福井県における平成25年度ジフテリア・百日咳・破傷風抗体保有状況調査結果 福井県衛生環境研究センター 福井県健康増進課 県民の皆様がジフテリア・百日咳および破傷風の病気に対する抗体(抵抗力)をどのくらい持っている のかを調査しました。 この調査は、これらの病気の流行の可能性を推定するとともに予防接種計画の資料とすることを目的と し、検体提供者および医療機関の御協力を得て実施しており、平成25年度は平成20年度以来5年ぶり の調査となっています。 <検体採取期間> 平成25年7月~10月 <検体の種類> 血液(血清) <調査対象者> 138名(年齢群別内訳は以下のとおり) 年齢群(歳) 人 数 <検査方法等> 0 1-4 5-9 3 5 5 10-19 25 20-29 32 30-39 19 40-49 18 50以上 31 表1のとおり 表1 検査方法と発症予防レベルの目安 ジフテリア 百日咳 破傷風 調査対象 ジフテリア抗毒素価 抗百日咳毒素(PT)抗体価 抗繊維状赤血球凝集素(FHA)抗体価 破傷風抗毒素価 方法 培養細胞法 (VERO細胞使用) 百日咳抗体EIA[生研」(EIA法) 破傷風抗体測定キット「化血研」 (間接凝集反応法) 発症防御レベル 0.1IU/mL 10EU/mL 0.01IU/mL <調査結果> 1 ジフテリア 発症防御レベルと考えられている血中抗毒素 0.1IU/mL 以上の年齢別の保有状況を図 1 に示した。 1~4 歳および 5~9 歳では 60.0%、10~19 歳では 72.0%、20~29 歳では 68.8%と 1~29 歳で 60% 以上が保有していた。0 歳では 33.3%、30~39 歳では 42.1%、40~49 歳では 44.4%となっており 50 歳以上では抗体保有はなかった。 100 90 80 抗 体 保 有 率 ( % ) 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1-4 5-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50以上 年齢群(歳) 図1 年齢区分別のジフテリア抗毒素抗体保有状況(≧0.1 IU/mL) 接種歴別の抗体保有状況を表2に示した。 接種歴なしでは 14.3%で、 接種歴ありでは 71.7%であった。 なお、接種歴不明では 36.8%であった。 表2 接種歴別のジフテリア抗体保有状況 年齢区分 (歳) 陽性数 0 0 1-4 0 5-9 10-19 2 20-29 30-39 0 40-49 2 50以上 0 計 4 接種歴なし 接種歴あり 接種歴不明 合計 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 / 1 0.0 1 / 2 50.0 1 / 3 33.3 / 2 0.0 3 / 3 100.0 3 / 5 60.0 3 / 5 60.0 3 / 5 60.0 / 5 40.0 16 / 19 84.2 0 / 1 0.0 18 / 25 72.0 14 / 22 63.6 8 / 10 80.0 22 / 32 68.8 / 2 0.0 1 / 1 100.0 7 / 16 43.8 8 / 19 42.1 / 7 28.6 0 / 1 0.0 6 / 10 60.0 8 / 18 44.4 / 11 0.0 0 / 20 0.0 0 / 31 0.0 / 28 14.3 38 / 53 71.7 21 / 57 36.8 63 / 138 45.7 2 百日咳 (1)抗百日咳毒素(PT)抗体 乳児の発症防御レベルとされる 10EU/mL 以上の年齢区分別の抗 PT 抗体の保有状況を図2に示した。 0 歳で 66.7%、1~4 歳で 40.0%、5~9 歳で 60.0%、10~19 歳で 68.0%、20~29 歳で 59.4%、30~ 39 歳で 89.5%、40~49 歳で 94.4%および 50 歳以上で 77.4%であった。全年齢では、73.2%が保有し ていた。 100 90 80 抗 体 保 有 率 ( % ) 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1-4 5-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50以上 年齢群(歳) 図2 年齢区分別の抗PT抗体保有状況(≧10EU/mL) 接種歴別の抗体保有率を表3に示した。 接種歴なしでは79.3%で、 接種歴ありでは62.0%であった。 表3 接種歴別の百日咳抗体(抗PT)保有状況 年齢区分 (歳) 陽性数 0 0 1-4 1 5-9 10-19 4 20-29 1 30-39 2 40-49 7 50以上 8 計 23 接種歴なし 接種歴あり 接種歴不明 合計 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 / 1 0.0 2 / 2 100.0 2 / 3 66.7 / 2 50.0 1 / 3 33.3 2 / 5 40.0 3 / 5 60.0 3 / 5 60.0 / 7 57.1 12 / 17 70.6 1 / 1 100.0 17 / 25 68.0 / 1 100.0 11 / 21 52.4 7 / 10 70.0 19 / 32 59.4 / 2 100.0 1 / 1 100.0 14 / 16 87.5 17 / 19 89.5 / 7 100.0 1 / 1 100.0 9 / 10 90.0 17 / 18 94.4 / 9 88.9 16 / 22 72.7 24 / 31 77.4 / 29 79.3 31 / 50 62.0 47 / 59 79.7 101 / 138 73.2 (2)抗繊維状赤血球凝集素(FHA)抗体 乳児の発症防御レベルとされる 10EU/mL 以上の年齢区分別の抗 FHA 抗体価を図 3 に示した。 