RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、雨のレースで7位入賞 RACE 2014 AUTOBACS SUPER GT Round5 『FUJI GT 300km RACE』 DATE 予選:2014年8月9⽇ CIRCUIT 富士スピードウェイ(静岡県) WEATHER 予選:曇/ドライ RESULT 予選:4位 決勝:2014年8月10⽇ 4.563km×66LAPS 決勝:⾬/ウェット 決勝:7位 お盆休みを迎える頃、静岡・富士スピードウェイにおいてSUPER GTシリーズ第5戦「FUJI GT 300km RACE」が開催された。 折しも、⽇本列島には台風11号が接近中で、レースウィーク中は天候不順となってしまったが、そんな中でも予選、決勝を通じて GTカーによるハードなバトルが展開されることになった。また、No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTは前回の菅生からの上昇 気流に乗って表彰台を狙ったが、タイミングを合わせ込むのがやや難しい状況でのレースとなり、今季チームセカンドベストの7 位入賞でレースを終えた。 シーズン後半戦へと突入した今年のSUPER GT。ニューマシンNSX CONCEPT-GTが投入されたHonda勢は、序盤から厳しい レースを強いられてきた。というのも、⾞両レイアウトがライバルと異なるため。今季よりGT500ではDTMレギュレーションを ベースにした⾞両規則を設けており、原則FR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトのみの参戦を認めている。結果、 ミッドシップレイアウトのNSX CONCEPT-GTはエンジンの熱害に起因するトラブルが懸念材料となり、苦戦を強いられてきた。 しかしながら、前回のSUGO戦を前にGTAによる性能調整が認められ、フロントグリル、リヤバンパーの開口部拡大やリアウィ ンドウへの開口部追加などが⾏われることに。結果、エンジンの冷却作業がよりスムーズになり、ようやく⾞両そのものが持つ本 来のパフォーマンスを披露しはじめた。その中でNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTもSUGOで予選2位を獲得するなど、実⼒ の⽚鱗を⾒せているだけに、今回の富士戦ではさらにその上を目指したいところ。しかしながら、その強い思いに水を差したのが 台風11号による不安定な天候だった。 ◎予選⽇フリー⾛⾏: 搬入⽇にあたる⾦曜⽇は気温もさほど上がらず、湿度も低い状態で⾬の⼼配などまったくなかったが、迎えた土曜⽇の朝は薄曇 り。⾬の到来を意識しながらの作業が続いた。結局、公式練習中にレインタイヤの装着はなかった。一方で、No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTでは細かな調整などに時間を要し、9番⼿で⾛⾏を終了。総体的にはなにかと慌ただしいセッションを過ごし たが、予選に向けての懸念材料はなく、あとは天気の推移を考慮しての準備を進めることになった。 ◎予選: 下り坂の天候で迎えた公式予選。午後2時、GT300クラスのQ1開始前には ウェット宣言が出ており、いつ⾬が降ってきてもおかしくない状態となる。午後2 時15分にGT500のQ1がスタート。15分間のセッションだが、コースインのタイ ミングを⾒計らう⾞両が大半で、ちょうど半分の時間が経過する前にピットを離 れていく。だが、そこに思わぬハプニングが。⾛⾏を終えてピットへと戻ろうと していたGT300の⾞両がピットレーン入口付近で⽴ち往生となり、安全確保のた めの赤旗が提示される。タイヤに熱を入れ、アタックの準備をしていたNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTの武藤英紀にとっては腰を折られる状態となってし まう。 気を取り直し、再びアタックへと挑んだ武藤。暫定4番⼿の好タイムをマークし、さらにワンアタック挑んだがベストタイム更 新はならず。結果、1分30秒453のタイムは8番⼿に。とはいえ、Q1突破を無事に果たし、このあと小暮卓史によるQ2にすべてを 託すことになった。 続くGT300のQ2に入ると、ついにセッション途中からポツポツと⾬が降り始める。しかし小康状態で路⾯がしっかりと濡れる ほどではなく、タイヤもスリックタイヤのまま。果たしてGT500のセッションになるとどう変化するのか。読めぬ状況の中、まず は全⾞がスリックを装着し、ピットを離れていった。すると、その様⼦を⾒届けたかのように⾬が強くなり、瞬く間に路⾯を濡ら してしまう。即レインタイヤへのスイッチを決断し、ピットへクルマを戻すチームがある一方、しばし様⼦を⾒たものの、やはり レインが有利と考え直してピットに続くチームもあれば、スリックで最後まで⾛ることを選択するチームもあるなど、それぞれの 思惑が入り乱れる。 No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTは早めのピットインでレインタイヤへと交換。