上場企業と非上場企業の資本構成 -法人企業統計を活用した

PRI Discussion Paper Series (No.14A-07)
上場企業と非上場企業の資本構成
-法人企業統計を活用した分析-
財務総合政策研究所研究官
折原正訓
財務総合政策研究所研究員
磯部昌吾
2014 年 6 月
本論文の内容は全て執筆者の個人的見解であり、
財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を
示すものではありません。
財務省財務総合政策研究所研究部
〒100-8940 千代田区霞が関 3-1-1
TEL 03-3581-4111 (内線 5489)
上場企業と非上場企業の資本構成
-法人企業統計を活用した分析- 1
財務省財務総合政策研究所
研究官 折原正訓
研究員 磯部昌吾
概要
1983 年度から 2012 年度の法人企業統計の個票データを用いて、上場企業と非上場企業の資
本構成の比較を行った。レバレッジ関数を推定した結果、上場企業のレバレッジは非上場
企業に比べて 0.161 低いことが分かった。また、上場企業の方が非上場企業よりも株式での
資金調達コストが低いという仮説と整合的に、上場企業は自己資本に依存した資金調達を
行っていることが示された。すなわち、上場企業の方が非上場企業よりも株式発行を行っ
ていることが示唆されている。他方で、非上場企業は短期負債を用いて資金調達をするこ
とが多く、特に企業間信用や内部資本市場を活用していることが分かった。
キーワード:上場・非上場、資本構成
JEL Classifications:G30、G32
1
本論文作成にあたって、財総研研究会出席者の方々から有益なコメントを頂戴した。ここに記して感謝
申し上げる。本論文の内容は筆者の個人的見解に基づくものであり、財務省あるいは財務総合政策研究所
の公式見解を示すものではない。本論文における誤りはすべて筆者に帰するものである。
1
1. はじめに
上場企業の財務情報に関するデータベースの整備は、企業の意思決定を対象とした実証
研究の発展を支えてきた。たとえば、日本においては日経 NEEDS Financial QUEST(日本経
済新聞デジタルメディア提供)や企業財務データバンク(日本政策投資銀行提供)
、北米に
おいては Compustat(スタンダード&プアーズ提供)などが学術研究で広く用いられている。
これに対して、非上場企業の財務情報に関するデータベースはほとんど存在しない。この
データ制約の結果、非上場企業の意思決定に関する研究の蓄積は十分に行われてこなかっ
た。
上場・非上場に関わらず企業が同様の方法で意思決定を行うのであれば、研究対象を上
場企業に限定しても差し支えない。しかし、上場企業と非上場企業の意思決定が大きく異
なれば、上場企業を対象として行われてきたこれまでの研究成果の一般化はできない。し
たがって、上場企業と非上場企業の比較は、企業の意思決定に関する先行研究から得られ
た含意を適切に解釈するために必要である。また、非上場企業の中に大規模な企業が多数
存在する場合、非上場企業を分析から除外してしまうと、マクロ経済に大きな影響を及ぼ
す主体のインセンティブを見落とす結果となってしまう。このため、マクロ政策を考える
上でも非上場企業の意思決定を明らかにすることは重要である。本論文の目的は、上場企
業と非上場企業の財務情報を長期に渡り蓄積してきた法人企業統計の個票データを用いて、
上場企業と非上場企業の違いを資本構成に注目して明らかにすることである。
Modigliani and Miller(1958)以降、資本構成あるいはレバレッジ(負債÷資産)はコーポ
レートファイナンスの中核に位置付けられてきた。上場企業のレバレッジの決定要因に関
する研究は現在でも活発に行われているが、データ制約を理由として、上場それ自体がレ
バレッジに与える効果はほとんど分析されてこなかった。上場企業の株式は取引所での売
買が可能であることから、その流動性は非上場企業の株式よりも高いと考えられる。すな
わち、上場企業はより低コストで株式による資金調達を行うことができる。企業が株式を
発行すれば純資産が増加し、結果としてレバレッジは低下する。したがって、上場企業の
レバレッジは非上場企業のレバレッジよりも低いと考えられる。
この仮説が支持される場合、上場企業と非上場企業の資金調達の具体的な違いは何であ
ろうか。株式発行コストの上場・非上場間での違いを踏まえると、上場企業のレバレッジ
低下の背景には株式発行を通じた純資産の増加があると予想できる。本論文では、広義の
資本金比率(
(資本金+資本剰余金)÷資産)を上場・非上場間で比較し、上場企業におけ
る広義の資本金比率が高いという仮説を実証する。また、負債調達の具体的方法に関して
も上場・非上場を比較する。これらの分析を通じて、上場・非上場間での自己資本および
他人資本による資金調達の両側面における違いを明らかにする。
本論文では、1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いる。本研究
を行う上で問題となるのは、法人企業統計は上場・非上場の区分を調査対象としていない
点である。本論文ではまず、日経 NEEDS Financial QUEST と法人企業統計を接続すること
2
で、法人企業統計の調査対象となっている企業の上場・非上場を判別する(磯部, 2014)。
データ接続後、一定規模以上(売上高 10 億円以上、かつ資産 10 億円以上、かつ資本金 6
億円以上)に達していない企業を分析から除外した。上場企業の多くは規模の大きい企業
であるのに対して、非上場企業の大多数は規模の小さい企業であることから、規模に関す
る両者の異質性を緩和する必要があるためである。
データ整理の結果、全期間における合計観測値数は 148,471 となった。合計観測値の半数
以上にあたる 77,152 観測値が非上場企業である。また、企業のマクロ経済に対する影響を
測る指標と解釈できる売上高で見ると、非上場企業によるシェアは 25%を超える。非上場
企業の売上高シェアはデータ期間中ほぼ一貫して高まっており、2012 年度における非上場
企業の売上高シェアは 40%近くに達している。以上の記述統計から、上場企業のみを含む
データでは、経済に大きな影響を及ぼす企業を網羅できないと言える。
標準的なレバレッジ関数(たとえば Rajan and Zingales, 1995)を推定した結果、上場企業
のレバレッジは非上場企業のレバレッジに比べて 0.161 低いことが分かった。この違いは統
計的に有意である。また、経済的視点からもこの違いは大きいと評価できる。本論文のレ
バレッジ関数の推定結果によると、ROA(総資産純利益率=純利益÷資産)が 0.1 上昇する
とレバレッジが 0.136 下がる。すなわち、上場は ROA の 0.12 上昇と同様の効果をレバレッ
ジにもたらす。ROA の全観測値における平均値は 0.01、上位 5%に位置する企業の ROA は
0.08 である。すなわち、上場は、ROA が非常に高い企業と ROA が平均的な企業とのレバレ
ッジの差である 0.07 の 2 倍以上のレバレッジ低下効果を持つことになる。したがって、上
