2014 久留米大学医学部 化学 1 【解答】 ⑴ 2H2O2 → 2H2O+O2 ⑵ 3.0×10-3 mol ⑶ 5.0×10-3 mol/(L・s) ⑷ 5.4×10-3 s-1 ⑸ 109 mL(または 108 mL) ⑹ 活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子の割合が大きくなるから。 ⑺ 触媒のはたらきをする酵素はタンパク質でできており,高温では変性が起こり, 失活するため。 【解説】 塩化鉄(Ⅲ)FeCl3 は触媒である。 ⑴ FeCl aq 2H2O+O2 2H2O2 3 ⑵ 発生した気体は酸素 O2 である。30 秒後までに発生した O2 は, 294 K,(1.013×105-2.49×103) Pa,37 mL である。発生した O2 の物質量を n〔mol〕とすると, (1.013×105-2.49×103)× 37 =n×8.3×103×294 1000 より, n=1.49…×10-3〔mol〕 である。分解した H2O2 の物質量は,発生した O2 の物質量の2倍だから, 1.49×10-3×2=2.98×10-3 ≒3.0×10-3〔mol〕 である。 ⑶ 30 秒間の H2O2 のモル濃度の減少は, 2.98 10 3 =1.49×10-1〔mol/L〕 20 1000 だから,この 30 秒間の反応速度は, 1.49 10 1 =4.96…×10-3 ≒5.0×10-3〔mol/(L・s)〕 30 である。 1 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 30 秒後の H2O2 のモル濃度は, ⑷ 1.0-1.49×10-1=0.851〔mol/L〕 だから,最初の 30 秒間の H2O2 の平均のモル濃度は, 1.0 0.851 =0.925…(mol/L) 2 である。v=k[H2O2]より, 5.0×10-3 =k×0.925 を解いて, k=5.40…×10-3 ≒5.4×10-3〔/s〕 となる。 ⑷ 90 秒間の H2O2 のモル濃度の減少は, 1.49×10-1× 84 =3.38×10-1〔mol/L〕 37 だから,90 秒後の H2O2 のモル濃度は, 1.0-3.38×10-1 =0.662〔mol/L〕 である。 120 秒後の H2O2 のモル濃度を C〔mol/L〕とすると,v=k[H2O2]より, - C 0.662 120 90 =5.4×10-3× 0.662 C 2 より, C =0.562…〔mol/L〕 である。したがって,120 秒間の H2O2 のモル濃度の減少は, 1.0-0.562=0.438〔mol/L〕 であり,H2O2 の物質量の減少は, 0.438× 20 =8.76×10-3〔mol〕 1000 となり,発生した O2 の物質量は 8.76×10-3× 1 =4.38×10-3〔mol〕 2 である。したがって, X=37× 4.38 10 3 1.49 10 3 =108.7…≒109〔mL〕(☞注参照) 2 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 (注) ⑵の解説で n の値を, n=1.498…×10-3 ≒1.50×10-3〔mol〕 のように求めて,以下の設問を n=1.50×10-3〔mol〕を用いて解き進めると, ⑵~⑷の解答に変化はないが,⑸の解答は 108 mL となる。 ところで,⑸の解答が 109mL であれ 108mL であれ,60~90 秒の O2 発生量よ りも 90~120 秒の O2 発生量の方が大きくなっており,[H2O2]の濃度が小さくなる にしたがって反応速度が小さくなることと矛盾している。これは,問題での数値設 定のミスであり,煩雑な計算を乗り越えて求めた解答なので,とまどった受験生も いたかもしれない。 時間(秒) 0 30 60 90 120 捕集量(mL) 0 37 63 84 109 (108) 30 秒間での O2 発生量(mL) ⑹ 37 26 21 25 (24) 温度を高くすると,活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子の割合が大きくな るので,反応速度が大きくなる。また,分子の熱運動が激しくなり,分子の衝突頻度も わずかには増加しているが,反応速度の増大に大きく影響を与えているのは,「活性化 エネルギー以上のエネルギーをもつ分子の割合が大きくなる」ことなので,「衝突頻度 の増加」は理由に含める必要はない。 ⑺ 肝臓片にはカタラーゼという酵素が含まれている。酵素はタンパク質からできてい るので,高温では変性が起こり,失活する。 3 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 2 【解答】 組成式: Fe2O3 ⑴ 酸化数: +3 化学反応式: Fe2O3+3CO → 2Fe+3CO2 FeCl3 K4[Fe(CN)6] (イ) (ウ) KSCN ⑵ (ア) ⑶ 表面の亜鉛の方が鉄よりもイオン化傾向が大きいので,亜鉛が先に酸化されるか ら。 ⑷ 記号: (エ) 沈殿: AgCl ⑸ 記号: (ウ) 理由: Fe(OH)3 のコロイドは正に帯電しているため,価数の 大きな陰イオンを含む電解質ほど凝析させやすいから。 【解説】 ⑴ 赤鉄鉱の主成分は酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3,磁鉄鉱の主成分は四酸化三鉄 Fe3O4 である。鉄 は,高炉(溶鉱炉)で鉄鉱石をコークス(C),石灰石(CaCO3)と反応させてつくる。高炉 で得られる鉄は銑鉄とよばれ,炭素などの不純物を含む。銑鉄を転炉に移し,酸素を吹 き込んで炭素などの不純物を減らし鋼にする。溶鉱炉中の反応は,次の通り。 C+O2 → CO2 CO2+C → 2CO …還元剤 Fe2O3+3CO → 2Fe+3CO2 CaCO3 → CaO+CO2 SiO2+CaO → CaSiO3 …スラグの主成分 ⑵ 単体の鉄は塩酸に溶ける。 Fe+2H+ → Fe2+(淡緑色)+H2 塩素を吹き込むと鉄(Ⅱ)イオン Fe2+が酸化されて鉄(Ⅲ)イオン Fe3+になる。 