微分積分学および演習Ⅱ 演習問題 8 2014 年度後期 工学部・未来科学部 1 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。 (ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。 (ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。 (ⅲ) 提出期限は 12/11 (木), 12/12 (金) の講義時 とします。 問題 8-1. 2 変数関数 f (x, y) = ey cos x−sin 2y = ey cos x e− sin 2y について以下の設問に答えなさい。 (1) 偏導関数 fx (x, y) 及び fy (x, y) を求めなさい。 (π π √ ) (2) 関数 z = f (x, y) のグラフ上の点 , − , e に於ける接平面の方程式を求めなさい。 2 12 (3) 関数 f (x, y) のマクローリン展開を 3 次 の項まで求めなさい。 (4) 領域 D = { (x, y) | 0 ≤ x ≤ π, −π ≤ y ≤ π } に於ける f (x, y) の極値を全て求めなさい。極 値をとるときの (x, y) の値も求めること。 問題 8-2. a, b をそれぞれ 1 とは異なる正の実数とする。2 変数関数 z = f (x, y) 及び有界閉領域 D を 2 { } x y2 4 4 f (x, y) = x − y , D = (x, y) 2 + 2 ≤ 1, x ≥ 0, y ≥ 0 a b で定めるとき、以下の設問に答えなさい。但し ウォリスの公式 Wallis’ formula ∫ ∫ t= π 2 cos 2n t= π 2 t dt = t=0 (2n − 1)!! π · (2n)!! 2 2n − 1 2n − 3 2n − 5 3 1 π = · · · ··· · · · 2n 2n − 2 2n − 4 4 2 2 sin2n t dt = t=0 は断りなく用いても良いものとする。 (1) 領域 D を xy 平面に図示しなさい。 ∂x ∂x ∂r ∂θ (2) 座標変換 x = ar cos θ, y = br sin θ に関するヤコビ行列 Jacf = ∂y ∂y 及びヤコビ行 ∂r ∂θ ∂z ∂z 及び を求めなさい。 列式 Jf = det(Jacf ) を計算しなさい。また、導関数 ∂θ ∫ ∂r (3) 座標変換 x = ar cos θ, y = br sin θ を用いて重積分 f (x, y) dxdy を計算しなさい。 D ∫ (4)∗ 重積分 f (x, y) dxdy を (座標変換を用いずに) 直接計算しなさい。 D √ [(4) のヒント] 1− 1 2 u の形の関数の積分は、u = • sin t とおいて置換積分するのが定石です。 •2 1 【略解】 問題 8-1. f (x, y) = ey cos x−sin 2y (1) fx (x, y) = −y sin xey cos x−sin 2y , fy (x, y) = (cos x − 2 cos 2y)ey cos x−sin 2y ( ) ( ) √ 1 1 1 √ 1 1 (2) fx π, − π = π e, fy π, − π = − 3e より求める接平面の法線ベクトル n 2 12 12 2 12 は 1 √ 0 − π e 12 √ × 1 n= = 3e 1 √ √ − 3e π e 1 12 1 0 と計算出来る。したがって、求める接平面の (ベクトル) 方程式は 1 1 √ x − π − π e ( 2 ) 12 1 √ · = 0. 3e y − − π 12 √ 1 z− e √ √ 展開して整理すると、求める接平面の方程式は 2πx − 24 3y − 24 e −1 √ z = π 2 + 2 3π − 24 となる。 (3) 定数項は f (0, 0) = e0 = 1 である。