場・非上場はレバレッジを大きく変化させる要因であると評価できる。
上場・非上場間でのレバレッジの違いの背景には、具体的にどのような要因が存在する
のであろうか。自己資本に注目した分析を行った結果、上場企業の方が非上場企業に比べ
て広義の資本金比率が 0.07 高いことが示された。この結果は、上場企業の株式発行コスト
の方が低いことから自己資本での調達をしやすいという議論と整合的である。他人資本に
関しては、非上場企業の方が短期負債に依存した資金調達を行っていることが示された。
短期負債調達の方法をさらに細かく分析すると、非上場企業の方が買掛金および企業グル
ープ内での借入を反映していると考えられる短期その他(金融機関以外)借入金に依拠し
た資金調達を行っていることが分かった。以上を要約すると、上場・非上場のレバレッジ
の違いは、上場企業が非上場企業よりも株式による資金調達を活発に行っていることに加
えて、非上場企業の方が企業間信用および内部資本市場の活用を中心とした短期負債によ
る資金調達を行っていることによってもたらされていると言える。
分析の頑健性を確かめるために、バランスド・パネルを構成できる企業で分析を行った。
すなわち、30 年間の全期間にわたってデータに含まれており、かつ上場・非上場の変化が
ない企業に対象を絞った。データをアンバランスド・パネルとして利用する場合、分析結
果がデータに含まれている企業の入れ替わりに影響を受ける可能性がある。これに対して、
バランスド・パネルを用いれば同一の集団における上場・非上場の比較を行うことができ
3
る。データをバランスド・パネル化した結果、上場企業 734 社、非上場企業 376 社、合計
1,110 社がデータに残った。これらの企業のみを用いて分析を行っても、全企業のデータを
用いた場合と質的に同様の結果が得られた。また、全企業のデータあるいはバランスド・
パネル化したデータを用いて年度ごとに回帰を行った場合でも、分析結果は全期間のデー
タを用いた場合と質的に同様であった。したがって、本論文の結果はデータ構成の変化や
年度ごとのマクロ要因によってもたらされたのではなく、上場・非上場の本質的差異によ
るものであると言える。
本研究の貢献は次の 2 つに要約できる。第 1 に、上場企業と非上場企業を比較するため
のデータベース構築を行ったことである。上場・非上場の違いが企業の意思決定に及ぼす
効果については、資本構成以外にも明らかにすべき点が多い。法人企業統計から構築され
た本データは、上場・非上場の比較に関する今後の研究の土台として有益である。第 2 の
貢献は、上場企業と非上場企業の資本構成について詳細に分析したことである。とりわけ、
非上場企業の方が企業間信用や内部資本市場に依存している点は新たな発見である。すな
わち、企業間信用と銀行借入との代替関係については研究が進んでいるが(たとえば Love,
Preve, and Sartia-Allende, 2007)
、企業間信用と株式による資金調達との関係を明らかにした
論文は存在しない。また、内部資本市場に関する広範な研究の蓄積においても(最近のサ
ーベイとして Maksimovic and Phillips, 2013)
、上場・非上場と関連付けられての議論は行わ
れてこなかった。本研究は、コーポレートファイナンスの複数の重要トピックにおける研
究成果からの含意を上場・非上場に結び付けていると言える。
海外においても日本と同様に、非上場企業に関するデータの整備は十分ではない。しか
し近年、非上場企業の情報を含むデータを用いて、上場・非上場の比較が始められている。
Brav(2009)はイギリスのデータ用いて、上場企業と非上場企業の資本構成の比較を行って
いる。Brav は、上場企業のレバレッジは非上場企業に比べて 0.1 低いことを示した。この違
いは本研究のメインの定式化から得られた結果における差(-0.161)よりも小さいが、バラ
ンスド・パネル化した場合の結果(-0.109)とほぼ同じである。この結果は、資本構成の決
定要因は各国の特徴には依存せず、個別企業の特徴に依存して決まるという Rajan and
Zingales(1995)の含意と整合的である。資本構成を対象とする Brav 以外にも、上場・非上
場の配当政策(Michaely and Roberts, 2012)、あるいは設備投資(Asker, Farre-Mensa, and
Ljungqvist, 2014)についても研究が行われている。いずれの論文も、上場企業と非上場企業
の意思決定が異なることを示しており、今後の更なる研究の必要性を示唆する。
日本企業に関して、非上場企業の様々な側面に焦点を当てた一連の研究が存在する。具
体的には、福田・粕谷・赤司(2004)はデフォルト、福田・粕谷・中島(2005)は設備投
資、福田・粕谷・赤司(2006)は企業間信用、福田・粕谷・中島(2006)はコーポレート
ガバナンス、福田・粕谷・中島(2007)は追い貸しを扱っている。これらの研究は、非上
場企業が大多数を占めると考えられる中堅・中小企業の行動の分析を通じたマクロ政策へ
の含意を探ろうとするものである。これらの論文の成果は、上場企業と非上場企業との比
4
較を通じて企業行動を明らかにしようとする本論文と補完的位置づけにあると考えられる。
本論文は、以下のように構成されている。第 2 節では仮説を提示する。第 3 節と第 4 節
では、データと分析手法をそれぞれ説明する。第 5 節で分析結果を提示し、第 6 節で結論
を述べる。
2. 仮説
企業の意思決定を扱う論文において、レバレッジは重要な研究対象と捉えられてきた(サ
ーベイ論文として Frank and Goyal, 2009)。レバレッジは、負債を資産で割ったものと定義さ
れる。これは企業の外部資金依存度の高さを表し、特にコーポレートファイナンスの中核
を占める概念である。レバレッジの決定要因に関する研究蓄積の結果、いくつかの要因に
関してはコンセンサスに達していると評価できる。
Rajan and Zingales(1995)は、資本構成の代表的な決定要因として次の 4 つを挙げる。第
1 の要因は、売上高や資産で測られた企業規模である。規模が大きい企業の信用度は高いこ
とから、そうした企業は借入を行いやすい。結果として、規模の大きい企業のレバレッジ
は高くなる。第 2 の要因は、企業が保有する有形固定資産の資産に対する比率である。有
形固定資産の担保価値は一般に高く、それらを担保に借入を行いやすくなる。このため、
有形固定資産比率の高い企業のレバレッジは高くなる。第 3 の要因は、企業利益である。
企業利益が高いと利益剰余金が増え、外部から資金を調達する必要性が低くなる。このた
め、利益の高い企業のレバレッジは低くなる。第 4 の要因は、時価簿価比率((株価の時価
総額+負債の簿価)÷資産の簿価)である。時価簿価比率が高い場合、その企業は成長機
会が高い企業であると市場から評価されている。成長機会が高い企業が現在借入を行って
しまうと、将来資金が必要なときに借入を行うことができない可能性がある(Myers, 1977)。
このため、成長機会が高い企業のレバレッジは低くなる。2
資本構成に関する研究の進展にもかかわらず、データの制約から、上場・非上場が資本
