2年5組 数学科授業案 授業者 山本 享由 1 単 元 図形の性質や仕組みを解き明かそう 2 単元目標 (1)操作活動やグループ活動をとおして,図形の性質を考え,意欲的に取り組もうとする。 (数学への関心・意欲・態度) (2)多角形の内角や外角の和を求める方法を帰納的・演繹的に考え,導くことができる。また,操作 活動をとおして,三角形が合同になる条件を導くことができる。 (数学的な見方や考え方) (3)角と平行線の性質を利用して,対頂角や錯角などの角の大きさを求めたり,多角形の内角や外角 の和などを求めたりすることができる。 (数学的な技能) (4)対頂角や同位角,錯角の意味や,平行線の性質を理解することができる。また,多角形の内角や 外角の和を求める方法を理解し,三角形の合同条件の意味と,その必要性について理解することが できる。 (数量や図形などについての知識・理解) 3 指導にあたって (1)生徒観 本学級の生徒は,一問一答である発問に対しては意欲的に発言することができる。 「一次関数の 式は?」 「 y ax b 」というように,知識を問う問題は積極的に答える生徒が多い。一方で, 「こ の連立方程式の解き方を説明してみよう」という発問に対しては,消極的な姿勢になってしまう。 息の長い発言ができる生徒が全くいないわけではないが,まちがいを恐れずに自分の考えを言うこ とができる生徒は少ない。しかし,生徒のふり返りを読んでみると, 「自分も○○くんのように, 説明できるようになりたい」と前向きな感想を書いている生徒が多いことがわかった。また, 「一 次関数のグラフから何が読み取れるか」をペアになって考えるように指示したところ,積極的に自 分の考えを言う姿が見られた。今後は,自分の考えを伝えることに喜びを感じ,活発に発言し合え る生徒たちに育ってほしいと願っている。 (2)教材観 生徒は,三角形の角の和が 180°であることや,平行や垂直など図形に関する基本的なことを小 学校ですでに学習してきている。中学では,操作や体験などをとおして得た小学校の知識を生かし て,角と平行線の性質を新たに見出して,多角形の角についてより深く学んでいく。そして,数学 的用語を用いたり,文字を利用したりすることで, 「なぜ,そうなるのか?」といった疑問に対し て根拠を明確にして説明することができるようになる。また,多角形の内角の和は一般化すること で式に値を代入するだけで求めることができるようになる。小学校で学んだことが本単元でも成り 立つことを実感するのはもちろん,一般化することでより効率的に問題解決ができるよさを学んで いきたい。さらに,合同条件が3つしか存在しないことは実際に三角形の作図をとおして学び,次 の単元である証明では重要な根拠となることを示していきたい。 (3)指導観 まず,角の名称を用いて説明したり,直線の位置関係を示したりしながら,自分の考えを言える ようにしていきたい。そのため,習った用語について意味まで覚えているかを確認する場面を取り 入れることや,用語を使うことができた生徒をすかさずほめることで,知識の定着を図っていきた い。そして,ペアやグループの活動は自分の考えを表現し合う場としてとらえ,特に数学が苦手な 生徒にとって話しやすい環境をつくることで「わからない」を解決する場としても期待したい。単 元構想中の「三角形と四角形の角について調べよう」の授業では小学校の教科書の問題を取り上げ る。小学5年生で学習した方法を思い出すことで生徒の発想が柔軟になり,さらに,次時の授業で n 角形の内角の和の一般式を求めていくヒントとなるからである。さまざまな考えから共通性を見 出し,一般化へと展開する帰納的な学習をすすめていきたい。 - 54 - 4 単元構想( 6/10 本時) 予 想 さ れ る 学 習 活 動 図形の性質や仕組みを解き明かそう! ※支援 ※1見た目だけでは図形の 特徴は判断できないことを 図形を正しく調べる方法を知ろう① ※1 平行に見えないなん 見た目では合同に て不思議だ。 見えないよ。 角を詳しく調べればいいのかな。 理解するために,錯視の図 どうやって,確かめ を提示する。 ※2角が等しいことや2直 たらいいのかな。 線が平行であることが実感 できるように,三角定規や 角の性質と平行線でできる角について調べよう②③ 1組の三角定規を使えば,平行な直線が引けるんだったね。 ※2 分度器を用いた操作活動を だよ。 取り入れる。 ※3 a = c だと,対頂角で ※3等しい角や平行な直線 の関係が一目でわかるよう c = b だよ。 