高階偏微分係数を計算すると fx (x, y) = −y sin xey cos x−sin 2y fy (x, y) = (cos x − 2 cos 2y)ey cos x−sin 2y /o /o /o / fx (0, 0) = 0 /o /o /o / fy (0, 0) = −1 fxy (x, y) = {1+y(cos x − 2 cos 2y)} fxx (x, y) = (−y cos x+y 2 sin2 x) · (− sin x)ey cos x−sin 2y ·e y cos x−sin 2y /o /o /o / fxx (0, 0) = 0 /o /o /o / fxy (0, 0) = 0 fyy (x, y) = {4 sin 2y + (cos x − 2 cos 2y) } 2 · ey cos x−sin 2y /o /o /o / fyy (0, 0) = 1 fxxx (x, y) = (1 + 3y cos x − y 2 sin2 x) fxxy (x, y) = {(−y cos x + y 2 sin2 x)(cos x − 2 cos 2y) · (y sin x)ey cos x−sin 2y − cos x + 2y sin2 x} · ey cos x−sin 2y /o /o /o / fxxx (0, 0) = 0 /o /o /o / fxxy (0, 0) = −1 fxyy (x, y) = {2(cos x − 2 cos 2y + 2y sin 2y) fyyy (x, y) = {12 sin 2y(cos x − 2 cos 2y) + y(cos x − 2 cos 2y) } + 8 cos 2y + (cos x − 2 cos 2y)3 } 2 · (− sin x)ey cos x−sin 2y /o /o /o / fxyy (0, 0) = 0 /o /o /o / fyyy (0, 0) = 7 2 · ey cos x−sin 2y であるから、 f (x, y) = f (0, 0) + {fx (0, 0)x + fy (0, 0)y} 1 + {fxx (0, 0)x2 + 2fxy (0, 0)xy + fyy (0, 0)y 2 } 2! 1 + {fxxx (0, 0)x3 + 3fxxy (0, 0)x2 y + 3fxyy (0, 0)xy 2 + fyyy (0, 0)y 3 } + . . . . . . 3! 1 1 7 = 1 − y + y 2 − x2 y + y 3 + . . . . . . . 2 2 6 [別解] cos x と sin y のマクローリン展開の公式より (2y を一塊に考えて) ) ( ) ( 1 (2y)3 y cos x − sin (2y) = y 1 − x2 + . . . − (2y) − + ... 2! 3! 4 1 = −y − x2 y + y 3 + . . . . . .. 2 3 これを et = 1 + t + 1 1 2 t + t3 + . . . . . . に代入して 2! 3! ey cos x−sin 2y = e−y− 2 x y+ 3 y +...... ( ) ( )2 1 1 2 4 3 1 2 4 3 = 1 + −y − x y + y + . . . . . . + −y − x y + y + . . . . . . 2 3 2 2 3 ( )3 1 1 4 + −y − x2 y + y 3 + . . . . . . + ...... 6 2 3 1 2 4 3 1 1 7 = 1 − y + y 2 − x2 y + y 3 + . . . . . . 2 2 6 (4) 先ずは臨界点を求める。fx (x, y) = 0, fy (x, y) = 0 を連立すると { −y sin xey cos x−sin 2y = 0 (cos x − 2 cos 2y)ey cos x−sin 2y = 0 となるが、ey cos x−sin 2y はあらゆる (x, y) に対して 0 とならないので、結局臨界点を求める には連立方程式 −y)sin(x = cos ( ) ( ) x(− 2 cos 2y ) = 0 の解を求めれば良い。したがって臨界点は 1 0, π , 6 1 0, − π , 6 1 π, π , 3 1 π, − π 3 の計 4 個*1 。 続いて各臨界点に対してヘッセ行列式 ( fxx (x, y) hf (x, y) = det fyx (x, y) ) fxy (x, y) fyy (x, y) = [(−y cos x + y 2 sin2 x) · {4 sin 2y + (cos x − 2 cos 2y)2 } − {1 + y(cos x − 2 cos 2y)}2 (− sin x)2 ]e2(y cos x−cos 2y) *1 ここで第 1 式で y = 0 となっているとすると、第 2 式から cos x = 2 となるが、cos x は常に 1 以下なので矛盾。