(,( = dx xyd dx xyd dx xdy xyxG L )( xfy = dx xyd)( L 0)( )( )( = + + xy dx

物理数学基礎
ノート
No.0 (番外)
【微分方程式】
・微分方程式
常微分方程式(独立変数 1 つ)
偏微分方程式(独立変数 2 つ以上)*
*
後半に堀内先生が担当.基礎として常微分方程式の知識が必要.
このプリントでは常微分方程式について解説する.
【1】定義
①常微分方程式とは?
dy ( x) d 2 y ( x)
d n y( x)
L
,
,
,
)=0
dx
dx 2
dx n
となる方程式を, x に関する y の常微分方程式と呼ぶ.“微分方程式を解く”とは,上記方
程式を満たす関数 y = f (x ) を求めることである.これを与方程式の“解”と呼ぶ.ここで,
G ( x, y ( x ),
導関数
d n y( x)
の階数をこの微分方程式の“階数”と呼ぶ.
dx n
ex.)
d 2 y ( x) dy ( x)
dy ( x )
+
+ y( x) = 0L 2 階
+ y ( x) = 0L 1 階,
dx
dx
dx 2
②線形微分方程式
以下のように書ける微分方程式を線形微分方程式と呼ぶ.
d n y ( x)
d n −1 y ( x)
d 2 y ( x)
dy ( x )
L
+
+
+ a1 ( x)
+ a 0 ( x) y ( x ) = g ( x )
an ( x)
a n −1 ( x )
a 2 ( x)
n
n −1
2
dx
dx
dx
dx
いま, g ( x) = 0 の場合を考える.
d n y ( x)
d n −1 y ( x)
d 2 y ( x)
dy ( x)
+
+
L
+ a1 ( x)
+ a 0 ( x) y ( x ) = 0
a
(
x
)
a
(
x
)
n −1
2
n
n −1
2
dx
dx
dx
dx
f1 ( x ), f 2 ( x) がこの方程式の解であるすると, pf1 ( x ) + qf 2 ( x ) ( p, q は任意の定数)もそ
の解となり,解空間に線形性が存在する(重ね合せの原理が適用できる)
. a n ( x ),L , a0 ( x )
an ( x)
が定数である場合,上記方程式を定係数線形微分方程式と呼ぶ.この方程式は実用上有用で
ある.
ex.)
d 2 y ( x)
dy ( x)
+a
+ by ( x) = g ( x )
2
dx
dx
dy ( x )
+ ay ( x ) = g ( x)
dx
③同次,非同次
微分方程式中の y (x) およびその導関数を含まない項,言い換えるなら x およびその関数
のみの項に注目する.この項を持つものを非同次方程式,持たないものを同次方程式と呼
ぶ.同次・非同次により方程式の解法に大きな相違が生じる.
ex.)
d 2 y ( x)
dy ( x )
+a
+ by ( x) = 0
2
dy
dx
…
同次
d 2 y ( x)
dy ( x)
+a
+ by ( x ) = g ( x) … 非同次
2
dy
dx
④線形微分方程式の一般解(同次方程式)
dy ( x)
d n y ( x)
L
, ,
) = 0 について考える.
dx
dx n
この方程式を満たす関数 y = f (x ) が求まる場合,これを与同次微分方程式の解と呼ぶ.ま
同次微分方程式 G ( y ( x ),
た,線形独立な解を階数だけ線形結合したものを,上同次方程式の“一般解”と呼ぶ.
dy ( x)
d 2 y ( x)
+a
+ by ( x) = 0 → y ( x) = c1 f 1 ( x) + c 2 f 2 ( x)
2
dy
dx
ここで, f1 ( x ) および f 2 ( x) は上方程式の解, c1 , c 2 は未定係数(積分定数)である.
ex.)
⑤初期条件,境界条件と特別解
dy ( x )
= γ L のように,特定の一つの x について y (x) やその導関
dx
数の値が与えられているときに,これを初期条件と呼ぶ.特定の二つの x について,y (x) や
x = α において y = β ∧
その導関数の値が与えられている場合,これを境界条件と呼ぶ.どちらも方程式の階数と
同じ数だけの条件が,方程式の未定係数を決定するのに必要となる.