構成の決定要因となるかについてはほとんど分析されてこなかった。理論的には、上場・
非上場は資本構成に影響を与えると考えられる。第 1 に、上場企業は取引所で株式の売買
を行える。その株式の流動性から、上場企業による株式での資金調達は非上場企業に比べ
ると容易であると考えられる。第 2 に、上場企業は財務諸表を開示する必要があるのに対
して、非上場企業の場合には原則として財務諸表の開示義務はない。この結果、上場企業
における企業と投資家の情報の非対称性は、非上場企業における場合に比べて緩和されて
いると考えられる。したがって、株式調達によるコストは上場企業の場合の方が低い(Brav,
2009)
。以上の議論より、本論文では上場企業の方が非上場企業よりもレバレッジが低いと
いう仮説をテストする。
上場企業のレバレッジが相対的に低いことが明らかになった場合、その背後にはどうい
2
各要因がレバレッジに影響を与える根拠に関しては様々な理論が存在し、一意に定まるものではない。
ここでは、比較的広く受け入れられていると考えられる理論を提示した。
5
った要因が存在するのであろうか。自己資本に関する可能性として、上場企業が株式を非
上場企業よりも多く発行していることが考えられる。株式の発行は純資産の額を大きくし、
レバレッジの低下をもたらすためである。あるいは、上場企業の方が非上場企業よりも利
益剰余金が多いため、レバレッジが低くなっていることも考えられる。これらの可能性を
検証するため、広義の資本金比率(
(資本金+資本剰余金)÷資産)3、および利益剰余金比
率(利益剰余金÷資産)を上場・非上場間で比較する。他人資本の構成に関しても上場・
非上場間で違いがあるかを分析するため、短期負債や長期負債など複数の視点から上場・
非上場の比較を行う。
3. データ
本論文では、財務省の法人企業統計(年次別調査)の個票データを用いる。法人企業統
計は、国内の営利法人等を対象として財務諸表上の代表的項目を調査している。法人企業
統計は標本調査を原則とするが、一定規模以上の企業は全数調査の対象としている。企業
規模は資本金を基準に分けられており、資本金 6 億円以上の企業は毎年全数調査の対象と
なっている。 4
本論文では、1983 年度から 2012 年度の 30 年間にわたる年次データを利用する。最初の
数年間を除けば、収録企業数は安定的に 2 万を超える。法人企業統計は各企業の上場・非
上場を区別していないため、日経 NEEDS Financial QUEST(以下 FQ データ)を補助的に用
いる。FQ データは上場企業を網羅しているデータベースであることから、FQ データを用
いることで法人企業統計に含まれる企業の上場情報を知ることができる。法人企業統計と
FQ データの間には共通の ID が存在しないことから、本研究では企業名や財務データに基
づき両データのマッチングを行っている。マッチング手順の詳細については、補論に記載
してある。
本研究では、一定規模(売上高 10 億円以上かつ資産 10 億円以上)に達しない企業を分
析から除外した。後に見るとおり上場企業の方が非上場企業よりも平均的に規模が大きく、
レバレッジの決定要因の 1 つとして企業規模が挙げられることから、企業規模に関する上
場・非上場間の異質性を緩和したうえで両者を比較する必要があるためである。また、サ
ンプリングに基づく潜在的なバイアスを取り除くため、本研究では毎年度全数調査の対象
となっている資本金が 6 億円以上の企業に対象を絞る。さらに、法人企業統計上、金融業
あるいは保険業と分類されている企業はその資本構成が大きく異なると考えられることか
ら、分析から除外した。本研究は長期に渡るデータを使用していることから、売上高など
の各項目を 2010 年基準の物価水準(CPI)で実質化した。
3
現実には、利益剰余金を広義の資本金に振り替えることなどが可能である。したがって、広義の資本金
と株式発行とを完全に同列に論じることはできない。法人企業統計は株式発行による資金調達額を調査し
ていないことから、本論文では代理変数として広義の資本金比率を用いる。
4
厳密には、1983 年度から 1995 年度まで、および 2009 年度以降の全数抽出の対象は資本金 5 億円以上の
企業である。本論文では、全期間にわたって全数抽出の対象となっている資本金 6 億円以上の企業に分析
対象を限定する。
6
グラフ 1:企業数の推移および上場企業比率
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いて、年度ごとの非上場企業数、
上場企業数、上場企業比率(上場企業数÷総企業数)を示している。
3000
45%
2500
40%
2000
35%
1500
30%
1000
25%
500
20%
0
上場企業比率
50%
企業数
3500
15%
83
85
90
非上場企業数
95
00
年度(西暦)
上場企業数
05
10
12
上場企業比率
グラフ 1 は、年度ごとの企業数および上場企業の全企業に占める比率を表している。上
場企業の合計観測値数は 71,384、非上場企業の合計観測値数は 77,087 である。すなわち、
規模の大きな企業に対象を絞っても、半数以上の企業が上場していない。また、年度ごと
に見ても、上場企業と非上場企業の比率はほとんど変化しない。さらに、売上高および資
産の双方が 100 億円以上の企業に絞っても 43%の観測値、1,000 億円以上の企業に絞っても
25%の観測値が非上場企業である。したがって、分析対象を規模のより大きな企業に絞った
場合でも、非上場企業を含んでいないデータでは多数の企業をカバーできていないことに
なる。
グラフ 2 は、年度ごとの売上高を上場・非上場間でそれぞれ合計したグラフを表してい
る。上場企業の売上高シェアの平均は 73%である。時系列でその変化を見ると、1983 年度
には 80%、2012 年度には 63%と、上場企業の非上場企業に対する相対的重要性は下がって
きている。したがって、非上場企業を除外したデータに基づくマクロ政策の議論は、経済
に大きな影響を与え得る主体のインセンティブを考慮していないと言える。
表 1 は、推定に用いる各変数の記述統計量を示している。レバレッジの平均値は、上場
企業の場合には 0.55、非上場企業の場合には 0.71 である。したがって、上場企業のレバレ
ッジが低いという仮説の妥当性が示唆されている。ただし、上場・非上場企業の売上高の
平均値の差は 200 億円以上に達しており、レバレッジに影響し得る要因の上場・非上場に
おける差は大きい。このため、次節では複数の要因による影響をコントロールした上で、
上場・非上場間で資本構成に差が見られるか否かを分析する。
7
グラフ 2:総売上高および売上高シェア
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いて、年度ごとの非上場企業総売
上高、上場企業総売上高、上場企業総売上高シェア(上場企業総売上高÷総売上高)を示してい
る。
総売上高(兆円)
83
85
95
90
00
05
10
上場企業総売上高シェア
85%
80%
75%
70%
65%
60%
55%
50%
45%
40%
35%