し たがって y = 0 となるような臨界点は存在しない。 3 を計算すると以下のようになる*2 。 ( ) √ √ ( ) 1 3 − 1 π+√3 hf 0, − π = − πe 3 < 0, 6 3 √ ( ) 1 2 3 2 π+√3 hf π, − π = πe 3 > 0, 3 3 3 1 π−√3 hf =− πe 3 < 0, 3 √ ( ) 1 2 3 − 2 π−√3 hf π, π = πe 3 > 0, 3 3 1 0, π 6 したがって ( ) ( ) 1 1 π, π と π, − π の 2 つが臨界点となる。 3 3 最後に ( ) ) ( 1 1 − 1 π− √3 1 1 √3 1 2 > 0, fxx π, ± π = πe 3 fxx π, − π = − πe 3 π+ 2 < 0 3 3 3 3 ) ) ( ( √ 1 1 3 1 となることから、関数 f は点 π, π で極小値 e− 3 π− 2 を、点 π, − π で極大値 3 3 √ 3 1 π+ 2 e3 をとることが分かる。 【解説】 二変数関数の微分法に関する総合問題。折角なので歯応えのある問題にしようと頑張って 作ってみたのですが、ちょっと歯応えがありすぎたでしょうか (^^; 完全正解者はいませんでした。 計算が少しばかり (とても?) 大変な問題ですが、それぞれの問題はこれまで『多変数関数の微分法』 で学習した内容の総集編となっておりますので、その解き方はしっかりと復習しておいてください。 (1) は偏微分の計算問題。この問題が出来なかった人はよく反省して、偏微分の計算練習を積み重 ねましょう。(2) は接平面を求める問題。比較的よく出来てはいましたが、接ベクトルがきちんと求 0 1 と にしていた − π められていない人 (例えば 接ベクトルを ( ) ( 12 ) 1 1 1 1 fx π, − π fy π, − π 12 2 12 ( )2 1 1 り、偏導関数 fx (x, y), fy (x, y) に π, π を代入 せずに 計算していたり) が散見されまし 2 12 1 π 2 0 た。気をつけましょう。接ベクトルさえきちんと計算出来れば、あとは『線形代数学Ⅰ』で学んだ平 面の方程式の求め方に沿って立式するだけです。(3) はマクローリン展開の問題。この問題も、良く 知られている 1 変数関数のマクローリン展開の公式を用いれば比較的簡単に答えが求められますが ([別解] の方の解き方です)、そうしている人は殆どいませんでした。f (x, y) の 3 階導関数の計算は 非常に大変ですので、直接計算をした人の中には計算ミスで倒れた人が続出しましたが、そんな中で もきちんと正解まで辿りついた人も数人いらっしゃいました。お見事です。(4) は極値問題。この問 題に関しては手つかずの方も多かったようです。せめて臨界点くらいはきちんと求めて欲しかったの ですが……。極大値、極小値まできちんと求められた方も 1 人だけいらっしゃいました。その調子で 頑張ってください。 *2 一見すると非常に複雑だが、臨界点に於いては y sin x = cos x − cos 2y = 0 なのだから、hf の式のうちの大部分は 消えてしまうことに注意しよう。 4 問題 8-2. (1) 求める領域は下図の境界を含む斜線部。 y b D O a x x2 y2 + =1 a2 b2 (2) それぞれ計算してみると ( ∂x ∂x a cos θ ∂r ∂θ Jacf = ∂y ∂y = b sin θ ∂r ∂θ ) −ar sin θ , Jf = det(Jacf ) = abr(cos2 θ + sin2 θ) = abr br cos θ となる。また、 ( ∂z ∂z ∂r ∂θ ) ∂x ( ( ) ) ∂z ∂z ∂r ∂θ ∂z ∂z = = Jacf ∂x ∂y ∂x ∂y ∂y ∂y ∂r ∂θ ( ) ( 3 ) a θ θ cos −ar sin = 4x − 4y 3 b sin θ br cos θ ( ) ( 3 3 ) a cos θ −ar sin θ = 4a r cos3 θ − 4b3 r3 sin3 θ b sin θ br cos θ ( ) ∂x = (4a4 r3 cos4 θ − 4b4 r3 sin4 θ − 4a4 r4 cos3 θ sin θ − 4b4 r4 sin3 θ cos θ) より、 ∂z = 4r3 (a4 cos4 θ − b4 sin4 θ), ∂r ∂z = −4r4 sin θ cos θ(a4 cos3 θ + b4 sin2 θ) ∂θ となる。 