初期条件や境界条件を用いて未定係数を一意に定めた解を“特別解”と呼ぶ.
dy ( x)
= 0 …初期条件
dx x = 0
y (0) = 0 ∧ y (1) = 1 …境界条件
ex.) y (0) ∧
【2】一階微分方程式
①変数分離形
dy
= g ( x) ⋅ h( y ) と書ける一階微分方程式を“変数分離形”と呼ぶ.この形の方程式は,分
dx
母の移項により
1
dy = g ( x )dx
h( y )
と変形し,積分することによって,
dy
∫ h( y ) = ∫ g ( x)dx
となり,それぞれ積分すると,
H ( y ) + c1 = G ( x ) + c 2
となる.ここで, H ( y ) は
1
の, G (x) は g (x) の定積分, c1 , c 2 は積分定数である.し
h( y )
たがって, y = H −1 (G ( x ) + c) とし一般解を求めることができる.ここで c は c 2 − c1 を表し
ている.
ex.1)
dy
=x
dx
∫ dy = ∫ xdx
Ans.
ex.2)
∫
Ans.
よって y =
1 2
x +c.
2
dy
=y
dx
dy
= dx,
y ∫
よって log y + c1 = x + c 2 ,したがって y = ce x .
②同次形
dy
y
= g ( ) と書ける一階微分方程式を同次形と呼ぶ.この場合, y = u と置くと, y = xu
x
dx
x
と変形でき,よって, y ′ = u + xu ′ より, u + xu ′ = g (u ) と書ける.従って,変数分離形と
なり
du
∫ g (u ) − u = ∫
dx
,これを解くことにより一般解が求まる.
x
dy x + y
=
dx
x
Ans. g (u ) = 1 + u
ex.)
du
∫ 1+ u − u = ∫
なので,
dx
x
よって u = log x + c .従って,
y = xu = x(log x + c) .
③線形微分方程式
dy
+ a( x) y = b( x) と書ける方程式を一階線形微分方程式と呼ぶ.
dx
この場合,両辺に e ∫
e∫
a ( x ) dx
a ( x ) dx
をかけると,
a ( x ) dx
a ( x ) dx
dy
+ a ( x) e ∫
y = b ( x )e ∫
dx
となり,微分公式より
a ( x ) dx
a ( x ) dx
d
( ye ∫
) = b ( x )e ∫
dx
となるので変数分離形に持ち込める.
よって, ye ∫
a ( x ) dx
= ∫ b( x) e ∫
a ( x ) dx
dx + c
一般解は
a ( x ) dx
− a ( x ) dx
y=e ∫
( ∫ b ( x )e ∫
dx + c )
④一般解における積分定数の数と,特別解を求めるために必要な初期条件・境界条件の数
微分方程式を解くプロセスで,方程式の階数だけ不定積分を行うため,この分の積分定
数が生じる.例えば,一階の微分方程式では c1 ,二階の微分方程式では c1 , c 2 という積分定
数が一般解中に生じる.特別解を求めるためには,この積分定数を決定するだけの初期条
件か境界条件が必要となる.従って,一階の微分方程式の場合は条件が一つ,二階の場合
は二つ必要になる.二階の微分方程式の場合,初期条件では f ( x 0 ) = a ∧ f ′( x 0 ) = b のよう
に二つの組み合わせ,もしくは境界条件として f ( x 0 ) = a ∧ f ( x1 ) = b のような組み合わせ
が必要となり,このとき全ての積分定数を決定できる.
⑤一階微分方程式の実例
Q.1 下図のような CR 回路を考える. t = 0 でスイッチを ON した.このときのコンデンサの
電荷 Q (0) は 0 である.この条件における電流 I (t ) ,およびコンデンサの電圧 V (t ) の時間変
化を求めよ.
I(t
)
R
E
C
A.1
キルヒホッフの法則により上回路では次式が成立する.
1 t
I (t )dt
C ∫0
E = I (t ) R +
t
Q ∫ I (t )dt = Q(t )
0
よって,上式を微分すると,
R
dI (t ) 1
+ I (t ) = 0
dt
C
と一階の微分方程式が得られる.
