通信方式 これを瞬時周波数 w i と呼ぶことにする。これは、位相角の時間変化率(角速度である)。 t q (t) = -• wi d t . (3-29) E39 位相角−瞬時周波数の関係と、位置−速度との関係の類似性について確認せよ。 3.3.2 角度変調の基本式 位相変調(PM:Phase Modulation) 周波数変調(FM:Frequency Modulation) 瞬時周波数w iを信号に比例させる。 位相角 q (t) を信号に比例させる。 w i = w c + k f f (t) ,(3-30a) q (t) = w c t + j 0 + kp f (t) ,(3-30b) ここで、w c:搬送角周波数(中心周波数)、 kf : ここで、j0:初期位相(ゼロとしてよい) 、kp:定 数。よって、瞬時周波数w i は、 定数である。従って、位相角q (t) は、 t q (t) = -• w i ∫ d q (t) dt wi d t t = w c t + j 0 + kf -• f (t) d t ,(3-31a) 微分 = w c + k p d f (t) , dt (3-31b) となる。 (3-26)式を用いて FM 波(被変調波) となる。(3-26)式を用いて PM 波(被変調波) fFM (t) を表すと、次のようにな る。 fPM (t) を表すと、次のようになる。 積分 fPM(t) = A cos wct+kp f(t) , t fFM (t) = A cos w ct + k f , (3-32a) f (t) d t -• ここで j0=0とした。さらに、複素数で考える ために、複素 PM を次のように表す。 ここで j0=0とした。さらに、複素数で考え るために、複素 FM 波を次のように表す。 t fFM(t) = A e j (wct + kf (3-32b) f (t) dt ) -• , fPM(t) = A ej (wct + kp f (t) dt ) , (3-33a) (3-33b) 3.3.3.狭帯域 FM FM 方式において、 kf f (t) を周波数偏移(frequency deviation)と呼ぶ。中心周波数 w c に対して kf f (t) が小さい FM 信号(kf f (t) /w c ≪ 1)を、狭帯域 FM 信号と呼ぶ。式を見易くするために、 t g(t) ∫ kf f (t) d t , (3-34) -• とおく。 kf f (t) /w c ≪1 であるから、Tayler 展開すると、 (3-33a)式は次のようになる。 fFM(t) ~ A 1+j◊g (t) e jw t , (3-35) 従って、 23 通信方式 fFM (t) = Re fFM (t) = A cosw c t - A g(t) sinw c t , (3-36) この式を、AM 波の(3-10)式と比較してみる。 fAM(t) = A cos wct + f (t) cos wct , (3-10) すなわち、狭帯域 FM 波は、搬送波および sin を使った g (t) の DSB-SC 波との足し合わせであること が分かる。また、狭帯域FM波のスペクトラムFFM(w) は以下のように書ける。 FFM(w) = p A d (w - w c))+d (w + w c)) + j 1 A G (w - w c) - G (w + w c)) .(3-37) 2 ここで、G (w ) = kf F (w )であるか ら、G (w)の「帯 jw -p 2 域」は、F (w )の帯域に等しい。 cos w ct B-Mixer 積分器 E40 f (t) = cos wmt としたとき、 (3-36)式は、以 S NB-FM f (t) 下のようになることを確かめよ。 fFM (t) = A cos wct (a)狭帯域FM波の発生法 + A kf cos w c + w m t - A kf cos w c - w m t 2w m 2w m -p 2 (3-38) B-Mixer cos w ct また、ここで右辺第 1 ∼ 3 項は、それぞれ、搬送 波、上側波帯、下側波帯に対応することを確認 せよ。 S NB-PM f (t) E41 正弦波 A cos w ct は、振幅 A で角速度 w c で 反時計回りに回転しているベクトルの実軸への 射影と考えることができる。AM 波((3-10)式)、 および狭帯域 FM 波((3-38)式)を、同様の考 え方でベクトル表示せよ。 図31 平衡変調器を用いた狭帯域角度変調信号の 発生法 w i Dw 3.3.4 広帯域FM波とその帯域 w C kf f (t) /w c ≪ 1が成り立たなくなると、FM 波の正 確なスペクトラム、 あるいは占有帯域幅を厳密に求 めることは、ほとんど不可能になる。ここでは、以 下の2つの近似的アプローチについて取り扱う。 t w i 疑似FM信号 ! 擬似 FM 信号による近似 元の信号 f(t) がwm ( =2p fm) に帯域制限されてい w るとすると、標本化定理の適用が可能となる。 FM 方式では、瞬時周波数を信号に比例して連続 的に変えるのであるが、疑似 FM 信号とは、各標 本化間隔では、標本値 fk に対応した瞬時周波数 w i = w c + k f fk を発生する。 