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 Type
Thesis or Dissertation
Title
イシイルカの資源とその動態に関する研究
Author(s)
宮下, 富夫
Citation
Date
2013
URL
http://oacis.lib.kaiyodai.ac.jp/dspace/handle
/123456789/1407
Rights
Tokyo University of Marine Science and Technology
[論文博士](博士論文審査及び学力の確認の結果要旨)
[論文博士]
氏
名:宮下 富夫
論文題目:イシイルカの資源とその動態に関する研究
博士論文審査:
本研究はイシイルカ(Phocoenoides dalli)の分布・生態を明らかにし、自然死亡係数および資源量
の推定を行い、資源動態等を明らかにするとともに、最適な資源管理方策を提言することを目的として
実施されたものである。
本論文の構成は以下の通りである。第1章ではイシイルカの生物学的知見、操業実態等について、第
2 章では材料と方法について、第 3 章では目視調査の結果に基づく分布・回遊、および系群について議
論している。第 4 章では目視調査の結果を用いて資源量推定を行い、第 5 章では 1979 年~2013 年の資
源動向および自然死亡係数の推定を行っている。また、想定した捕獲頭数のもとで操業を行った場合の
資源量の将来予測を行い、実行可能なあるべき資源管理方策について提言している。第 6 章は総合考察
である。
従来、不明であった系群構造を、膨大な量の目視データを用いて明らかにした点が高く評価された。
また、年齢査定が困難でこれまで推定が行われていなかった自然死亡係数を、本研究において初めて推
定した点も高く評価された。第 5 章で行われた資源動向の推定は、銛がヒットしたにも関わらず捕獲さ
れなかった個体(銛抜けによる死亡)と、イルカが船に寄ってくることによる資源量の過大推定の可能
性を考慮した推定を行っており、よりロバストな推定結果が得られていると判断された。
資源量の推定は、太平洋側とロシア側海域で一斉に目視調査を実施した 1990 年と、ロシア側南部の
目視調査が可能で、十分な調査努力量が確保できた 2003 年の 2 年間に対して実施した。日本海イシイ
ルカ型については、1990 年 22.6 万頭(CV=0.15)、2003 年 17.4 万頭(CV=0.21)と推定した。リクゼ
ンイルカ型については 1990 年 21.7 万頭(CV=0.23)、2003 年 17.8 万頭(CV=0.23)と推定した。
また、上記の資源変動モデルを用い、いろいろな捕獲数の設定のもとで、また、銛抜けによる死亡の
程度や、資源量の過大推定の程度をいろいろ想定して、資源量の将来予測を行い、より安全を見込んだ
実行可能な資源管理方策を提案している点が評価された。
学力の確認の結果要旨:
最終試験は 2 月 17 日に行われた。審査委員一同出席の下、まず、学術論文は(Miyashita T. :
Abundance of dolphin stocks in the Western North Pacific taken by the Japanese drive fishery.
Rep. Int. Whal. Commn. 43. 1993) をはじめ、6 編が第 1 著者として公表済みであることを確認し
た。申請者は 1980 年以降、毎年、国際捕鯨員会(IWC)の委員として、IWC 科学委員会に出席し、英
語による講演等を行っていること、学術論文は英語で発表されていることなどから、語学については
問題ないと判断した。また、公開発表会(2 月 17 日)当日の質疑や予備審査時での議論などから、イ
シイルカの生物学的知見、資源管理に関する専門知識についても、十分であることを確認した。以
上のことより、申請者に対して論文、学力ともに、博士の学位を授与するに値すると判断した。