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日消外 会誌 7 ( 5 ) : 4 3 2 ∼
439,19Z年
一原 著 ―
噴門癌 にお け る十二指腸側切離線 の決定
― とくに肉眼的腫場境界 と
組織学的腫易境界
の判定 に関す る考察―
鈴 木
茂
川
井
忠
関
博
尾
沢
正
和 俊
群馬大学 第 2 外 科
THE DETERMINATION OF THE RESECT10N LINE OF THE PYLORIC
SDE FOR UPPER CASTRIC CANGER
― 軸にTH A REFERENCE TO MACROSCOPIC FINDING AND HISTOLOCICAL
EXAWttNAT10N OF THE PYLORIC EDGE―
S.SUZ四
,T.KAWAI,H.SEKI,M.OZAWA
Second Department oF Surgery Scho。
10fヽ在
edicine University of(〕
unma
論文要 旨 噴 門癌 に対 し,胃 壁内浸潤 ,リ ンパ節転移 が許容 されれば ,胃 全易J術を行わず ,噴 門側切除 にとど
める事 も可能 である。
噴門側切除後 の逆流性食道炎予防のため ,わ れわれは小弯側広汎切除 に よる大弯側 胃管を作つて きたが ,日
管縫合器をかける起点 として肉限的腫瘍境界 よ り5 cm離れた部分を定め ,切 離線 として きた。
肉眼的に判定 した腫瘍境界 と組織学的境界 とにどの ような訳差があるか ,肉 眼的腫瘍境界か ら5 cm離して 胃
一)で あるか どうかを検討 し
管形成を行つた場合の awは 〈
,あ わせて リンパ節転移 の点 か らも噴門側 胃切除
の可否 について検討 した。その結果 ,占 居部位 Cよ り口側 ,あ るいは CMs(― )例 は腫瘍境界 より5 clll離
れ
た胃管利用 が可能 であると判明 した。
胃癌 の手術 にあた り,幽 門癌 ,体 部癌 においては幽円
側切除あるいは幽門側亜全易J除の術式が選択 され るのが
原
原則 である.
癌
れわれは既に発表 した とお り7)3)9)lo),下
部食道噴門
の手術成績 の向上 のために努力 して きた.息 者 の家族
に
とつて も,医 師に とつても最 も不幸 である直接死亡の
しか し,噴 門癌 においては ,そ の痛腫瘍 の占居部位 ,
深達度 に よ り術式 の選択 はまちまちで ,た とえば EC接
れ
I は じめに
ゎ
合部 に近 いか ,後 壁 よ りに発育 しているか ,装 膜浸潤 が
膵被膜 に及んでいるか否 かで ,切 除範囲も リンパ節廓清
範囲も異なつて くる.噴 門痛浸潤 が葉膜 に まで波及 して
いない症例 において も,正 常 と推定 され る幽門側を含め
て 胃全易J術を行 う施設 もあ り,あ るいは リンパ節転移 の
術
ら
器
離
論
噴
因は縫合不全 ,出 血 シ ョック,肺 合併症な どがあげ ら
る.こ れ らを予防するには手術時間を短縮 させ ,手 術
式を一定化 し,手 術操作 の合理化 がすすめ られねばな
ぬ と思 う。縫合不全 の防止対策 として食道 との吻合臓
は残 胃を用 いること,肺 合併症 の予防には横隔膜を切
せず ,開 胸創 と開腹創 とを別個にす るのが よい との結
を得た.
門癌切除後 の再建術式 として古 くか ら行われている
ない事を確認 して噴 門側切除 に とどめ る施設 もある。そ
食
して再建術式 は術後逆流性食道炎の予防 と縫合不全 の防
止対策が関連 して噴 門切除あるいは全易J後に種 々なる術
3)4)ゆ
6).