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
12
年度(西暦)
非上場企業総売上高
上場企業総売上高
上場企業総売上高シェア
表 1:記述統計量
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いて、非上場企業・上場企業・全
企業のそれぞれにおける記述統計量を示している。レバレッジは負債÷資産、広義の資本金比率
は(資本金+資本剰余金)÷資産、ROA は純利益÷資産で定義される。変数名に「比率」を含
むその他の変数は資産で基準化したものとして定義される。表内の各数値は平均値を、括弧内の
数字は標準偏差を表す。
非上場企業
上場企業
全企業
(観測値数 77,109)
(観測値数 71,362)
(観測値数 148,471)
レバレッジ
0.708
( 0.284 )
0.553
( 0.222 )
0.634
( 0.268 )
広義の資本金比率
0.227
( 0.254 )
0.246
( 0.181 )
0.236
( 0.222 )
利益剰余金比率
0.060
( 0.343 )
0.202
( 0.223 )
0.128
( 0.300 )
短期負債比率
0.461
( 0.262 )
0.385
( 0.190 )
0.424
( 0.233 )
長期負債比率
0.244
( 0.240 )
0.167
( 0.135 )
0.207
( 0.200 )
手形比率
0.046
( 0.085 )
0.066
( 0.083 )
0.055
( 0.084 )
買掛金比率
0.129
( 0.144 )
0.099
( 0.085 )
0.115
( 0.120 )
短期金融機関借入金比率
0.141
( 0.168 )
0.119
( 0.127 )
0.130
( 0.150 )
短期その他借入金比率
0.036
( 0.109 )
0.005
( 0.028 )
0.021
( 0.082 )
有形固定資産比率
0.382
( 0.269 )
0.273
( 0.174 )
0.329
( 0.235 )
売上高対数値
9.730
( 1.430 )
10.600
( 1.410 )
10.200
( 1.490 )
ROA
0.007
( 0.074 )
0.013
( 0.056 )
0.010
( 0.066 )
8
4. 分析手法
レバレッジは、上場・非上場以外の様々な要因にも依存して決まる。観察可能な要因の
レバレッジへの影響を取り除くため、本論文では標準的なレバレッジ関数を推定する。Rajan
and Zingales(1995)およびその後の広範な研究成果にしたがい、売上高の対数値、有形固
定資産比率(有形固定資産÷資産)
、ROA(総資産純利益率=純利益÷資産)を含める。た
だし、非上場企業の株価は観察されないことから、Rajan and Zingalesでは変数として含まれ
ている時価簿価比率は回帰式に含めていない。これらの変数に加えて、年度・産業ダミー
を含めることで、特定年度の特定産業に固有な要因の影響を取り除いている。 5産業は毎年
40 程度に分類されている。推定では、年度・産業レベルでクラスター化された頑健な標準
誤差を用いる。推定式は、次の式で表現される。
𝑙𝑒𝑣𝑖𝑡 = 𝛽0 + 𝛽1 𝑙𝑖𝑠𝑡𝑒𝑑𝑖𝑡 + 𝛽2 𝑙𝑠𝑎𝑙𝑒𝑠𝑖𝑡 + 𝛽3 𝑓𝑡𝑎𝑖𝑡 + 𝛽4 𝑟𝑜𝑎𝑖𝑡 + 𝑢𝑗𝑡 + 𝜖𝑖𝑡
インデックス i は企業、t は年度、j は産業を表す。また、lev はレバレッジ、listed は上場ダ
ミー、lsales は売上高の自然対数値、fta は有形固定資産比率、roa は ROA、u は年度・産業
ダミーを表す。
レバレッジの決定要因を分析した後に、上場・非上場間のレバレッジの違いをより詳細
に明らかにするため、被説明変数に以下のものを用いる。すなわち、広義の資本金比率や
短期負債比率など表 1 に含まれている変数(上記推定式に説明変数として含まれているも
のを除く)を用いる。レバレッジ以外の変数を被説明変数とする場合にも、コントロール
変数の選択を含めた定式化は同じである。
5. 結果
本節では推定結果を提示する。第 1 項では、本論文のメインの結果である上場・非上場
のレバレッジへの効果に関する推定結果を示す。第 2 項では、上場・非上場の広義の資本
金比率や負債の内訳への効果も推定する。第 3 項では、データのバランスド・パネル化お
よび年度ごとでの回帰を通じて、本論文の結果の頑健性を確認する。
5.1. レバレッジへの効果
表 2 の 2 列目は、レバレッジを被説明変数とした場合の分析結果を表している。上場ダ
ミーの係数の推定値から、上場企業のレバレッジは非上場企業に比べて低いことが示され
た。すなわち、上場企業のレバレッジは非上場企業に比べると 0.161 低い。この推定値は統
計的に有意であるだけではなく、経済的にも大きな意味を持つ。すなわち、レバレッジ 0.161
の低下効果をもたらすためには、有形固定資産比率が 1.38 低下、あるいは ROA が 0.12 上
5
年度・産業ダミーの代わりに年度ダミーを用いた場合、あるいは年度や産業特性をコントロールする変
数を含めない場合でも同様の推定結果が得られる。したがって、上場企業の比率に関して産業間に異質性
があるか否かは分析結果には影響しない。
9
昇する必要がある。
あるいは、
有形固定資産比率と ROA の標準偏差がそれぞれ 0.235 と 0.066
であること踏まえると、上場の効果はこれら 2 つの説明変数の標準偏差それぞれ 0.69 個分
と 2.44 個分である。また、非上場企業が上場企業と同様の水準のレバレッジを達成するた
めには、売上高で測った企業規模が 4.13 倍大きくなる必要がある。したがって、上場・非
上場のレバレッジの差は経済的にも大きいと評価できる。
表 2:レバレッジなど資本構成の各要素への回帰
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いている。
被説明変数はそれぞれ、
レバレッジ、広義の資本金比率、利益剰余金比率、短期負債比率、長期負債比率である。説明変
数は、上場ダミー、売上高対数値、有形固定資産比率、ROA、年度・産業ダミーである。レバ
レッジは負債÷資産、広義の資本金比率は(資本金+資本剰余金)÷資産、その他の被説明変数
は資産で基準化した形で定義される。上場ダミーは、上場企業の場合には 1、非上場企業の場合
には 0 をとる変数、有形固定資産比率は有形固定資産÷資産、ROA は純利益÷資産で定義され
る。各セル内上段の数字は係数の推定値、下段の括弧内の数字は標準誤差を表す。年度・産業レ
ベルでクラスター化された頑健な標準誤差を用いている。係数右上の***は 1%水準で有意であ
ることを示している。
広義の資
利益剰余
短期負債
長期負債
本金比率
金比率
比率
比率
-0.161***
0.070***
0.093***
(0.003)
(0.002)
(0.002)
(0.003)
(0.002)
0.039***
-0.059***
0.020***
0.028***
0.011***
(0.001)
(0.001)
(0.001)
(0.001)
(0.001)
0.116***
