非ステップ状に正の反応度が印加された際の出力挙動 千葉豪 平成 26 年 7 月 18 日 0.0004 0.0004 0.0003 0.0003 Reactivity [dk/kk] Reactivity [dk/kk] フィードバックが全く無い中性子増倍体系の過渡応答について考える。 ステップ状に即発臨界未満の正の反応度が印加された場合、原子炉の出力は瞬間的にあるレベ ルまで上昇し(即発跳躍)、その後は原子炉安定ペリオドに従って緩慢に上昇していくことがよく 知られている。 それでは、下の左図のように、鋸状に正の反応度が印加された場合の出力挙動はどのようにな るであろうか?正の反応度が与えられている以上、原子炉出力は上昇傾向となる、と言えるであ ろうか? 0.0002 0.0001 0.0000 0.0002 0.0001 0.0000 -0.0001 -0.0001 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 Time [s] 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 Time [s] Fig. 1: Reactivity insertion patterns (left: case 1, right: case 2) そこで、即発中性子寿命 l = 0.0000492[s]、遅発中性子割合 β = 0.007611 の臨界体系に、ρ=0.0004 (約 5.3 セント)の反応度を瞬間的に与え、それが時間とともに線形に減衰していくときの出力変 化を計算により求めた。なお、反応度の時間変化は、Fig. 1 に示しているように、ゼロまで低下し た後はそのままゼロを保つ「Case 1」と、ゼロまで低下した後は ρ=-0.0001 まで低下し、その後 ゼロとなる「Case 2」の2通りを考えた。 また、反応度印加後の時間変動率をいくつか変えた計算を行なった。計算結果は次ページに示 すが、果たして全てのケースで出力は上昇していくであろうか? 1 以下の図の「見方」であるが、横軸に示された最大値の「10 分の 4」の時点で、Case 1、2 とも に反応度がゼロとなる。例えば、左上の図では、0.4[s] の時点で反応度がゼロとなる。また、原子 炉出力は t=0 の時点で 1.0 とする。 dr/dt=0.001 [(dk/kk)/s] dr/dt=0.0001 [(dk/kk)/s] 1.06 1.06 Case 1 Case 2 1.05 1.04 Power [AU] 1.04 Power [AU] Case 1 Case 2 1.05 1.03 1.02 1.03 1.02 1.01 1.01 1.00 1.00 0.99 0.99 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Time [s] 0.7 0.8 0.9 1 0 1 dr/dt=0.00001 [(dk/kk)/s] 3 4 5 6 Time [s] 7 8 9 10 dr/dt=0.000001 [(dk/kk)/s] 1.16 2.6 Case 1 Case 2 1.14 2.4 1.12 2.2 1.10 2.0 Power [AU] Power [AU] 2 1.08 1.06 1.04 1.8 1.6 1.4 1.02 1.2 1.00 1.0 0.98 0.8 0 10 20 30 40 50 60 Time [s] 70 80 90 100 Case 1 Case 2 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 Time [s] dr/dt=0.0000001 [(dk/kk)/s] 8000 7000 Power [AU] 6000 5000 4000 3000 2000 Case 1 Case 2 1000 0 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 900010000 Time [s] Fig. 2: Reactor power transient after reactivity insertion 反応度の減少率が非常に大きい場合(左上図)は、原子炉出力は反応度印加直後に増加したあ とは緩慢に減少していき、初期値よりわずかに大きい値で定常状態となっている。これは、反応 度がパルス状に入ったとみなせば理解しやすいであろう。つまり、反応度が印加されている時間 が遅発中性子先行核が有意に上昇するのに十分に長くないため、この過渡挙動は即発中性子のみ で説明できる、ということである。原子炉出力は即発中性子数に比例するであろうから、出力は 反応度に追随して変化する。なお、反応度減少率を無限大にするならば、反応度印加後の原子炉 出力は初期値に一致することになるであろう。 一方、反応度の減少率が小さくなるにつれて、原子炉出力のピークは図の右側にずれていき、 2 4,000 秒かけて反応度が減少していく場合(最下図)では、原子炉出力のピークは反応度がゼロと なる時点と一致する。この場合は、過渡応答の時間スケールが遅発中性子放出の時間スケールよ りもずっと大きいため、即発中性子と遅発中性子の区別をそれほど考慮することなく、中性子の 増倍を考えればよいということになる。 3
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