最適化手法 講義資料(平成 26 年度冬学期) 直線探索による降下法の大域的収束性 (☆試験の範囲外☆) 関数 f : Rn → R の無制約最小化問題を考える.更新公式 xk+1 = xk + αk dk (1) に基づく反復法を用いる.Wolfe の条件に基づく直線探索を用いたとき,任意の初期点 x0 に対して (1) により生成される点列 {xk } が f の停留点に収束するための条件を考える. 以下では,探索方向 dk が降下方向であること,即ち ∇fk⊤ dk < 0 を満たすことをを仮定する.また,dk と最急降下方向 −∇fk のなす角度を θk とおく.つまり,θk を cos θk = −∇fk⊤ dk ∥∇fk ∥∥dk ∥ (2) で定義する.定数 c1 ∈ (0, 1), c2 ∈ (c1 , 1) を選ぶと,ステップ幅 αk に対する Wolfe の条件は f (xk + αk dk ) ≤ fk + c1 αk ∇fk⊤ dk , (3) ∇f (xk + αk dk )⊤ dk ≥ c2 ∇fk⊤ dk , (4) である. • 次の命題 1 は,工学教程『最適化と変分法』の命題 2.4 である. 命題 1 (Zoutendijk). 探索方向 dk が降下方向であり,ステップ幅 αk が Wolfe の条件を満たすことを 仮定する.f : Rn → R のレベル集合 L = {x | f (x0 ) ≥ f (x)} を含む開集合を N とおく.f が下に 有界であり,N において連続微分可能であることを仮定する.さらに,∇f は N 上でリプシッツ連 続であること,つまり ∥∇f (x) − ∇f (x′ )∥ ≤ L∥x − x′ ∥, ∀x, x′ ∈ N を満たす定数 L > 0 が存在することを仮定する.このとき, ∞ ∑ cos2 θk ∥∇fk ∥2 < ∞ (5) k=0 が成り立つ. 証明. 更新公式 (1) と Wolfe の条件の (4) より ⊤ ∇fk+1 dk ≥ c2 ∇fk⊤ dk が得られる.両辺に −∇fk⊤ dk > 0 を加えると (∇fk+1 − ∇fk )⊤ dk ≥ (c2 − 1)∇fk⊤ dk 1 (6) が得られる.一方,∇f がリプシッツ連続であることより (∇fk+1 − ∇fk )⊤ dk ≤ ∥∇fk+1 − ∇fk ∥∥dk ∥ ≤ αk L∥dk ∥2 (7) が成り立つ.(6) と (7) より αk ≥ c2 − 1 ∇fk⊤ dk L ∥dk ∥2 (8) が成り立つ.Wolfe の条件の (3) に (8) を代入すると, fk+1 ≤ fk + c1 c2 − 1 (∇fk⊤ dk )2 L ∥dk ∥2 (9) が得られる.θk の定義 (2) を用いると,(9) は 1 − c2 (10) L と書き直せる.(10) を 0 から k ステップまで足し合わせることで不等式 fk+1 ≤ f0 − ∑ c kj=0 cos2 θj ∥∇fj ∥2 が得られる.これは次のように書き直せる: fk+1 ≤ fk − c cos2 θk ∥∇fk ∥2 , c k ∑ c = c1 cos2 θj ∥∇fj ∥2 ≤ f0 − fk+1 . (11) j=0 (11) の左辺は非負である.また,右辺において f は下に有界であるから,任意の k に対 して f0 − fk+1 < γ を満たす正の定数 γ が存在する.従って,(5) が成り立つ. Zoutendijk の条件 (5) は cos2 θk ∥∇fk ∥2 → 0 (12) を意味している.いま,最急降下法を用いることを考え,θk が 90◦ から十分に遠いことを仮定する と,cos θk ≥ δ > 0 (∀k) を満たす定数 δ > 0 が存在する.従って,(12) より lim ∥∇fk ∥ = 0 が得ら れる.これは,直線探索付き最急降下法の大域的収束性を表している. k→∞ 一方,Newton 法や準 Newoton 法において,探索方向 dk が Bk dk = −∇fk で定義される場合を考 える.Bk が正定値であり,ある定数 M > 0 に対して ∥Bk ∥∥Bk−1 ∥ ≤ M, ∀k (13) を満たすことを仮定する.∥Bk ∥∥Bk−1 ∥ を Bk の条件数と呼ぶ.任意の正則行列 A が ∥Ax∥ ≥ ∥x∥/∥A−1 ∥ および ∥A∥∥x∥ ≥ ∥Ax∥ を満たすことを用いると, ∥Bk dk ∥2 −∇fk⊤ dk d⊤ k Bk dk = = cos θk = ∥∇fk ∥∥dk ∥ ∥Bk dk ∥∥dk ∥ ∥Bk dk ∥∥dk ∥ 1/2 −1/2 ≥ (∥dk ∥/∥Bk ∥)2 ∥dk ∥ 1 = ≥ ≥ 1/M −1 ∥Bk dk ∥∥dk ∥ ∥Bk dk ∥∥Bk ∥ ∥Bk ∥∥Bk−1 ∥ (14) が得られる.(5) と (14) より lim ∥∇fk ∥ = 0 が成り立つ.従って, (準)Newton 法において,Bk が k→∞ 正定値でかつ (13) を満たし,ステップ幅が Wolfe の条件を満たすならば,大域的収束性が保証される. 参考 [1] Nocedal, J., Wright, S.J.: Numerical Optimization (2nd ed.). Springer, New York (2006). (November 5, 2014, 寒野) 2
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