化学Ⅱ
第9章
アルカンのラジカル反応
1.ラジカル反応のメカニズム
1.1. メタンの塩素化反応
1.2. より大きなアルカンの反応
1.3. アルキルラジカルの反応性
2.いろいろなラジカル反応
2.1. ハロゲンの違いの影響
2.2. オゾン層の破壊
2.3. 不飽和脂肪酸の自動酸化
1.1. メタンの塩素化反応
ラジカル反応
CH4 + Cl2
開始段階
Cl
Cl
光(hν)
熱(λ)
光(hν)
熱(λ)
CH3Cl + HCl
Cl
Cl
ラジカル反応の引き金となる段階、光や熱によってラジカルが発生する
伝搬段階
H3C
H3C
H
Cl
Cl
Cl
H3C
+ H
H3C
Cl +
Cl
Cl
ラジカル反応が起こり生成物が出来る段階、ラジカルは反応が起
きるたびに再生するので連続的に反応が起こる(連鎖反応)
1.1. メタンの塩素化反応
終止段階
CH3
H3C
Cl
Cl
Cl2
H3C
Cl
H3C
H3C
CH3
Cl
ラジカル同士が反応して活性なラジカル種が消失、
反応が停止する段階
伝搬段階の副反応
ClH2C
ClH2C
H
Cl
Cl
Cl
ClH2C
+ H
ClH2C
Cl +
Cl
Cl
生成物も反応するので複数の塩素が導入された化合物が生成する
身近なラジカル反応:アクリル樹脂の合成
O
O O
O
O
O
重合開始剤
O
O
O
O
O
R
CH3
R
O
CH3
CH3
CH3
CH3
CH3
O
CH3
O
O
O
O
R
O
CH3
CH3
CH3
O
CH3
OO
CH3
O
O
CH3
R
O
CH3
CH3
アクリル樹脂
(ポリマー)
CH3
CH3
CH3
2.3. 不飽和脂肪酸の自動酸化
O
OH
H
H
H
O
OH
H
O O
O
OH
H
O
O
酸化
タンパク質
遺伝子
他の分子
リノール酸
共鳴構造によるラジカルの安定化
リノール酸のラジカルは何故できやすいのか?
O
OH
H
共鳴構造による安定化のため
O
OH
H
O
OH
H
O
OH
H
共鳴構造によるラジカルの安定化
DPPHラジカル
窒素上の不対電子は右側の芳香
環を巻き込んだ共鳴構造式により
安定化されている。
O2N
N
N
NO2
O2N
O2N
N
N
O2N
O2N
NO2
N
N
O2N
NO2
1.3. アルキルラジカルの反応性
アルキルラジカルの場合、安定性に差はあるのか?
H
H
H
C
H
メチル
<
H3C
C
<
H
CH3
H3C
C
<
H3C
C
CH3
H
第一級
CH3
第二級
第三級
不安定
より安定
超共役(アルキル基の電子供与性)
C-H結合のσ電子が共鳴構造に関与した形を仮定する考え。
不飽和結合を持たないアルキルラジカル、カチオンの置換基が
多いほど安定な理由を説明できる。
H
H
H
H
H
H
H
H
H2C
C
H2C
C
H2C
C
H2C
C
H
H
H
H
1.2. より大きなアルカンの反応
ラジカルの安定性(反応性)の違いによる反応生成物への影響
H2C
CH3
H3C
CH
+ Cl2
H3C
CH
CH3
CH3
Cl
+ H3C
C
CH3
生成する割合
CH3
37%
63%
CH3
H2C
H3C
CH
CH3
不安定
Cl + HCl
<
H3C
C
CH3
安定
中間体