これを変形すると,
∫
dI (t )
dt
= −∫
.
I (t )
RC
よって, log I (t ) = −
t
+ α となる.ここでαは積分定数である.
RC
したがって, I (t ) = β e
−
t
RC
となるが,ここでβは別の積分定数を表している.
初期条件より, Q (0) = 0 .
以上より
β=
t
E
.したがって特別解は,
R
E − RC
e
R
となる.また Q(t ) は
I (t ) =
よって, E = I (0) R .
t
t
τ
−

−

RC
RC
Q (t ) = ∫ I (t )dt = − CEe  = CE (1 − e )
0

0
t
となる.
E
R
I(t)
CE
Q(t)
Time
(3)二階線形微分方程式
① 定係数二階同次微分方程式
d2y
dy
+ a + by = 0 と書ける方程式を,定係数二階同次線形微分方程式と呼ぶ.この方程
2
dx
dx
式の一般解を求めるために,幾つかの補題を証明する.
a.線形性
y = f1 ( x) お よ び y = f 2 ( x ) が 上 記 方 程 式 の 解 で あ る 場 合 , α, β を 任 意 定 数 と し た
y = αf1 ( x) + βf 2 ( x) も解である.
Pr.)
d2
d
(αf 1 ( x ) + βf 2 ( x)) + a (αf1 ( x) + βf 2 ( x)) + b(αf1 ( x) + βf 2 ( x ))
2
dx
dx
d 2 f1 ( x )
df1 ( x)
d 2 f 2 ( x)
df ( x)
= α(
+a
+ bf1 ( x)) + β (
+α 2
+ bf 2 ( x ))
2
2
dx
dx
dx
dx
=0
Q f 1 ( x ), f 2 ( x ) は方程式の解である.
■
b.特性方程式と解
d2y
dy
上記方程式の
を p2 ,
を p , y を1で置き換えた方程式 p 2 + ap + b = 0 を,与
2
dx
dx
px
p x
方程式の特性方程式と呼ぶ.この解を p1 , p 2 とした場合,y = f1 ( x ) = e 1 , y = f 2 ( x) = e 2
は,上記方程式の解である.
Pr.)
d 2 px
d
e + a e px + be px = p 2 e px + ape px + be px = e px ( p 2 + ap + b) = 0
2
dx
dx
■
c.解の独立性
u ( x), v ( x ) を考える.同時に 0 でない 2 つの定数 c1 , c 2 について,
c1u ( x ) + c 2 v( x) = 0 を恒等的に満たす c1 , c 2 の組み合わせが存在した場合,
“ u ( x), v ( x ) は一
次従属である”と言う.また,これ以外の場合,“ u ( x), v ( x ) は一次独立である”と言う.一
二階線形微分方程式の解
次独立は言い換えるなら,同時に 0 でない,いかなる c1 , c 2 の組み合わせをもってしても,
c1u ( x ) + c 2 v( x ) ≠ 0 となる x が存在する,という意味となる.
d.ロンスキー行列式(ロンスキヤン)
二つの関数 p( x), q ( x ) の行列式
w( p ( x ), q( x)) =
p ( x ) q( x )
= p ( x )q ′( x ) − p ′( x )q( x)
p ′( x)q ′( x )
を p( x), q ( x ) のロンスキー行列式(別名ロンスキヤン)と呼ぶ. u ( x), v ( x ) について,その
ロンスキー行列 w(u ( x ), v ( x)) を 0 にしない x = x 0 が存在した場合, u ( x), v ( x ) は一次独立
である.ただし,ここで u ( x), v ( x ) は恒等的に 0 ではないとする.
補題: u ( x), v ( x ) が一次従属ならば, x について恒等的に w(u ( x ), v( x)) = 0 である.
