2.6.1 緒言

2.6.1 緒言
目次
2.6 非臨床試験の概要文及び概要表
2.6.1 緒言 ............................................................................................................................................1
2.6.1 緒言
2.6 非臨床試験の概要文及び概要表
2.6.1 緒言
Org 37462(ガニレリクス酢酸塩)は,ゴナドトロピン放出ホルモン(以下,GnRH という)に対する
アンタゴニスト活性を有する合成デカペプチドであり,アミノ酸配列中には非天然型アミノ酸や天然型
アミノ酸の D 体を含む(図 2.6.1-1).
(D)
1
(D)
2
(D)
3
4
(D)
6
5
7
8
(D)
10
9
CH3CO – NH-CH-CO – NH-CH-CO – NH-CH-CO – Ser – Tyr – NH-CH-CO – Leu – NH-CH-CO – Pro – Ala – NH2
CH2
CH2
(CH2)4
(CH2)4
CH2
NH
NH
C
N
HN
Cl
C2H5
図 2.6.1-1
+
NH
C2H5
C
HN
C2H5
+
NH
(CH3COO-)2
C2H5
Org 37462 の構造
残基番号の上の(D)は D-アミノ酸を示す.天然型アミノ酸(D 体を含む)は三文字表記の略号で示す.
Org 37462 は,視床下部-下垂体の性腺刺激ホルモン分泌系に作用することで薬効を示す.すなわち,
下垂体の GnRH 受容体に競合的に結合することにより,下垂体からの性腺刺激ホルモン(黄体形成ホル
モン及び卵胞刺激ホルモン)の分泌を,速やかかつ可逆的に強く抑制する.これにより,さらに,雌性
における排卵前の黄体形成ホルモンサージ抑制を介した排卵抑制,雄性におけるテストステロン分泌の
減少といった薬理作用が発揮される.このような薬理作用を踏まえ,Org 37462 は調節卵巣刺激を受け
る女性において早期の黄体形成ホルモンサージを防止することを目的として開発された.
以前に海外で開発された GnRH アンタゴニストは肥満細胞を直接活性化してヒスタミンを遊離させ
て過敏反応を誘起することが知られているが,Org 37462 はヒスタミン遊離活性の弱い GnRH アンタゴ
ニストを目指して開発された.このため,非臨床安全性の検討では,ヒスタミン遊離活性に特に留意し
て試験を実施した.
なお,予定している Org 37462 の効能・効果及び用法・用量は以下の通りである.
【効能又は効果】
調節卵巣刺激下における早発排卵の防止
【用法及び用量】
原則として卵胞刺激ホルモン製剤投与の 6 日目から開始し,ガニレリクスとして 0.25 mg を 1 日 1 回
皮下に連日投与する.
1
2.6.2 薬理試験の概要文
目次
2.6.2 薬理試験の概要文 .......................................................................................................................1
2.6.2.1 まとめ ..................................................................................................................................1
2.6.2.2 効力を裏付ける試験.............................................................................................................4
2.6.2.3 副次的薬理試験..................................................................................................................13
2.6.2.4 安全性薬理試験(一般薬理試験) .....................................................................................16
2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験 ................................................................................................20
2.6.2.6 考察及び結論 .....................................................................................................................20
2.6.2.7 図表....................................................................................................................................21
2.6.2.8 参考文献一覧 .....................................................................................................................21
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.1 まとめ
Org 37462 は新たに合成されたデカペプチドで,性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモン
(以下,GnRH という)のアンタゴニストである.天然の GnRH の 6 つのアミノ酸を置換又は修飾し,
強力な拮抗剤として合成された.Org 37462 は,下垂体性ゴナドトロピンの分泌を可逆的に抑制する新
しい GnRH 拮抗作用を有するアナログである.Org 37462 は,強力な GnRH アンタゴニスト作用を有す
るが,副作用発現に関しては,これまでの GnRH アンタゴニストと比較して少ない.
効力を裏付ける試験として,Org 37462 の GnRH 受容体への結合親和性を明らかにするためラット及
びヒト GnRH 受容体を用いて,in vitro 結合試験を行った.また,Org 37462 の一般的な受容体との結合
能及び結合選択性を検討するため,神経伝達物質,アミノ酸などの各種受容体を用いた受容体結合試験
を行った.また Org 37462 のゴナドトロピン抑制作用を in vitro 及び in vivo により確認した.
副次的薬理試験として,Org 37462 の長期投与により,ゴナドトロピン分泌を長期抑制した雄性動物
における有効性及び安全性について検討した.また単回投与による血漿中テストステロンレベルについ
ても検討を行った.なお,これらの試験成績は,参考試験として報告する.
安全性薬理試験(一般薬理試験)として,Org 37462 の中枢神経系,呼吸器系,循環器系,腎臓及び
消化器系への作用を検討した.また,これまでの GnRH アンタゴニストは,肥満細胞からのヒスタミン
遊離作用を持つため,副作用が皮膚に現れることがある.新しい GnRH アンタゴニストである Org 37462
は,特にこの副作用発現の可能性を少なくすることを目的として開発された.そのため,ヒスタミン遊
離作用も,その他の安全性パラメータとして用いた.
効力を裏付ける試験
受容体結合能(in vitro)
Org 37462 及びその代謝物 3 種類(1-4, 1-6 及び 1-7 ペプチド断片)の GnRH 受容体に対する親和性を
ヒト及びラットの GnRH 受容体を用いて in vitro で検討した.Org 37462 がヒト及びラットの GnRH 受容
体に対して高い親和性を持つことが示された.また 3 種類の代謝物のヒト及びラットの GnRH 受容体に
対する親和性は Org 37462 と比較してそれぞれ約 100 倍と 50 倍低いことが示された.
Org 37462 の受容体結合プロファイル及び結合選択性を確認するため,神経伝達物質,アミノ酸,オ
キシトシン,バソプレッシンなどの各種受容体に対する親和性について検討を行った.Org 37462 は
10-5 M で α1 アドレナリン受容体などの 13 種類の受容体と結合活性が認められたものの,この濃度はヒ
ト血漿中での Org 37462 レベルと比較し少なくとも 1000 倍高く,臨床において問題となる結合活性はな
いと思われた.
ゴナドトロピン抑制作用(in vitro)
ラット脳下垂体細胞を用いてゴナドトロピン遊離に対する Org 37462 の作用を検討した.Org 37462
は用量依存的に GnRH による脳下垂体細胞からの黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)
の遊離を抑制した.
1
2.6.2 薬理試験の概要文
ゴナドトロピン抑制作用(in vivo)
雌性ラットに Org 37462 を単回皮下投与すると排卵の用量依存的な抑制がみられた.Org 37462 を発
情前期に投与した場合,排卵抑制の ED50 値は約 0.29 μg/rat であり,1 μg/rat における排卵抑制率は 100%
であった.Org 37462 の排卵抑制率はこれまでの GnRH アンタゴニストである detirelix に類似していた.
また発情前期の前日に Org 37462 を投与した場合,排卵抑制の ED50 値は発情前期に投与した場合の約
10 倍であった.
雌性ラットに 2.5 μg/kg/日又は 10 μg/kg/日の Org 37462 を 8 週間皮下投与すると,投与開始後 3 週目及
び投与中止の 7 週後のラット交尾率に変化はみられなかったが妊娠率は低下した.雄性ラットと同居の
1 日目に交尾を行った雌性ラットの割合が有意に高く,妊娠率の低下は同居 1 日目に交尾を行うという
不適切な時期での交尾が関与しているものと思われた.
雌性イヌにおいて腟出血の第 1 日目あるいは第 2 日目に Org 37462 を 0.2 又は 0.4 mg/kg 単回皮下投与
した場合,5 試験中の 4 試験で発情期への移行を中断することはできなかった.
副次的薬理試験
雄性ラットに高用量の Org 37462(0.7 又は 5.0 mg/kg)を 1 日 1 回 13 週間反復皮下投与した場合,テ
ストステロン濃度及び精巣容積の著しい減少が認められた.しかしこれらの作用は可逆的であり,
Org 37462 の投与中止により血漿中 Org 37462 濃度が 1 ng/mL 以下になるとテストステロン濃度は回復し
た.