2Fe2+(淡緑色)+Cl2 → 2Fe3+(黄褐色)+2Cl- 以下は,鉄(Ⅲ)イオン Fe3+の検出反応である。 Fe3+ + K4[Fe(CN)6]aq → 濃青色沈殿 ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液 Fe3+ + KSCNaq → 血赤色溶液 チオシアン酸カリウム水溶液 4 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 ⑶ 腐食とは,金属単体が水や酸素などの環境物質と反応し,酸化されて崩壊または溶解 してしまうことである。イオン化傾向が Zn>Fe であるから,Zn は Fe よりも酸化され やすい。トタンに傷がついて Fe が露出しても,表面の Zn が先に腐食するので,内部 の Fe は保護される。 ⑷ FeCl3 水溶液を沸騰水に入れると, FeCl3+3H2O → Fe(OH)3+3H++3Cl- のように加水分解反応し,水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3 のコロイド溶液となる。この溶液を, セロハンの袋を用いて透析すると,H+と Cl-がセロハンの袋の外の水中に出てくる。 これに AgNO3 水溶液を加えると,AgCl(白色沈殿)が生じる。 ⑸ 水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3 のコロイドは正に帯電しているので,価数の大きな陰イオンを 含む電解質を加えると凝析を起こしやすい。(ア)~(オ)に含まれる陰イオンは次の通り である。 (ア)(イ)(オ) … Cl- (ウ) … PO43- → 最も凝析効果が大 (エ) … SO42- (カ) … NO3- 5 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 3 【解答】 C2H2 ⑴ (ア) (イ) 三重結合 (ウ) 白川秀樹 ⑵ ① CaC2+2H2O → Ca(OH)2+C2H2 ② 5.0 L ⑶ CAg≡CAg ⑷ 51 g ⑸ アセタール化 ⑹ アセチレンに水を付加してもアセトアルデヒドが生成し,ビニルアルコールは得 られないため。(43 字) ⑺ C: CH3-CO-O-CH=CH2 F: ビニロン G: ベンゼン 【解説】 ⑴・⑵①・⑸・⑺ 下線部⒜の化学反応式は, CaC2+2H2O → Ca(OH)2+C2H2⑵① であり,A はアセチレン C2H2⑴(ア)である。 アセチレンの構造式は, H-C≡C-H であり,三重結合⑴(イ)をもち,水素,ハロゲン,水などと容易に付加反応を起こす。 CH≡CH + H2 → CH2=CH2 B:エチレン CH≡CH + CH3-CO-OH → CH3-CO-O-CH=CH2⑺C C:酢酸ビニル 酢酸ビニル(C)を付加重合させると,ポリ酢酸ビニル(D)が得られる。ポリ酢酸ビニ ルをけん化するとポリビニルアルコール(E)が得られる。ポリビニルアルコールをアセ タール化⑸するとビニロン⑺F(F)が得られる。 6 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 CH≡CH CH3COOH 付加 CH2 CH O-CO-CH3 酢酸ビニル(C) 付加重合 CH2 (7)C CH CH2 けん化 CH OH n OCOCH3 n ポリビニルアルコール(E) ポリ酢酸ビニル(D) ホルマリン (HCHOaq) アセタール化 CH2 CH2 CH OH n-2x CH CH2 CH O CH2 O x ビニロン(F) アセチレンを加熱した石英管に通すと,3 分子の付加重合反応によりベンゼン⑺G(G) が生成する。 3CH≡CH → アセチレンをチーグラー・ナッタの触媒存在下で反応させると,多数の分子の付加重合 反応により,ポリアセチレン(H)が生成する。 nCH≡CH → CH CH n 平川秀樹⑴(ウ)博士は,ポリアセチレンを素材とする導電性プラスチックの開発に成功 し,2000 年にノーベル化学賞を受賞した。 日本人のノーベル化学賞受賞者は,次の通り。 1981 年 福井謙一 化学反応過程の理論的研究 2000 年 白川英樹 導電性プラスチックの発見と開発 2001 年 野依良治 不斉触媒による不斉反応の研究 2002 年 田中耕一 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発 2008 年 下村脩 緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と生命科学への応用 2010 年 鈴木章 クロスカップリングという有機合成反応の開発 根岸英一 7 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。 2014 久留米大学医学部 化学 ⑵② CaC2=64 より, 72 100 ×22.4=5.04≒5.0〔L〕 64 20 ⑶ 三重結合を形成している炭素原子に直接結合した水素原子は,アンモニア性硝酸銀水 溶液を反応させると,銀に置換される。 性AgNO aq -C≡CH NH 3 3 -C≡CAg(白色沈殿) アセチレンの場合,三重結合を形成している炭素原子に直接結合した水素原子 2 個 が銀に置換される。 性AgNO aq HC≡CH NH 3 3 AgC≡CAg(白色沈殿) D はポリ酢酸ビニルで,E はポリビニルアルコールである。 ⑷ CH2 CH NaOHaq CH2 CH OH n OCOCH3 n 分子量 86n 分子量 44n 100 ×44n=51.1…≒51〔g〕 86 n ⑹ アセチレンに水が付加して生じるビニルアルコールは不安定なため,ただちに異性化 してアセトアルデヒドになる。 CH≡CH + H2O 付加 CH2 CH 異性化 CH3 C OH O ビニルアルコール H アセトアルデヒド 8 ©創医塾 京都 本サービスに関する一切の権利は著作権者である創医塾京都に帰属します。掲載の全部または一部についての無断複製・転載を禁じます。
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