平成 25 年度 M2「代謝生化学B」 再試験・田原担当(1 枚目/全 4 枚) 2014.2.10 (解答目安 田原担当章 40分) 解答 マークシート問題用紙 ※問題用紙は提出しないこと ヌクレオチド代謝 及び特論 23. 1.ヌクレオチド代謝(約 40 点)次の各問の解答をマークシートの解答欄1から8に記入せよ。 略号 Hyp:ヒポキサンチン、THF:テトラヒドロ葉酸、R5P:リボース 5-リン酸、PRPP:ホスホ リボシル二リン酸、RNR:リボヌクレオチドレダクターゼ 、NDP:ヌクレオチド二リン酸、dNDP: デオキシヌクレオチド二リン酸 (1)プリン塩基の構造:アデニンはどれか(窒素含量が他より多くてグアニンほど酸化されていない) (a) (b) O C HN HC N C C N CH N H C N HC (c) NH2 N C C N HN CH N H O (d) O C C N H H N C C C N H C HN O (e) O C H2N N C C O N HN CH C O N H C N H C C N CH N H (2)ピリミジン塩基の構造:チミンはどれか(別名 5-メチルウラシル) O (a) HN O C C N H (b) CH C N COO HC H C N O (c) CH CH HN O C C N H NH2 (d) CH CH N O C C N H CH CH HN O (3) de novo 合成の前駆体:正しい文を1つ選べ (a) 炭酸はピリミジン塩基だけの前駆体である (b) アラニンはプリン塩基だけにアミノ基を供与する (c) ギ酸はピリミジン塩基、プリン塩基の共通前駆体である (d) リジンはピリミジン塩基、プリン両塩基の共通前駆体である (e) グルタミンはピリミジン塩基、プリン塩基の共通前駆体である (4) de novo 合成反応経路:正しい文を1つ選べ (a) IMP は合成後ただちに AMP か GMP になる (b) IMP にセリンからアミノ基転移して AMP ができる (c) UTP にアラニンからアミノ基転移して CTP ができる (d) IMP にアラニンからアミノ基転移して GMP ができる (e) オロチジン一リン酸のカルボキシ化で UMP ができる (5) de novo 合成経路の調節:正しい文を1つ選べ (a) PRPP はピリミジンリボヌクレオチド合成を阻害する (b) 大腸菌のプリンリボヌクレオチド合成は ATP で活性化される (c) 動物のピリミジンリボヌクレオチド合成は PRPP で阻害される (d) 動物のピリミジンリボヌクレオチド合成は UT(D,M)P で阻害される (e) AT(D,M)P、GT(D,M)P、XMP はプリンリボヌクレオチド合成を活性化する (6) RNR による NDP からの dNDP 生成反応:正しい文を1つ選べ (a) dATP はすべての dNDP の生成を促進する (b) dUMP からの dTTP 合成は RNR 反応を経由しない (c) NDP を還元するための最終的な還元剤は ATP である (d) ATP はデオキシピリミジンヌクレオチドの生成を阻害する (e) dTTP はデオキシピリミジンヌクレオチドの生成を促進する O (e) C C N H C CH CH3 平成 25 年度 M2「代謝生化学B」 再試験・田原担当(2 枚目/全 4 枚) 2014.2.10 (解答目安 田原担当章 40分) 解答 マークシート問題用紙 ※問題用紙は提出しないこと ヌクレオチド代謝 及び特論 23. (7)(デオキシ)リボヌクレオチドの異化:正しい文を1つ選べ (a) 尿酸の構造は(1)の(e)である (b) プリンヌクレオチドの異化はアミノ酸代謝に合流する (c) キサンチンは、キサンチンオキシダーゼにより尿素を生じる (d) ピリミジンヌクレオチド分解産物はエネルギー代謝に貢献する (e) プリンヌクレオチドサイクルは骨格筋における解糖経路中間体補充反応である (8) 疾患との関係:正しい文を1つ選べ (a) レッシュ・ナイハン症候群は RNR の先天的異常による (b) dTTP 産生不全はプリン分解を亢進させ高尿酸血症へ至ることがある (c) アデノシンからイノシンを生じる酵素の欠損は重症複合免疫不全症に至る (d) 痛風関節炎は、関節内に塩化ナトリウム結晶が析出することで惹起される (e) 核酸合成阻害剤ががん治療に有効であるのは、がん化によって ATP 合成が亢進するからである 2.