ゎ
式が工夫 されている1)の
り
道 目吻合 は吻合箇所 も少な く,術 後 の食物通過路 もよ
生理的である事か らしば しば用 い られてきたが ,逆 流
性
食道炎 の発生 の多い事 が欠点 とされて きた。
れわれは噴門痛の多 くが小弯側 に位置 し,限 局型 も
7(433)
1974年9月
しくは中間型を示す ものが より多い ことか ら,小 弯側を
広汎 に切除 す る胃管縫合器 を 作製 し,大 弯側細胃管 を
用いることに よ り,逆 流性食道炎 の発生防止を企 てて き
表 1
噴関癌
58例
総症例
ついて ,肉 限的 に 判定 したAWと 組織学的 に 誤J定した
aWと の相異 を検討 し,占 居部位 に よる肉眼判定がどの
定し
程度 に誤差を生ず るものであるか ,ま た肉眼的に半」
た腫瘍境界 より5 cm離して切離 した標本 の awは どの よ
占居部位
腫瘍長径
肉眼分類
うになつてい るかを検討 した。
II 検 索方法
大二 外
A群 (EC, E=C, CE) 30例
B群 (C, CM)
28例
た。 冒管縫合器をかける起点 としては触診に よ り癌腫 の
十二指腸側境界部を定め ,そ の部位 よ り約 5 Cm距つた点
を定めた。
この ように して過去 5年 間に切除 した58例の噴F弓
癌に
群
切除 された噴 門癌標本 を主 として大弯側 で開 き,新 鮮
生標本の状態 で腫瘍径 ,OW,AWを
測定 した後 に木板
に ピンで貼布 し,10%ネ ルマ リン液 で 5∼ 7日 間固定 し
小
弯 30例 (51.7%)
後壁 15例 (25.9%)
前壁 6例
(10.4%)
(8.6%)
大弯 5例
金周 2例
(3.4%)
5Cm
16例
(27.6%)
0∼
5.1∼10側 34711(58.6%)
上 8例
10.lclll以
(13.8%)
5例
(8.6%)
0型
1型 3例
(5.2%)
2型 11例 (19,0%)
3型 35例 (60.3%)
4型 3例
(5.2%)
5型
1例 (17%)
,(二 .
固定 した標本は正確 に記載す るため Xeroxで 復写 し,
腫瘍 の大 きさ,OW,AW,を
記載 し,腫 場 の中うb部 を
は 5-10Cmで ,肉 眼型 としては BOrrmann 3型で あ る事
が大半であるが ,最 近 では診断学 の進歩 に ともない ,表
最 も短 かい
通 る長軸方向の切片 ,な らびにOW,AWの
部分 の切片を作 り,そ の断面を XerOx復 写紙 に記載 し
在癌 の発見 が 漸増 してお り,わ れわれ の 症例 において
も全症例 の 8.6%を 占めるに至つた事 は注 目すべ きであ
,(二 .
る.
染色は主 としてHE染 色を用い ,必 要 に応 じてマ Pリ
ー染色 ,ワ ンギ ー ソン染色を行つた.
2)術 中肉眼的腫瘍境界 の判定 の困難 さ :胃癌 の切離
線 の決定 には腫瘍境界部 の設定 が必要 である。 しか し,
検鏡 に よる awの 測定を行 い ,復 写紙 に記載 し,固 定
後 AWと aw,す なわち肉眼的腫瘍境界 の判定 と組織学
術中に腫易境界 を判定す る事は必ず しも容易ではな く,
とくに表在癌 においては 胃切開をおいても胃壁 の伸縮 に
的な断端距離 との相関関係 について検討 した.
IIE 噴 門癌症例の検討
左右 されて困難 であ り,表 面隆起 ,表 面陥四 ,平 担な ど
の微細 な病変部の推定 は正確 には行われない。
1)症 例 :群 馬大学第 2外 科 において過去 5年 FFBに
切
除 された噴門癌 は58例である。 こ れ を 占居部位 に より
いま12症例について ,表 在癌 では 冒切開 で ,進 行癌 で
は触診 で判定を行 い ,腫 瘍 の 日側 と十二指腸側 の 境界
部 に黒 糸をつけて目印 とし,こ れを組織学的な境界部 と
比較 してみると,表 2に み られ るよ うに 口側へ の断端距
A,B2群
にわけてみ ると,腫 瘍 が EC,E=C,CE
占居する B群 は28例
に 占居す るA群 は30例 ,C,CMに
である.
また58例の癌腫 の中心部が噴 門壁 の どの 部分 に 位置
す るかを 検討 す ると表 1に み られ るように ,小 弯30例
(51.7%),後 壁 15例 (25,9%),前 壁 6491(10.4%),大 弯
5例 (8.6%),全 周 2例 (3.4%)と
小弯 に位置す るも
のが半数を占め る。腫瘍長径は 0-5 om16例 (27.6%),
上 8例 (13.8%)で
5,1-10cll134例(58,6%),10。l cm以
5-10Cmと 比較的大 きい腫瘍が半数以上を占めている.
肉眼分類 ではO型 5例 (8.6%),1型 3例 (5.2%),2
型 11例 (19.0%),3型 35例 (60.3%),4型 3例 (5.2
BOrmaln 3型 の占める率 が
%),5型 1例 (1,7%)で
大 きい.
