ポイント

平行偏波 (TMy モード) 斜入射の反射・透過解析
科
v1.9 Jun.2014
Region(1) η1
−k1 cos θi
y
Ei
k1
Hi
Ei cos θi − E cos θ
r
r
k1
y=0
k1 cos θ r
Er
k1
k1 sin θ r
k1
Hr
θi θ r
x
z
θt
k2 sin θt
Ht
−k2 cos θt
k2
Et
Et cos θt
k2
Region(2) η 2
図 1 2 層媒質境界面 y = 0 における入射・反射・透過の解析モ
デル。入射電界の振幅を Ei , 反射電界の振幅を Er , 透過電界の
振幅を Et とする。入射角度・反射角度・屈折角度はそれぞれ θi ,
θr , θt であり,各領域の波動インピーダンスは η1 , η2 である。
図 1 に示す解析モデルにおいて,y = 0 面で電磁界接線成分連続性
の境界条件を適用するために,まず入射波のうち境界に対する接線
成分を導出する。領域 1 の入射電界振幅 Ei の x 成分は Ei cos θi と
なる。波数 k1 は図 1 左上のように分解して考えると,x 方向の波数
k1x = k1 sin θi , y 方向の波数 k1y = −k1 cos θi となるから*1 電界 x
成分は式 (1) となる。一方,入射磁界振幅 Hi = Ei /η1 はもともと境
界に対する接線成分になっているので,波数 k1 だけ成分分解して表
示すると式 (2) となる。
Exi (x, y) = Ei cos θi e−jk1 (x sin θi −y cos θi )
(1)
Ei −jk1 (x sin θi −y cos θi )
Hzi (x, y) =
e
(2)
η1
2. 反射波の接線成分
同じようにして領域 1 の反射波のうち,境界に対する接線成分を導出
する。反射電界振幅 Er の x 成分は −Er cos θr である。また,波数 k1
は図 1 右上のように分解して考えると,x 方向の波数 k1x = k1 sin θr ,
y 方向の波数 k1y = k1 cos θr となるから式 (3) となる。一方,磁界
振幅 Hr = Er /η1 はもともと境界に対する接線成分になっているの
で,波数 k1 だけ成分分解して表示すると式 (4) となる。
Exr (x, y) = −Er cos θr e−jk1 (x sin θr +y cos θr )
(3)
Er −jk1 (x sin θr +y cos θr )
r
Hz (x, y) =
e
(4)
η1
5. ブリュースター角
さて,反射係数の式 (18) で Γ = 0 とおけば無反射条件を導出できる。
η1 cos θi = η2 cos θt
(20)
式 (20) において右辺の cos θt を sin θt で表現し,式 (12) のスネルの
法則を代入して θt を消去すると √
√
k1 2
η1 cos θi = η2 1 − sin2 θt = η2 1 − 2 sin2 θi
(21)
k2
となる。両辺を 2 乗して整理すると次式
)(22) となる。
(
k1 2 2
2
2
2
η1 (1 − sin θi ) = η2
1 − 2 sin θi
(22)
k2
一般に,誘電体の透磁率は µr = 1 として扱えるので,上式は
ε2
sin2 θi =
(23)
ε2 + ε1
となる。これより無反射となる
(
) θi の条件は
3. 透過波の接線成分
最後に領域 2 の透過波のうち,境界に対する接線成分を導出する。透
過電界振幅 Et の x 成分は Et cos θt となる。また,波数 k2 は図 1 左
下のように分解して考えると,x 方向の波数 k2x = k2 sin θt , y 方向
の波数 k2y = −k2 cos θt となるから*2 式 (5) となる。一方,磁界振幅
Ht はもともと境界に対する接線成分になっているので,波数 k2 だけ
成分分解して表示すると式 (6) となる。
Ext (x, y) = Et cos θt e−jk2 (x sin θt −y cos θt )
(5)
Et −jk2 (x sin θt −y cos θt )