5 { (3) rθ 平面に於いて対応する積分領域は E = ∫ } 1 (r, θ) 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π であるから、 2 ∫ (x − y ) dxdy = 4 {(ar cos θ)4 − (br sin θ)4 } · |Jf | drdθ 4 D E ∫ θ= 12 π = abr5 (a4 cos4 θ − b4 sin4 θ) drdθ θ=0 ab = 6 ∫ θ= 12 π (a4 cos4 θ − b4 sin4 θ) dθ θ=0 { } ab 1 4 3 1 π 4 3 1 π · a · · · −b · · · πab(a4 − b4 ) . = = 6 4 2 2 4 2 2 32 ※ 楕円 x2 y2 + = 1 のパラメータ表示が a2 b2 { x = a cos θ y = b sin θ で与えられたことを思いだそう。 (4) 反復積分の形に書き直してみると ∫ ∫ y=b ∫ x=a (x4 − y 4 ) dxdy = D y=0 x=0 (x4 − y 4 ) dydx √ ]x=a 1− 12 y2 b 1 5 4 = x − xy dy 5 y=0 x=0 ) √ 5 ∫ y=b ( 5 √ a 1 2 1 = 1 − 2 y − ay 4 1 − 2 y 2 dy. 5 b b y=0 ∫ y=b [ √ 1− b12 y 2 ここで y = b sin t とおくと、dy = b cos t であり、y が 0 から b まで動くときに t は 0 から 1 π まで動くので、置換積分法により 2 ) ∫ ∫ t= 12 π ( 5 a 4 4 5 4 (x − y ) dxdy = cos t − a(b sin t) cos t · b cos t dt 5 D t=0 ) ∫ t= 12 π ( 4 a 4 6 4 2 = ab cos t − b sin t cos t dt 5 t=0 ) ∫ t= 12 π ( 4 a 4 2 6 4 = ab cos t − b sin t(1 − sin t) dt 5 t=0 ) ∫ t= 12 π ( 4 a 6 4 6 4 4 = ab cos t + b sin t − b sin t dt 5 t=0 ) ( 4 a 5 3 1 π 4 5 3 1 π 4 3 1 π · · · · +b · · · · −b · · · = ab 5 6 4 2 2 6 4 2 2 4 2 2 = 【解説】 1 ab(a4 − b4 ) . 32 二変数関数の積分法の総合問題。ここでは 楕円のパラメータ表示を用いた変数変換 を 扱ってみました。(1) は出来て欲しい問題。不正解者は二次曲線の標準形について良く復習しよう。 6 (2) も簡単な問題の筈ですが、何故かヤコビ行列式が 2abr になっている人が少なからずいました。 計算の際には細心の注意を払いましょう。(3) は重積分の変数変換の問題。先ず r, θ の範囲が分から なかった人は、(1) の図を見ながらもう一度よく考えてみよう。変数変換さえ無事に終わったら (ヤ コビ行列式を掛けるのを忘れないこと!!!)、あとは反復積分を計算するだけですが、cos4 θ, sin4 θ の積 分はウォリスの公式を用いると便利です。重積分の問題に限らず、三角関数の羃乗 cosn θ, sinn θ の 積分は結構頻出しますので、ウォリスの公式は是非正しく使いこなせるようになりましょう!! (4) は、 同じ重積分を変数変換を用いずに計算する問題。このように、1 変数関数の技巧的な置換積分を駆 使すれば、重積分の変数変換を使わなくても重積分 (反復積分) が計算出来る場合もありますが、矢 張り面倒くさくなることが非常に多いです。重積分の変数変換はしっかりと身につけるようにしま しょう。 7
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