総 じて教室における噴門癌は小弯 に位置 し,腫 瘍長径
一
離 が肉眼 と組織 で 致す るものが 2例 ,肉 眼 の方 が短 か
い ,読 みすぎが 84/1,読みた りないのが 2例 であ り,総
l cmに
じて読 みす ぎが多 く,そ の平均 の長 さは 9.71111と
近 い.こ れ は 日側腫瘍境界 の触知 が難 か しく,ま たOW
(+)と なる事をさけたい心理が多少 な りとも影響 して
読みす ぎとなる結果 か とも思われ る.
十二指腸側 の腫瘍境界部は 日側 に比べ て判定 が容易で
一
あ り,肉 眼判定 と組織学的な測定が 致 したもの 3例 ,
肉眼的距離 の方 が大 きい ,す なわち読みた りない ものが
5例 ,そ の長 さは平均 4.Ommであ り,肉 眼的距離 の小 さ
,い ず
い ぅ読 みす ぎが 4例 ,そ の長 さの平均 は 551111で
つている.
の
に
とどま
mlll前
れ も5
後 誤差
3)固 定 AWと awの 関係 :10%ホ ルマ リンで固定 し
8(434)
噴門痛 におけ る十二 指腸側切離線 の決定
友 2 術 中肉限的腫瘍境界 と組織学 的腫場境 界
との関係 ( m l l )
5号
表 3
固定後 A W _ a w m m
群大二外
B 群 ( 2 8 例)
占居 A W A W
部位 >aw=aw
C
o
w
W a
A <
(30例 )
捌
w
6
W a 0
︲
A< │li
!を
部位
EC
w
W a 0 0 0
A 〓
A群
w
W a 8
A>
〓
・︲
っ↓
65︲
6
ヽ
側
御
ム
眠卿
知
w っ
υ
2
。
4
駅>
口側肉眠的境 界一 〇W
脚
駅
駅却
4
榔
御 7
十 二 指 腸 側 肉 眼的 境 界一 a w l
日消外会 誌 7 巻
E = C
C E
0
食道
1 例
0
2
食道
1 例
肉 限> a w
肉眼= a w
5 例 平均
3例
! 1 . 0 肉 限> O w 2 例
肉 眼= O W 2 例
肉眼< a w
4例 平均
55
肉 限< O w 8 例 平 均
9.7
0
4
た切除標本を XerOxで 復写 したのちに肉眼的に判定 し
た腫瘍境界 に印をつけ ,さ らに切片 とした 組織学的 な
aWを 同一部位 で測定 し,固 定 AWと awと の相関 につ
いて検討 した。
0
1
7
2
2
表 3に み られる よ うに 腫瘍 占居部位 EC,E=C,
CEの A群 30例の うち ,EC7例
では肉眼 と組織 の一致
3
2例 は
2
101111,311111と
いずれ も読みた りない。 c E21例 では肉眼
と組織 の一致す るものは 1例 ,読 みの廿いのが16例で ,
40ml,27mlとい う重複痛を合む特殊 の 2例 を除いては ,
AW>aw 20例
AW=aw 4例
平均
AW<aw 6例
平均
5, 10, 10, 3, 15, 11, 3, 2, 10, 2, 3, 4, 8, 2 1mlと
殆 どが10mm以内の誤差 である。読みす ぎは 4例 で , 1,
2, 7, 5 mllといずれ も7 mlll以
内に とどまつている。
総 じて A群 は十二指腸側断端の肉眼的距離 と組織学的
距離 の一致 した ものが 4例 ,読 みた らないのが20例 ,読
みす ぎが 6例 であ り,読 みた らない長 さの平均 は 7.61111
で大部分は l cm以
内に とどまつている。ただ し,触 診な
どで判定 した肉限的腫瘍境界部 よ りも遠 く,術 前 には判
断 しえなかつた重複癌 の存在す る特殊例 のある事 も注意
しなければな らない.
腫瘍 占居部位 C,CMの
B群 では cの 17例の うち肉眼
的距離 と組織学的距離の一致するものは 4例 ,読 みた ら
ないのが 8例 で ,そ の誤差は 2,5, 1, 3, 5, 2,
10,39mmで殆 どが101111以
内である.読 みすぎは 5711で,
0
8
すぎの差 が 6 mmと10mmの2例 であった。 E=Cの
4
した ものが 3例 ,肉 眼的判定の甘い ,読 みた りないのが
8 mmと1 0mllの
2例 ,肉 眼的判定を多 くと りす ぎた ,読 み
AW>aw 12例
平均
AW=aw 7例
AW<aw 9例
平均
5,7
5,2, 4,5,5 1Blnで いずれ も 588B以内である.CM
群11例の うち , 1例 のみ 胃管を用いてお り,他 の10例は
胃全易J除を行つているが ,肉 眼的距離 と組織学的距離 の
一致す るものは 3例
,読 みた らないのは 4例 で20,70,
2, 4と 肉限的境界部を こえて7011113と
リンパ管内浸潤を
み とめ るものが ある.読 みす ぎは 4例 で ,そ の 長 さは
12,9,4,5 mmで
ある.