t
Hz (x, y) =
e
(6)
η2
θi = sin
以上で電磁界の接線成分がすべて求まった。
−1
√
1
1 + ε1 /ε2
√
= tan
−1
ε2
ε1
(24)
であることが分かる。この角度をブリュースター角と呼ぶ*5
4. 境界条件の適用
式 (1) 式 (3) の和と式 (5) に y = 0 面で電界接線成分の連続性を適用
し,式 (2) 式 (4) の和と式 (6) に y = 0 面で磁界接線成分の連続性を
*3
適用すると
Exi (x, 0) + Exr (x, 0) = Ext (x, 0)
番 氏名:
Hzi (x, 0) + Hzr (x, 0) = Hzt (x, 0)
(8)
が得られる。まず式 (7) より
Ei cos θi e−jk1 x sin θi − Er cos θr e−jk1 x sin θr
= Et cos θt e−jk2 x sin θt
(9)
式 (9) が任意の x に対して常に成立するためには,位相項が一致して
いることが必要である。即ち次式 (10) が得られる。
k1 sin θi = k1 sin θr = k2 sin θt
(10)
これを位相整合条件と呼ぶ。式 (10) は次の 2 つの条件を含んでいる。
θi = θr
(11)
k1 sin θi = k2 sin θt
(12)
式 (11) は入射角度 θi と反射角度 θr が常に等しいことを示しており,
式 (12) は入射角度 θi と屈折角度 θt の関係を示している。式 (11) を
反射に関するスネルの法則,式 (12) を屈折に関するスネルの法則と
呼ぶ*3 。式 (10) を式 (9) に代入すると
Ei cos θi − Er cos θr = Et cos θt
(13)
が 得 ら れ る 。式 (13) の 両 辺 を Ei で 割 り ,反 射 係 数*4 を Γ =
−Er /Ei , 透過係数を T = Et /Ei とおくと
cos θi + Γ cos θr = T cos θt
(14)
が得られる。同じようにして磁界接線成分の連続性を示す式 (8) より
次式 (15) が得られる。
Er −jk1 x sin θr
Et −jk2 x sin θt
Ei −jk1 x sin θi
e
+
e
=
e
(15)
η1
η1
η2
式 (15) が任意の x に対して常に成立するためには式 (10) と同じ位相
整合条件が必要であり,これを考慮すると式 (15) は
Ei
Er
Et
+
=
(16)
η1
η1
η2
となる。式 (16) の両辺を Ei で割り,反射係数を Γ = −Er /Ei , 透過
係数を T = Et /Ei とおくと
1
1
1
− Γ=
T
(17)
η1
η1
η2
が得られる。最終的に式 (14) と式 (17) を連立させることにより,斜
入射の反射係数 Γ と透過係数 T は次のように求まる。
−η1 cos θi + η2 cos θt
Γ=
(18)
η1 cos θi + η2 cos θt
2η2 cos θi
T =
(19)
η1 cos θi + η2 cos θt
1. 入射波の接線成分
k1 sin θi
年
*4
(7)
y 方向の波数 k1y は本来の座標系と逆向きになるので − が付くことに注
意。さらに x 方向の位相項は e−jk1x x = e−j(k1 sin θi )x であり y 方向の位
相項は e−jk1y y = e−j(−k1 cos θi )y であるから,両者をまとめた位相項は
e−jk1x x e−jk1y y = e−jk1 (x sin θi −y cos θi ) となる。
*2 y 方向の波数 k2y は本来の座標系と逆向きになるので − が付くことに注意。
*5
*1
Snell, Willebrord van Roijen, オランダの数学者でライデン大学教授。
1621 年にスネルの法則を発見した。偏見で見ると相手は拗ねる。
i と E r の符号が逆になるように定義しているた
図 1 において,接線成分 Ex
x
め,反射係数 Γ には − が付くことに注意。これを避けるには,予め図 1 にお