0 歳で 66.7%、1~4 歳で 60.0%、5~9 歳で 100%、10~19 歳で 88.0%、20~29 歳で 87.5%、30~39 歳で 84.2%、40~49 歳で 72.2%および 50 歳以上で 77.4%であった。全年齢では、81.9%と抗 PT 抗体 価と同様に高く保有していた。 100 90 80 抗 体 保 有 率 ( % ) 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1-4 5-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50以上 年齢群(歳) 図3 年齢区分別の抗FHA抗体保有状況(≧10EU/mL) 接種歴別の抗体保有率を表 4 に示した。接種歴なしでは 69.0%で、接種歴ありでは 86.0%であった。 表4 接種歴別の百日咳抗体(抗FHA)保有状況 年齢区分 (歳) 陽性数 0 0 1-4 1 5-9 10-19 5 20-29 1 30-39 1 40-49 5 50以上 7 計 20 接種歴なし 接種歴あり 接種歴不明 合計 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 / 1 0.0 2 / 2 100.0 2 / 3 66.7 / 2 50.0 2 / 3 66.7 3 / 5 60.0 5 / 5 100.0 5 / 5 100.0 / 7 71.4 16 / 17 94.1 1 / 1 100.0 22 / 25 88.0 / 1 100.0 17 / 21 81.0 10 / 10 100.0 28 / 32 87.5 / 2 50.0 1 / 1 100.0 14 / 16 87.5 16 / 19 84.2 / 7 71.4 0 / 1 0.0 8 / 10 80.0 13 / 18 72.2 / 9 77.8 17 / 22 77.3 24 / 31 77.4 / 29 69.0 43 / 50 86.0 50 / 59 84.7 113 / 138 81.9 3 破傷風 発症防御レベルの 0.01IU/mL 以上の年齢別の抗毒素保有状況を図 4 に示した。 0 歳では 66.7%、 1~4 歳では 60.0%、 5~9 歳では 100%、 10~19 歳では 96.6%、 20~29 歳では 100%、 30~39 歳では 94.7%、40~49 歳は 83.3%、50 歳以上では 12.9%であった。 100 90 80 抗 体 保 有 率 ( % ) 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1-4 5-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50以上 年齢群(歳) 図4 年齢区分別の破傷風抗毒素抗体保有状況(≧0.01 IU/mL) 接種歴別の抗毒素保有率を表 5 に示した。接種歴なしでは、43.3%、接種歴ありでは 100%であった。 なお、接種歴不明では 65.4%であった。 表5 接種歴別の破傷風抗体保有状況 年齢区分 (歳) 陽性数 0 0 1-4 0 5-9 10-19 5 20-29 30-39 2 40-49 6 50以上 0 計 13 接種歴なし 接種歴あり 接種歴不明 合計 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 陽性数 検体数 陽性率 / 1 0.0 2 / 2 100.0 2 / 3 66.7 / 2 0.0 3 / 3 100.0 3 / 5 60.0 5 / 5 100.0 5 / 5 100.0 / 5 100.0 19 / 19 100.0 0 / 1 0.0 24 / 25 96.0 22 / 22 100.0 10 / 10 100.0 32 / 32 100.0 / 2 100.0 2 / 2 100.0 14 / 15 93.3 18 / 19 94.7 / 7 85.7 2 / 2 100.0 7 / 9 77.8 15 / 18 83.3 / 13 0.0 1 / 1 100.0 3 / 17 17.6 4 / 31 12.9 / 30 43.3 56 / 56 100.0 34 / 52 65.4 103 / 138 74.6 4 まとめ ジフテリア、百日咳および破傷風は予防接種の対象となっている病気です。 予防接種は 1949 年からジフテリア、1959 年からジフテリアと百日咳の二種混合、1968 年からジフテ リア・百日咳・破傷風の DPT 三種混合ワクチンが用いられるようになり、現在の沈降精製 DPT 三種混合 ワクチンは 1981 年に、2012 年には、DPT と不活化ポリオワクチン(IPV)を混合した四種混合ワクチン (DPT-IPV)が定期接種に導入され、接種率の上昇とともに、これらの疾患の患者数は減少しています。 このことから乳幼児期に適切な予防接種を受けることは重要なことです。また、今回の調査により、 それぞれの病気に対して抗体保有率の低い年齢層があることがわかり、これらの人への予防接種などの 対策が必要なことが明らかになりました。 なお、今回の調査は全国7ヶ所の地方衛生研究所で行われており、過去のデータを集計したものが国 立感染症研究所感染症疫学センターホームページ(http:/www.nih.go.jp/niid/yosoho-index.html)で 公開されています。
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