雄性イヌに Org 37462(0.06~16 μg/kg)を皮下投与した場合,血漿中テストステロン濃度は用量依存
的に低下し,テストステロン濃度が最も低かったのは投与後 8 時間付近であった.
安全性薬理試験(一般薬理試験)
中枢神経系に対する作用(in vivo)
Org 37462(1.0 mg/kg まで)をマウスに皮下投与するとわずかな中枢興奮性の作用(数匹のマウスで
他の個体からの逃避)がみられたが,その他の一般症状に影響は認められなかった.自律神経系に対す
る作用としては軽度な縮瞳が認められた.また,Org 37462(1.0 mg/kg まで)をマウスに投与し懸垂法
により筋弛緩作用を検討したが,影響は認められなかった.Org 37462(1.0 mg/kg まで)をマウスに皮
下投与したとき,ヘキソバルビタール誘発睡眠の開始時間は影響を受けず,睡眠の持続時間は 0.1 mg/kg
投与で有意に延長したが他の投与量では影響を受けなかった.マウスの電撃痙攣及びペンチレンテトラ
ゾール誘発痙攣モデルにおいて,Org 37462(1.0 mg/kg まで)の皮下投与は抗痙攣作用を示さなかった.
呼吸及び循環器系に対する作用(in vivo)
麻酔したイヌに Org 37462 を皮下投与したときの呼吸器系及び循環器系に対する作用を検討した.検
討した用量において(0.001~1.0 mg/kg),呼吸器,心電図及び血行動態に対し明らかな作用は認められ
なかった.
ペントバルビタールで麻酔したラット及び無麻酔のカニクイザルを用いて Org 37462 の心血管系に対
する作用を検討した.Org 37462 をラットに皮下投与(0.001~1.0 mg/kg)又は静脈内投与(0.0001~
0.1 mg/kg)した場合,又はカニクイザルに皮下投与(0.001~1.0 mg/kg)した場合の血圧及び心拍数に明
2
2.6.2 薬理試験の概要文
らかな作用を示さなかった.
Org 37462 の降圧作用について麻酔ラットを用いて detirelix と静脈内投与における作用を比較検討し
た.両 GnRH アンタゴニストは降圧作用及び徐脈作用を有することが確認された1.しかしながら,
Org 37462 の作用は detrirelix の約 20 倍低かった.
消化器系に対する作用(in vivo)
雄性ラットに Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下投与し,消化器系に対する作用を検討した.0.001,
0.01,0.03 及び 0.1 mg/kg の投与量で胃液分泌及び水素イオンの総ミリ等量が増加したが,0.003,0.3 及
び 1.0 mg/kg では Org 37462 の影響は認められなかった.
腎臓に対する作用(in vivo)
正常血圧の雄性ラットに Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下投与したところ,Org 37462 は尿量,ナ
トリウム及びカリウム排泄量に対し影響を与えなかった.
ヒスタミン遊離作用(in vitro)
ヒスタミン遊離は GnRH アンタゴニストを注射することによって起こる主な有害事象と考えられて
おり,注射部位に認められるヒスタミン遊離は肥満細胞と GnRH アンタゴニストの直接的な相互作用に
よるものと考えられている.Org 37462 のヒスタミン遊離作用を,ラット腹膜細胞を用いて検討した.
その結果細胞内ヒスタミン量の 50%のヒスタミンを遊離するのに必要な Org 37462 の濃度(EC50)は
17.8 μg/mL であり,他の GnRH アンタゴニストである detirelix の EC50 値 0.21 μg/mL と比較し活性が低
いことが示された.
3
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.2 効力を裏付ける試験
2.6.2.2.1 ラット及びヒト GnRH 受容体に対する Org 37462 及びその代謝物の in vitro における結合親
和性(NL0065841)
試験方法
Org 37462 及びヒト及び動物でみとめられた代謝物 3 種(1-4, 1-6 及び 1-7 ペプチド断片)の GnRH 受
容体に対する結合を明らかにするため,ラット及びヒト GnRH 受容体を用いた in vitro 結合試験を行っ
た.
ラット GnRH 受容体結合試験にはラット脳下垂体前葉膜画分を使用した.膜画分に[125I]- triptorelin
(150,000 cpm)及び阻害剤となる GnRH アナログを加え,4℃で 60 分間インキュベートした.反応液
をガラスフィルターで急速吸引濾過し,放射活性をシンチレーションカウンターで測定した.非特異的
結合は 10-6M の非放射性 triptorelin を用いて求めた.GnRH アナログの[125I]-triptorelin 結合阻害曲線より
50%抑制濃度(IC50 値)を算出し,Cheng and Prusoff の式2より及び結合阻害定数(Ki)を算出した.
ヒト GnRH 受容体結合試験にはヒト GnRH 受容体を発現している embryonic kidney cell line(HEK293)
の膜画分を使用し,ラット GnRH 受容体結合試験と同様の方法で実験を行った.
試験成績
Org 37462 はラット及びヒト GnRH 受容体に対し高い結合親和性を有し,その Ki 値はそれぞれ 0.36 nM
及び 0.56 nM であった.一方,Org 37462 の 3 種類の代謝物のラット及びヒト GnRH 受容体に対する結
合親和性はそれぞれ Org 37462 の約 1/50 及び約 1/100 であった(表 2.6.2-1).
表 2.6.2-1 ラット及びヒト GnRH 受容体に対する Org 37462 及びその代謝物の結合親和性
(NL0065841)
ラット
ヒト
Org 14738(1-7 ペプチド断片)
IC50(nM)
0.8
46
Ki(nM)
0.36
20
IC50(nM)
0.84
84
Ki(nM)
0.56
56
Org 14739(1-4 ペプチド断片)
37
16
90
60
Org 14740(1-6 ペプチド断片)
35
15
68
45
Org 37462
2.6.2.2.2 各種受容体に対する結合親和性(T/O99-4575)
試験方法
Org 37462 の約 62 種類の各種受容体(神経伝達物質,ステロイド,プロスタグランジン,成長因子な
どの受容体,イオンチャネルなど)に対する親和性をラジオリガンドアッセイ法により検討した.
4
2.6.2 薬理試験の概要文
試験成績
10-5 M の Org 37462 は表 2.6.2-2に示した受容体において各リガンドの受容体結合を 50%以上阻害した
が,10-9 及び 10-7 M の濃度ではいずれの受容体に対しても 50%以上の結合阻害を示さなかった.これ以
外の 49 種類の受容体に対しては,Org 37462 はすべての濃度で結合親和性を示さなかった.
表 2.6.2-2 10-5 M の Org 37462 により 50%以上の結合阻害を受けた受容体(T/O99-4575)
受容体
リガンド
Adrenergic, α1
Muscarinic M1
Muscarinic M2
Muscarinic, peripheral
Opiate
Oxytocin
Angiotensin II, AT2
Cholecystokinin, CCK1 (CCKA)
Neurokinin, NK1
Neurokinin, NK2 (NKA)
Neurokinin, NK3 (NKB)
Vasopressin 1
Monoamine oxidase B, MAO-B
-9
3
[ H] 7-MeOxy-Prazosin
[3H] Pirenzepine
[3H] AF-DX384
[3H] QNB
[3H] Naloxone
[3H] Oxytocin
[125I] Try4-Angiotensin II
[125I] CCK-8
[3H] SubstanceP
[125I] NKA
[125I] Eledoisin
[3H] Vasopressin-I Antagonist
[14C] Phenylethylamine
10 M
6.6
10.4
6.2
18.3
-2.4
9.3
-6.2
5.4
14.7
4.0
19.5
3.7
-10.2
結合阻害(%)
10-7 M
12.8
9.1
13.6
8.2
23.6
-2.8
1.3
22.5
15.3
29.5
26.8
21.5
-3.0
10-5 M
58.1
81.1
68.5
54.8
94.3
91.7
65.1
57.5
84.5
94.9
75.9
95.9
68.5
各受容体に対する結合親和性:n=2
2.6.2.2.3
GnRH 誘発ゴナドトロピン遊離抑制作用(in vitro)(NL0052587)
試験方法
Org 37462 の下垂体ホルモン遊離に対する作用を雌性ラットの脳下垂体前葉を用いて検討した.脳下
垂体前葉細胞を分離精製し約 400,000 cells/mL に調整した.無菌条件下で 10% Charcoal Treated Serum
(CTS)を含む M505 培地,0.5 mL を 24 穴プレートに添加し,下垂体細胞を 0.5 mL ずつ播種した.10 nM
のエストラジオールを添加し,37°C に設定した 5% CO2 を含む CO2 インキュベータ内で 3 日間培養した.
