H5~7 高性能分離カラム用充填剤の開発と食品分野への応用に関する研究

H5-7
へ
高 性 能 分 離 カ ラ ム 用 充 填 剤 の 開発 と食 品分 野 の 応 用 に 関す る研 究
一
発酵食品部発酵食品科 富 永 哉 浅 野行蔵 吉 川修司
1.研究 の 目的と概要
従来ハ イ ドロキ シアパ タイ ト (HAp)は 、生理活性 のあるタンパ クや核酸などの
ク ロマ トグラフイー に利用され、その有用性 が高 く評価 されていま したが、物理的
な強度が弱 い点が欠点であるとされてきま した。北海道立工業試験場 において開発
ー
、HApを シ リカ (Si)の 表面 に コ テ ィ ング
され たハ イブ リッ ドHAp(HyHAp)は
ー
して、 この 欠 点を改善 した画期 的な ク ロマ トグ ラ フ ィ 坦 体 で した。 そ こで この
HyHApの 、 タ ンパ クの分離 に関す る特性 を検討 しま した。
2.試験研究 の方 法
スプ レー ・ドライ法 で球 状 に成形 した HyHAp(50%IIAp+50%Si、
20∼50 μm、
15 7ml)に充填 しま し
200nlnl、
■知 は 400℃で焼成 )を 、ガ ラスカラ ム (φ 101mll×
た。分離試験 に用 い るタ ンパ クと して は、等 電 点 (pI)が 大 き く異 な る 4品 を供試
しま した。酸性 タ ンパ クで ある牛血清 アルブ ミン (BSA、 p147)と ポ リL―グル タ ミ
ー
ン酸 (Poly―
L―
Glu、ア ミノ酸 と して p132)、 塩基性 タ ンパ クであ る卵 白 リゾチ ム
Lys、p197)を 用 いま した。溶 出の
L‐
ポ リL―リシン (Poly―
溶媒 には、0∼500mVIの 直線 的濃度勾配 を付 け た リン酸 カ リウ ム (pH 70)緩 衝液
(Lyso7.ynle、
p1105)と
または、0∼30Mの
直線 的濃度勾配 を付 けた塩化 カ リウ ム水溶液 を用 いま した。溶
出液 は 25祠 ず つ 分取 し、タ ンパ ク量 を測定 しま した。ま た、HyHApの 粒 度 分 布 と、
X‐線微少分析 による表 面 の 原子組 成 も測定 しま した。
3。
実験結果
L y s 、B S A 、 P o l y L‐―G l u が
リ ン酸 カ リウ ム 液 で の 溶 出 試 験 で は 、 L y s o ηm c 、 P o い L ―
この 順番 に溶 出 し、そ の溶 出最大 ピー ク画分 の番号 はそれ ぞれ 14、22、24、25で し
た 。塩基性 タ ンパ クが酸性 タ ンパ クよ り先 に溶 出す る この結果 は、従来知 られて い
ー
る HApカ ラ ム におけるタ ンパ クの挙動 と異 な ります。ま た、等 電点 と最大 ピ ク番
号 の 関係 をプ ロ ッ トす るとほぼ負 の相 関があ り、HyHApが 陰 イオ ン交 換 樹 脂 の よ
うに振 る舞 ってい る ことが分か りま した。塩化 カ リウム溶液 での溶 出試験 で も、 ほ
ぼ 同様 の結果 が得 られ ま した。HApは 両性 のイオ ン吸着 サイ トを持 ち、ア フ ィニ テ
ィー ク ロマ トグラフ ィー の よ うな性質 を持 つ とされて い る ことか ら、HyHApの 性質
が極 めて特異 で あると言 えます。粒度分布測定 か ら、HyHApの 粒子 は 50 μmと 280
μ mを 頂点 とす る 2つ の グル ー プに分かれてお り、 それ ぞれ の構成比 は約 50%と
40%で した。大 き い方 の粒子 に多 く見 られ る不定形 の粒子 の 表面 の原子組成 を測定
す ると、Siが非常 に多 く含 まれてお り、ラフな定量 です が原子 の量比で約 62%に も
な りま した。小 さい方 の粒子 はほぼ全てが球形 で表 面 には リン酸 カル シウムが 多 い
ので す が、Siとの量比 は粒子 よって一 様 ではない こと も分 か りま した。Hチ mpの 特
異 な性 質 は、 この表面 の 微細 な不 均 一 性 が原 因 で あ る可能性が あ ります。
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4.要約
Siとのハ イプ リッ ドHAp坦 体 でのタ ンパ クの分離試験 で は、塩基性 タ ンパ クが酸
性 タ ンパ クよ り先 に溶 出 し、従来知 られて い る HAp坦 体 にお けるタ ンパ クの挙動 と
I Apが 陰イオ ン交換樹脂 の よ うに振 る舞 ってい ることが 分か りま した。
異 な り、HyI‐
粒度分布 測定 は 2つ の粒子 グル ー プの存在 を示 し、 大 き い方 の粒子 の 中には si
を非常 に多 く含 ものが 見 られ、リン酸 カル シウム と siとの量比 は粒 子 よ って一 様 で
はな く、町 IIApの特異 な性 質 の原 因 であ る可能性が 示唆 され ま した。
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イ プ リ ッ ドロA p の 粒 度 分 布
ハ イ プ リ ッ ドH A p は 特 級 メ タ ノ ー ル に 分 散
pI
粒 度 分 布 計 (COULTER、LS130)の 測 定 時 間 は 90秒
タ ンパ ク の 等 電 点 と ハ イ プ リ ッ ドR A p ヵラ ム か ら の 溶 出 ピ ー ク と の 関 係
溶 離 液 は リ ン酸 カ リ ウ ム 緩 衝 液 ( p H 7 0 )
ポ リし‐ア ミノ 酸 の 導 電 点 ( p l ) は 単 体 の ア ミノ 酸 と 同 様 と し た
図
ハ
イ プ リッ ドH A p のX ―
線 微少 分 析
写 真 3 の非球 形 の 粒 子 を測定
S - 2 4 0 0 ) に接続 したX ―
EIAX
S E ‖( H I T A C H I 、
線 微少 分析 装 置 ( H O R I B A 、
S 2 4 5 H ) で点 分 析 し、 測定 時間 は 1 0 0 秒
(道立機 関共 同研究、共 同研究機 関
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北海道立 工 業試験場 )