いて磁界反射波 Hr だけ ⊙ から ⊗ に反転して定義しておくとよい。
Brewster, Sir David, スコットランドの物理学者。1815 年にブリュース
ターの法則を発見。この角度で入射された電磁波は,すべて透過して反射波
を生じない。これは,本来あるはずの反射波の方向が透過波の電界振動方向
(ダイポールは直角方向には放射しない) とちょうど一致するためである。即
ち,本来あるはずの反射波の方向と透過波の方向は直角である。
1
Region(1) η1
Region(1) η1
y
Ei
k1
Hi
θt
θi θ r
y=0
x
z
Hr
k1
θi θ r
y=0
k1
Hi
Hr
k1
y
Ei
θt
Et
Ht
x
z
Et
Ht
k2
Region(2) η 2
k2
Region(2) η 2
図 2 2 層媒質境界面 y = 0 における入射・反射・透過の解析モ
図5
デル。入射電界の振幅を Ei , 反射電界の振幅を Er , 透過電界の
デル。入射電界の振幅を Ei , 反射電界の振幅を Er , 透過電界の
振幅を Et とする。入射角度・反射角度・屈折角度はそれぞれ θi ,
振幅を Et とする。入射角度・反射角度・屈折角度はそれぞれ θi ,
θr , θt であり,各領域の波動インピーダンスは η1 , η2 である。
θr , θt であり,各領域の波動インピーダンスは η1 , η2 である。
2 層媒質境界面 y = 0 における入射・反射・透過の解析モ
㻝
㻝
ε r = 81
㻜㻚㻤
㻜㻚㻢
㻜㻚㻤
㼨䂳㼨
ε r = 10
㼨䂳㼨
ε r = 81
㻜㻚㻢
ε r = 10
㻜㻚㻠
㻜㻚㻠
εr = 2
㻜㻚㻞
㻜㻚㻞
εr = 2
㻜
㻜
㻜
㻝㻡
㻟㻜
㻠㻡
㻢㻜
䃗㼕㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
㻣㻡
㻜
㻥㻜
㻝㻡
㻟㻜
㻠㻡
㻢㻜
䃗㼕㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
㻣㻡
㻥㻜
図 6 2 層媒質境界面 y = 0 における反射係数の絶対値。点線は
反射係数が − であり,実線は反射係数が + でることを示す。領域
1 の比誘電率を εr = 1 とし,領域 2 の比誘電率を εr = 2, 10, 81
とした場合を示す。(空気から誘電体への入射)
2 の比誘電率を εr = 1 とし,領域 1 の比誘電率を εr = 2, 10, 81
とした場合を示す。(誘電体から空気への入射)
㻥㻜
㻥㻜
㻣㻡
㻣㻡
εr = 1
㻢㻜
䃗㼠㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
䃗㼠㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
図 3 2 層媒質境界面 y = 0 における反射係数の絶対値。点線は
反射係数が − であり,実線は反射係数が + でることを示す。領域
εr = 2
㻠㻡
㻟㻜
ε r = 10
㻝㻡
ε r = 81
ε r = 10
εr = 2
㻢㻜
εr = 1
㻠㻡
㻟㻜
㻝㻡
ε r = 81
㻜
㻜
㻜
㻝㻡
㻟㻜
㻠㻡
㻢㻜
䃗㼕㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
㻣㻡
㻜
㻥㻜
㻝㻡
㻟㻜
㻠㻡
㻢㻜
䃗㼕㻌㼇㼐㼑㼓㼞㼑㼑㼉
㻣㻡
㻥㻜
2 層媒質境界面 y = 0 における屈折角の変化。領域 1 の比
図 7 2 層媒質境界面 y = 0 における屈折角の変化。領域 1 の比
誘電率を εr = 1 とし,領域 2 の比誘電率を εr = 1, 2, 10, 81 と
誘電率を εr = 1 とし,領域 2 の比誘電率を εr = 1, 2, 10, 81 と
した場合を示す。ε1 < ε2 では,常に θi > θt である。(空気から
した場合を示す。ε1 > ε2 では,常に θi < θt で θt = 90◦ を臨界
誘電体への入射)
角 (critical angle) と呼ぶ。(誘電体から空気への入射)
図4
2