-0.121***
0.006
-0.207***
0.326***
(0.008)
(0.006)
(0.007)
(0.008)
(0.006)
-1.356***
-0.726***
2.159***
(0.032)
(0.022)
(0.030)
(0.021)
(0.018)
年度・産業ダミー
○
○
○
○
○
観測値数
148,471
148,471
148,471
148,471
148,471
レバレッジ
上場ダミー
売上高対数値
有形固定資産比率
ROA
-0.145*** -0.014***
-0.787*** -0.493***
5.2. 広義の資本金比率・利益剰余金比率・負債の各要素への効果
表 2 の 3 列目および 4 列目は、上場・非上場の広義の資本金比率および利益剰余金比率
への効果をそれぞれ分析している。上場ダミーの広義の資本金比率に対する効果は 0.07 で
有意に正であることから、仮説と整合的に上場企業の方が株式発行に依存していることが
示唆される。また、利益剰余金比率も上場企業の方が有意に高い(0.093)
。したがって、株
式発行および利益の積み上げの双方の視点において、上場企業の方が自己資本に依存して
10
いることが読み取れる。 6
表 2 の 5 列目および 6 列目は、短期負債および長期負債を資産で基準化したものを被説
明変数とした回帰分析を行っている。短期負債比率と長期負債比率に対する上場の効果を
それぞれ比較すると、短期負債比率に対する効果(-0.145)の方が長期負債に対する効果
(-0.014)よりも大きいことが分かる。言い換えれば、非上場企業は短期負債による資金調
達を自己資本の代替策として用いていることが示唆される。
表 3:短期負債の各要素への回帰
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いている。
被説明変数はそれぞれ、
手形比率、買掛金比率、短期金融機関借入金比率、短期その他借入金比率である。説明変数は、
上場ダミー、売上高対数値、有形固定資産比率、ROA、年度・産業ダミーである。被説明変数
は、資産で基準化した形で定義されている。上場ダミーは、上場企業の場合には 1、非上場企業
の場合には 0 をとる変数、有形固定資産比率は有形固定資産÷資産、ROA は純利益÷資産で定
義される。各セル内上段の数字は係数の推定値、下段の括弧内の数字は標準誤差を表す。年度・
産業レベルでクラスター化された頑健な標準誤差を用いている。係数右上の***は 1%水準で有
意、*は 10%水準で有意であることを示している。
短期金融機関
短期その他借
借入金比率
入金比率
-0.069***
-0.018***
-0.031***
(0.001)
(0.002)
(0.002)
(0.001)
-0.002***
0.020***
-0.001
0.001***
(0.000)
(0.001)
(0.001)
(0.000)
-0.034***
-0.115***
0.014*
0.000
(0.002)
(0.004)
(0.007)
(0.002)
-0.027***
-0.069***
-0.468***
-0.182***
(0.004)
(0.006)
(0.017)
(0.009)
年度・産業ダミー
○
○
○
○
観測値数
148,471
148,471
148,471
148,471
上場ダミー
売上高対数値
有形固定資産比率
ROA
手形比率
買掛金比率
0.002***
短期負債比率の具体的にどの要因において、上場・非上場間の差が大きいのであろうか。
表 3 は、短期負債比率の内訳(たとえば買掛金)を従属変数とした場合の上場の効果を見
6
表 2 における他の説明変数についても、妥当と思われる推定結果が示されている。たとえば、売上高対
数値や有形固定資産比率が高い場合、広義の資本金比率は下がっている。これは、企業の信用が高い場合
あるいは企業が担保価値の高い有形固定資産を多く有する場合には、株式発行よりもコストの低い負債調
達に頼ることができるためであると考えられる。また、ROA が高い場合には利益剰余金比率が高いという
関係が見られる。これは、業績が良い場合に、企業はその利益の一部を純資産として積み上げているため
であると考えられる。さらに、有形固定資産比率と短期負債比率との負の相関および長期負債比率との正
の相関は、企業が担保を短期ではなく長期での負債調達のために用いていることを示唆している。
11
ている。この表から、買掛金比率における違いが最も大きいことが分かる(-0.069)。また、
短期その他借入金における上場・非上場間の違いも比較的大きい(-0.031)
。短期その他借
入金比率は非金融機関からの借入を意味するが、その中には同一企業グループ内の他企業
からの借入も含まれると考えられる。 7すなわち、企業の内部資本市場への依存度を表すと
解釈できる。 8
以上の議論より、上場企業は株式に依存した資金調達を行い、非上場企業は企業間信用
や内部資本市場を活用して短期負債に依存した資金調達を行っていることが分かった。言
い換えれば、非上場企業は株式による資金調達のコストの高さを内部資本市場など他の手
段で代替していると解釈できる。これは、未発達な株式市場を内部資本市場などの他の資
金調達手段が補完しているという近年の研究と整合的である(Masulis, Pham, and Zein, 2011)
。
5.3. 頑健性
本節前項および前々項の議論では、利用可能なすべての観測値から構成されるデータを
用いた。本研究では全数調査の対象となっている資本金 6 億円以上の企業に対象を限定し
ているが、企業の参入退出を反映して企業は毎年入れ替わる。また、同一企業の上場・非
上場にも変化も起こる。FQ データ(銀行・証券・保険を除く)によると、1984 年 3 月の上
場企業数が 1,626、2005 年 3 月に上場企業数がピークに達し 3,796、2013 年 3 月の上場企業
数が 3,431 である。したがって、全企業のデータを用いた場合には、データ構成の変化が結
果に影響している可能性がある。
この懸念を緩和するため、第 1 にバランスド・パネルを用いて分析を行う。データの全
期間において存在し、かつ上場・非上場が変化しない企業を見ることで、データ構成の変
化による影響を排除するためである。第 2 に、年度ごとにデータを絞った分析を行う。上
場・非上場における各変数の差が毎年度同様であれば、上場・非上場の効果の頑健性が支
持されやすくなるためである。
5.3.1. バランスド・パネル化
データをバランスド・パネル化した結果、上場企業 734 社、非上場企業 376 社、合計 1,110
社がデータに残った。これらの企業のみを用いて分析を行った結果が、表 4 に示されてい
る。
レバレッジと短期負債比率について、上場ダミーの係数の推定値はそれぞれ-0.109 と
7
法人企業統計は、短期その他借入金の中身を特定していない。近年のコーポレートファイナンス研究は、
企業グループにおいては内部資本市場を通じた親会社・子会社間の資金の貸借は一般的であることを示し
ている(たとえば Gopalan, Nanda, and Seru, 2007)
。日本における企業グループの重要性は、Hoshi, Kashyap,