ここで、 C 1 = p 2 fm wm t 図32 瞬時周波数、最大周波数偏位と、 「疑似FM信号」。 24 通信方式 1 = p 2 fm wm F( ) w 2wm 2 Dw 2wm wi t w wc 図 33 (a)疑似 FM 信号の波形と、 (b)1 標本区間のスペクトルとその変化。 D w = kf f(t) MAX ,(3-39) を最大周波数偏移(maximum frequency deviation)と呼ぶ。図 33(a)に疑似 FM 信号の波形を示 す。1標本区間に注目すると、これはその標本区間の瞬時周波数 wi を搬送波として、幅 p/wm のゲー ト関数で AM 変調されたものであるので、そのスペクトルは中心周波数が wi のサンプリング関数 となる。サンプリング関数の中心のスペクトル広がりは 2wm × 2 であり、それが中心周波数 wc の周 りで最大周波数偏移の 2 倍の範囲で偏移する。したがって、帯域Wはおおよそ以下のようにして見 積もることができる。 W ~ 2 D w + 4 w m ~ 2 D w (3-40) E40 標本化関数のスペクトラムで、中心から 4 w m 以内のスペクトラム密度を積分すると、全体の何 パーセントになるか? " 単一周波数の信号の場合の検討 信号を、 f(t) = a cos wmt , (3-41) とする。そうすると、複素 FM 波((33 3 a ) 式)は、 fFM (t) = A ej (wct +mf sin wmt) , (3-42) と書ける。ここで、mf は FM における変 調指数と呼ばれる。 mf = D w . wm (3-43) 図34 第1種ベッセル関数 (3-42)式の指数部第2項は、T = 2p の wm 周期関数である。従って、これはフーリエ級数に展開することができる。 fFM (t) = A ejwct F n = wm 2p T 2 •  n= -• (3-44) F n ej nw m t , ej mf sin wmt • e-jnwmt dt = Jn (mf). (3-45) -T 2 Jn (mf) は、図 34 に示した第1種 Bessel 関数(n は次数)である。よって、 ここで、 25 通信方式 図35 単一周波数で変調したFM波の(大きさの) スペクトルと変調指数との関係。 fFM (t) = A J0 (mf) cos wct + A J1(mf) cos(w c+ w m)t - cos(w c- w m)t + A J2(mf) cos(wc+2wm)t + cos(wc-2wm)t + ・・・・・・・・ (3-46) E41 (3-46)式をスペクトラムで表せ。 E42 m f << 1のとき、狭帯域 FM 波(3-38)式と一致することを確認せよ。 さて、E41の結果を基に、FM波の帯域幅を検討してみよう。Jn (mf) は、m f >> 1のとき、次数 n > mf の項は無視できるほど小さいので、側帯波の数は、 (3-46)式から明らかなように、両側にそれぞれ mf 個ずつ考えればよい。また、側帯波の間隔はw m である。従って、帯域幅は以下のように見積も ることができる。 (3-47) W ~ 2 n w m = 2 mf w m = 2 D w . 3.3.5 FM 波の側波帯電力 (3-46)式は、 • fFM (t) = A Jn (mf ) cos(wc+n wm)t , -• (3-46’) であり、この信号の平均電力(二乗平均値)は次のようになる。 fFM(t) = A 2 2 2 • J2n(mf) = A  2 n= -• 2 . (3-48) ここで、n=0 は搬送波成分で、AM 方式の場合と同様に情報は含まれていない(3.2.4(iv)参照)。従っ て、情報の伝送効率ηは、 26 通信方式 h= (A2/2) 1-J02 (mf) 2 , (3-49) A /2 J0 (mf) = 0 となるように、変調指数 mfを選べばよ で与えられる。ηを最大値(= 100%)にするには、 いことがわかる。 E43 図 34 のベッセル関数のグラフから、mf = 2.405、5.52、・・・・・のときη =100%になることを 確かめよ。 3.3.6 非線形変調と FM 波の複雑さ AM 方式では、2つの異なる周波数の信号で変調したスペクトルは、個々の信号で独立に変調した場合 のスペクトルの単純な和になる。すなわち、周波数移動において「線形性」が成り立つ。それでは、FM 方式の場合はどうであろうか? 3.3.4 " で行った取り扱いを、単一周波数から、2つの周波数成分をもっているものに拡張してみる。 f (t) = a1 cos wm1 t + a2 cos wm2 t . (3-50) このとき、瞬時周波数w 1 は次のようになる。 w 1 = w c + k f f(t) = w c + kf (a1 cos w m1 t + a2 cos w m2 t). (3-51) 従って、 t w i dt q (t) = -• = w c t + m f1 sin w m 1 t + m f2 sin w m 2 t , (3-52) ここで、mf1 = a1kf 、 mf2 = a2kf である。従って、複素 FM 波は(3-42)式と同様に次のようになる。 