細胞がプレートに固着した後,CTS を含まない M505 培地を用いて細胞を洗浄し,GnRH 及び被験薬を
添加した 10% CTS を含む M505 培地と交換し,37°C に設定した CO2 インキュベータ内で 4 時間反応さ
せた.また,同様に GnRH だけを添加した時の LH 及び FSH 遊離作用も検討した.
培養液中に遊離したゴナドトロピン濃度及び細胞中のゴナドトロピン濃度は LH 及び FSH に特異的な
蛍光免疫法を用いて測定し,1 ウェルあたりの全 LH 又は FSH 量(細胞と溶液中の LH 又は FSH 量の合
計)に対する遊離 LH 又は FSH 量(%)の割合を算出した.
試験成績
ラット脳下垂体細胞に GnRH を添加すると濃度依存的に LH 及び FSH が遊離し,10-7 M では GnRH
を添加しないときの遊離量と比べ約 30 倍(LH)及び約 3.5 倍(FSH)に増加した.10-7 M の GnRH 誘
発 LH 遊離に対して Org 37462 は 10-10 及び 10-9 M でそれぞれ 56 及び 95%の抑制作用を示した(図 2.6.2-1).
また,同様に 10-7 M の GnRH を添加したときの FSH 遊離に対して Org 37462 は 10-10 及び 10-9 M でそれ
ぞれ 62 及び 88%の抑制作用を示した(図 2.6.2-2).
5
2.6.2 薬理試験の概要文
70
60
LH (% release)
50
40
30
**
20
10
***
0
0
10-9
10-7
10-13
10-11
10-10
10-9
(M)
Org 37462 + GnRH 10-7 M
GnRH
図 2.6.2-1
10-12
GnRH によるラット脳下垂体細胞からの遊離 LH 量(%)に対する Org 37462 の作用
(NL0052587)
**:p<0.01,***:p<0.001,GnRH 10-7 M との比較(Student t-test)(n=2)
50
FSH (% release)
40
30
**
20
**
10
0
0
10-9
10-7
10-13
10-11
10-10
10-9
(M)
Org 37462 + GnRH 10-7 M
GnRH
図 2.6.2-2
10-12
GnRH によるラット脳下垂体細胞からの遊離 FSH 量(%)に対する Org 37462 の作用
(NL0052587)
**:p<0.01,GnRH 10-7 M との比較(Student t-test)(n=2)
6
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.2.4 ラットにおける排卵抑制作用(AT4878,AT6270)
試験方法(AT4878)
1 群 10~12 匹の雌性ラット(体重 160~180 g)の発情前期の正午に Org 37462(0.25, 0.5, 1.0 μg/rat)
又は detirelix(0.25, 0.5, 1.0, 2.0, 4.0 μg/rat)を皮下投与した.翌朝ラットを屠殺し,解剖顕微鏡下で卵管
を観察し,排卵された卵の有無を確認した.排卵したラットの割合を求め,Org 37462 及び detirelix の排
卵阻害作用の ED50 値を算出した.
試験成績(AT4878)
発情前期の正午に Org 37462 を皮下投与することにより用量依存的に排卵が抑制され,その ED50 値は
0.29 μg/rat であった.この排卵抑制作用は比較対照薬として使用した detirelix(ED50 値:0.44 μg/rat)と
同等であった(表 2.6.2-3).
表 2.6.2-3 ラットにおける排卵抑制作用(AT4878)
GnRH アンタゴニスト
Org 37462
Detirelix
用量(μg/rat)
0.25
0.5
1.0
0.25
0.5
1.0
2.0
4.0
8/10
8/10
1/10
1/10
0/10
排卵したラットの例数 / 各群の例数
6/10
6/10
2/10
1/12
0/10
0/12
6/10
8/10
10/10
1/10
3/10
4/10
6/10
9/10
2/10
0/10
0/10
3/10
0/10
0/10
0/10
-
ED50 値 1)
(μg/rat)
0.29
0.44
1) 併合解析後の値を示す.
試験方法(AT6270)
また同様に 1 群 10 匹の雌性ラット(体重 160~175 g)の発情前期の正午又は作用の持続性をみるた
め発情前期の前日の正午に Org 37462 を皮下投与した.発情前期の翌日(すなわち,Org 37462 投与後 1
日又は 2 日)ラットを屠殺し,上記と同様の方法で Org 37462 の排卵阻害作用の ED50 値を算出した.
7
2.6.2 薬理試験の概要文
試験成績(AT6270)
発情前期の前日の皮下投与においても Org 37462 は用量依存的に排卵抑制作用を示した.しかしなが
ら ED50 値で比較すると,Org 37462 を発情前期に投与した場合 0.31 μg/rat であったのに対し,発情前期
の前日に投与した場合では 3.88 μg/rat と約 10 倍の用量が必要であった(表 2.6.2-4).
表 2.6.2-4 ラットにおける投与時期の違いによる排卵抑制作用(AT6270)
Org 37462 の投与量(μg/rat)
排卵したラットの例数 / 各群の例数
ED50(μg/rat)
発情前期
0
0.125
0.25
0.5
1.0
2.0
10/10
9/10
7/10
2/10
0/10
0/10
-
発情前期の前日
0
1.25
2.5
5.0
10.0
20.0
40.0
80.0
14/15
7/10
7/10
5/10
2/10
1/10
1/10
0/10
0.31
-
3.88
2.6.2.2.5 ラットの発情周期に対する作用(AT5597,AT6101,AT5596)
生殖毒性試験において Org 37462 を 2.5 μg/kg/日の用量で 8 週間皮下投与を行うと,発情期の延長及び
受胎能の低下が認められた.受胎能の低下は投与後 3 週及び休薬後 7 週で認められたが,休薬後 17 週
では対照群との差が認められず回復性が確認された.受胎能低下のメカニズムを調べるため,以下の試
験を実施した.
試験方法(AT5597)
1 群 30 匹の雌性ラット(体重 189~200 g)に溶媒又は Org 37462(2.5 μg/kg/日)を 2 週間皮下投与し,
投与開始日より 1 日 1 回,腟スメア検査により発情周期の確認を行った.2 週間投与後に雄性ラットと
同居させ 5 日間交尾の有無を検査した.交尾が確認されたその日に,雌性ラットを屠殺し,解剖顕微鏡
下で卵管を観察し排卵された卵の有無及びその数を溶媒投与群と比較した.Org 37462 は屠殺日まで投
与した.
試験成績(AT5597)
14 日間に発情期を示したラット数の平均値及び標準誤差(SE)は Org 37462 群で 37 ± 4%,溶媒投与
群で 24 ± 3%と Org 37462 群で有意に多かった(p<0.03).交尾したラットの割合及び交尾したラット数
8
2.6.2 薬理試験の概要文
に対する排卵が見られたラット数に両群で差が認められなかったが,排卵が見られたラット 1 匹あたり
の平均卵数は溶媒投与群で 15.7 個,Org 37462 群で 13.8 個と Org 37462 群の方が有意に少なかった
(p<0.02).
試験方法(AT6101)
1 群 20 匹の雌性ラット(体重 249~260 g)に溶媒又は Org 37462(2.5 μg/kg/日又は 10 μg/kg/日)を 8
週間皮下投与し,投与開始後 2 週間又は投与終了後 7 週に雄性ラットと同居させ交尾の有無を確認した.
交尾が確認された時点を妊娠 1 日目とし妊娠 20 日目の胎児の数と状態を観察し,それぞれ溶媒投与群
のラットと比較した.