すると小暮は1分38秒273のタイムをセッ ション残り時間1分強でマークし、暫定トップに躍り出る。これでチェッカーが振られるかと思われたのだが、その後に続いた⾞ 両も同じようにベストタイム更新を果たしたため、No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTは惜しくも4番⼿に。とはいえ、セカン ドローからのスタートを⼿に入れ、決勝での逆転を大きく期待させるものとなった。 Q1のアタックを8位で終えた武藤は、Q2への突破が果たせたことに対し、「ギリギリの状態で小暮選⼿にバトンを渡すことが できてホント良かったです。アタック中、後続⾞とのタイム差は具体的にはわかりませんでしたが、思えばひやひやもののアタッ クでした」とやや苦笑い。というのも、トラブルとは言えないながら、クルマそのものに対し変更したセットアップの部分が自分 としては今ひとつ合っておらず、結構苦しんでいたという。Q1後には、再びセットアップが加えられ、小暮につなぐことになった というが、そこでさらに小暮がタイムアップを果たすことになった。 その小暮は、朝のセッションから次第にクルマの状況が良く なり、セッティングをはじめ、クルマのバランスも良くなる中 でアタックができたと振り返った。その一方で、「セッティン グの合わせ込みはもちろん、クルマのバランスもうまく取れる ようになっていたので、予選はドライコンディションであれば まずまずいいポジションを狙っていけるのではないかと思って いました。ところがすぐ⾬になりましたね」と、やや表情を曇 らせた。「タイヤ交換のタイミングなどは自分で決めました。 クルマの状態も悪くなかったんですが、思いの外、⾬が止むタ イミングが早く、結果としても路⾯が乾いてしまったんです。 アタックラップのタイミングも少しズレてしまいました。まさ か⾬が止むだなんて…。ちょっと振り回されたような感じ(苦 笑)。残念ですね。アタックをやり切った、という気持ちにな れないです。GTではポールポジションが獲れるチャンスという のは滅多にないものなので、今回はそのチャンスがあったんで すが…」と悔しい気持ちを口にした。 ◎決勝⽇フリー⾛⾏: 確実に台風11号が北上する中、サーキット周辺の前夜はまさに“嵐の前の静けさ”。暑さを感じることもなく穏やかな夜だったが、 迎えた⽇曜⽇は朝から降ったり止んだりの断続的な⾬に⾒舞われた。 しかし降るときによって⾬量の差が大きく、先読みなどできない状態。午前9時からを予定していたフリー⾛⾏中は、スタート 時こそ普通の⾬であったが、コースインからほどなくして急激に⾬脚が強くなり、すぐさまセッションは赤旗中断に。その7分後 には再開し、最後まで⾛⾏が続くも、各⾞とも異なるレインタイヤの確認作業が主となったようだ。フリー⾛⾏後、観客が乗り込 んだ観光バスがGTカーと混⾛するおなじみのサーキットサファリも実施されたが、天候悪化ですぐ中止に。その後は午後3時から の決勝に向け、天候の⾏方をただ⾒守るだけとなる。 ⾬は正午に向けて一旦上がり、傘も不要なまで回復を⾒せたが、天気予報では午後に向けて⾬がより酷くなると予想。暴風⾬の ⼼配もあるという。事実、決勝に向けて⾞両がダミーグリッドに着く頃には横殴りの⾬になるなど、⾬に翻弄されるというよりは むしろ状況に身を委ねるしかない状況となった。 ◎決勝: 午後3時、66周のレースはセーフティカー先導によるスタートを迎える。そして2周先導のあと、3周目から事実上レースがス タート。水煙⽴ち上る中、No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTはスタートドライバーを務めた小暮が果敢な⾛りを⾒せた。ま るで水を得た魚のごとく攻めた結果、ときにはポジションを下げることになったが、粘り強く、巧みなステアリングさばきでポジ ションを回復。十分な視界の確保が難しい中でも、感性を研ぎ澄ましてクルマをコントロールしていく。 ところが、天候は悪化の方向へと進むことになり、9周目からセーフティカーが再びコースイン、レースを先導する。が、つい に17周目には赤旗が提示され、レースが一時中断へと追い込まれた。ドライバーは下⾞し、ピットへと戻ることが許されたが、⾞ 両はメインストレートに留まったまま。幸い、⾬量が減り、⾛⾏が可能な状態になったことから、約30分後の午後4時15分にレー スが再開。セーフティカーが再度⾞両を先導し、リスタートが切られた。このタイミングで3番⼿争いのチャンスを得た小暮は、 同じホンダ勢の17号⾞と激しいバトルを展開。31周目のヘアピンで17号⾞を逆転し、3番⼿へと浮上する。 レースは折り返しを過ぎると、ルーティンワークのピットインが 始まる。だがチームでは、今回遅いタイミングでのピットインを戦 略のひとつとして⽤意しており、まずはライバルの動向を⾒守った。 すると同様にピットインを先延ばしにしていた12号⾞GT-Rとの一騎 打ちとなり、2台はGT300の周回遅れを絡めてのバトルを展開するこ とになる。譲れない両者は次第にヒートアップ。ついに38周目の最 終コーナー⽴ち上がりで12号⾞に追突されることとなり、小暮はラ インを大きくアウト側に外してしまう。幸い、挙動を乱しただけで クルマへのダメージは免れたが、⾒守るチームやファンにとっては ヒヤリとした瞬間だった。 