Pr.)一次従属の定義より,恒等的に c1u ( x ) + c 2 v( x) = 0 となる,同時に 0 でない c1 , c 2 の組
み合わせが存在する.上式を微分すると c1u ′( x) + c 2 v ′( x) = 0 となり,これも恒等的に成立す
るので,
 u ( x ) v ( x)  c1   0 

  =   .
 u ′( x) v ′( x)  c 2   0 
従って, W (u ( x ), v ( x )) ≠ 0 となる x = x 0 が存在すると,
− v( x 0 )  0   0 
 v ′( x 0 )  c1 
1
  =  

  =
 c 2  w(u ( x0 ), v ( x 0 ))  − u ′( x 0 ) u ( x0 )  0   0 
となり c1 = c 2 = 0 であり矛盾する.従って,W (u ( x ), v ( x )) ≠ 0 となる x = x 0 は存在しない.
つまり x について恒等的に W (u ( x), v( x)) = 0 である.
■
定理: W (u ( x ), v ( x )) ≠ 0 となる x = x 0 が存在すれば, u ( x), v ( x ) は一次独立である.
Pr.)上記補題の対偶をとれば明らか.
∀
u ( x), v ( x ) が一次従属 →
u ( x), v ( x ) が一次独立 ←
∃
x : W (u ( x ), v ( x)) = 0
x : W (u ( x), v( x )) ≠ 0
■
e.二階線形同次微分方程式の一般解
定係数二階線形同次方程式
d2y
dy
+ a + by = 0
2
dx
dx
を考える.特性方程式を解くことにより,この解を p1 , p 2 とした場合,y = f1 ( x ) = e
び y = f 2 ( x) = e
W (e
p1 x
,e
p2 x
)=
p2 x
p1 x
およ
は前述のように与方程式の解である.このロンスキー行列式は,
e p1 x e p2x
p1e
p1 x
p2 e
p2 x
= ( p 2 − p1 )e ( p1 + p2 ) x
となが, p1 , p 2 が異なる実数解の場合は W (e
p1 x
, e p2 x ) ≠ 0 なので f1 ( x ), f 2 ( x) は一次独立
である.
いま与微分方程式の任意の解を y = f (x ) と表すことにする.特定の x = x 0 において,
f ( x0 ) および f ′( x0 ) は特定の値を持つが,これが一次独立な f1 ( x ) と f 2 ( x) の線形結合
c1 f 1 ( x) + c 2 f 2 ( x ) および c1 f '1 ( x ) + c 2 f 2′ ( x) によって表現できるであろうか?言い換える
なら,任意の解 f (x ) について,
f ( x 0 ) = c1 f1 ( x0 ) + c 2 f 2 ( x 0 )
f ' ( x 0 ) = c1 f '1 ( x0 ) + c 2 f ' 2 ( x0 )
となる x0 , c1 , c 2 の組み合わせが常に存在するであろうか?実はこれは存在する.なぜなら
ば f1 ( x ), f 2 ( x) は一次独立なので W = ( f1 ( x), f 2 ( x )) ≠ 0 となる x = x 0 が存在する.よって
− f 2 ( x0 )  f ( x 0 ) 
 f 2′ ( x0 )  c1 
1



  =
 c 2  w( f1 ( x 0 ), f 2 ( x0 ))  − f '1 ( x1 ) f1 ( x 0 )  f ' ( x0 ) 
となる.
ところで f (x ) は与微分方程式(二階)の解なので,初期条件,例えば上記の x = x 0 にお
ける値 f ( x0 ) ,および微係数 f ′( x0 ) が与えられれば,その他の f (x ) は全て決定する.また,
上記の c1 , c 2 を用いた線形結合 c1 f 1 ( x) + c 2 f 2 ( x ) を ϕ (x ) と表現すると,与微分方程式の線
形性よりこれも解であり,その関数形は ϕ ( x 0 ) および ϕ ′( x 0 ) が与えられれば一意に決定す
る.ところが, f ( x 0 ) = ϕ ( x 0 ) かつ f ′( x0 ) = ϕ ′( x 0 ) であり,かつ同一の初期条件を持つ異
なる二解は存在しないので, f ( x) = ϕ ( x ) ,すなわち任意の x について,
f ( x) = c1 f1 ( x) + c 2 f 2 ( x)
が成立し,与微分方程式の任意の解は上式により表現できることになる.これを二階線形同
次微分方程式の一般解と呼び
y = c1e p1 x + c 2 e p2 x
と表現することができる.