総 じてB群 は肉眼的距離 と組織学的距離 の一致 した も
のが 7例 ,読 みた りないのが12例で ,そ の平均 の長 さは
7.8mll,読みす ぎは 9例 で ,そ の平均 の長 さは 5.7mlmで
あつた.B群 では腫瘍 の下限 も胃体部に近づ くためか ,
2例 の特殊例を除 き,肉 眼的判定 と組織学的な判定 とが
一致す るものが
多 く,た とえ誤差を生 じても71m8前後 に
1974年9月
9(435)
‐ ‐
とどまつてお りぅ腫瘍境界 の肉眼的半J断がほぼ正 しい事
を示 している.
には腫瘍境界部 より5 cmの点を起点 とし,腫 瘍径 の小な
上を離 して も小弯を広汎 に切
る場合は境界部 より5 Clll以
4)噴 門癌 の aw:以 上の ように肉限的 に 判断 した腫
瘍境界部 と組織学的な境界部 とは l Cm前後 に とどまると
除 し,細 い大弯側 胃管 を形成す るように試みてい る。
B群 28例の うち Cの 17例はいずれ も胃管形成を行つた
の結果をえたが ,噴 門癌 の awは どの位に保てるものか
は
が , その awャよ28, 45, 47, 40, 40, 70, 15, 37, 15,
51,10,10,60,20,25,50, 1201111で あ り,そ の平均
A群 と大差 のない長 さを保ち得た.い
の長 さは40:lmlllで
つぼ うCMの 11例は 占居部位 ,葉 膜浸潤 ,リ ンパ節転移
を実測 した。表 4に み られ るようにA群 では EC7例
30,42,53ぅ 35,81,30,6011mと 余裕 が ある.E=C2
充分 の awを もつが ,CE症
例 も40,3611111と
例 21例では
2例 を除いてはいずれ も20111B以
上の余
すが ,5,14111111の
lを行つたが ,そ の
の関係 か ら 1例 を除いて10例に 冒全/」
aW は 75, 99, 30, 120, 30, 58, 83, 90, 30, 56, 68
あ り,壁 内浸潤 の
mmと長 く,そ の平均 の長 さは67.lmllで
あ る。
裕を もつている。そ の平均 の長 さは44,3111で
A群 の占居部位 は EC接 合部 にかかるものであ り,多
みを問題 にすれば噴門側切除 の適応 が 4例 ふ くまれ てい
る。 これ らB群 舞例 の 2Wの 平均 の長 さは50711mであつ
25, 25, 20, 45, 30, 14, 20, 31,
23,
77, 5 , 30,
78,78,48,22,60,80, 150,27,3411111と多様性を示
くは開胸を合併 しなければな らないため ,挙 上 胃管 も20
cnの長 さを必要 とす る.し たがつて腫瘍径が大 きい場合
表 4
群大三 外
組織学的腫瘍境 界 ( a w ) l l l l
A群 (30例 )
aw
占居 部 位 症 例
EC
1
30
2
42
3
35
13
81
39
51
10
40
21
40
26
70
60
30
32
15
37
36
33
15
35
36
51
10
37
43
10
60
5)リ ンパ節転移率 :A群 30例中 ,リ ンパ節 の組織学
的検索 をな し得た のは26例である。26例中肉限的半J定の
一
読 みす ぎN>nが 19例,肉 眼的判定 と組織学的判定 の
致 す るN = n が 3 例. 読 みた りないN < n が 4 例 で あ
り,全 体 の73%は 読みすぎている事 になる.
AttS(― )は 26例中 4例 15.3%で ,n07.7%,n13.8
■。例 が他 よ り多 くなつている.S(十 )
%,n23.8%で
は26例中22例
(84.7%)で ■026。9%,nl 19.2%,n2
例
34,6%,n33.8%で
n2例 が多 くなつている。
A群 を全体的にみ るとき S(十 )■2例 が最 も多 く,第
2群 以上の リンパ節廓清 が必要な ことを示 している.つ
いで S(+)n。 例 が多 く,・。
例 が全体 の346%と 3分 の
べ
1を 示す事は留意す きである。
9
11
25
20
15
45
18
30
56
20
B群 28例中 ,組 織学的に検索をな しえたのは25例であ
る.25例 中肉眼的判定 の読みすぎN>nが 18例,肉 限的
一
判定 と組織学的判定 の 致す るN=nが 4例 ,読 みた り
ないN<■ が 3例 であ り,A群 と同様 に全体 の72%が 読
19
14
57
25
みす ぎている。
20
20
58
50
22
31
59
120
Btt S(― )は 25例中 9例 36%で ■。20%,■18%,n28
%と なつてお り,nO例 の占め る率 が大 きい.Btt S(十 )
4
2 5
24
A群 平均
47
16
30
40
45
C E
12
53
6
E=C
B群 (28例)
aw
占居 部 位 症 例
C
5
28
8
45
,(二 .