and Scharfstein(1991)をはじめとする多くの研究で指摘されており、法人企業統計上の短期その他借入金
には内部資本市場を通じた借入を含むと考えるのが自然である。
8
表 3 における他の説明変数の係数も、理論的に妥当と考えられる符号を示している。たとえば、ROA が
高い場合、短期負債の各要素は一貫して低くなっている。これは、業績の良い企業は短期負債よりも内部
資金を重視した資金調達を行っていることを示している。
12
-0.131 である。レバレッジについての推定値の絶対値は、全企業のデータを使った場合
(-0.161)よりも小さい。他方で、短期負債比率については、全企業のデータを使った場合
の推定値(-0.145)と同様である。広義の資本金比率については、上場ダミーの係数の推定
値は 0.088 であり、全企業のデータを用いた場合の推定値(0.07)と同様である。したがっ
て、短期負債比率と広義の資本金比率について、全企業のデータを用いた場合と質的にも
量的にも同様の推定結果が得られている。
また、買掛金比率について、上場ダミーの係数の推定値は-0.06 であり、全企業のデータ
を使った場合の推定値(-0.069)と同様である。内部資本市場への依存度と解釈できる短期
その他借入金比率について、上場ダミーの係数の推定値は-0.019 であり、全企業のデータを
使った場合の推定値(-0.031)に比べて絶対値は小さいが、符号は同一である。以上の分析
より、本分析の結果はバランスド・パネル化に対して頑健であると言える。
表 4:バランスド・パネル化した場合
1983 年度から 2012 年度までの法人企業統計の個票データをバランスド・パネル化した。すなわ
ち、データの全期間において存在し、かつ上場・非上場が変化しない企業に対象を絞った。この
結果、上場企業 734 社、非上場企業 376 社がデータに残った。被説明変数はそれぞれ、レバレッ
ジ、広義の資本金比率、短期負債比率、買掛金比率、短期その他借入金比率である。説明変数は、
上場ダミー、売上高対数値、有形固定資産比率、ROA、年度・産業ダミーである。レバレッジ
は負債÷資産、広義の資本金比率は(資本金+資本剰余金)÷資産で定義される。その他の被説
明変数は、資産で基準化した形で定義されている。上場ダミーは、上場企業の場合には 1、非上
場企業の場合には 0 をとる変数、有形固定資産比率は有形固定資産÷資産、ROA は純利益÷資
産で定義される。各セル内上段の数字は係数の推定値、下段の括弧内の数字は標準誤差を表す。
年度・産業レベルでクラスター化された頑健な標準誤差を用いている。係数右上の***は 1%水
準で有意であることを示している。
レバレッジ
上場ダミー
売上高対数値
有形固定資産比率
ROA
広義の資
短期負債
買掛金比
短期その他
本金比率
比率
率
借入金比率
-0.109***
0.088***
(0.003)
(0.003)
(0.003)
(0.003)
(0.001)
0.035***
-0.030***
0.015***
0.012***
0.002***
(0.001)
(0.001)
(0.001)
(0.001)
(0.000)
0.113***
0.031***
(0.012)
(0.008)
-1.782***
-0.131*** -0.060***
-0.230*** -0.111***
(0.012)
(0.005)
-0.339*** -1.052*** -0.111***
-0.019***
0.001
(0.004)
-0.072***
(0.064)
(0.041)
(0.048)
(0.016)
(0.011)
年度・産業ダミー
○
○
○
○
○
観測値数
33,300
33,300
33,300
33,300
33,300
13
5.3.2. 年度ごとの回帰分析
グラフ 3 は、全企業を含むアンバランスド・パネルデータを用いて年度ごとに回帰を行
った場合の上場ダミーの係数の推定値を時系列で表している。いずれの年度においても、
上場ダミーの係数の推定値の符号は常に同じである。また、レバレッジと広義の資本金比
率の推定値における負の相関、およびレバレッジと短期負債比率の推定値における正の相
関が強いことが読み取れる。すなわち時系列での観察からも、上場・非上場間のレバレッ
ジの違いに対して、広義の資本金比率および短期負債比率が説明力を持つことが示唆され
ている。グラフ 3 では全企業のデータを用いているが、バランスド・パネル化したデータ
を用いても同様の結果が得られる。本項の分析より、本論文の結果は年度に固有な要因に
よって左右されるものではないと言える。この視点からも、本論文の結果は頑健である。
グラフ 3:上場ダミーの係数の推定値の推移
上場ダミーの係数の推定を年度ごとに行い、その推定値を時系列でグラフ化した。1983 年度か
ら 2012 年度までの法人企業統計の個票データを用いている。被説明変数はそれぞれ、レバレッ
ジ、広義の資本金比率、短期負債比率、買掛金比率、短期その他借入金比率である。説明変数は、
上場ダミー、売上高対数値、有形固定資産比率、ROA、年度・産業ダミーである。レバレッジ
は負債÷資産、広義の資本金比率は(資本金+資本剰余金)÷資産、その他の被説明変数も資産
で基準化した形で定義される。上場ダミーは、上場企業の場合には 1、非上場企業の場合には 0
をとる変数、有形固定資産比率は有形固定資産÷資産、ROA は純利益÷資産で定義される。
0.15
0.1
0.05
0
-0.05
83
85
90
95
00
05
10
12
-0.1
-0.15
-0.2
-0.25
年度(西暦)
レバレッジ
短期負債比率
買掛金比率
短期その他借入金比率
広義の資本金比率
6. 結論
本論文は上場企業と非上場企業の財務情報を含む 1983 年度から 2012 年度の法人企業統
計を用いて、上場企業と非上場企業の資本構成の比較を行った。本論文はまず、大規模な
14
企業(売上高 10 億円以上、資産 10 億円以上、資本金 6 億円以上)に対象を限定しても、
その半数以上の企業が非上場企業であることを示した。したがって、非上場企業を含まな
いデータを用いた分析結果の企業全体への一般化には慎重になる必要がある。
本論文では次に、上場企業と非上場企業の資本構成を比較した。上場企業の株式の流動
性は高いことから、株式調達コストは低いと考えられる。この結果、上場企業のレバレッ
ジは低くなることが予想される。回帰分析の結果、この仮説と整合的な結果が示された。
すなわち、上場企業のレバレッジは非上場企業に比べて 0.161 低いことが示された。また、
上場企業が株式発行に依存していることも示唆されている。さらに、非上場企業の方が企
業間信用や内部資本市場を中心に短期負債を活用していることも示された。つまり、上場
企業と非上場企業の資金調達の方法は大きく異なり、上場企業を対象として明らかにされ
てきた資本構成に関する結果の一般化は必ずしもできないことが示唆される。
本研究が構築したデータベースは、企業の資金調達をはじめとする企業行動における
様々な側面に関する上場・非上場間の比較を可能とする。たとえば、上場・非上場間でレ
バレッジが異なる結果、設備投資をはじめとする企業行動にどのような影響が出るかにつ