p1 , p 2 が異なる複素数解の場合も明らかに W (e p1 x , e p2 x ) ≠ 0 となる.したがって,解は
y = c1e p1 x + c 2 e p2 x の形で書け, p1 = α + iβ と置くと,複素共役性から p 2 = α − iβ .従っ
て一般解は
y = c1e (α +iβ ) x + c 2 e (α −iβ ) x = e αx {(c1 + c 2 ) cos β x + i (c1 − c 2 ) sin β x} = e αx (c 3 cos β x + c 4 sin β x)
となり,振動解となる.ここで, c3 = c1 + c 2 , c 4 = i (c1 − c 2 ) であるが,解が実数である
必 要 性 が あ る 場 合 は 両 者 と も 実 数 と な る . こ の 場 合 , φ を c3 , c 4 の 偏 角 , 並 び に
2
2
c = c 3 + c 4 とすると,一般解は
2
2
y = e αx (c3 cos βx + c 4 sin βx ) = e αx c 3 + c 4 sin( β x + φ ) = ce αx sin( β x + φ )
と表される.
p1 , p 2 が同一の実数解の場合, e p1 x 以外にも, xe p1 x も与微分方程式の解であり,かつロ
ンスキ行列式が0で無いので一次独立となる.したがって,一般解は,
y = (c1 + c2 x )e p1 x
と書ける.
② 定係数二階非同次微分方程式
定係数の二階非同次微分方程式
d2y
dy
+ a + by = g ( x )
2
dx
dx
を考える.この微分方程式を満たす関数 u (x) が,とにかく一つ見つかった場合に,これを“特
殊解”という.与方程式の一般解は,同次方程式
d2y
dy
+ a + by = 0
2
dx
dx
の一般解 f (x ) と u (x) の和, f ( x ) + u ( x ) となる.たとえば, f ( x) = c1 f1 ( x) + c 2 f 2 ( x) と
書ける場合,与非同次方程式の解は
y = c1 f 1 ( x) + c 2 f 2 ( x) + u ( x )
と表現できる.
Pr.)
d2y
dy
+ a + by = g ( x ) の一般解を h(x) と表すことにする.z ( x ) = h( x) − u ( x) と定義する
2
dx
dx
と,
d (h( x) − u ( x ))
d 2 (h( x) − u ( x))
dz ( x )
d 2 z ( x)
+
+
(
)
=
+a
+ b(h( x ) − u ( x))
bz
x
a
2
2
dx
dx
dx
dx
dh( x)
d 2 h( x )
du ( x)
d 2 u ( x)
dh( x )
d 2 h( x )
=
+
+
(
)
−
(
+
+
(
))
=
+a
+ bh( x ) − g ( x )
bu
x
a
bh
x
a
2
2
2
dx
dx
dx
dx
dx
dx
= g ( x) − g ( x) = 0
したがって,
d 2 z ( x)
dz ( x)
+a
+ bz ( x ) = 0
2
dx
dx
となり, z (x ) は同次方程式の一般解 f (x ) と同値になる.したがって,
h( x) = z ( x) + u ( x )
となる.
■
このように,非同次方程式の解法には,同次方程式の一般解を求める作業と,非同次方程
式の解を“とにかく一つ手段を選ばずに”求める作業との組み合わせとなる.
③二階微分方程式の実例
下図に示すようなばね−質量系を考える.
Q.1
加振力 F (t ) が 0 のときの運動方程式を示せ.また,その一般解を求めよ.
Q.2
上記の場合,時間 t = 0 において質量の位置および速度がそれぞれ x = 0 , v = v 0 であ
った.この質量の位置の時間変化 x(t ) を求めよ.