分子生理学(約 60 点) 【1】次の各問の指示に従って解答をマークシートの解答欄9から 18 に記入せよ。 (9) 神経伝達に関わる輸送体:正しい文を1つ選べ (a) 甲状腺ホルモンは Na + /K + ATPase を阻害する (b) Glu 受容体 Cl チャネルは早い興奮性の神経伝達を行う (c) アセチルコリン受容体阻害は本態性高血圧の一因と考えられている + (d) Kv1.2 は Na + 流入による電位変動に反応して開く Na チャネルである (e) 細胞膜の電位が負値をとる主な要因は細胞内の K + 濃度が高いことである (10) 前シナプス膜からの神経伝達物質分泌:起こる順に並べたとき 2 番目のものを選べ (a) 小胞膜と細胞膜が引き寄せられて膜融合する (b) 活動電位が到達すると、[Ca 2 + ]濃度が急上昇する (c) シンタクシンと小胞膜上のシナプトブレビンが会合する (d) 小胞の内容物(神経伝達物質)をシナプス間隙に放出する (e) シナプトタグミンⅠが細胞膜上のシンタクシンから解離する + (11) Na チャネルと生物毒:正しい文を1つ選べ (a) トリカブト毒(アコニチン)は Na + チャネルを開状態に固定する (b) 矢毒カエルのバトラコトキシンは Na + チャネルを閉状態に固定する (c) フグ毒(テトロドトキシン、TTX)は Na + チャネルを開状態に固定する (d) サソリ毒(ティティウストキシン)は Na + チャネルを閉状態に固定する (e) 赤潮プランクトンなどのサキシトキシンは Na + チャネルを開状態に固定する (12) ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR):正しい文を1つ選べ (a) nAChR は前シナプス膜の脱分極を引き起こす (b) スクシニルコリンは nAChR のアゴニストである (d) nAChR は脱水和イオンを透過させるので、厳密にイオン選択する (e) 植物アルカロイドのツボクラリンは nAChR のイオンの通り道を塞ぐ (c) nAChR を構成する5つのサブユニット全部がアセチルコリンを結合する 平成 25 年度 M2「代謝生化学B」 再試験・田原担当(3 枚目/全 4 枚) 2014.2.10 (解答目安 田原担当章 40分) 解答 マークシート問題用紙 ※問題用紙は提出しないこと ヌクレオチド代謝 及び特論 23. (13) ウィルスの基本性質:正しい文を1つ選べ (a) RNA ウィルスは DNA ウィルスより変異しにくい (b) エンベロープはリン脂質だけからなる単純な脂質膜である (c) 対称的なキャプシドは細胞に高密度で詰め込む際有利に働く (d) ウィルスは核酸を持つので、生物であることは明らかである (e) エンベロープウィルスの感染には宿主細胞膜などとの融合が必要である (14) インフルエンザウィルス(IFV)のヘマグルチニン(HA):正しい文を1つ選べ (a) HA は糖鎖先端のシアル酸の構造のみを識別する (b) HA は酸性環境にさらされることにより構造変化をおこす (c) HA 特異性は極めて強くトリ IFV がヒトに感染する可能性はゼロである (d) エンベロープ膜とエンドソーム膜の融合は HA 分子のブラウン運動による (e) HA は IFV だけでなく、エイズウィルスなどのレトロウイルスにも存在する (15) IFV のノイラミニダーゼ(NA)と抗 IFV 薬:正しい文を1つ選べ (a) 複製ウィルスが宿主細胞から出芽する際に必要である (b) 抗 IFV 薬のうち NA を標的とするものは少数派である (c) 先端のシアル酸(Nアセチルノイラミン酸) を切断する (d) オセルタミビルはアマンタジンを改良して合成した誘導体である (e) ラニナミビルはザナミビルと同構造を持つジェネリック医薬品である(【2】記述問題の図参照) (16) 自然免疫・パターン認識受容体:正しい文を1つ選べ (a) マクロファージなどの貪食作用をひきおこす (b) 