wm1 wm2 fFM (t) = A • ej(wct + mf1• sin wm1t + mf2• sin wm2t ) . (3-53) 指数部第2項、第3項がそれぞれ周期関数であるので、 (3-44)式のように、それぞれ Bessel 関数を係 数にもつフーリエ級数に展開できる。 • fFM (t) = A • ejwt  F n • ejnw m1t -• •  F k • ejkwm2t -• fFM (t) = Re fFM (t) • =A  •  Fn Fk cos ( w c + nw m1 + kw m2 )t -• -• .(3-54) E44 (3-54)式は、単一周波数で変調した場合のスペクトルの単なる和ではなく、2つの信号の周波 数が混合(例えば、和周波数w m 1 + w m 2 、あるいは差周波数w m 1 - w m 2 )された成分も含んだ形になって いることを確認せよ。(周波数の混合→非線形変調) E45 AM方式では、スペクトルに重ねの理が成り立つことを確かめよ。 27 通信方式 3.3.7 FM信号の発生 ! FM 波間接発生方式 変調指数の小さな、言い換えれば狭帯域 FM 波は、図 31 に示したように、平衡変調器を用いて発生 できる。狭帯域 FM は波をベースに、周波数逓倍をくり返すことによって、変調指数を大きくして いく方法を、アームストロングの間接 FM 方式と呼ぶ。図 36 に、この方法を模式的に示す。 E46 周波数逓倍することによって、変調指数が大きくなることを確認せよ。 図36 アームストロングの間接FM方式。 " FM 波直接発生方式 入力信号に対して、直接 FM 信号を発生するための回路 は、図 37 に示した LC 同調発振器の、C または L が電圧ま たは電流に対して変化させる。可変容量ダイオードを C と して用い留のが一般的である。また、FET を用いて可変リ アクタンス回路を構成したり、マルチバイブレータの発振 図37 LC同調発振器 周波数を入力電圧により変化させる回路も用いられる。こ れらは、電圧制御形発振器(VCO)として直接 FM 波を発生する。 3.3.8 FM 信号の復調 FM 方式の基本(式(3-30a))に立ち返れば、信号を 復元するには瞬時周波数を検出し、それに比例した 出力を出す回路があればよい。この働きをする検波 器を、周波数弁別器(frequency discriminator)と呼 ぶ。 理想的な周波数弁別器は次の特性を備えている。 eo ∼ wi , (3-55) 最も単純な回路は、図 38 に示したように、伝達特性 図38 傾斜検波器 が周波数に右上がりになった回路(傾斜検波器)で ある。 これは一種の微分回路である。従って、FM 波の時間微分を考えると、 t fFM = A cos [ w ct + kf f(t) dt ] -• t dfFM = - A [ w +k f(t) ] • sin [ w c t + kf c f dt f(t) dt ] , -• 28 (3-56) 通信方式 (3-56)式は、大電力搬送波を含む AM 波 の形になっている。その包絡線は、DC 分(A w c)と信号に比例した成分 kf f (t) から成っている。従って、これを包絡線 検波すれば、復調が完了する。 さて、単純な CR による微分回路では、 図38に示したように、高帯域では周波数 弁別の線形性はよくない。これを改善す るためには、図 39 に示すような、お互い に若干離調した同調回路を相補的に組み 合わせるとよい。代表的な回路に、フォ スターシーリーの回路がある。 図39 高帯域周波数弁別回路と フォスターシーリの復調回路 3.4 アナログ変調と雑音 3.4.1 帯域通過雑音 変調信号は伝送の途中に各種雑音の影響を受ける。一般に、雑音にはあらゆる周波数成分が含まれて いる。既にみたように、AM 波は DSB の場合、搬送周波数 wc を中心として信号の最大周波数成分の 2 倍 2wm の帯域、SSB においては wc の上下いずれかの wm 帯域を使って伝送される。一方、FM 波は wc を中心として最大周波数偏移の約 2 倍( 2Dw )が伝送帯域となる。すなわち、変調後の信号のスペ クトルはある帯域内に限られているといってよい。 従って、受信機では、その入口において変調信号 の帯域幅に一致する帯域通過フィルタをおき、不 要な成分は取り除く。雑音も変調信号の帯域の外 側の成分は取り除かれるので、 「帯域通過雑音」と なる。そこで DSB を想定し、帯域通過雑音 n (t) [ wc - wm , wc + wm ]の性質について考えてみる。 2 cos w c t cos w c t [ 0, w m ] nc(t ) n (t ) n (t ) S [ 0, w m ] まず、帯域通過雑音は、 (3-57)式のように、振幅 の揺らいだ2つの直交した搬送正弦波の和の形で 表すことができる。 n (t) = nc (t) cos w ct + ns (t) sin w ct , (3-57) ここで、nc (t)およびns (t) は図40で示したように、伝送帯域 29 ns (t ) 2 sin w c t sin w c t 図40 帯域通過雑音とベースバンド 揺らぎ成分への分解。
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