試験成績(AT6101)
2.5 μg/kg/日又は 10 μg/kg/日の Org 37462 及び溶媒を 8 週間皮下投与し,投与開始後 3 週におけるラッ
ト交尾率及びその後の受胎能を表 2.6.2-5に,8 週投与し投与終了後 7 週のラット交尾率及びその後の受
胎能を表 2.6.2-6に示した.投与期間中及び投与終了後 7 週のラットともに交尾したラットの割合は,
Org 37462 の投与の有無にかかわらず有意差は認められなかった.また,妊娠ラット 1 匹あたりの胎児
数に差は認められなかったものの,10.0 μg/kg/日の Org 37462 投与期間中のラット妊娠率(p<0.0001)及
び 2.5 μg/kg/日,10 μg/kg/日の Org 37462 を 8 週間投与し,投与終了後 7 週の交尾ラットの妊娠率(それ
ぞれ,p<0.001 及び p<0.01)は,溶媒投与群と比較し有意に減少した.
表 2.6.2-5 Org 37462 の投与期間中における交尾率及び受胎能(AT6101)
用量
(μg/kg/日)
0.0
交尾したラット数 / 全ラット数
妊娠ラット数 / 交尾したラット数
17 / 20 (85%)
妊娠ラット 1 匹あたりの胎児数
(平均 ± SE)
14.6 ± 0.6
15 / 17 (88%)
2.5
17 / 20 (85%)
NS1)
9 / 17 (53%)
NS1)
10.0
18 / 20 (90%)
NS1)
1 / 18 (6%)
p<0.00011)
12.6 ± 1.1
16.0
NS2)
-3)
NS=有意差なし
1) 溶媒投与群との Fisher の直接確率検定
2) 溶媒投与群との対応のない t 検定
3) 1 サンプルしかないため統計解析せず
表 2.6.2-6 Org 37462 の投与終了後 7 週における交尾率及び受胎能(AT6101)
用量
(μg/kg/日)
交尾したラット数 / 全ラット数
妊娠ラット数 / 交尾したラット数
0.0
14 / 19 (74%)
14 / 14 (100%)
2.5
10.0
9 / 20 (45%)
11 / 20 (55%)
1)
NS
1)
NS
3 / 9 (33%)
6 / 11 (55%)
妊娠ラット 1 匹あたりの胎児数
(平均 ± SE)
11.9 ± 1.0
p<0.0011)
1)
p<0.01
5.3 ± 3.8
-3)
9.0 ± 2.6
NS2)
NS=有意差なし
1) 溶媒投与群との Fisher の直接確率検定
2) 溶媒投与群との対応のない t 検定
3) サンプルが 4 未満のため統計解析せず
投与期間中に雄性ラットと同居 1 日目に交尾を行った雌性ラットの割合は 2.5 μg/kg/日及び 10 μg/kg/
日の Org 37462 投与群でそれぞれ 82%と 100%であり,溶媒投与群の 23%と比較して有意に高かった(そ
れぞれ p<0.01 及び p<0.001).投与終了後 7 週においても 1 日目に交尾を行った雌性ラットの割合は
9
2.6.2 薬理試験の概要文
2.5 μg/kg/日及び 10 μg/kg/日の Org 37462 投与群でそれぞれ 78%と 73%であり,溶媒投与群の 29%と比較
して有意に高かった(共に p<0.05).
同居 1 日目に交尾を行った雌性ラットのうち,妊娠に至ったラットの割合は,Org 37462 投与群で減
少し,投与期間中では 10 μg/kg/日投与群が 6%,投与中止後 7 週目では 2.5 μg/kg/日投与群では 14%と,
溶媒投与群の 100%と比較して有意に低かった(それぞれ p<0.001 及び p<0.02).
以上,生殖毒性試験でみられた受胎能の低下は,同居 1 日目に交尾を行うという不適切な時期での交
尾が関与しているものと思われた.
試験方法(AT5596)
1 群 40 匹の雌性ラット(体重 189~200 g)に Org 37462 を 2.5 μg/kg/日の用量で 9 週間皮下投与し,
投与終了後 7 週に雄性ラットと同居させ,交尾率,排卵数,着床数及び出生胎児数について検討を行っ
た.投与終了 2 週間前より腟スメア検査を開始し,発情周期(発情前期,発情期または発情休止期)を
検査した.交尾が確認された時点を妊娠 1 日目とし,妊娠 1 日目,妊娠 9 日目のラットを屠殺した.残
りのラットは出産時まで観察を行った.
試験成績(AT5596)
2.5 μg/kg/日の Org 37462 の投与最終日より 2 週間前から,投与終了後 7 週の期間に発情期を示したラ
ットの割合を溶媒投与群とともに図 2.6.2-3に示した.Org 37462 投与期間中は発情期を示すラットの割
合が高く,腟スメア検査開始からの 4 日間に発情期を示したラットの割合は,溶媒投与群と比較し有意
に高値を示した(p=0.002).しかしながら,発情期を示すラットの割合は,Org 37462 の投与終了 1 週間
以内には,溶媒投与群と同程度にまで減少し,発情周期に対する Org 37462 の薬理作用は急速に消失す
ることが明らかとなった.
発情期を示したラットの割合(%)
100
○:溶媒
投与終了
●:2.5 μg/kg Org 37462
80
60
40
20
0
-14
-7
0
7
14
21
28
35
42
49
投与終了からの日数
図 2.6.2-3 投与終了 2 週間前から 7 週後までの発情期を示したラットの割合(AT5596)
n = 39, 40
10
2.6.2 薬理試験の概要文
また,Org 37462 を 2.5 μg/kg/日の用量で 9 週間皮下投与し,投与終了後 7 週の交尾率及びその後の受
胎能を溶媒投与群と比較し,表 2.6.2-7に示した.交尾率,並びに妊娠 1 日目,妊娠 9 日目及び出産直前
の各測定項目において,両群間に有意な差は認められなかった.
表 2.6.2-7 投与終了後 7 週の交尾率及び評価時期別受胎能に対する Org 37462 の作用(AT5596)
溶媒投与
Org 37462
検定
35 / 39 (90%)
29 / 38 (76%)
NS1)
排卵が見られたラット数 / 交尾したラ
ット数
9/10 (90%)
9/10 (90%)
NS1)
排卵が見られたラット 1 匹あたりから回
収した平均卵数 ± SE
13.0 ± 1.0
10.2 ± 1.0
NS2)
子宮内に移植(着床)が見られたラット
数 / 交尾したラット数
9/10 (90%)
10/10 (100%)
NS1)
子宮内に着床妊卵が見られたラット 1 匹
あたりの平均着床妊卵数 ± SE
12.7 ± 1.2
14.0 ± 0.5
NS2)
生存児を出産したラット数 / 交尾した
ラット数
12 / 15 (80%)
8 / 9 (89%)
NS1)
生存児を出産したラット 1 匹あたりの平
均生存児数 ± SE
11.6 ± 0.9
11.8 ± 1.4
NS2)
評価の時期
交尾時
妊娠 1 日目
妊娠 9 日目
出産時
測定項目
交尾したラット数 / 全ラット数
NS=有意差なし
1) 溶媒投与群との Fisher の直接確率検定
2) 溶媒投与群との対応のない t 検定
SE:標準誤差
以上,ラットにおいて,Org 37462 の 2 週間の投与直後に排卵数が低下し(AT5597),受胎能への作用
が認められたが(AT6101),Org 37462 の投与終了 1 週で発情周期が回復し,また投与終了後 7 週におけ
る排卵数及び受胎能がコントロール群と比較して差が見られなくなった(AT5596).Org 37462 の投与終
了後に受胎能は急速に回復することが示唆された.
2.6.2.2.6 イヌの発情期に対する作用(AT4897)
試験方法
4 匹の正常な性周期を持つ成熟雌ビーグル犬を用いて,腟出血の 1 日目又は 2 日目に Org 37462 を
0.2 mg/kg(2 試験)又は 0.4 mg/kg(3 試験)単回皮下投与した.Org 37462 の投与日より腟スメア検査
を行い発情前期からの経過を観察した.また試験期間を通して腟出血についての観察も行った.