Q.3
今度は加振力が F (t ) = F0 sin αt で表される場合を考える.この場合の x(t ) の一般解
を求めよ.
x(t)
k
m
注:ばねの自然長にてx=0
F(t)
A.1 運動方程式は
m
d 2 x (t )
= −kx(t )
dt 2
とかける.したがってこれは二階定係数線形同次微分方程式であり,以下のように変形で
きる.
d 2 x(t ) k
+ x (t ) = 0 .
m
dt 2
この特性方程式は p 2 + k m = 0 であり, p = ±i k m となる.したがって,一般解は
x(t ) = c sin( k mt + φ ) = c sin( ωt + φ )
となる.ここで ω =
A.2
k m である.また,この運動の周期は T = 2π m k となる.
t = 0 において x = 0 , v = v 0 なので,一般解にこの条件を代入すると, φ = 0 ,
c = v 0 m k となり,特別解は,
x(t ) = v0 m k sin k mt
となる.このような,外力を加えない振動を“自由振動”と呼ぶ.
A.3 加振力がある場合,運動方程式は
d 2 x (t )
m
= −kx(t ) + F (t )
dt 2
と書け,整理すると非同次方程式
d 2 x(t ) k
1
+ x (t ) = F0 sin αt
2
m
m
dt
が得られる.このように,外力のある系では,非同次項 g (t ) が外力を示す F (t ) となること
が多い.このような物理系とのアナロジーより,微分方程式の非同次項 g (t ) は,しばしば
“駆動項”と呼ばれる.
右辺(駆動項)を0とした同次方程式の一般解は A.1 で求められているので,残された
課題は非同次方程式の特殊解をとにかく一つ求めることである.この場合,
u (t ) = γ sin(αt + β )
と置き,上式に代入すると,
(−α 2 +
F
k
)γ sin(αt + β ) = 0 sin αt
m
m
2
となるが,これが一致するためには, ( −α +
したがって, γ =
u (t ) =
F
k
)γ = 0 ∧ β = 0 でなければならない.
m
m
F0
∧ β = 0 .つまり,
k − mα 2
F0
sin αt
k − mα 2
となる.これを実際に与方程式に代入すると,
− α 2 F0
F0
F
d 2 u (t ) k
k
+ u (t ) =
sin αt +
sin αt = 0 sin αt
2
2
2
m
m k − mα
m
dt
k − mα
と方程式を満たしているので, u (t ) は特殊解である.したがって,一般解は
x(t ) = c sin( k mt + φ ) +
F0
sin αt
k − mα 2
となる.
初期条件により, c, φ を決定し,これが c ′, φ ′ となったとき,その特別解は
x(t ) = c ′ sin( k mt + φ ′) +
F0
sin αt
k − mα 2
と表せるが,これは特定の初期条件と駆動力におけるトータルの振動を示しており,その
各項, c ′ sin( k mt + φ ′) および
F0
sin α t は,それぞれ“自由振動解”と“強制振動
k − mα 2
解”と呼ばれる.このように任意の振動は,自由振動と強制振動の和により表される.
振幅
自由振動
強制振動
トータル
時間
自然現象には必ずエネルギーの散逸があるため,自由振動もいつかは(かなり早く?)
減衰し,そのうち強制振動が支配的となる.この自由振動がまだ十分に減衰していない領
域を“過渡状態”
,強制振動が支配的な領域を“定常状態”と呼ぶ.したがって,十分に時
間が経過した定常状態では,初期条件を無視して,定常解たる強制振動のみを考慮すれば
よい.このため機械力学(振動学)や電気工学(交流理論)のように周期的変化を扱う分
野では,
“定常解”を求めることが主要なミッションとなり,要するに,微分方程式の特殊
解を“手段を選ばず無理やり求める”ことが議論の中心となる.
振幅
自由振動
強制振動
過渡応答
時間
④線形システムと微分方程式
線形微分方程式には二種類の線形性が存在する.一つは同次方程式の箇所で述べた解空
間の線形性である.もう一つは,これから述べる非同次方程式における駆動項と解との関
係における線形性である.