CM
23
14
75
25
77
17
99
27
5
23
30
34
38
41
30
78
78
28
29
120
30
42
48
44
22
31
40
46
58
83
90
47
60
48
30
49
80
53
56
50
150
55
68
52
54
27
34
44.3
B群 平均
50,7
は25例中16例64%で ■012%,nl 16%″ n218%,n38
%で ■2症 例 の占め る率が大 きい.
B群 を全体的にみ るときS(一 )nOが 最 も多 く,S(十 )
n2,S(十 )nlが 相ついでいるが ,S(― )で もS(十 )で
も nOの 占め る率 は大 きくな り,全 体 の32%が ■0で あ
る。 したがつて第 2群 までの リンパ節廓清は必要 では あ
るが ,合 併切除 については充分 の検討を必要 としよ う.
とくに診断学 の進歩 に ともない ,表 在癌 の発見 に より噴
門癌 においても n。例 の占め る割合は次第 に高まるもの
と思われ る.
A群 リンパ節別転移率は表 5に み られ るように S(一)
10(436)
噴門癌 にお け るに
例 は0 1/4(25%)②
指腸側 切離線 の決定
2/3(66.7%)0 1/2(50
表 6
日消外 会 誌 7 巻
B群 (C,cM)リ
5号
ンパ節 別転移率
小弯側 に転移 がみ とめ られ るが ,s(十 )例 は①
10/22(45%)②
5/15(33.3%)①
4/16(25%)④
%)と
2/10(20%)⑦
2/10(20%)①
3/16(18.8%)③
5/12(41.7%)⑩
3/12(25%)①
1/8(12.5%)①
1/7(142%)と
7/14(50%)①
高率 の 転移をみ
とめ るが ,試 験的に摘除 された⑤ ,cに は痛転移 がみ と
め られない。
ンパ節り
じ
表 5 A群
(EC,E=C,CE)リ
転移率
物デ←
No.
罷1端 1球
( 十)
(
]
%)
0
1
0
0
0
10/22 42 3
1
2
.
4 / 1 631 6
2 / 1 016.7
0
2
一
〇
2/3
0/2
5
2
,
一
4
6
6
3
11/26
5/15
0
5
0
6
0
6 / 1 9
2 / 1 2
7
8
0
41.7
9
5/12
2
0
11
43 8
0
0
0
7/16
No.
12.5
0
15
16
―
│0
(%デ( ) 骸デ←)
U
0
0
0
1
0
1
0
0/1
(42.9%)こ 1 2/7(28.6%)f,1/7(14.3%) ⑩
1/5(20%)に
転移がみ とめ られ ,他 の リンパ節 とく
に⑤⑥ には転移がみ られない。
これに対 し,S(十 )例 は① 9/16(56.3%)②
3/
13(23.1%)③
8/15(53.3%)④
2/13(15.4%)⑤
3/8(37.5%)⑦
③ 1/10(10%)C)3/9(33.3%)①
ンパ節別転移度
(EC,E=C,CE)リ
0
B群 リンパ節別転移率は表 6に み られ るようにS(― )
例 は ,① 2/8(25%)②
2/6(33.3%)③
377
2/3(66.7%)⑥
表 7 A群
0
5/7(71.4%)
2/10(20%)
① 1/11(9.1%)と
上 胃周辺な らびに幽門上下 に高率
の転移 がみ とめ られ る。 これは 占居部位 が cよ りCMに
お よび ,葉 膜浸潤が鮮 ,陣 ,肝 ,副 腎な どに及んだ症例
がふ くまれ ,リ ンパ節転移 も広汎にわたる結果 になつた
もの と思われ る。
6)リ ンパ節転移度 :A群 リンパ節転移度は表 7に み
1ll
1
0
0
4
31.6
29.5
3
22.2
25.6
0
5
0
6
0
25/101
13/59
16/62
3/34
0
4/23
7
8
24/76 24.8
13/44 22.0
11/43 25.8
3/27
0
731
20.6
7/34
6/38
12/30
37.5
12/32
9
0
0
40.0
0
0
0
0
0
0
11(437)
1974年 9月
4718
られ るように S(一 )例 は① 1/25(4%)③
小弯 リンパ節 に のみ
(22.2%)① 176(16.7%)と
2/19
%),⑤ 2/17(11.8%),0 7/17(412%),①
の
2群
第
転移度 も高
(10.5%),① 1721(48%)と
転移をきた しているが ,転 移度 は 低 い.S(十 )例 は胸
のみ転移 があ ず か にみ
雄内へは① 1718(5.6%)に
く,と くに幽PS下 リンパ節 に27.3%転 移度をみ る事は警
成を要す る。ただ し,こ の ような症例 においても②に リ
とめ られ る.腹 隆内では① 24′76(31.6%),②
