抄録 - 広島産業保健総合支援センター

H13年度(2) 二次健康診断等給付に該当する労働者の実態調査
主任研究者
広島産業保健推進センター相談員 鎗田圭一郎
共同研究者
広島産業保健推進センター 所長 坪田 信孝
広島産業保健推進センター相談貞 奥田 久徳
広島産業保健推進センター相談員 中川 一虞
広島産業保健推進センター相談員 日野原義博
1 はじめに
広島県における定期健康診断での有所見率は他県
図1のようであり、4項目すべてに異常が認めら
と比較しても高く、肥満、血圧、脂質、糖質の4
れる場合には自覚的健康度も低く「健康」と「ま
項目の異常、いわゆる「死の四重奏」を呈するも
あ使康」を併せるとGrouplで36.4%、Group2
のも少なくないと思われる。しかしながら、全国
で92.9%と前者では有意に低かった(有意水準1
的に見ても定期健康診断での有所見率は増加傾向
%)。受診率や喫煙率については両Group間に有
にあり、これらの異常と過剰労働から脳・心臓疾
意な差は認められなかった。→厘止_
患を発症、さらには死亡する事例も認められてい
健康診断の結果については何らかの異常があると
る。このような状況の中で、二次健康診断等給付
承知しているものがほとんどで、異常のある項目
制度が創設されたが、当制度の有効な活用は一次
すべてを知っているものの割合も両Groupとも8
予防の重要性を労働者にとってさらに身近なもの
割を超えていた。この異常については保健婦より
にすると考えられる。従って、現時点で上記のよ
知らされ、指導を受ける場合が多く、両Gmupと
うな異常を示す労働者にどのような事後措置が実
も7剖近い数値であった。→図2、図3、図4
施されているか、この制度の活用状況はどうかを
指導後の生活上の注意については、図5のように
「指導に沿った注意をしている」ものの割合が、
調査し、今後の当制度の実施効果検証の基礎デー
Grouplで約3割とGroup2に比して有意に高く
タとすべく、本調査を実施するに至った。
(有意水準5%)、逆に「何もしていない」ものの
2 調査方法
県内の大規模事業場で定期健康診断を受診した労
割合は、Group2の方が有意に高かった(有意水
働者の中からいわゆる「死の四重奏」に当たる異
準1%)。→旦旦
常が認められた労働者(以下Groupl)、および
二次健康診断等給付制度に対するニーズについて
血圧、脂質、糖質、・BMIの4項目中1項目以上に
は「希望しない」と答えたものの割合がGmup
異常が認められた労働者(以下Group2)に対し
2で21,4%とGrouplに比して有意に高かった
アンケート調査を行った。
有意水準1%)ものの、「希望する」あるいは「項
3 結果
目による」と答えたものの割合が両Groupとも7
対象は1名を除いてすべて男性であり、Groupl
割を超えており、この制度に対するニーズの高さ
が88名、Group2が42名であった。Grouplで
が窺い知れた。→図6
は40歳代が45.5%と最も多く、Group2では50
歳代が64.3%と最も多かった。平均作業時間は、
どちらのGroupも.●8∼9時間が最も多かったが、
10時間を超える労働者がGrouplで約4割、
Group2で約3割認められた。自覚的な健康度は、
ー 43 −
4 考察
以上の結果からBMI、血圧、血糖、脂質の4項目
すべてに異常の認められるものは、自覚的健康度
も低く、そのために自分なりに注意もしており、
二次健康診断に対するニーズも高いということが
明かになった。また今結果の事後指導が保健師を
中心になされていることは、今回対象となった大
規模事業場の特色を反映したものと‘なったが、お
そらくこれは保健師を雇用している企業では共通
するものと思われる。ちなみに図4と図5の結果
から産業医あるいは保健師から指導を受けた場合
で、その後「指導に沿った注意をしている」と「
自分なりに注意をしている」とを併せた割合は、
Grouplで保健師からが93%、産業医からが100
%であり、Group2では保健師からが79%、産業
医からが100%であった。このこと臥産業医に
よる指導がより有効的に働く可能性を示唆してい
るように思われる。したがって、産業医による指
導と適当なタイミングで二次健康診断を実施する
ことが、その後の行動変容に有効である可能性が
推測された。
5 まとめ
二次健康診断に対するニーズは予想以上に高
今後はこの制度の周知徹底を図る必要がある。
また、今回は各々の項目についてガイドライン
の基準に従い異常者を抽出したが、四重奏でなく
ともそれ以上に動脈硬化が進行していると推測さ
る例も少なくないと思われるため、今後は産業医
の適格な判断により適当な時期に二次健康診断を
実施することがポイントとなると思われた。
ilH−