試験成績
雌ビーグル犬への 0.2 又は 0.4 mg の Org 37462 を単回皮下投与により,以下の結果が得られた.
0.2 mg/kg(1):
発情前期から発情期へは正常な移行を示し,腟出血は継続した.
0.2 mg/kg(2)
: 投与後 4 日で,腟出血が停止したが,腟スメア検査からは発情前期から発情期への
移行は認められなかった.その後腟スメア検査は 8 日間中断し評価しなかったが,9 日目からは腟出血
が再開した.
11
2.6.2 薬理試験の概要文
0.4 mg/kg(1)
: 上記の個体(0.2 mg/kg(2))の腟出血再開初日に 0.4 mg/kg を単回皮下投与したが,
その後の発情前期から発情期への移行は正常であった.
0.4 mg/kg(2)
: 発情前期から発情期への移行は正常であり,腟出血は試験期間中(22 日目まで)継
続した.
0.4 mg/kg(3)
: 腟スメア検査では,発情前期から発情期への移行する過程で両期の腟垢像が入り乱
れて観察されたが,腟出血は試験期間中(22 日目まで)継続した.
以上,腟スメア検査及び腟出血により評価したところ,Org 37462 の単回皮下投与により,0.2 mg/kg
を投与した 1 試験のみ発情周期が乱れたが(0.2 mg/kg(2))
,他の 4 試験で発情期への移行及び腟出血
の中断は観察されなかった.GnRH アンタゴニストの detirelix は雌性イヌの性周期の移行するのを抑制
すると報告されているが,ラットにおいて同等の排卵抑制効果を持つ Org 37462 にそのような抑制はみ
られなかった.
12
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.3 副次的薬理試験
Org 37462 は起源会社である Syntex 社により前立腺癌など様々なホルモン依存性の疾患に対する長期
投与の治療薬として開発が進められていた.そのため,雄性動物を用いた薬理作用についても検討が行
われていた.そこで,Org 37462 の長期投与により,ゴナドトロピン分泌を長期抑制した際の有効性及
び安全性について雄性動物を用いて検討した.なお,これらの副次的薬理試験の成績は,参考資料とし
て報告する.
2.6.2.3.1 ラットのテストステロン濃度及び精巣に対する作用(AT6019(参考))
試験方法
1 群 10 匹の雄性ラット(10~12 週齢)に 0.7 mg/kg/日又は 5.0 mg/kg/日の Org 37462 を 13 週間皮下投
与した.投与終了後 1 週間間隔でラットの眼窩洞より血液を採取し,血漿中 Org 37462 濃度及び血漿中
テストステロン濃度をラジオイムノアッセイ法により測定した.同様に 1 週間間隔でカリパスを用いて
精巣の長径,短径を計測し精巣容積を算出した.0.7 mg/kg/日群では投与終了後 11 週まで,5.0 mg/kg/
日群では投与終了 23 週まで試験を継続した.
試験成績
13 週間投与後の血漿中 Org 37462 濃度は 0.7 mg/kg/日投与群及び 5.0 mg/kg/日投与群でそれぞれ 13.17
と 134.18 ng/mL であった.投与終了後 1 週で両群の血漿中 Org 37462 濃度は急激に減少し,その後緩や
かな減少を示した.4 週間後には 0.7 mg/kg/日投与群において Org 37462 を検出することは出来なかった
が(<0.05 ng/mL),5.0 mg/kg/日投与群では 23 週間後も検出が可能であった(図 2.6.2-4).
13 週間投与後の溶媒投与群の血漿中テストステロン濃度は 1.77 ng/mL であったが,0.7 mg/kg/日投与
群及び 5.0 mg/kg/日投与群の血漿中テストステロン濃度は溶媒投与群と比較し有意に低く(p<0.001),
それぞれ 0.15 ng/mL 及び 0.12 ng/mL であった. 0.7 mg/kg/日投与群の血漿中テストステロン濃度は投与
終了後 3 週までに溶媒投与群と同レベルにまで回復したが,5.0 mg/kg/日投与群の血漿中テストステロン
濃度は投与終了後 10 週まで低いままであり,その後徐々に回復した.テストステロン濃度の回復には
血漿中 Org 37462 濃度の減少が関連していると考えられ,いずれの投与量においても Org 37462 濃度が
約 1 ng/mL 以下となる時点の付近でテストステロン濃度が上昇し始めた.(図 2.6.2-5).
13 週間投与後の溶媒投与群の精巣容積は,4.22 cm3 であったが,0.7 mg/kg/日投与群及び 5.0 mg/kg/日
.
投与群では溶媒投与群と比較して有意に低下し,それぞれ 0.91 cm3 及び 0.98 cm3 となった(p<0.001)
0.7 mg/kg/日投与群では投与終了 3 週後,5.0 mg/kg/日投与群では 11 週後から増加し始め,それぞれ投与
終了後 9 週間及び 21 週には溶媒投与群との差は認められなくなった(図 2.6.2-6).
13
血漿中 Org 37462 濃度 ( ng/mL )
2.6.2 薬理試験の概要文
1000
0.7 mg/kg Org 37462
100
5.0 mg/kg Org 37462
10
1
0.1
0.01
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
22
24
投与終了後(週)
図 2.6.2-4 投与終了後の血漿中 Org 37462 濃度の経時変化
血漿中テストステロン濃度 (ng/mL )
各シンボルは平均値 ± 標準誤差を示す(n=6~10).
3
溶媒
0.7 mg/kg Org 37462
2.5
5.0 mg/kg Org 37462
2
1.5
*
**
1
** **
**
0.5
**
*
** **
** ** ** ** ** ** **
0 ** **
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
投与終了後(週)
図 2.6.2-5 投与終了後の血漿中テストステロン濃度の経時変化
各シンボルは平均値 ± 標準誤差を示す(n=9, 10)
.
*:p<0.05,**:p<0.01 溶媒投与群との比較(一元配置分散分析後の Fisher の最小有意差法)
14
2.6.2 薬理試験の概要文
6
精巣容積 (cm 3 )
5
4
** **
**
**
3
2
1
**
** ** **
** ** **
**
** ** ** **
**
** **
**
** **
*
**
**
溶媒
0.7 mg/kg Org 37462
**
5.0 mg/kg Org 37462
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
投与終了後(週)
図 2.6.2-6 投与終了後の精巣容積の経時変化
各シンボルは平均値 ± 標準誤差を示す(n=7~10).
*:p<0.05,**:p<0.01 溶媒投与群との比較(一元配置分散分析後の Fisher の最小有意差法)
2.6.2.3.2 イヌのテストステロン濃度に対する作用(AT4815(参考))
試験方法
1 群 6 匹の成熟雄ビーグル犬に 0.06~16 μg/kg の用量の Org 37462,0.25~16 μg/kg の用量の detirelix
又は溶媒を単回皮下投与し,投与終了後 24 時間までの血液を経時的に採取した.血液から血漿を分離
し,ラジオイムノアッセイ法にて血漿中テストステロン濃度を測定した.
試験成績
雄ビーグル犬に 0.06~16 μg/kg の用量の Org 37462 又は detirelix を単回皮下投与した結果,用量依存
的な血漿中テストステロン濃度の減少が認められた.また,テストステロン濃度が最も低い値を示した
のは両被験薬とも,すべての用量において,投与後,約 8 時間であった.
15
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.4 安全性薬理試験(一般薬理試験)
以下に示す試験は,非 GLP で行われていたため,一般薬理試験として報告する.GnRH アンタゴニス
トは肥満細胞の脱顆粒を引き起こし,その結果,ヒスタミンを遊離することが知られている.そのため,
ヒスタミン遊離作用及びヒスタミン遊離が全身に及ぼす影響を検討するため,心血管の降圧作用につい
ての検討も行った.
表 2.6.2-8 一般薬理作用に関する試験成績一覧表
試験項目(投与経路)
動物種・標本
(例数)
投与量
(mg/kg)
0.0001, 0.001, 0.01,
マウス
(♂:9, 一部 6) 0.1, 1.0
一般症状に及ぼす影響(s.c.)
中
枢
神
経
系
筋弛緩作用(懸垂法)(s.c.)