ンパ節転移をみ とめない。
この事 か らB群 の うち S(― )例 では⑤ ,⑥ に リンパ
3/27(11.1%),②
(29.5%),③ l1743(25.6%),④
4′23(17.4%),①
13/44
7/31(22.6%),③
7/17(41.1
%),⑩ 6/38(15.8%),①
12/30(40%)と 上 胃周辺
の リンパ節 には高 い転移度 を示すが , ⑤ 072, ⑥
O/12には転移をみ とめない,
この事 か らA群 では上 胃周辺 の リンパ節は徹底的に廓
清す る必要はあるが ,⑤ ,⑥ ,② には転移 のみ とめ られ
ない ことか ら,胃 管利用 は可能 なものと考える.
B群 の リンパ節転移度 は表 8に み られ るように S(一)
4′ 28
例 は 第 1群 リンパ 節 の① 7/6(15.6%),②
5/31(16.1%)に 転移
(14,3%),③ 8/35(22.9%),④
がみ られ ,さ らにの 2/38(5.3%),″
⑩ 1718(5.6
パ節 には転移
リン
の
%)に も転移がみ とめ られるが ,他
を証明 しない.と くに④ に16.1%に 転移 がみ られ ること
は大弯側 胃管利用 の際 に慎重 であるべ きもの と思 う.
表 8 B群
(
(
0
0
む階段状切片を作 り,組 織学的 に検索 した結果 ,肉 限的
に判定 した腫瘍境界 よ り│も組織所見 に よる拡が りが広 い
場合が しば しばみ られ ,anal方 向では 6 Cmあるい は 8
Cm離れた幽門輪 に転移 のみ られた ものがあるとしたが ,
一般的 には限局型 な らば 3 cm,非限局型 な らば 5 Cm以上
の距離 が腫瘍境界 と切離端 の間 にあれば よく,ま た上部
下 リンパ節転移率 は 6%で あるとしてい
初発 胃痛 の幽P月
る。 また1946年-1966年 の癌研外科 に お け る 目全易l例
可能 なものが 84/1あつた としている.
1つ
13〕
は 目癌 の 口側端切除線決定 の基準 として ,治
非口
蔵手術可能 な条件下 では浸潤型 の場合 は 6 cm,限局型 の
S ( 十
S(一
Not
I V 考 案
11)12)
胃癌 の切離線 の決定 には多 くの意見 があるが ,西
は 胃癌 100例の小網膜 を胃壁に垂直 に固定 し,腫 瘍 を含
921例の うち ,治 癒手術後 5年 以上生存 の78例の分析 で
は 立age I(no sO)24例
中 analが 8 cm以上 もあ り.噴 切
ンパ節別転移度
(C,CM)リ
節転移をみ とめず ,胃 管利用は可能であるが,S(十 )例
が適用
になると⑥ に273%の 転移度をみ る事か ら胃全易」
べ
.
され る きで あると考える
場合は 3 cm確保 で きない場合 には全易Jを行 う,ま た小弯
側高位 リンパ節 がいち じるしく感性に腫大 している場合
t
15.6
22/53
7745
5'26
16.7
15/49
3
29′
98
9/51
も,全 易Jを考慮す るとい う方針を とつている。その理 由
として 216例の切除例 について ,限 局型 では 回側切断線
23784
上に 癌浸潤 はな く,浸 潤型 の場合 には 肉眼 口all線か ら
2,3,4 cm離 れ て切断された場合 で も10-20%の 癌遺
7/76
4
5
0
6
0
6/22
1
7
8
0
7.7
2/26
9
0
25.0
28
7′
81
3/37
2/19
0
4.8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
] /3
S(十 )例 は① 22′53(41.5%),② 5/26(19.2%),
2/45(4.4%)と
第 1群 リン
③ 15/49(30,6%),④
パ節に高率の転移度がみ られ,さ らに② 6/13(46.2
残をみ とめ ,6 Cm離 れて切断 した ときに約 3%の 癌遺残
を認めている.こ の事 は リンパ節転移 の有無 と関係があ
り,■ (十)で は肉限 口側縁 か ら遠 く離れて癌 の存在す
る事 があ り,先 進部は ly(十 )の 形を とる 事 が多い と
している。さ らに噴門切除にすべ きか ,全 別 にすべ きか
の規準 については腫瘍 の限局性 である事 が大事 で ,腫 瘍
の大 きさは小弯側 に あれば 4 cm以下 ,大 弯側 の場合 には
7 cm以下を基準 としている,
15)は
束
癌浸潤 の肉限的境界 か ら日切除線 までの必要 な
長 さは浸潤型 で 5-6 cm,限 局型 で 3-4 cllと し て お
り,西 ,井 日の意見 と大差な く,腫 瘍最大径 10Cm以上の
ものに直死例 が高頻度 にみ られた とい う.
