通し番号 4633 分類番号 24-57-21-23 FSH 製剤1回投与に

通し番号
4633
分類番号
24-57-21-23
FSH 製剤1回投与に eCG を組み合わせると採胚数が増加するが変性胚数も増加する
[要約] FSH 製剤1回投与による 過剰排卵処理方法において eCG 投与時期 の検討を行っ
た。供試牛に PRID を挿入し、挿入後4日目朝に FSH20AU/生理食塩水 50ml を皮下に
1回投与した。1区では PRID 挿入6日目朝に eCG400 IU を投与し、2区では6日目
夕方に eCG400 IU を投与、3区は eCG 無投与とした。PRID は挿入6日目夕方に除去し
た。人工授精時(FSH 投与 96 時間後)の大卵胞数は eCG を追加投与した1区で無投
与の3区より多く、総採胚数、正常胚数も1区で高い数値であった。
神奈川県農業技術センター・畜産技術所
連絡先
046-238-4056
[背景・ねらい]
これまで、牛の過剰排卵処理方法の簡易化を目的とし、生理食塩水を溶媒とした FSH の
皮下1回投与により、減量投与法と同等の採胚成績が得られることを明らかにした。昨年
度は FSH1回投与法における採胚成績の向上を目的に、eCG を併用したが総採胚数、正常
胚数の数値は高くなるものの、変性胚数も多くなった。これは eCG 投与と同時に PRID を
抜くことで早い LH 放出を起こし、卵子成熟が早まることにより、未受精卵数や変性胚数
が増加したためと考えられた。そこで eCG 投与時期が採胚成績に及ぼす影響を検討する。
[成果の内容・特徴]
1
黒毛和種経産牛3頭を用い、発情日を避けて PRID を挿入し、挿入4日目朝に FSH20 A
U/生理食塩水 50ml を皮下に1回投与した。1 区では PRID 挿入6日目朝に eCG400 IU
を1回追加投与し、2区では6日目夕方に eCG400 IU を投与、3区は eCG 無投与とし
た。PRID は挿入6日目夕方に除去した(図1)。
2
FSH 投与 96 時間後の大卵胞数は eCG を追加投与した1区で無投与の3区より多く(
図2)、総採胚数、正常胚数も1区で高い数値であったが、変性胚数も高い数値であっ
た(表1)。共同試験全体の成績でも総採胚数は高い傾向にあり(P=0.08)、変性胚数
も高かった(P<0.05)。
[成果の活用面・留意点]
1
黒毛和種での成績であり、ホルスタイン種での効果は不明である。
[具体的データ]
eCG投与時期の検討
4日目にFSH 20AUを生理食塩水50mlに溶解して皮下1回投与
1区:PRID挿入6日目朝にeCG400 IU 投与
2区:PRID挿入6日目夕方にeCG400 IU 投与
3区:eCG無投与
PRID挿入後
日数
0
1
4
PRID挿入
7
5 6
8
15
PG
PRID
過剰排卵
採胚
PRID除去
GnRH 人工授精
PRID: 膣挿入プロゲステロン・エストラジオール配合剤
FSH : 豚由来卵胞刺激ホルモン
P G : プロスタグランジン F2α(クロプロステノール 0.75mg)
GnRH: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン(酢酸ブセレリン 10μg)
eCG:妊馬血清性性腺刺激ホルモン
図1
25.0
1区:PRID挿入6日目朝にeCG400 IU投与
2区:PRID挿入6日目夕方にeCG400 IU投与
20.0
大卵胞数(個)
試験計画
3区:eCG無投与
15.0
10.0
5.0
0.0
0
24
48
72
96
FSH投与後の経過時間(時間)
図2
各試験区の大卵胞数の推移
表1 試験区別過剰排卵成績
試
験
区
例数
黄体数
遺残卵胞数 総採胚数
正常胚数
正常胚率
*
変性胚数
未受精卵数
1区:PRID挿入6日目朝にeCG400IU投与
3
12.0 ±3.5
6.7 ±2.4
10.3 ±3.8
6.3 ±2.7
54.9 ±12.0
2.67 ±1.2
1.3 ±0.3
2区:PRID挿入6日目夕方にeCG400IU投与
3
11.0 ±0.6
4.0 ±1.0
7.7 ±2.0
1.7 ±1.2
20.5 ±10.7
3.33 ±0.9
2.7 ±0.9
3区:eCG無投与
3
9.0 ±1.5
3.7 ±2.7
5.7 ±3.2
5.0 ±2.9
58.1 ±29.1
0.67 ±0.3
0.0 ±0.0
平均値±標準誤差
*
:各採胚ごとの正常胚率の平均値で示した
[資料名]
平成 24 年度
試験研究成績書
[研究課題名]
効率的胚生産技術の開発
[研究期間]
平成 23~25 年度
[研究者担当名]
坂上信忠、秋山 清