数と数を関連付ける対応法則は“関数”と呼ばれる.見方を変えると,関数とは入出力を
持つブラックボックスであり,数を入力すると数が出力されると見なすことができる.同
様に,関数を入力し,関数を出力するブラックボックスも考えることができる.これを動
的システム,若しくは単にシステムと呼ぶ.いわば関数の関数である.
x=a
y=f(x)
y=A
関数
u (x)
U(x)=F(u(x))
U (x)
システム
入出力間に線形性のあるシステムを線形システムと呼ぶ.定値線形微分方程式において
d2y
dy
+ a + by = αu ( x) + βv( x) の 解 は ,
2
dx
dx
y ( x) = αU ( x ) + βV ( x) ,( U ( x ),V ( x) は u ( x), v ( x ) のそれぞれの解)となり,これは明ら
駆動項を入力,解を出力と見なすと,
かに線形システムである.
u (x),v (x)
U (x),V (x)
au (x)+bv (x)
aU (x)+bV (x)
線形システム
線形システムには幾つかの面白い性質があり,これは線形微分方程式を解く際にも有用
である.
(性質1)関数を微分したものを入力すると,その出力も微分される.
(性質2)三角関数,指数関数,双曲線関数などを入力すると,出力も同様な形の関数と
なる.
Pr.1)
F(
今,線形システムを U ( x ) = F (u ( x )) と記述する.すると線形性より,
d
u ( x + ∆x ) − u ( x)
F (u ( x + ∆x)) − F (u ( x )) d
dU ( x)
u ( x )) = F ( lim
F (u ( x )) =
) = lim
=
∆x → 0
∆x → 0
dx
dx
dx
∆x
∆x
となり,その出力も微分される.
du (x)
dx
dU (x)
dx
■
Pr.2) 今,入力を u ( x) = sin x ,その出力を U (x ) とする.
(性質1)より,
2
d u ( x)
を入力
dx 2
d 2U ( x)
d 2 u ( x)
した場合の出力は
となるが,
= − sin x = −u ( x) のように2回微分した
dx 2
dx 2
u (x) はマイナスのついた同じ形に戻るので,その出力も
d 2U ( x)
d 2 u( x)
=
F
(
) = F (−u ( x)) = −U ( x)
dx 2
dx 2
と書ける.これは, U (x ) についての二階の微分方程式と見なせ,容易に解け,その解は
U ( x ) = c sin( x + ϕ ) となり,振幅や位相は異なるものの,入力と同様な関数形となる.
cos x , e x , sinh x , cosh x 等についても同様な方法で証明可能である.
■
(性質2)は,(性質1)と, sin x , cos x …が微分により形を変えない性質,もしくは
周期的に元の形に戻る性質とから来ている.したがって,このような性質を持つ関数は線
形システムによる変換にも,振幅や位相は変化するが,基本的にその形を変えることが無
い.言い換えるなら,
“ sin を入れると sin が出てくる”
.
非同次方程式を解く際,
(性質2)は強力なツールとなる.というのも,“非同次方程式
を解く”とは,特殊解 u (x) をとにかく一つ求めることと実際上同義であり,しかも上記の
関数を駆動項とした場合には,それを線形システムの入力と見なせるので,その出力たる
特殊解も同じような関数形でよいことが保障されているからである.雑駁に言うと,駆動
項が三角関数,指数関数および双曲線関数などで表される場合は,同次方程式の解も同じ
ような関数となるので,適当に代入してみて形を決定すれば特殊解が求まることになる.
A.3 で, u (t ) = γ sin(αt + β ) と置いたのもその理由による.
上記の関数の中で,三角関数および指数関数(特に e iωt )は,フーリエ級数ないしフーリ
エ変換の核となるので,特に重要である.たとえば任意の周期関数は三角関数により級数
展開できる(フーリエ級数)
.したがって,それをこの周期関数を駆動項とする非同次元方
程式の特殊解を求める場合は,まず展開した各項の三角関数(および指数関数 e iωt )を単独
でシステムに入力し,その場合の特殊解を求め,つぎに前述の第二の線形性より,この特
殊解にフーリエ係数をかけて和をとればよい.この手法により,駆動項が周期関数であれ
ば,非同次元方程式の特殊解は全て得られることになり,したがって全ての一般解も得ら
れることになる.このため機械振動や電気回路の解析に強力な手法となる.(フーリエ級数
およびフーリエ変換については後に学習する)