ヘキソバルビタール誘発睡眠
(s.c.)
最大電撃痙攣(s.c.)
ペンチレンテトラゾール誘発
痙攣(s.c.)
呼
吸
器
系
麻酔イヌの血液ガスパラメー
タ・呼吸数・1 回換気量・呼
吸流量・分時換気量(s.c.)
麻酔イヌの血圧・心拍数・心
電図に対する作用(s.c.)
心
血
管
系
麻酔ラットの血圧・心拍数に
対する作用(s.c., i.v.)
無麻酔サルの血圧・心拍数・
心電図及び行動に及ぼす影響
(s.c.)
マウス
胃液分泌に対する作用(s.c.)
腎
臓
水及び電解質代謝に及ぼす影
響(s.c.)
そ
の
他
ヒスタミン遊離作用(in vitro)
s.c.:皮下投与,
資料番号
数匹のマウスで他の個体か AT4899
らの逃避行動が認められた
以外,一般症状に影響なし.
1.0 mg/kg で 軽 度 の 縮 瞳 ,
0.1 mg/kg で体温上昇が認め
られた.
AT4894
1.0 mg/kg まで作用なし.
(♂:10)
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
0.1 mg/kg で睡眠時間の延長
が認められた.
AT4891
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4893
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4892
イヌ
(4)
0.001, 0.003, 0.01,
0.03, 0.1, 0.3, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4855
イヌ
(4)
0.001, 0.003, 0.01,
0.03, 0.1, 0.3, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4855
ラット
(♂:6)
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
(s.c.)
0.0001, 0.001, 0.01,
0.1 (i.v.)
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
0.01 mg/kg の i.v. 60 分後に
わずかな血圧上昇が認めら
れた.
AT4884
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4882
0.3, 0.6, 1, 1.7, 3.0
降圧作用及び徐脈を引き起
こ し た . 平 均 血 圧 を
50 mmHg 低 下 さ せ る 用 量
は,0.9 mg/kg であった.
AT4925
ラット
(♂:7~10)
0.001, 0.003, 0.01,
0.03, 0.1, 0.3, 1.0
0.001,0.01~0.1 mg/kg で胃
液分泌量及び総ミリ等量を
約 50%増加させたが,用量
相関性はなかった.
AT4717
ラット
(♂:7)
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
AT4901
ラット腹膜細胞
(4, 5)
0.01, 0.03, 0.1, 0.3,
1, 3, 10, 30, 100,
300 μg/mL
濃度依存的にヒスタミン遊
離量が増加し,50%遊離濃
度は, 17.81 μg/mL であっ
た.
AT4917
マウス
(♂:10)
マウス
(♂:9, 10)
マウス
(♂:9, 10)
サル
(4)(♂:6 又
は♀:5 より)
ラット
麻酔ラットの血圧・心拍数に (♂:4)
対する作用(降圧作用)(i.v.)
消
化
器
系
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
試験成績
i.v.:静脈内投与
16
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.4.1 中枢神経系に対する作用
2.6.2.4.1.1 一般症状に及ぼす影響(AT4899)
雄性マウス(体重 18~24 g)に Org 37462 を 0.0001~1.0 mg/kg の用量で皮下投与し,一般症状を観察
した.その結果,Org 37462 の投与により,数匹のマウスで他の個体からの逃避行動が認められた以外,
一般症状に影響は認められなかった.また,1.0 mg/kg 投与群で縮瞳,0.1 mg/kg 投与群で体温上昇と自
律神経系に対する影響が認められたが,これらの作用は軽度なものであった.
2.6.2.4.1.2 筋弛緩作用(懸垂法)
(AT4894)
雄性マウス(体重 18~23 g)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下投与し,針金上にマウス
をのせ 10 秒以内に落下するかどうかを観察した. Org 37462 の投与はマウスが針金に留まる能力に影
響を与えず,本剤に筋弛緩作用はないものと考えられた.
2.6.2.4.1.3 ヘキソバルビタール誘発睡眠(AT4891)
雄性マウス(体重 18~24 g)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下投与し,60 分後,80 mg/kg
のヘキソバルビタールを腹腔内投与した.ヘキソバルビタール投与 3 分以内にすべてのマウスに正向反
射消失が認められた.Org 37462 の 0.1 mg/kg 投与群で睡眠時間の延長が認められたものの,その他の用
量では,睡眠開始時間及び睡眠時間の延長に対し,明らかな作用は認められなかった.
2.6.2.4.1.4 最大電撃痙攣(AT4893)
雄性マウス(体重 18~23 g)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下投与し,60 分後,50 mA,
0.2 秒の電流を通電し,痙攣を惹起した.Org 37462 は電撃による強直性痙攣に対して抗痙攣作用を示さ
なかった.
2.6.2.4.1.5 ペンチレンテトラゾール誘発痙攣(AT4892)
雄性マウス(体重 18~22 g)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下投与し,60 分後,80 mg/kg
のペンチレンテトラゾールを皮下投与した.Org 37462 はペンチレンテトラゾール誘発屈曲痙攣及び強
直性伸展痙攣に有意な作用を及ぼさず,またペンチレンテトラゾールによる死亡にも影響を与えなかっ
た.
2.6.2.4.2 呼吸器系に対する作用(AT4855)
ペントバルビタール麻酔下のイヌ(体重 11.5~14 kg)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下
投与したときの呼吸器系に対する作用を検討した.用いた用量範囲において,Org 37462 は呼吸器系に
明らかな影響を与えなかった.
2.6.2.4.3 心血管系に対する作用(AT4855,AT4884,AT4882,AT4925)
ペントバルビタール麻酔下のイヌ(体重 11.5~14 kg)に Org 37462 を 0.001~1.0 mg/kg の用量で皮下
投与したとき,血圧,心拍数,心電図パラメータ(P 波,PR 間隔,QT 間隔)においても明らかな作用
を示さなかった(AT4855).
17
2.6.2 薬理試験の概要文
ペントバルビタール麻酔下の雄性ラット(体重 250~350 g)に Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下
投与あるいは,0.0001~0.1 mg/kg を静脈内投与した.Org 37462 は 0.01 mg/kg の静脈内投与 60 分後に認
められたわずかな血圧上昇を除き,Org 37462 は血圧及び心拍数に影響を与えなかった.Org 37462 の投
与後1時間でヒドララジンによる血圧低下が認められた.
(AT4884)
無麻酔カニクイザル(体重 2.9~7.5 kg)に,Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下投与し,120 分後ま
での血圧,心拍数,心電図及び行動を観察したが,溶媒投与群と比較し,Org 37462 に明らかな作用は
認められなかった.(AT4882)
また,ペントバルビタールナトリウム麻酔下の雄性ラット(体重 250~350 g)を用い,Org 37462(0.3
~3.0 mg/kg)又は,これまでの GnRH アンタゴニストである detirelix(0.03~0.3 mg/kg)を静脈内投与
し,投与後 30 分間の血圧及び心拍数の変化の最大値を記録した.平均血圧を 50 mmHg 低下させる用量
(ED50)は,Org 37462 では,0.9 mg/kg,detirelix では,0.04 mg/kg であった.GnRH アンタゴニストに
は降圧作用と徐脈作用が認められているが1,Org 37462 は detirelix と比較し活性が低いことが確認され
た.Org 37462 の高用量(1.7 及び 3.0 mg/kg)の静脈内投与では死亡例も見られた.
(AT4925)
2.6.2.4.4 消化器系に対する作用(AT4717)
雄性ラット(体重 150~200 g)に Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下投与し,消化器系に対する作
用を検討した.0.001,0.01,0.03 及び 0.1 mg/kg の投与量で胃液分泌及び水素イオンの総ミリ等量が増
加したが,0.003,0.3 及び 1.0 mg/kg では Org 37462 の影響は認められなかった.
2.6.2.4.5 腎臓に対する作用(AT4901)
正常血圧の雄性ラット(体重 260~360 g)に Org 37462 の 0.001~1.0 mg/kg を皮下投与したところ,
Org 37462 は尿量,ナトリウム及びカリウム排泄量に対し影響を与えなかった.