いて分析が可能である。本論文は、こうした今後の研究の第一歩になると考えられる。
15
補論(法人企業統計の個票データにおける上場企業と非上場企業の判別方法)
A. 判別方法の概要
本論文が分析対象とするのは、1983 年度から 2012 年度の法人企業統計(年次別調査)の
個票データである。個票データの観測値数は全年度合計で 717,526 である。法人企業統計は
対象企業の上場・非上場を調査していないため、個票データからでは、対象企業の上場・
非上場を判別できない。そこで本論文では、日経 NEEDS Financial Quest(FQ データ)から
作成した各年度末における上場企業のリスト(以下、FQ 上場リスト)と法人企業統計の個
票データ(以下、個票データ)を照合する。すなわち、個票データから上場企業を抽出し、
抽出されないものを非上場企業とみなす。上場企業あるいは非上場企業のいずれとも判別
できない個票データについては、本論文の分析の対象外とする。FQ 上場リストの観測値数
は、全期間合計で 86,755 である。
FQ上場リストと個票データの照合にあたっては、年度とカタカナ名、財務項目を組み合
わせた基準を用いる 9。同一のカタカナ名の異なる企業が存在し得るため、年度とカタカナ
名のみを基準とした照合を行えないためである。本論文では、同一のカタカナ名の上場企
業が存在するか否かでFQ上場リスト内の企業を 2 つのグループに分けて、それぞれ個票デ
ータとの照合を行う。
論文本文では、法人企業統計の調査対象のうち金融業・保険業については分析の対象外
としている。しかし、法人企業統計には 2008 年度より金融持株会社が調査対象として含ま
れている。そこで本補論では、FQ データで銀行・証券・保険に分類される上場企業(以下、
FQ 上場金融リスト)との照合結果も示す。ただし、非上場企業については金融持株会社を
明らかに出来ないことから、論文本文ではこの区分に基づいた上場・非上場の区別は行っ
ていない。
9
FQ 上場リストにおいて、上場企業が決算期の変更を行ったために、当該年度に 2 つの決算データが存在
することがある。この場合、当該年度内における古い方の決算データを用いる。また、FQ データでカタ
カナ名を取得できない年度がある場合、その企業のもっとも古い年度のカタカナ名を当該年度のカタカナ
名とみなす。
16
図 1:法人企業統計の個票データから上場企業を抽出する方法
(同一のカタカナ名の上場企業が複数存在しない場合)
法人企業統計の個票データ
(717,526 ※全年度合計)
該当していない
年度と企業名(カタカナ名)が
FQ上場リストと一致
該当
している
該当していない
年度、資産、資本金、資本準備金、
売上高、営業利益、特別利益がFQ
上場リストと一致
該当
している
該当していない
年度と資本金が
FQ上場リストと一致
該当
している
次の3つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場リストの資産/個票データの資産≦1.01
② 0.99≦FQ上場リストの売上高/個票データの売上高≦1.01
③ 0.99≦FQ上場リストの営業利益/個票データの営業利益≦1.01
該当
している
該当していない
年度と資産が
FQ上場リストと一致
該当
している
次の3つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦1.01
② 0.99≦FQ上場リストの売上高/個票データの売上高≦1.01
③ 0.99≦FQ上場リストの営業利益/個票データの営業利益≦1.01
該当していない
年度と売上高が
FQ上場リストと一致
該当
している
次の3つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦1.01
② 0.99≦FQ上場リストの資産/個票データの資産≦1.01
③ 0.99≦FQ上場リストの営業利益/個票データの営業利益≦1.01
該当
している
該当
している
該当していない
年度と営業利益が
FQ上場リストと一致
該当
している
次の3つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦1.01
② 0.99≦FQ上場リストの資産/個票データの売上高≦1.01
③ 0.99≦FQ上場リストの売上高/個票データの資産≦1.01 1
該当
している
該当している
次の2つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦1.01
② 0.9≦FQ上場リストの資産/個票データの資産≦1.1
該当していない
次の2つの条件を満たす
① 0.9≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦1.1
② 0.8≦FQ上場リストの資産/個票データの資産≦1.2
FQ上場リストとマッチさせることが
できた個票データ①
該当している
上場企業であると判別される個票
データ
(75,737 ※全年度合計)
該当している
FQ上場リストとマッチさせることができた個票データ①にある、
前後の年度の個票データの資本金との比がいずれも0.5以上2以下
である(注)
該当していない
上場あるいは非上場の判別が
つかない個票データ
該当
している
該当していない
次の2つの条件を満たす
① 0.5≦FQ上場リストの資本金/個票データの資本金≦2
② 0.5≦FQ上場リストの資産/個票データの資産≦2
(注)FQ 上場リストとマッチさせることができた個票データ①に、当該個票データの年度があ
る場合は該当してないとみなす。また、FQ 上場リストとマッチさせることができた個票データ
①に、前後の片方の年度のデータしかない場合には、当該データとの比が 0.75 以上 1.25 以下で
あることを条件とする。
17
B. 同一のカタカナ名の上場企業が複数存在しない場合の判別方法
FQ 上場リストにおいて同一のカタカナ名の企業が複数存在しない場合、まず年度とカタ
カナ名で FQ 上場リストと照合する。マッチする場合には以下の B.1、マッチしない場合に
は以下の B.2 に従って上場・非上場を判別する。同一のカタカナ名の上場企業が複数存在し
ない場合に FQ 上場リストとマッチした個票データの観測値数は 75,737 である。
B.1. 年度とカタカナ名でFQ上場リストと個票データがマッチする場合
年度とカタカナ名で FQ 上場リストとマッチした個票データに対して、さらに資本金と資
産について FQ 上場リストと個票データの数値が一定範囲内で一致するかを確認する
(図 1)
。
同じ年度で同一のカタカナ名の企業は、FQ 上場リストだけではなく法人企業統計にも存在
する。このため、年度とカタカナ名で FQ 上場リストとマッチした場合にも、同一のカタカ
ナ名の別企業の個票データが上場企業と誤って判別されてしまう可能性があるためである。
資本金と資産が一定範囲内で一致しているかの確認は、FQ 上場リスト内企業の各変数の
数値を個票データ内企業の各財務項目の数値で割った値に基づいて行う。
資本金の比が 0.99
