Spontaneous epileptic seizures in transgenic rats harboring a

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Title
Author(s)
Spontaneous epileptic seizures in transgenic
rats harboring a human ADNFLE missense mutation
in the β2-subunit of the nicotinic
acetylcholine receptor
Shiba, Yuko
Citation
Issue Date
URL
2015-09-30
http://hdl.handle.net/10129/5662
Rights
Text version
author
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
医共様式1
学位請求論文の内容の要旨
論文提出者氏名
脳神経科学領域
神経生理分野
柴
祐子
(論文題目)
Spontaneous epileptic seizures in transgenic rats harboring a human
ADNFLE missense mutation in the β2-subunit of the nicotinic
acetylcholine receptor
(ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかん由来ニコチン性アセチルコリン
受 容 体 β2 サ ブ ユ ニ ッ ト 変 異 ラ ッ ト の 自 発 性 発 作 )
【背景と目的】
常 染 色 体 優 性 夜 間 前 頭 葉 て ん か ん (ADNFLE) は ニ コ チ ン 性 ア セ チ ル コ リ ン 受 容 体
( nAChR) の サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 ( CHRNA2, CHRNA4, CHRNB2 )の 変 異
が 同 定 さ れ て い る 。本 研 究 で は nAChR β2 サ ブ ユ ニ ッ ト に 変 異 を 持 つ ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ
ク ラ ッ ト を 作 出 し 、 ADNFLE の モ デ ル 動 物 と し て の 妥 当 性 を 検 証 す る こ と を 目 的 と し
て研究を進めた。
【方法】
遺伝子組換えラットの作出
ラ ッ ト nAChR の β2 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 Chrnb2 の cDNA を cDNA panel
か ら PCR に よ っ て ク ロ ー ニ ン グ 単 離 し 、pCRII-TOPO vector を 用 い て サ ブ ク ロ ー ニ ン
グ し た の ち V286L の 相 同 変 異 を 導 入 し た 。 こ の 変 異 cDNA を 皮 質 、 海 馬 発 現 用 PDGF
プ ロ モ ー タ ー を 持 つ 哺 乳 動 物 ベ ク タ ー に 移 入 し た 後 SD ラ ッ ト 受 精 卵 に 注 入 し て 組 換 え
体 を 作 出 し た 。作 出 さ れ た 動 物 は 弘 前 大 学 動 物 実 験 施 設 で 繁 殖 飼 育 、系 統 維 持 さ れ て い
る 。 実 験 に は す べ て オ ス の ヘ テ ロ 接 合 の 遺 伝 子 組 換 え 体 (V286L-TG)と 同 胞 非 組 換 え 体
(non-TG)を 使 用 し た 。
組織学的解析
8 週 齢 と 24 週 齢 の ラ ッ ト か ら 摘 出 し た 脳 を 4% パ ラ フ ォ ル ム ア ル デ ヒ ド 24 時 間 固 定
後 パ ラ フ ィ ン 包 埋 し 、 矢 状 断 切 片 を Klüver-Barrera 法 に よ り 組 織 染 色 し た 。 ま た 1 次
抗 体 と し て anti-ssDNA を 使 用 し た ア ビ ジ ン ・ ビ オ チ ン -ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ ( ABC 法 )
に よ る 免 疫 組 織 染 色 を 行 っ た 。2)8 週 齢 の ラ ッ ト を 麻 酔 下 で 潅 流 固 定 し て 脳 を 取 り 出 し
4℃ 3 時 間 固 定 。7.5% シ ョ 糖 入 り バ ッ フ ァ で 一 晩 保 存 後 、前 頭 葉 /線 条 体 、海 馬 /視 床 、後
頭 葉 /中 脳 の 各 領 域 か ら 切 片 を 切 り 出 し anti-nAChR α4 抗 体 ま た は anti-nAChR β2 抗 体
を 用 い た 免 疫 組 織 化 学 的 手 法 で nAChR タ ン パ ク 質 発 現 を 可 視 化 し た 。 3) 2 週 、 4 週 、
6 週 、8 週 、12 週 齢 の ラ ッ ト か ら 断 頭 摘 出 し た 脳 を -80℃ で 凍 結 保 存 。ク リ オ ス タ ッ ト で
20µm に 薄 切 し た の ち ス ラ イ ド ガ ラ ス 上 に と る 。 3 3 P で ラ ベ リ ン グ さ れ た オ リ ゴ ヌ ク レ
オ チ ド プ ロ ー ブ を 用 い た in situ ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 で 変 異 型 、野 生 型 の mRNA
の 発 現 を 検 出 し た 。結 果 は フ ラ ッ ト ベ ッ ド ス キ ャ ナ ー で デ ジ タ ル 化 し 、フ ォ ト シ ョ ッ プ
CS3 で グ レ イ レ ベ ル を 半 定 量 的 に 評 価 し た 。
脳波解析