細胞内の受容体はエイコサノイドの産生を惹起する (c) 受容体は、多様な抗原に応じて様々な構造のものがある (d) 受容体の結合部位は、アラニン・リッチなドメインからなる (e) 自然免疫は病原体などの異物侵入から 96 時間を過ぎてから働く (17) 獲得免疫・免疫グロブリン(Ig):正しい文を1つ選べ (a) IgG は1分子当たり 12 個の可変ドメインを持つ (b) 特定の繰り返しパターンを持たない異物のみを認識する (c) 可変ドメイン中の2つのβシートで抗原をはさんで認識する (d) 1 種類の抗体分子が、誘導適合によりあらゆる抗原を認識する (e) 抗原との結合は水素結合、疎水結合、イオン結合など多岐にわたる (18) 獲得免疫・T 細胞受容体(TCR)と主要組織適合性複合体(MHC):正しい文を1つ選べ (a) TCR には Ig 様ドメインが Ig 同様 12 個ある (b) TCR の異物認識は Ig 同様、分子間接触による (c) MHC は異物蛋白質をそのまま結合して提示する (d) クラス I MHC はヘルパーT 細胞に抗原提示する (e) クラス II MHC は細胞傷害性 T 細胞に抗原提示する 解答:(1) b, (2) e, (3) e, (4) a, (5) d, (6) b, (7) d, (8) c, (9) e, (10) e, (11) a, (12) b, (13) e, (14) b, (15) a, c どちらも正解。(16) a, (17) e, (18) b 平成 25 年度 M2「代謝生化学B」 再試験・田原担当(4 枚目/全 4 枚) 2014.2.10 (解答目安 田原担当章 40分) 解答 マークシート問題用紙 ※問題用紙は提出しないこと ヌクレオチド代謝 及び特論 23. 【2】次の構造式 a∼e は、シアル酸(a)を除き、抗インフルエンザ薬(成分名[商品名])のものである。 先月6日の国立感染症研究所速報によれば、札幌で今シーズン分離された H1N1 ウィルスはいずれ もオセルタミビル耐性型 NA(H275Y)であった。この変異型 NA はオセルタミビル(b)の分子構造 中の点線で囲んだ部分が、275 番目のヒスチジンから変異したチロシンに押し出された 276 番目の グルタミン酸と立体障害を起こすため、オセルタミビルと結合しにくい。他分子の対応する部分も 点線で囲った。 【問題】H275Y がペラミビル(c)にも耐性を持つ一方、ザナミビル(d)とラニナミビル(e)には耐性を持 たない構造上の理由を、グルタミン酸側鎖(CH 2 CH 2 COO )との相互作用を推定して考察し、簡潔に 解答欄に述べよ【乱雑な記述や無意味な空想は最大で配点分だけ減点する】。 a.シアル酸 OH b.オセルタミビル[タミフル] OH HO O O OH d.ザナミビル[リレンザ] HO O O NH2 O O OH O OH NH2 e.ラニナミビル[イナビル](投与時はオクタン酸エステル) H3C O HN H3C N H HN HN OH OH H3C CH3 HN H3C OH O O O OH OH HN OH CH3 CH3 CH3 CH3 O H3C c.ペラミビル[ラピアクタ] OH O O OH HN HN O NH2 HN H3C HN O NH2 HN 解答欄 ( 全 て 埋 め る 必 要 は な い 。 必 要 十 分 で あ れ ば 1 行 で も よ い ) シアル酸(a)の構造アナログ(b)∼(e)は少しずつ構造が異なるが、最大の違いは点線枠内 が炭化水素基だけ(b, c)か水酸基を含む(d, e)かである。X 線結晶構造解析による と、オセルタミビル結合 H275Y(変異 NA 分子)中の Glu276 と図の点線枠部分との立 体障害が観察された。一方、点線枠内に水酸基を持つザナミビルと結合させた H275Y の Glu276 との間には立体障害はなく、むしろ2つの水酸基が側鎖のγカルボキシ基と 水素結合していた。つまり H275 変異によって NA 分子は(b) (c)とは結合しにくくなり 耐性を持つが、結合が妨げられない(d) (e)に対しては耐性を持たないと考えられる。
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