
∂ρ
∂t
∂ρ
∂t
= div i (cf. 物質の流れに関する連続の式: −
∂ρ
∂t
= div ρ v ) ○ オームの法則
金属の自由電子は,電場がないときはいろいろな向きにいろいろな速さで運動している。このと
きの電子の平均速度は0で,電流は流れていない。金属の両端に電圧を加えると内部に電場が生じ
る。この電場により電子は加速されて運動するが,金属イオンとの衝突により減速される。加速と
減速を繰り返す結果,金属内の電子全体では一定の平均速度 v で移動する。この効果は電子が一種
の抵抗力を受けているとみることができる。
オームの法則: I =
V
抵抗: R = ρ
(4.7) R
l
(4.8)
S
・オームの法則の微分形式 導線の形によらないように書き換える
(4.7) ⇒ i ΔS =
⇒ i= σ
Δφ
(4.8) ⇒
ΔR
Δφ
Δl
= σE
⇒
ΔR =
i= σE
1 Δl
σ ΔS
(4.10)
・ オームの法則の電子論
導体内の電子の運動方程式: m
dv
dt
= −eE −
m
τ
v 定常的な流れでは,加速度は0で左辺は0だから v = −
定常電流の密度は, i = −nev =
電気伝導率: σ =
ne2τ
m
ne2τ
m
m
E
(4.11)
(4.13) E
抵抗率: ρ =
eτ
m
ne2τ
(4.14)
・ キルヒホッフの法則
第一法則:回路の分岐点に流れ込む電流の和はそこから流れ出る電流の和に等しい
第二法則:任意の閉じた回路に沿って一周するとき,電位差の総和はつねに0である
・起電力:回路に電流を流す電池などの能力。電極間の電位差。
電圧降下:
内部抵抗:
端子電圧: V = φ e − r I
(4.16)