数列と級数 http://www.ge.ce.nihon-u.ac.jp/~otofuji/ 1. 実数列の収束 [定義] 実数列 {an }∞ n=1 が 実数 a に収束する, とは 任意の正の数 ε に対し、条件: n > N をみたすすべての n に対し、|an − a| < ε がなりたつ をみたす番号 N が存在する ことと定義する。 {an }∞ n=1 が実数 a に収束するとき、 a = lim an n→∞ と表す。a を数列 {an }∞ n=1 の 極限値 と呼ぶ。(収束数列の極限値はただ1つである。) 収束しない数列は 発散 するという。 [例] {xn }∞ n=1 は −1 < x < 1 のとき 0 に収束する。x = 1 のとき 1 に収束する。そ れ以外のときは発散する。 2. 実数の完備性 実数全体の集合は完備性と呼ばれる性質を持っている。この性質を表す互いに同 値な命題がいくつか知られている。次の命題はその一つである。 [命題] 上に有界な実数の増加列は収束する、すなわち 実数列 {an }∞ n=1 が an ≦ an+1 (n = 1, 2, . . . ) をみたし、かつ an ≦ M(n = 1, 2, . . . ) をみたす実数 M が存在する ならば {an }∞ n=1 は収束する。 1 3. コーシーの収束条件 [定義] 実数列 {an }∞ n=1 が コーシー列 であるとは 任意の正の数 ε に対し、条件 n > N をみたすすべての n に対し、|an − aN | < ε をみたす番号 N が存在する ことをいう。 [命題] 実数列 {an }∞ n=1 がある実数に収束する ∞ ⇐⇒ {an }n=1 はコーシー列である。 収束列がコーシー列であることを示すのは簡単である。コーシー列が収束するこ とを示すには、実数の完備性を用いる必要がある。 4. 複素数列の収束 [定義] 複素数列 {αn }∞ n=1 が 複素数 α に収束する, とは 任意の正の数 ε に対し、条件: n > N をみたすすべての n に対し、|αn − α | < ε がなりたつ をみたす番号 N が存在する ことと定義する。また、このとき α = lim αn n→∞ と表す。 [例] {zn }∞ n=1 は −1 < |z| < 1 のとき 0 に収束する。z = 1 のとき 1 に収束する。 それ以外のときは発散する。 lim αn = α 、lim βn = β がそれぞれ存在するとき、lim (αn + βn ), lim αn βn , n→∞ n→∞ n→∞ αn も存在し、さらに β ̸= 0 ならば lim も存在し、 n→∞ βn [命題] n→∞ lim (αn + βn ) = α + β , n→∞ lim αn βn = αβ , n→∞ がなりたつ。 2 αn α = n→∞ βn β lim 複素数列の収束は、実部、虚部それぞれがともに収束することと同値である、す なわち [命題] 複素数列 {αn = an + bn i}∞ n=1 と複素数 α = a + bi について α = lim αn ⇐⇒ a = lim an かつ b = lim bn n→∞ n→∞ n→∞ この命題は不等式 |a|, |b| ≦ |a + bi| ≦ |a| + |b|(a, b は実数) を用いて証明できる。 この命題より、複素数列に対してもコーシーの収束判定法を適用できることがわ かる: [命題] 複素数列 {αn }∞ n=1 がある複素数に収束する ∞ ⇐⇒ {αn }n=1 はコーシー列である、すなわち任意の正の数 ε に対し、条件 n > N をみたすすべての n に対し、|αn − αN | < ε をみたす番号 N が存在する。 5. 級数 [定義] 数列 {αk }∞ k=1 に対して、 n ∑ αk = α1 + α2 + · · · + αn Sn = k=1 ∞ を 第 n 部分和 という。極限値 lim Sn = S が存在するとき、級数 n→∞ ∑ αk は 収束する k=1 といい、S をその 和 という。S を ∞ S= ∑ αk = α1 + α2 + · · · + αn + · · · k=1 と表す。 収束しない級数は 発散 するという。 α ̸= 1 のとき [例](幾何級数) ∞ る。よって、級数 ∞ n ∑ αk = 1 + α + α2 + · · · + αn = k=0 ∑ αk = 1 + α + α2 + · · · + αn + · · · は |α | < 1 のとき収束して k=0 1 ∑ α k = 1 − α である。また、|α | ≧ 1 のとき発散する。 k=0 3 1 − α n+1 であ 1−α 6. 級数に関するコーシーのの収束条件 ∞ [命題] ⇐⇒ ∑ αk は収束する 級数 k=1 任意の正の数 ε に対し、条件 n > N をみたす任意の n に対し、|αN + αN+1 + · · · + αn | < ε をみたす番号 N が存在する。 7. 正項級数 [定義] 各項が 0 以上の実数であるような級数を 正項級数 という。 [命題] 収束する正項級数は項の順序を入れ替えても同じ値に収束する。また、 項を有限個または無限個のグループに分けた場合、それぞれのグループは和を持 ち、そしてそれらを足した和が存在し、元の級数の和に等しい。 8. 絶対収束級数 ∞ [定義] ∞ 級数 級数 ∑ αk が 絶対収束する とは、各項の絶対値をとって作られる正項 k=1 ∑ |αk | が収束することをいう。 k=1 [命題] 絶対収束する級数は収束する。 証明にはコーシーの判定条件を用いる。 [命題] 絶対収束する級数は項の順序を入れ替えても同じ値に収束する。また、 有限個または無限個のグループに分けた場合、それぞれのグループは絶対収束し、 それらの和からなる級数は絶対収束し、その和は元の級数の和に等しい。 証明は正項級数の場合に帰着させることによって行なう。 ∞ [命題] (優級数の方法) |αk | ≦ Mk (k = 1, 2, . . . )、∑ Mk < ∞ なる正項数列 {Mk }∞ k=1 k=1 ∞ が存在すれば、 ∑ αk は絶対収束する。 k=1 証明にはコーシーの判定条件を用いる。 4
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