対頂角だから b = c a = b で 同 位角 も等 に,それらを示す記号を紹 でもあるよ。 しくなるよ。 l // m だと, a = b 介し,証明で使えるように 2つの直線が平行だと,同位角や 同位角や錯角が等しいと,2つの 錯角が等しいよ。 直線は平行なんだ。 する。 ※4根拠を明確にして,内 角や外角の性質が理解でき 三角形や四角形の角はどんな性質があるだろう? るように,ペアで確認し合 三角形と四角形の角について調べよう④⑤ い,全体で説明し合う時間 どんな三角形でも,3つの角の和は 180°だったね。 ※4 を設ける。 外角にある PC は AB に平行になるよ ※5四角形を1つの対角線 ね。同位角・錯角からも説明できそうだ。で2つに分けたり,内部の 点から4つに分けたりして 四角形の4つの角の和も習っているよ。 角の和を求める方法を想起 角度を測った り,しきつめた り,角を切り取 って並べたよ。 するために,小学校で学ん 上の方法で 対角線や補助線でい もできるん くつかの三角形に分 ※5 だ方法を思い出す活動を取 小学5年生の教科書にある問題 り入れる。 だけど…。 けても考えられたよ。 どんな四角形でも 360°だったね。※6自力解決で手が止まり 他の多角形の角の和はどうなっているんだろう?調べてみたいな。 がちな子も安心して取り組 めるように,考え方のヒント 多角形の角について調べよう⑥(本時)⑦ となるモデルがまわりにい 補助線を引いたら, 三角形がいくつあるかで,多角形 三角形ができたよ。 の内角の和がわかりそうだ。 ※6 るように,4人のグループを つくる。 ※7板書が規則性に気づく 同じ多角形でも,いろいろな 辺の数と三角形の数に 手助けとなるように,五~八 補助線のかき方があるぞ。 関係はないかな。 角形に含まれる三角形の数 内角の和の求め方で, なんで外角の和はどれも ※7 と内角の和を求める式を横 180 のあとにかけてい 360°なんだ。 ※8 に並べながら板書していく。 る数はなんだろう。 公式がつくれそうだ。 ※8各多角形の外角を明確 辺を延長すると,180°の角 に示したうえで,180°がい が辺の数だけできたよ。 くつあるかに注目できるよ ・ n 角形の内角の和は 180 (n 2) で求められるんだ。 ・外角の和は,どんな多角形でも 360°なんだ。 - 55 - うに,必ず 360°になること をグループで帰納的に確か める。 2つの三角形が合同ってどんな場合か考えよう⑧ ※9合同な図形は対応する 辺や角の大きさが等しいこ 合同な2つの三角形はどうなっ ※9 ているのだろう。 とを理解するために,わか っていない辺の長さや角の 裏返しても,ぴったり重なるも のは合同なんだ。 すべての辺と角を測っ ぴったり重なるってことは,対応する辺 て調べないといけない の長さと角の大きさが等しいことだ。 のかな? 大きさを測るように指示す る。 ※10 作図の苦手な生徒が合 同な三角形のかき方を確認 三角形の合同条件を見つけよう⑨⑩ したり,他の方法に気づいた 合同な三角形かどうかを判断するには,どうしたらいいだろう。 りできるように,4人のグル △ABCと合同な三角形をかいて,確かめてみよう。 ※10※11 ープをつくる。 ※11 三角形の合同条件は3 3辺の長さを測 2辺の長さとその間の 1辺の長さとその両端の角 つしか存在しないことを実 の大きさを測ってかいた。 感するために,合同条件にな 角を測ってかいた。 ってかいた。 らない場合の条件をかくよ この3つの方法から,合同条件にまとめられるね。 うに指示する。 合同条件を用いて,合同な三角形を見つけられるよ。 5 本時の授業 (1)目 標 多角形の辺の数と補助線を引いてできる三角形の数の関係に注目し, n 角形の内角の和を求める 一般式を導くことができる。 (数学的な見方や考え方) (2)本時の授業構想 導入では,4人グループに画用紙でできた五・六・七・八角形を配付し,内角の和をグループで 分担して求めていく。測る・切る・補助線を加えるなどの活動を保障して,内角の和を求める方法 を考えていく。さまざまな方法の中から最も簡単に求められる“補助線を利用した方法”に注目す ることで,多角形の内角の和の求め方には規則性があることに気づくようにしていく。そのために, 板書の配置や色づかいを工夫し,多角形の頂点から頂点を結んだ場合と多角形の内部から頂点を結 んだ場合の2通りの考えを引き出させて,生徒が発見的に学習できるように配慮する。