No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTのピットインは40周終了時。小暮からステアリングを託された武藤は、着実なステアリ ングさばきが求められる中、落ち着いて周回を重ねていく。そしてタイヤに熱が入ると、ライバル勢よりも速いペースで⾛り、 徐々にポジションアップ。チェッカーまで残り10周を迎える頃には5番⼿まで上がり、まさに上昇気流に乗っていた。だが実のと ころ、ステアリングを握る武藤は少なくなった⾬量に悪戦苦闘。タイヤは水をさらに欲しており、さらには後続からペースアップ した2台が迫り来る。結果、耐えに耐えてバトルを続けていたが、ついに2台の先⾏を許してしまった。 ちょうどその頃、ポツポツと降っていた⾬が急激に強まり、まさに土砂降りの状態へと激変。レースは59周目に再びSCが導入 された。懸命に築き上げたライバル達とのタイム差を失うことへ絶望感を持つ者がいる一方、逆に武藤は最後の最後に訪れた逆襲 のチャンスを歓迎。SCランを重ねながら、その時、つまりリスタートを待ちわびていた。だが無情にもその後レースはリスタート されず。SC先導のままレースはチェッカードフラッグが振られ、タフな戦いに幕を下ろすことになった。 僅かのタイミングで今季チームベストリザルトを逃すことになったNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT。7位入賞を果たした ものの、戦いを終えたドライバーはじめチームスタッフの顔には悔しさがにじみ出ていた。しかしその一方で、予選での速さ、決 勝での粘り強さが定着しつつある今、シーズン後半戦での巻き返しの可能性は十分にある。次戦、伝統の鈴⿅1000kmでの飛躍に 期待がかかる。 ◎高橋国光総監督 今⽇の展開から⾏けば、優勝できるのではないかと期待していました。こういう不安定な天候、展開になると、色んなタイミング によってレースが変わっていくので、その点でうちのチームには運が向かなかったのかもしれませんね。ただでさえ厳しいレース 内容ですから、ある意味仕方がない部分もあります。ただその中で、進化したクルマをチームスタッフがガンバって仕上げてくれ ているし、またドライバーふたりもそれぞれいいところをしっかり⾒せてくれました。一生懸命取り組んだ結果なので、何も言う ことはないです。次につながる戦いを⾒せてもらいました。ファンの皆さんには次の鈴⿅を楽しみにしていただければ、と思いま す。 ◎小暮卓史選手 クルマの状態もよく、赤旗再開後には17号⾞も抜くことができたのですが、ただその後のタイヤはタレがひどくなってきて……。 結果的にペースが上がらなくなったんです。ただ、ピットインも近づいていたし、なんとかコントロールしていたのですが、その ときにちょうど12号⾞に当てられてしまいました。バトル中なので確かに引けない状態ではあったのですが、あれはちょっと…… という思いがありますね。今回、ピットインのタイミングをライバル達よりも先に延ばしたんですが、ちょっとのタイミングのズ レで色んなことが起こるので、結果に対しては一概に言えないです。ただ、クルマのバランスはもちろん、ポテンシャルは悪くな かった。今回は天候がこんな状態だったので、タイヤチョイスで結果が左右されてしまいましたが、特に最後のSCランのままで終 わってしまったのが悔しいですね。同じホンダ勢がいい活躍を⾒せはじめているので、僕らもNSX CONCEPT-GTの活躍に早くひ と役たちたいです。次は僕らがやらないと! 鈴⿅で必ずいい仕事をしたいと思います。 ◎武藤英紀選手 僕のスティントでは、小暮さんと異なる硬めのレインタイヤを選択し、コースに向いました。ラップタイム、ペースは良かったで すね。ただコースが乾いてきて、タイヤ的には難しい状況になってしまいました。後半になるとコース上の水を探しての周回にな りましたが、残念ながらそういう水が溜まっているところがコース上にはなかったですね。ガンバって2台(36、46号⾞)抜いた んですが、結果的には天候回復時にまたその2台に抜かれることになってしまいました。コンディションを考えると難しい判断だ とは思いますが、SCランからリスタートして欲しかったですね。そうすればもう一回勝負ができたのに。⾬の中でのペースが良 かっただけに残念でした。 ◎手塚⻑孝オペレーティングテクニカルディレクター 今週末の流れは悪くなかったので、もうちょっと上位の結果を狙っていけたと思います。特に予選はうまくまとめてくれたんです が、その一方で運が少し足りなかった。決勝でもその流れというか、タイミングが合わず、なにかでちょっと足りないことが多 かったですね。ただクルマを作る点での進化はできています。鈴⿅に向けての明るい材料、課題は⾒えてきましたね。短期間で熱 害対策をきっちりしてくれたホンダ、研究所の関係者のみなさんには感謝しています。速いクルマで戦えるよう、しっかりと⽤意 してくれましたから。不安定な天候の中でもトラブルを出さずに戦うことができました。次はチームがしっかり結果を出して恩返 ししなきゃいけないところですね。
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