2.6.2.4.6 ヒスタミン遊離作用(in vitro)(AT4917)
Org 37462(0.01~300 μg/mL)及び detirelix(0.01~100 μg/mL)のラット腹膜細胞からのヒスタミン遊
離作用を検討した(図 2.6.2-7).被験薬投与によりヒスタミン遊離量が濃度依存的に増加し,Org 37462
では,0.01,0.03,0.1,0.3,1,3,10,30,100 及び 300 μg/mL の濃度において,それぞれ平均で 3,6,
4,4,12,38,48,64,69 及び 80% のヒスタミンが遊離した.Detirelix では,0.01,0.03,0.1,0.3,1,
3,10,30 及び 100 μg/mL の濃度で遊離量の平均値は 28,41,51,58,72,66,81,82 及び 79%であっ
た.EC50 値(平均値±標準誤差)は Org 37462 及び detirelix でそれぞれ,17.81±5.01(n=5),0.21±0.03
(n=4)µg/mL であり,Org 37462 のヒスタミン遊離作用は detirelix と比較して非常に弱かった.
18
2.6.2 薬理試験の概要文
ヒスタミン遊離量 ( % )
100
80
Org 37462
Detirelix
60
40
20
0
0.01
0.1
1
10
100
1000
濃度 ( µg/mL )
図 2.6.2-7 GnRH アンタゴニストによるラット腹膜細胞からのヒスタミン遊離作用
平均±標準偏差.n = 2~5(Org 37462)
,n = 1~4(detirelix)
19
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験
該当なし.
2.6.2.6 考察及び結論
Org 37462 は GnRH のアンタゴニストであり,ラット及びヒトの GnRH 受容体に高い親和性を示した
が,3 種類の代謝物のラット及びヒト GnRH 受容体に対する結合能は,未変化体と比較し,それぞれ約
50 倍及び約 100 倍弱かった(NL0065841).Org 37462 は,各種神経伝達物質受容体,イオンチャネル,
アミノ酸受容体,核内受容体,オキシトシン受容体,バソプレッシン受容体などに親和性を示さず
(T/O99-4575),GnRH 受容体に選択的に結合することが明らかとなった.
Org 37462 の抗ゴナドトロピン活性については,in vitro 及び in vivo の両方から検討を行った.in vitro
では,Org 37462 は,ラット脳下垂体細胞での GnRH 誘発 LH 及び FSH 遊離を濃度依存的に抑制した
(NL0052587).一方,in vivo では,雌ラットの発情前期の正午に Org 37462 を投与することにより,用
量依存的な排卵抑制作用が認められ,その ED50 値は約 0.3 μg/rat(1.4 μg/kg)であった.Org 37462 の作
用の持続性を確認するため,発情前期の前日に投与した場合では,ED50 値は 3.88 μg/rat となり,約 10
倍の用量が必要であった(AT4878,AT6270).本剤の排卵抑制作用は,排卵前の LH サージを抑制する
ことによるものと考えられる3.
Org 37462 を 2.5 μg/kg/日の用量で 2 週間皮下投与すると,発情周期が完全に抑制されず,発情期を示
すラット数が有意に増加した(AT5597).しかしながら,Org 37462 投与群における排卵数は溶媒投与群
と比較して有意に低かった(AT5597).ラットの Org 37462 の消失半減期は数時間と短く,また薬物曝
露量が低かったためと考えられる.排卵の抑制は LH の阻害のみで生じるため,LH 濃度のみが明らか
な作用を受けたと思われる.FSH 濃度が完全には抑制されない状態では E2 が産生されるが,排卵が生
じないために発情期の状態が維持される.この結果から,in vivo では Org 37462 が FSH よりも LH に対
して作用が強いことが示唆された.また,他の GnRH アンタゴニストにおいても同様の作用が報告され
ている4.
雌性ラットに 2.5 μg/kg/日又は 10 μg/kg/日の Org 37462 を 8 週間皮下投与した結果,交尾率には影響は
なかったが,受胎能がわずかに低かった(AT6101).受胎能のわずかな低下は毒性試験においても報告
されており,Org 37462 の 2.5 μg/kg/日を 8 週間投与すると,投与中止後 7 週で受胎能のわずかな低下が
認められたが,投与終了後 17 週には回復した(CTD4.2.3.5, AT5775).高用量(0.7 及び 5.0 mg/kg/日)
を投与した場合では,投与期間中に可逆的かつ完全な発情周期及び交尾の抑制が生じているが,これは
高投与量では LH 及び FSH の両方の遊離が完全に抑制されるためと推察される.また,生殖器に対する
Org 37462 の薬理学的作用は,雌動物において全用量(0.1~5.0 mg/kg/日)で生じ,黄体形成の抑制,卵
巣及び子宮重量の減少が報告されている(CTD 4.2.3.2,AT5635).
Org 37462 投与により,雄性のラット(AT6019)及びイヌ(AT4815)のテストステロン分泌が減少し
た.また Org 37462 の血漿中濃度と血漿中テストステロン濃度の抑制の間には良好な相関関係が認めら
れた.
ヒスタミン遊離は,これまでの GnRH アンタゴニストの主要な副作用であると考えられている.注射
部位におけるヒスタミン遊離は,GnRH アンタゴニストと肥満細胞の直接的な相互作用によって生じる
と考えられる.新しい GnRH アンタゴニストである Org 37462 は,これまでの GnRH アンタゴニストで
20
2.6.2 薬理試験の概要文
ある detirelix と比較すると,ヒスタミン遊離作用は,約 80 倍弱く(AT4917),降圧作用においては,約
20 倍作用が弱かった(AT4925).
Org 37462 は,マウス,ラット,イヌ又はサルへ 1 mg/kg 以下の投与量で皮下投与したとき,中枢神
経系,呼吸器系,心血管系及び腎機能に明らかな影響を及ぼさなかった.
以上,Org 37462 は,GnRH 受容体に選択的に結合し,内因性ゴナドトロピンの遊離を可逆的に抑制
することが認められた.また,GnRH アンタゴニストに認められる肥満細胞の脱顆粒によって引き起こ
されるヒスタミン遊離作用も弱いことが明かとなった.これらの結果より,Org 37462 は,早期の内因
性 LH サージを抑制することにより,調節卵巣刺激下における早発排卵を防止し,ヒスタミン遊離に伴
う局所的な膨疹,発赤反応が低減され,全身的な心血管系の降圧作用も弱い安全な薬剤となることが示
唆された.
2.6.2.7 図表
本文中に記載.
2.6.2.8 参考文献一覧
1
Lee C-H, VanAntwerp D, Hedley L, Nestor JJ, Vickery BH. Comparative studies on the hypotensive effect
of LHRH antagonists in anesthetized rats. Life Sci 1989; 45: 697-702.
2
Cheng Y-C, Prusoff WH. Relationship between the inhibition constant (Ki) and the concentration of
inhibitor which causes 50 per cent inhibition (I50) of an enzymatic reaction. Biochem Pharmacol 1973; 22:
3099-108.
3
Rabinovici J, Rothman P, Monroe SE, Nerenberg C, Jaffe RB. Endocrine effects and pharmacokinetic
characteristics of a potent new gonadotropin-releasing hormone antagonist (ganirelix) with minimal
histamine-releasing properties: studies in postmenopausal women. J Clin Endocrinol Metab 1992; 75:
1220-5.
4
Deckers GHJ, Graaf JH de, Kloosterboer HJ, Loozen HJJ. Properties of a potent LHRH antagonist (Org
30850) in female and male rats. J Steroid Biochem Mol Biol 1992; 42: 705-12.