最後に適用 題を解くことで,公式(一般化)のよさを十分に味わうことができるようにしていきたい。 (3)学び合いの活用 始めのグループ活動は,多角形がどうやって三角形に分けられるかを見比べたり紹介したりして, 互いの方法や考え方にふれる学び合いが自然に展開されるはずである。そして,補助線の引き方に よって図形の見方が変わることも自ずと知ることができるだろう。その後,同じ図形の角度を求め た生徒を全体の場で複数指名し,内容の取り上げ方や板書の工夫で互いの関わりを促す。 ねらいに迫る「 (分割された)三角形の数」との関連については,板書をもとにした説明を促し, n 角形の内角の和を求める公式が板書に隠されていることに気づかせていく。生徒の言葉を十分に 生かしてまとめ,自分たちの手で公式を創り上げたという達成感を味わわせたい。 (4)展 開 時間 0 学 習 活 動 主な発問 ※教師の支援 評 価 グループで分担して,五角形,六角形,七角形,八角形の ※実際に操作して考え 内角の和の求め方を考えよう られるように,画用紙で できた図形を与える。 - 56 - 分度器で測って, 内角の 三角形のときみたいに,角を切 ※自力解決で手が止まり 和を求めたよ。 り取って並べて考えてみたよ。 がちな生徒も安心して取 り組めるように,考え方 四角形のときみたいに補助線 同じ多角形でも補助線の引き方 のヒントとなるモデルが を引くと,三角形ができたよ。 によって,三角形の数が違うぞ。 まわりにいる4人グルー プをつくる。 10 内角の和の求め方を発表しよう ※グループでやるべきこ とを明確にするために, 方法A:補助線を頂点から頂点に結んだ場合 画用紙でできた4つの多 角形から1つを選択する ように指示する。 三角形が 3 つ 三角形が 4 つ 三角形が 5 つ 三角形が 6 つ ※板書が規則性に気づく できたから, できたから, できたから, できたから, 手助けとなるように,4 180 × 3 で 180 × 4 で 180 × 5 で 180 × 6 で 種類の多角形に含まれる 540°だ。 720°だ。 900°だ。 三角形の数と内角の和を 1080°だ。 求める式を横に並べなが ら板書していく。 ※視覚的にも規則性に気 づきやすくするために, 三角形 6 つ分 三角形 7 つ分 三角形 8 つ分 の 900°から の 1080 ° か の 1260 ° か の 1440° か 数と 180 のあとにかく数 360 ° を引 い ら 360°を引 ら 360°を引 ら 360°を引 字は黄色で板書する。 たから, いたから, いたから, いたから, ※多くの生徒が関わりな 180× 7-360 180×8-360 だ。 だ。 がら発言したり,考えを 180×5-360 180×6-360 だ。 だ。 方法B:補助線を内部から頂点に結んだ場合 30 補助線は赤色,三角形の 三角形 5 つ分 内角の和の求め方から,何か気づくことはないかな? 言ったりできるように, 補助線をかく生徒や三角 形の数を答える生徒な ど,部分的に答えるよう 180 にかけている数は何だろ Bの n 角形は n 個の三角形に に指示する。 う。 分けられる。 ※規則性に気づいていな 180 にかけている数は,辺の数 Bの場合は,どれも 360 を引い から2を引いたものだ。 ているよ。 Aの n 角形は ( n 2) 個の三角 Bの n 角形は180 n から,360 を引けばよさそうだ。 形にわけられるよ。 い生徒が何に注目すれば よいのかを相談できるよ うに,3分間席を離れて もよい時間を設ける。 ※多角形の内角の和を求 Aの n 角形の内角の和は Bの n 角形の内角の和は める式を一般化するため 180 (n 2) で求められるよ。 180 n 360 で求められるよ。 に,180°にかける数字が AとBのどちらの方法も,結局は同じことだ。 どのような意味をもつの n 角形の内角の和を求めるための式の意味を理解し,一般式を導 かに気づいた生徒を意図 くことができたか。(発言,ワークシート) 的に指名する。 ※Bの方法で,必要な角( n 個の内角)と不要な角(360°)を色わ ※一般化することのよさ けして補助線で切り取り,180n から引けばよいことを見せる。 が実感できるように,一 42 45 みんなでつくった公式を利用して,問題を解こう。 ○ふり返りを書こう。 50 - 57 - 般化した式を利用した問 題を用意する。
© Copyright 2024 ExpyDoc