われわれの58711の
噴門癌症例 で ,肉 眼的腫瘍境界か ら
5 Cm離れた部位を十二 指腸側切離線 とした場合 ,十 二 指
12(438)
噴門痛 におけ る十二指腸側切離線 の決定
腸側断端に痛遺残をみ とめないが ,こ れは腫瘍 の肉眼型
が限局 もしくは中間型を示す為 と思われ る.
噴門癌 におけ る 合併切除 の 必要性 は 1948年頃 よ り
Brllnschwig16),McNeerlの
こ よ・
,Pack13),Amesti19〕ら″
つ
),金 21),大 22)2め C,
て行われ るようにな り,堺 2。
井
森
らは
Cm癌 の34例の新鮮切除標本か ら肉眼的に リンパ節を拾
い出 した残 りの陣門部か ら陣体尾部 までを連続切片で検
索すると,⑩ ,① の領域 リンパ節 で転移陽性であつた も
のの60%,ま た領域 リンパ節総数 の74%は 連続切片では
じめて検出され るもので ,転 移 リンパ節 の2/3は
膵陣 合併
切除 に よ らねば取 り残 されるとしている.5生 率 の面か
らみて も C,Cm癌 で肝陣合併切除を施行 した ものは治
癒切除例 で21%,非 施行例 で12%で あ り,合 併切除例 の
予後の良好 な ことを示 している。
これに対 し岩永2りは 247例の 胃全易J術 (膵尾合併切除
74例 ,眸 尾温存摘陣 160例)に つい て 検討 し,Stage I
の陣尾切除 の 5年 累積生存率は57.0%,陣 摘 のみの生存
率 は69.7%で あ り,Stage Iの 陣尾切除 では30.9%,陣
摘 のみでは46.6%で あ り,さ らに膵上縁 リンパ節 に転移
陽性 であつた症例 の 3年 生存率で も膵尾切除例 15%,陣
摘 のみ33%で あるとして ,胃 上部または全 胃にわた る大
きな BOrmarm lv型 ,膵 上縁 リンパ節 に著明な転移を認
める もの以外 は ,そ の予後を悪 くせず に陣尾温存 の手術
が可能 であるとしている。
われわれの症例 で もA群 ,B群 とも S(― )症 例 では
⑩,① への リンパ節転移 は 少な く,藤 牌合併切際後 の
難治性慶孔が息者 の社会復帰を遅 らせ る事 もあるため ,
リンパ節廓清 には膵尾温存 ,陣 摘 のみ ,あ るいは陣を後
腹膜 よ り遊離する方法で陣 門あ るいは眸動脈幹 リンパ節
廓清を行な うので よい と考え る.し か し,s(十 )例 にな
るA群 では⑩25%① 50%,B群 では⑩20%,① 9.1%と
高率 の転移 がみ とめ られ ,膵 陣合併切除 の適応 であると
考 える。
いつぼ うA群 とBtt s(― )例 では⑤ , ⑤ に リンパ節
転移をみ とめず ,腫 瘍境界部 より5 cIBの
所 に切離線を設
けた場合に ,断 端 に痛遺残をみ とめない ことか ら胃管利
用 の噴門all切
除は可能であると思 う.