21
2.6.3 薬理試験の概要表
目次
2.6.3 薬理試験の概要表 .......................................................................................................................1
2.6.3.1 薬理試験...............................................................................................................................1
2.6.3.2 効力を裏付ける試験.............................................................................................................3
2.6.3.3 副次的薬理試験....................................................................................................................3
2.6.3.4 安全性薬理試験(一般薬理試験) .......................................................................................4
2.6.3 薬理試験の概要表
2.6.3.1 薬理試験
一覧表(その 1)
被験物質:ガニレリクス
試験の種類
試験系
投与方法
実施施設
試験番号
記載箇所
項
効力を裏付ける試験
ラット及びヒト GnRH 受容体に対する
ラット脳下垂体前葉細胞膜標本,
Org 37462 及びその代謝物の in vitro における ヒト embryonic kidney cell line
(HEK293)
結合親和性
in vitro
各種受容体に対する結合親和性
各種受容体結合試験
in vitro
GnRH 誘発ゴナドトロピン遊離抑制作用
ラット脳下垂体前葉細胞
T/O99-4575
4.2.1.1
NL0052587
4.2.1.1
雌性ラット
単回皮下
AT4878
4.2.1.1
雌性ラット
単回皮下
AT6270
4.2.1.1
雌性ラット
15∼19 日間皮下
AT5597
4.2.1.1
週間皮下
AT6101
4.2.1.1
週間皮下
AT5596
4.2.1.1
AT4897
4.2.1.1
13 週間皮下
AT6019(参考)
4.2.1.2
単回皮下
AT4815(参考)
4.2.1.2
雌性ラット
雌性ラット
イヌの発情期に対する作用
4.2.1.1
雌性イヌ
単回皮下
副次的薬理試験
ラットのテストステロン濃度及び精巣に対す
雄性ラット
る作用
イヌのテストステロン濃度に対する作用
雄性イヌ
薬理試験の概要表
1
ラットの発情周期に対する作用
NV Organon
NL0065841
2.6.3
ラットにおける排卵抑制作用
in vitro
NV Organon
一覧表(その 2)
被験物質:ガニレリクス
試験の種類
試験系
投与方法
実施施設
試験番号
記載箇所
項
安全性薬理試験(一般薬理試験)
中枢神経系
一般症状に及ぼす影響
雄性マウス
単回皮下
AT4899
4.2.1.3
筋弛緩作用(懸垂法)
雄性マウス
単回皮下
AT4894
4.2.1.3
ヘキソバルビタール誘発睡眠
雄性マウス
単回皮下
AT4891
4.2.1.3
最大電撃痙攣
雄性マウス
単回皮下
AT4893
4.2.1.3
ペンチレンテトラゾール誘発痙攣
雄性マウス
単回皮下
AT4892
4.2.1.3
単回皮下
AT4855
4.2.1.3
単回皮下
AT4855
4.2.1.3
AT4884
4.2.1.3
単回皮下
AT4882
4.2.1.3
静脈内持続注入
AT4925
4.2.1.3
幽門結紮雄性ラット
単回皮下
AT4717
4.2.1.3
正常血圧雄性ラット
単回皮下
AT4901
4.2.1.3
in vitro
AT4917
4.2.1.3
呼吸器系
血圧・心拍数・心電図に対する作用
麻酔ラットの血圧・心拍数に対する作用
麻酔イヌ
麻酔雄性ラット
無麻酔サルの血圧・心拍数・心電図及び行
無麻酔雄性又は雌性サル
動に及ぼす影響
麻酔ラットの血圧・心拍数に対する作用(降
雄性麻酔ラット
圧作用)
単回皮下
単回静脈内
消化器系
胃液分泌に対する作用
腎臓
水及び電解質代謝に及ぼす影響
その他
ヒスタミン遊離作用
薬力学的薬物相互作用試験
該当なし
ラット腹膜細胞
薬理試験の概要表
2
心血管系
2.6.3
麻酔イヌの血液ガスパラメータ・呼吸数・
麻酔イヌ
1 回換気量・呼吸流量・分時換気量
2.6.3.2 効力を裏付ける試験
概要文に記載
2.6.3.3 副次的薬理試験
概要文に記載
2.6.3
薬理試験の概要表
3
2.6.3.4 安全性薬理試験(一般薬理試験)
安全性薬理試験(一般薬理試験)一覧表(その 1)
被験物質:ガニレリクス
試験項目(投与経路)
一般症状に及ぼす影響(皮下)
ヘキソバルビタール誘発睡眠(皮下)
ペンチレンテトラゾール誘発痙攣(皮下)
(性別,例数)
(mg/kg)
マウス/ Hsd: (ICR) BR
(♂:9, 一部 6)
マウス/ Hsd: (ICR) BR
(♂:10)
マウス/ Hsd: (ICR) BR
(♂:10)
マウス/ Hsd: (ICR) BR
(♂:9, 10)
マウス/ Hsd: (ICR) BR
呼吸器系
(♂:9, 10)
麻酔イヌの血液ガスパラメータ・呼吸数・1 イヌ/ビーグル
回換気量・呼吸流量・分時換気量(皮下) (4)
試験成績
GLP 適用
資科番号
0.0001, 0.001, 0.01, 0.1, 1.0
0.001∼0.1 mg/kg の用量で,わずかな用量
相関性を持って中枢興奮性の作用(他の個
体からの逃避)が認められた.自律神経系
の軽度な作用として,1.0 mg/kg で縮瞳,
0.1 mg/kg で体温上昇が認められた.
non GLP
AT4899
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
non GLP
AT4894
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
0.1 mg/kg で睡眠時間の延長が認められ
た.
non GLP
AT4891
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
non GLP
AT4893
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
non GLP
AT4892
0.001, 0.003, 0.01, 0.03, 0.1, 0.3,
1.0 mg/kg まで作用なし.
1.0
non GLP
AT4855
薬理試験の概要表
4
最大電撃痙攣(皮下)
投与量
2.6.3
中枢神経系
筋弛緩作用(懸垂法)(皮下)
動物種/系統・標本
安全性薬理試験(一般薬理試験)一覧表(その 2)
被験物質:ガニレリクス
試験項目(投与経路)
動物種/系統・標本
投与量
(性別,例数)
(mg/kg)
資科番号
0.001, 0.003, 0.01, 0.03, 0.1, 0.3,
1.0 mg/kg まで作用なし.
1.0
non GLP
AT4855
0.01 mg/kg の静脈内投与 60 分後にわずか
な血圧上昇が認められた.
non GLP
AT4884
サル/カニクイザル
無麻酔サルの血圧・心拍数・心電図及び行動
(4)(♂:6 又は♀:5 よ 0.001, 0.1, 1.0
に及ぼす影響(皮下)
り)
1.0 mg/kg まで作用なし.
non GLP
AT4882
®
麻酔ラットの血圧・心拍数に対する作用(降 ラット/ Crl: CD (SD) BR
0.3, 0.6, 1, 1.7, 3.0
圧作用)(静脈内)
(♂:4)
平均血圧を 50 mmHg 低下させる用量は,
0.9 mg/kg であった.降圧作用及び徐脈を
non GLP
引き起こした.1.7, 3.0 mg/kg の投与では,
死亡例も見られた.
AT4925
血圧・心拍数・心電図に対する作用(皮下)
心血管系
麻酔ラットの血圧・心拍数に対する作用
(皮下,静脈内)
消化器系 腎臓
5
胃液分泌に対する作用(皮下)
水及び電解質代謝に及ぼす影響(皮下)
その他
ヒスタミン遊離作用(in vitro)
イヌ/ビーグル
(4)
ラット/ Crl: CD® (SD) BR 皮下:0.001, 0.01, 0.1, 1.0
(♂:6)
静脈内:0.0001, 0.001, 0.01, 0.1
0.001,0.01∼0.1mg/kg で胃液分泌量及び総
ラット/ Crl: CD® (SD) BR 0.001, 0.003, 0.01, 0.03, 0.1, 0.3,
ミリ等量を約 50%増加させたが,用量相関
1.0
(♂:7∼10)
性はなかった.
ラット/ Crl: CD® (SD) BR
(♂:7)
ラット腹膜細胞
(4, 5)
non GLP
AT4717
non GLP
AT4901
0.01, 0.03, 0.1, 0.3, 1, 3, 10, 30, 濃度依存的にヒスタミン遊離量が増加し,
non GLP
100, 300 µg/mL
50%遊離濃度は,17.81 µg/mL であった.
AT4917
0.001, 0.01, 0.1, 1.0
1.0 mg/kg まで作用なし.
薬理試験の概要表
GLP 適用
2.6.3
試験成績