8 週 、 10 週 、 12 週 齢 の ラ ッ ト で 各 1 週 間 ず つ 脳 波 と ビ デ オ の 同 時 記 録 を 行 っ た 。 麻
酔 下 で ラ ッ ト の 頭 骨 に 脳 波 用 電 極 を 埋 め 込 み 、回 復 期 間 を 経 た の ち テ レ メ ー タ に よ る 脳
波データを取得した。
ニコチン投与による発作誘発実験
13 週 齢 の ラ ッ ト に 2 濃 度 ( 0.5mg/kg、 1.0mg/kg) の ニ コ チ ン を 別 々 に 投 与 し 各 々 の
発 作 活 性 を 6 段 階 で 評 価 し た 。ニ コ チ ン 投 与 前 後 は 脳 波 /ビ デ オ 同 時 記 録 を 行 い 脳 へ の 影
響を評価した。
【結果】
V286L-TG は メ ン デ ル の 法 則 に 従 っ て 出 生 し 正 常 な 発 育 成 長 を し た 。生 殖 能 力 や 寿 命
も non-TG と 違 い は な か っ た 。
組 織 染 色 の 結 果 V286L-TG の 脳 に は 構 造 的 な 異 常 は み ら れ な か っ た 。ss-DNA 抗 体 陽
性 の ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 顕 著 な 増 加 も 見 ら れ な か っ た 。in situ ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
法 に よ り β2 サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子 の 脳 内 分 布 を み た と こ ろ V286L-TG と
non-TG で 違 い は 認 め ら れ な か っ た が 、 変 異 型 遺 伝 子 選 択 的 プ ロ ー ブ で は V286L-TG で
有 意 に V286L mRNA の 高 発 現 が 認 め ら れ ( P<0.01) こ れ は 主 に 大 脳 皮 質 、 海 馬 、 小 脳
に お い て 顕 著 で あ っ た 。 nAChR β2 サ ブ ユ ニ ッ ト の 免 疫 組 織 染 色 の 結 果 、 感 覚 運 動 野 に
お い て V286L-TG と non-TG の 間 に 違 い は 認 め ら れ な か っ た 。
脳 波 解 析 の 結 果 、 11 匹 中 5 匹 ( 45%) の V286L-TG に お い て 脳 波 異 常 を 伴 う 行 動 の
異 常 を 確 認 し た 。 そ の 頻 度 は 1 週 間 に 0.73 回 の 割 合 で あ っ た 。
ニ コ チ ン 投 与 実 験 で は 0.5mg/kg、 1.0mg/kg の 両 濃 度 に お い て 最 初 の 異 常 行 動 発 現 ま
で の 潜 時 が V286L-TG で 有 意 に 短 縮 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。発 作 活 性 は 比 較 的 濃 度
の 高 い 1.0mg/kg で は 有 意 差 が 出 な か っ た も の の 、 低 濃 度 の 0.5mg/kg で は V286L-TG
で 発 作 ス コ ア が 高 く 、V286L-TG で は ニ コ チ ン に 対 す る 感 受 性 が 高 い こ と が 示 唆 さ れ た 。
【考察】
脳 波 を 測 定 し た V286L-TG の 約 半 数 に 振 幅 の 高 い 棘 波 状 の 脳 波 と と も に 驚 い た よ う
に飛び上がったり、またはジャンプしてから走るなどの異常な行動がみられた。
ADNFLE 患 者 で は 特 徴 的 な 3 種 類 の 発 作 、 “paroxysmal arousals”, “paroxysmal
dystonia”, “episodic wandering”、 を お こ す こ と が 知 ら れ て い る 。 V286L-TG の 異 常 行
動 は そ の 中 の “paroxysmal arousals”に 酷 似 し て お り 、今 回 確 認 し た 異 常 行 動 は 脳 波 の 異
常 も 伴 っ て お り “paroxysmal arousals”様 の 自 発 性 発 作 を お こ し た も の と 思 わ れ る 。
V286L-TG は 脳 の 構 造 的 な 異 常 も な く 、 nAChR β2 サ ブ ユ ニ ッ ト の 免 疫 染 色 性 に も
non-TG と の 違 い は み ら れ な か っ た 。 し か し 脳 内 に お け る 変 異 型 遺 伝 子 が 高 レ ベ ル で 検
出され、行動上もニコチンに対する高い感受性を示した。
以 上 の 結 果 か ら V286L-TG は ヒ ト ADNFLE と 相 同 す る 遺 伝 子 変 異 を 有 し 、 ADNFLE
と酷似した表現型を示すというモデルラットとしての妥当性を有していることが明ら
か と な っ た 。モ デ ル 動 物 の 作 出 に つ い て は マ ウ ス が よ く 用 い ら れ る が 、本 研 究 で 使 用 し
た ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク ラ ッ ト は 、 ヘ テ ロ 接 合 体 を 使 用 し て お り ヒ ト ADNFLE 患 者 の 実
態 に 近 い 。ラ ッ ト は マ ウ ス よ り 生 理 機 能 が ヒ ト に 近 い こ と 、頭 骨 内 投 与 な ど 微 細 な 実 験
手技がしやすいことからより有用性が高いものと思われる。
今 後 こ の モ デ ル を 使 っ て ADNFLE の 病 因 と て ん か ん 発 生 の メ カ ニ ズ ム が 解 明 さ れ 、
そ の メ カ ニ ズ ム を 利 用 し た 抗 て ん か ん 薬 の 開 発 や 予 防 、根 本 治 療 開 発 が 進 む こ と が 期 待
される。