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抹茶の香りの機能性解明
京都府農林水産技術センター農林センター
茶業研究所
専門幹
原口健司
背景および目的
近年、抹茶を利用した食品類の需要増加に伴い、他の茶産地においても加工用
抹茶が生産されるようになり、ますます産地間競争が激しくなってきています。
本研究では、京都府内産の抹茶を特徴づける情報(機能性)を新たな切り口で
解明し、情報発信することにより、府内産抹茶の価値・競争力を高め、他産地と
の差別化を図ることを目的としています。
研究内容
・府内産抹茶の香気成分を中心とした品質関連成分を調査し、飲用向けと加工用との
違いが明らかになりました。
・新たな視点として、抹茶の香りがヒトの体(精神面)に与える作用を心拍変動等に
よって解析しました。
流量計
脈拍・脈波の
測定(手中指)
R
空気ポンプ
0.5L/minで空気を送る
(流量は調節可能)。
R′
脈波の測定風景。被験者は安静にしてもらっ
ている。各試料の香りを5分間匂いだ。
15
飲用
加工用
含
有 10
量
(
%
)
LF/HF値
心拍変動の周波数解析例
8.500
5
0
6.500
加工-対照
飲用-対照
4.500
200
μg/100g)
硫
化 150
(メ
チ 100
ル
含
有 50
量
0
2.500
0.500
飲用
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314
加工用
-1.500
調査した抹茶の品質関連成分
-3.500
LF:0.05~0.15Hz、HF:0.15~0.4Hz
LFは交感神経系、HFは副交感神経系に関与
し、LF/HFがストレス程度の指標となる。
LF/HFが上昇⇒ストレスが高い状態
LF/HFが下降⇒リラックスしている状態
・加速度脈波の心拍変動解析を行ったところ、加工用
抹茶の香りをかぐと、ストレス指標の目安とされる
LF/HF(低周波成分/高周波成分)値が、有意に上昇し
ました。
・飲用抹茶では有意差が見られなかったものの、LF/HF
値は低下する傾向がみられました。
・被験者全体では、LF/HF値において、14人中10人
(71%)が飲用抹茶の香りの吸引で低下、加工用で上
昇し、残りの4人(29%)はその逆のパターンを示し、
LF/HF値がどちらの試料でも上昇もしくは低下する被
験者はありませんでした (H25年度の結果)
成果(期待される成果)
・飲用向けの抹茶の香りには、ストレス低減効果の可能性が示唆されました。
・抹茶の価値を高める情報として活用します。