可算和定理 alg-d http://alg-d.com/math/ac/ 2014 年 9 月 27 日 命題「可算個の可算集合の和集合は可算集合」を可算和定理という.可算和定理は選択 公理が無ければ証明できない. 命題. 選択公理 =⇒ 可算和定理 証明. {Xn }∞ n=0 を可算集合の族とする.簡単のため,各 Xn は可算無限集合で,n ̸= m な らば Xn ∩ Xm = ∅ であるとする.Xn が可算無限だから,An := {f : N −→ Xn | f は全 単射 } = ̸ ∅ である.よって選択公理により を使って f : N × N −→ ∞ ∪ (fn )∞ n=0 ∈ ∞ ∏ An を取ることができる.これ n=0 Xn を f (n, k) := fn (k) で定めれば,f は全単射である. n=0 定理. 「R = ∞ ∪ Xn ,|Xn | = ℵ0 とは書けない」は ZF で証明できない. n=0 証明. M を ZFC + GCH の可算推移的モデルとする.以下を満たす関数 p 全体がなす集 合を P とする. • dom(p) ⊂ ω × ω ,|dom(p)| < ∞ • ⟨n, i⟩ ∈ dom(p) に対して p(n, i) ∈ (ωn )M . P に順序を ≤ := ⊃ で入れる. G := Aut(ω)ω として,g = (gk )k∈ω ∈ G,p ∈ P に対して g(p) := {⟨n, gn (i), α⟩ | ⟨n, i, α⟩ ∈ p} と定める.n ∈ ω に対して Hn := {g = (gk )k∈ω ∈ G | k < n に対して gk = id} と定める.F := {H ⊂ G | H は部分群,ある n ∈ ω が存在して Hn ⊂ H} とす る.F は normal フィルターであることが容易に分かる. 1 M 上 P ジェネリックな G を取り,F から定まる symmetric モデル N ⊂ M [G] を取 る.Bm := {p ∈ P | dom(p) ⊂ m × ω} と定める.p ∈ Bm ,g ∈ Hm に対して g(p) = p である. n ∈ ω に対して Σn := {σ ∈ M P | dom(σ) ⊂ ω ˇ , ran(σ) ⊂ Bn } Rn := {⟨σ, 1⟩ | σ ∈ Σn } X := {⟨Rn , 1⟩ | n ∈ ω} とおく.Rn , X は P-名前である.g ∈ G,σ ∈ Σn とする.p ∈ Bn ならば g(p) ∈ Bn だから,g(σ) = {⟨m, ˇ g(p)⟩ | ⟨m, ˇ p⟩ ∈ σ} ∈ Σn である.よって任意の g ∈ G に対して g(Rn ) = Rn ,即ち sym(Rn ) = G となる.明らかに dom(Rn ) ⊂ HS だから,Rn ∈ HS である.故に X ∈ HS も分かる. Rn := val(Rn , G),X := val(X, G) = {Rn | n ∈ ω} と置く.X ∈ N である.故 ∞ ∪ ∪ に X = Rn ∈ N となる.任意の実数 (即ち,ω の部分集合) x ∈ N を取る. n=0 val(x, G) = x を満たす P-名前 x ∈ HS を取る.dom(x) ⊂ ω ˇ としてよい.x ∈ HS だ から,ある n ∈ ω が存在して Hn ⊂ sym(x) となる.よって,ran(x) ⊂ Bn でなけ ればならない.従って x ∈ Σn となり,x = val(x, G) ∈ Rn が分かる.以上により, ω N (2 ) ⊂ ∞ ∪ Rn である. n=0 よって,各 Rn が N で可算であることを示せばよい.定義より,M の中で |Σn | = |P(ω × Bn )| = (2ωn )M = (ωn+1 )M である (M で GCH が成立することに注意する). α, sα ) | α ∈ (ωn+1 )M } と置け よって Σn = {sα | α ∈ (ωn+1 )M } と書ける.h := {op(ˇ ば h := val(h, G) = {⟨α, val(sα , G)⟩ | α ∈ (ωn+1 )M } は全単射 h : (ωn+1 )M −→ Rn とな る.即ち,N の中で |Rn | = |(ωn+1 )M | である. n ∈ ω を取る. fn := {⟨op(ˇi, α ˇ ), p⟩ | i ∈ ω, p ∈ P, p(n, i) = α} ∈ M P とする.g = (gk )k∈ω ∈ Hn+1 に対して g(fn ) = {⟨op(ˇi, α ˇ ), g(p)⟩ | i ∈ ω, p ∈ P, p(n, i) = α} = {⟨op(ˇi, α ˇ ), p⟩ | i ∈ ω, p ∈ P, g −1 (p)(n, i) = α} = {⟨op(ˇi, α ˇ ), p⟩ | i ∈ ω, p ∈ P, p(n, gn (i)) = α} = {⟨op(ˇi, α ˇ ), p⟩ | i ∈ ω, p ∈ P, p(n, i) = α} = fn 2 だから fn ∈ HS である.fn := val(fn , G) ∈ N とすれば fn は ω から (ωn )M への全射で ある. . . . ) 任意の α ∈ (ωn )M を取る.D := {p ∈ P | ある i ∈ ω が存在して p(n, i) = α} と置けば D ⊂ P は稠密である.G が M 上 P-ジェネリックだから p ∈ D ∩ G が取れ る.このとき p(n, i) = α とすれば fn (i) = α である. 故に N において |Rn | = |(ωn )M | = ω である. 系. 可算和定理は ZF で証明できない. 系. Lebesgue 測度の完全加法性は ZF で証明できない. 3
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