2014 錯体・有機金属 第 2 回レポート課題解答例 1 a [Cu(OH2)6]2+

2014
錯体・有機金属
第 2 回レポート課題解答例
(2014 年 11 月 20 日出題)
1. 次の錯体(錯イオン)について d 軌道(3d 軌道)の分裂および電子配置を図示し,それ
ぞれ低スピン錯体か高スピン錯体かを明示した上で CFSE を計算せよ。[(2)8,10,11]
⑦ a-g 各完答で@+1
a [Cu(OH2)6]2+ 強い配位子
区別はない
-0.6∆o
d9 b
[Fe(CN)6]3-
低スピン錯体
-2.0∆o
強い配位子
d5
ただし Jahn-Teller 効果は無視している
c [Co(Cl)6]4- 弱い配位子
高スピン錯体
-0.8∆o
d7
d [Ni(bpy)2]3+ 強い配位子
高スピン錯体
四配位(Td)である点
に注意
e
Pt(Cl)2(NH3)2
高スピン錯体
-0.8∆t
混在
d7
d8
-1.2∆t
f [Co(en)3]2+ 強い配位子
低スピン錯体
-1.8∆o
d7
四配位錯体
g [Co(OH2)6]3+
-2.4∆o
強い配位子
d6
低スピン錯体
2. キレ―ト効果について説明せよ。[(3)14] ②
単座配位子よりキレ―ト配位子の方が安定な錯体をつくる(配位子の解離が起こ
りにくい)。教科書 p146
キレ―ト効果についての熱力学的な説明
配位子置換反応(a)では,7 mol の反応物から 7 mol の生成物ができるのでエント
ロピー変化はない。ところが,キレ―ト配位子による置換反応(b)では 4 mol の反応
物から 7 mol の生成物ができるためエントロピーは増大する。したがってキレ―ト
配位子による置換反応ではこのエントロピー項の寄与により平衡定数が大きくなる。
3. 次の錯体(錯イオン)について可能な異性体を図で示せ。[(1)2,5]
(1)
[Ni(NH3)2(PBu3)2(en)]2+
(2)
[Pt(Br)(Cl)(NH3)2]2+
④
1
2014
(1)
錯体・有機金属
第 2 回レポート課題解答例
(2014 年 11 月 20 日出題)
次に示す 3 種類
H3N
Py
NH3
N
Pt
Py
en
N
Py
all cis
Py
NH3
N
Pt
Py
H3N
en
N
H3N
Pt
N
en
N
Py
NH3
Py-trans
NH3-trans
考え方; en はキレ―ト配位子であるからシスの位置に固定。残る4つの配位座の
内トランスになるのは 1 組だけである。したがって,NH3 あるいは Py の内どちら
がトランスの位置を占めるかで異性体を生じる。
(2) 次に示す 2 種類
all trans
all cis
H3N
(1)(2)ともそれぞれ完答で+2
H3N
Pt
Cl
H3N
Br
Br
Pt
Cl
NH3
4. [Cu(NH3)6]2+の構造を図示せよ。また,なぜそのような構造となるのかについて簡
単に説明せよ。[(2)9,10] ④
この錯体の中心金属は d9 である。したがって,ヤーン・テラー効果によって下左
のような eg 軌道の分裂が生じこの電子配置が安定となる。そのため,下図(a)のよ
うな正八面体構造から,(b)のように両極側の配位子が中心金属から遠ざかった,歪
んだ八面体構造をとると予想できる(ヤーン・テラー歪み)。
(a)
遠ざかる
(b)
NH3
NH3
H3N
Cu2+
H3N
NH3
H3N
NH3
H3N
Cu2+
NH3
NH3
NH3
遠ざかる
極(縦)方向の配位子が遠ざかった六配位(八面体)構造の図示
d9 の明示
ヤーン・テラー効果(正方歪み,ヤーン・テラー歪み)
電子配置図および八面体構造の配位子と d 軌道との関係
歪みによる安定化
参考文献(なし)
NH3
+2
+0.5
+0.5
+0.5
+0.5
-0.3
ヤーン・テラー効果についての説明ではなく,この錯体の形についての説明が必要
2
2014
錯体・有機金属
第 2 回レポート課題解答例
(2014 年 11 月 20 日出題)
5. (1)次に示す置換反応の経路を示せ。(2)この反応で,NH3 を大過剰(例えば
[Fe(OH2)6]2+に対して 100 倍 mol) 用いるとどのような生成物が得られると予想で
1.5
きるか。[(3)13]
OH2
OH2
H2O
Fe2+
H2O
- OH2
OH2
OH2
OH2
NH3
OH2
Fe2+
H2O
OH2
OH2
H2O
Fe2+
H3N
OH2
(A)
OH2
OH2
OH2
dissociation mechanism
OH2
OH2
H2O
Fe2+
H3N
- OH2
OH2
OH2
H3N
OH2
Fe2+
NH3
OH2
OH2
OH2
H2O
Fe2+
H3N
OH2
NH3
OH2
Fe2+
H3N
(B)
NH3
OH2
H2O
OH2
OH2
H3N
NH3
H3N
Fe2+
NH3
NH3
NH3
OH2
(1) (A)に示すように,出発錯イオンは 6 配位なので,解離機構(dissociation
mechanism)で置換反応が進行する。 (2)アンモニアが大過剰に存在すると,(B)のよ
うに置換生成物の置換反応が次々進行し最終的に六置換生成物が精製する。
6. 次の反応(1)(2)の反応経路および生成物を図示せよ。またその生成物が得られる理由
を説明せよ。また,反応(1)(2)の生成物について中心金属,配位数,酸化数を示せ。
[(3)13,15] 1.5
(1) [Pt(Br)4]2- + 2 NH3
(2) [Pt(NH3)4]2+ + 2 Cl-
2-
Br
Br
Pt
Br
Br
NH3
Br
-Cl
Br
Pt
Br
NH3
Br
NH3
-Cl
H3N
中心金属
配位数
2+
H 3N
H3N
Pt
NH3
NH3
Pt
Br
NH3
Pt,
4, 酸化数
+2
+
-
Br
H3N
-NH3
H 3N
Pt
NH3
I-
Br
-NH3
中心金属
配位数
Br
H3N
Pt
NH3
Br
Pt,
4, 酸化数
3+2
2014
錯体・有機金属
第 2 回レポート課題解答例
(2014 年 11 月 20 日出題)
生成物の異性体を区別している必要がある。それぞれの反応で 3 要素;中間体を含めた経路(一置換
中間体),生成物を異性体がわかるように図示,中心金属およびその配位数,酸化数,についてそれぞ
れ完答で+1。*なお反応自体はどちらの場合も会合機構で進行する。この点を間違っているとそれぞ
れ 0.5 減点する。
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