以上 1.01 以下であり、かつ資産の比が 0.9 以上 1.1 以下であれば、その個票データは上場企
業であると判別する。
上記で上場企業と判別されない企業のうち、資本金の比が 0.9 以上 1.1 以下であり、かつ
資産の比が 0.8 以上 1.2 以下である場合は、上場企業として判別された企業リスト(図 1 の
「FQ上場リストとマッチさせることができた個票データ①」
)を時系列に並べて、当該個票
データと同じ年度において、既に上場企業として判別された個票データが存在するかを確
認する。もし、上場企業として判別された企業リストに、上場企業として判別された個票
データが存在せず、かつ当該上場企業の前後の年度の資本金との比が一定範囲内 10に収まっ
ているのであれば、当該個票データは上場企業であると判別する。他方、資本金の比が一
定範囲内に収まっていない場合には、上場企業あるいは非上場企業のいずれとも判別が付
け難いため、上場企業あるいは非上場企業のいずれにも含まないこととする。
資本金の比が 0.9 以上 1.1 以下であり、かつ資産の比が 0.8 以上 1.2 以下であることに該
当しない企業については、次の場合には、上場企業あるいは非上場企業のいずれとも判別
が付け難いため、上場企業あるいは非上場企業のいずれにも含まないこととする。すなわ
ち、資本金の比が 0.5 以上 2 以下であり、かつ資産の比が 0.5 以上 2 以下の場合は、上場企
業あるいは非上場企業のいずれにも含まないこととする。
B.2. 年度とカタカナ名でFQ上場リストとマッチしない個票データの扱い
年度とカタカナ名でFQ上場リストとマッチしない個票データについて、必ずしも上場企
業でないとは結論付けられない。FQ上場リストと個票データのカタカナ名の表記が部分的
10
図 1 の「FQ 上場リストとマッチさせることができた個票データ①」において、前後の年度の個票データ
の資本金との比がいずれも 0.5 以上 2 以下であることが基準である。ただし、FQ 上場リストとマッチさ
せることができた個票データ①に、前後の片方の年度のデータしかない場合には、当該データとの比が
0.75 以上 1.25 以下であることを基準とした。
18
に一致していないために、マッチしていない可能性が考えられるためである。11そこで、財
務項目がFQ上場リストの数値と一致するかを確認し、一定の範囲内で一致する個票データ
については上場企業とみなす。
具体的には、まず、年度と 6 種類の財務項目(資産・資本金・資本準備金・売上高・営
業利益・特別利益)が FQ 上場リストの数値と完全に一致する個票データは、上場企業とみ
なす。
年度と 6 種類の財務項目が FQ 上場リストの数値と一致しない個票データについては、
図 1 のように、年度が一致することに加えて、4 種類の財務項目(資本金・資産・売上高・
営業利益)のいずれかが完全に一致しかつ、残りの 3 種類の財務項目がすべて FQ 上場リス
トの数値との比で 0.99 以上 1.01 以下となるものを、上場企業とみなす。
C. 同一のカタカナ名の上場企業が複数存在する場合の判別方法
同一のカタカナ名の上場企業が複数存在する場合には、年度とカタカナ名に加えて、4 種
類の財務項目(資本金・資産・売上高・営業利益)のうち少なくとも 1 つが完全に一致す
るものを上場企業とみなす。同一のカタカナ名の上場企業が複数存在する場合に、FQ 上場
リストとマッチした個票データの観測値数は、全年度合計で 467 である。
D. FQ上場金融リストとマッチする個票データについて
法人企業統計が、2008 年度より金融持株会社を調査対象に加えていること等を考慮し、
個票データのうち、FQ 上場金融リストとマッチするものを特定した。個票データと FQ 上
場金融リストの照合方法は図 2 のとおりである。FQ 上場リストとの照合よりも基準となる
財務項目が少ないのは、金融銘柄を分析対象としないために、該当する可能性のある個票
データをなるべく多くマッチさせるためである。
FQ 上場金融リストとマッチした個票データの観測値数は、全年度合計で 121 である。な
お、非上場の金融銘柄についても一定程度存在すると考えられるが、特定できる手段がな
い。そうなると、金融銘柄の判別が上場・非上場企業間で異なってしまうため、論文本文
ではこれら 121 の観測値も分析に含んでいる。
E. 法人企業統計の個票データから抽出できた上場企業数
法人企業統計に含まれる 717,526 の観測値数のうち、76,204 が FQ 上場リストとマッチし
た。FQ 上場リストの観測値数が 86,755 であることから、88%の観測値が個票データから抽
出された。年度ごとの抽出率および法人企業統計の回答率については、グラフ 4 にまとめ
てある。FQ 上場リストにある全社を法人企業統計の個票データから抽出できていない理由
としては、①法人企業統計に回答していない上場企業が存在する可能性、②金融業・保険
業について両データ間の業種分類に違いがある可能性、③実際には上場しているが本補論
で使った基準では上場企業として抽出できていない可能性が考えられる。
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たとえば、カタカナ表記がアルファベット表記になっている場合や、濁点の有無などの違いがあり得る。
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図 2:法人企業統計の個票データから金融銘柄を抽出する方法
法人企業統計の個票データ
(717,526 ※全年度合計)
該当していない
年度と企業名(カタカナ名)が
FQ上場金融リストと一致
該当
している
該当していない
年度と資本金が
FQ上場金融リストと一致
該当
している
次の2つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場金融リストの資産/個票データの資産≦1.01
② 0.95≦FQ上場金融リストの純利益/個票データの純利益≦1.05
該当
している
該当していない
年度と資産が
FQ上場金融リストと一致
該当
している
次の2つの条件を満たす
① 0.99≦FQ上場金融リストの資本金/個票データの資本金≦1.01
② 0.95≦FQ上場金融リストの純利益/個票データの純利益≦1.05
マッチさせることができた
上場金融銘柄
(121、※全年度合計)
グラフ 4:FQ上場リストに対して個票データをマッチさせることができた比率
100
(%)
90
80
70
60
FQ上場リストに対して個票データをマッチさせることができた比率
50
法人企業統計の回答率(金融業・保険業を除く全企業)
40
30
83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11
(出所)法人企業統計の個票データ、財政金融統計月報、日経 NEEDS Financial QUEST より作成
なお、論文本文では、ある企業が前後の年度(2 年以内)の双方において上場していると
判別される場合には、その観測値も上場していると扱って分析を行った。
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