V ま とめ
│)噴 門痛 における十二指腸all切
離線 として肉眼的腫
瘍境界 よ り5 cll離
れた部位を起点 とす る大弯側細胃管形
成 の可否 について検討 した。
2)肉 眼的腫瘍境界 の判定 は 腫場 の 肉眼型 に もよる
が ,占 居部位 A群 (EC,E=C,CE)で
は読みた ら
ない ものが20例 と多 く,そ の平均 の 長 さ は 7.611mであ
る。 B群 (C・ cM)で は 肉眼 と組織 の一致す るもの 7
日消外 会誌 7巻
9号
例 , 読 みた らない もの1 2 例で , そ の 平均 の 長 さは 7 . 8
1 1 1 1 1みす
, 読 ぎの ものは 9 例 で 平均 の 長 さは 5 。
7 1 1 1 1あ1 で
る。
の awは 最短 5,最 長 150mmで平均値 44.3価
で ,い づ れ も aw(_)で
あつ た。
2)A群
B群 の awは 最短 10,最 長 120mlllで
平均値50.7mで ,
aW(一 )で あつ た。以上 の ご と く肉限的腫 瘍境界部 よ り
5 cm距つ た位 置 に十二 指腸側切離 線 をおいて ,断 端 に癌
遣残 をみ とめ ない。
藤 森正雅 教授 の指導 ・校 閲 を感謝す る。
文 献
1)村 上忠重 :非 定 型的 冒切除術 ,特 に噴 門側 胃切
除術 について。手術,XXII:163-167,1968.
2)村 上忠重 :胃 全易Jの適応 と再建 術式 の工夫.日
タト4革言
古, 74:751--754, 1973.
3)篠 田正昭 :Ileo,c010n代用 胃に よ る再 建術式,
日タトをき話
貫,74:742--744, 1973.
4 ) 榊 原 宣 : β 吻合術式 と空 腸移植 術式. 日 外会
誌, 74:745--747, 1973.
5 ) 近 藤達平 : 6 字 型腸管 移植 に よる再建 術式,
日
タトとき毒
き, 74:748--750, 1973.
6 ) 佐 藤 博 : 下 部食道噴 門痛 術後愁訴 の術式別検
許十. タ
ト手
斗, 30: 1108--1114, 1968.
7 ) 鈴 木 茂 : 噴 門癌 の手術. 外 科診療, 1 2 : 2 6 32, 1970,
3 ) 鈴 木 茂 : 噴 門痛, 下 部食道癌 の手術術式 の検
高
寸. 日夕
ヽ峯
き, 71 :937--939, 1970.
掌言
9 ) 鈴 木 茂 : 下 部食道噴 門痛 に対 す る 胃管 縫合器
利用 について. 外 科, 3 4 : 9 5 - 9 9 , 1 9 7 2 .
1 0 ) 鈴 木 茂 : 下 部食道噴門痛 の治療, と くに手術
死亡 の減 少 を 目的 として。 日本 消化器外科学会
誌, 投 稿 中.
1 1 ) 西 満 正 : 癌 の進展型式 , 消 化器癌 と くに 胃癌
について, 外 科, 3 3 : 8 8 7 - 8 9 7 , 1 9 7 1 .
1 2 ) 西 満 正 : 胃 全摘 の手術適応 と再建 術式. 日 外
と当言
き, 74:733--735, 1973.
1 3 ) 井 日 潔 : 冒 全摘術 の 適正 な手 術適応 の 提 唱,
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1 4 ) 井 口 潔 : 下 部食道噴門癌 の根治手術 と壁 内進
展 お よ び転移 について. 日 胸 外会誌 , 1 7 : 2 5 3
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1 5 ) 東 弘 : 胃 全摘 の手術適応 と くに非治癒手術 あ
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16)BrunsChwig,A.: Pancreato‐
total Castrectomy
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StOmach, cancer., I:427, 1948.
17)Mc Neer, G: Resection of StOmach and
Adみ cent Organs in Continuitt fOr Advanced
Cancer. Cancer., 1: 449--454, 1948.
18)Pack,G.T.and Mc Neer,C.: End Results
in Treatment OF Cancer of the StOmach.
Surgery.,24: 769--778, 1948.
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1974年 9月
13(439)
cancers treatcd via the transthoracic and
2森幸夫
2 ) 大 : 胃 癌 の病像 と切 除範 囲 の問題点, 臨
23,912-一
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外 , 26: 1855--1862, 1971.
934,1948
23)大
森幸夫 : 進 行 胃癌 の取扱 い方 , 日外会誌, 7 3 :
2 0 ) 堺 哲 郎 : 上 部 胃痛 に対す る切 除術, 胃 壁癌深
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永 岡‖: 目 癌 に対 す る 目全易! 術に際 しての陣
24)岩
達 度 と リ ンパ節転移 の実態 に関連 して, 手 術,
23:129-137,1969.
摘
除, 眸 尾温存 について, 日 外会誌, 7 3 : 1 2 6 3
2 1 ) 金 井 弘 : 胃 癌 に対す る藤体 尾部切 除, 易1 陣合
-1266.1972.
併手術 の意義. 日 癌 治, H : 3 2 8 - 3 3 8 , 1 9 6 7 .