4.宍道断層の調査結果(東側) (3)宇井∼福浦

130
4.宍道断層の調査結果(東側)
(3)宇井∼福浦
【H28.1.29第324回審査会合以降のデータ拡充内容】
・宇井∼福浦(変動地形学的調査)
132
(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充)・・・
・宇井∼福浦(Loc.T−1)
(研磨片観察等による断層性状に関するデータ拡充)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138∼140
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P42 加筆・修正
宇井∼福浦(文献調査)
島根原子力発電所
美保関町
0
5
10km
Loc.T-2
高尾山リニアメント
Loc.T-1
福浦
宇井
Loc.T-4
日向浦
鹿野・吉田(1985)及び鹿野・中野(1985) の断層,伏在断層
(縮尺:5万分の1)
鹿野・吉田(1985)の法田リニアメント及び高尾山リニアメント
(高尾山リニアメントの東側は文献の図郭範囲まで記載)
原子力安全委員会のワーキンググループ3
第17回参考資料第2号(2009)に記載された推定活断層の位置
調査地点
Loc.T-3
131
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P43 加筆・修正
宇井∼福浦(変動地形学的調査)
132
鹿野・吉田(1985)の法田リニアメント及び高尾山リニアメント
(高尾山リニアメントの東側は文献の図郭範囲まで記載)
島根原子力発電所
美保関町
0
5
10km
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
高尾山西側
高尾山南側(北)
調査地点
Loc.T-2
高尾山リニアメント
Loc.T-1
福浦
Loc.T-4
宇井
日向浦
高尾山南側(南)
・美保関町宇井から福浦の間では,変位地形は不明瞭
であるが,北側には鞍部列を境に丘陵の南側が低い
崖地形及び高度不連続が断続的に認められる。
・また,南側には,尾根・谷の屈曲,鞍部,直線谷が断
続的に認められる。
Loc.T-3
※2007年中国電力取得の2mDEM(航空レーザー測量)を使用
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読したもの)
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読していないもの)
4.(3)宇井∼福浦
133
宇井∼福浦(変動地形学的調査)
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
鹿野・吉田(1985)による高尾山リニアメント
(東側は文献の図郭範囲まで記載)
地形要素
鞍部
調査地点
北
Loc.T-1
Loc.T-2
宇井
Loc.T-4
m
境水道
日向浦
福浦
Loc.T-3
南
※2007年中国電力取得の2mDEM(航空レーザー測量)を使用
変位地形・リニアメント
・当社判読の高尾山南側(北)の変位地形・リニアメントは,鹿
野・吉田(1985)に示される高尾山リニアメントに対応する。
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(変位地形・リニアメントの成因)
134
鹿野・吉田(1985)より引用・加筆
・鹿野・吉田(1985)によると,高尾山リニアメントの成因について,「地質断層とリニアメントが一致するも
のの,リニアメントに沿って確実に断層変位地形と認められるものがないこと及び断層両側の地層の
浸食に対するコントラストが大きいことなどから,リニアメントは組織地形であると判断される。」とされて
いる。
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P44 加筆・修正
宇井∼福浦(地表地質踏査(地質図))
135
島根原子力発電所
0
5
10km
Loc.T-2
Loc.T-1
Loc.T-3
福浦
Loc.T-4
宇井
原子力安全委員会のワーキンググループ3
第17回参考資料第2号(2009)に記載された
推定活断層の位置
・古浦層の流紋岩質火砕岩,砂岩,
礫岩等が分布し,これを貫入する
玄武岩が確認される。
日向浦
調査地点
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
鹿野・吉田(1985)及び鹿野・中野(1985)の断層,伏在断層
(縮尺:5万分の1)
鹿野・吉田(1985)の法田リニアメント及び高尾山リニアメント
(高尾山リニアメントの東側は文献の図郭範囲まで記載)
4.(3)宇井∼福浦
136
宇井∼福浦(調査の概要)
1.はぎ取り調査(研磨片観察等を含
む)・ピット調査
鹿野・吉田(1985)に示される高尾山リ
ニアメントに対応する高尾山南側(北)
の変位地形・リニアメント通過位置付近
において,はぎ取り調査(研磨片観察等
を含む)及びピット調査を実施した。更に,
各地点の調査結果により総合的な検討
を行い,活動性を評価した。
高尾山南側(北)
島根原子力発電所
0
5
10km
Loc.T-2
Loc.T-1
Loc.T-3
高尾山南側(南)
福浦
Loc.T-4
宇井
2.ピット調査
高尾山南側(南)の変位地形・
リニアメントの通過位置付近に
おいて,ピット調査を実施した。
原子力安全委員会のワーキンググループ3
第17回参考資料第2号(2009)に記載された
推定活断層の位置
日向浦
調査地点
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
鹿野・吉田(1985)及び鹿野・中野(1985)の断層,伏在断層
(縮尺:5万分の1)
鹿野・吉田(1985)の法田リニアメント及び高尾山リニアメント
(高尾山リニアメントの東側は文献の図郭範囲まで記載)
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P45 加筆・修正
宇井∼福浦(はぎ取り調査(Loc.T−1))
近接写真
(試料採取のためスケッチ時よりも掘り込んでいる)
137
S
N
泥岩
砂岩
泥岩
凝灰岩
断層
砂岩
凝灰岩
泥岩
断層(N80°E/75°S)
Loc.T-1
・はぎ取り調査の結果,古浦層中に断層が認められ,その周辺には正断層センスの
引きずり込み構造が認められる。
・幅6mm程度の灰色を呈する断層ガウジは見られるが,断層面は凹凸が著しい。
4.(3)宇井∼福浦
138
宇井∼福浦(断層面の実体顕微鏡観察(Loc.T−1 ))
拡大写真(23.7m付近)
断層面の走向
条線方向
矢印は水平方向
N
S
上
矢印は水平方向
0.5mm
矢印は水平方向
断層面の走向
80°
条線方向
断層面を下から撮影
矢印は水平方向
10mm
(注)上盤側を下から撮影したため,回転方向
は見掛け右回転であるが,左回転となる。
・実体顕微鏡による条線観察の結果,上盤側に,縦ずれ(走向方向から80°左回転)の条線が認められる。
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(研磨片観察及びCT画像解析(Loc.T−1: 断層の走向方向)) 139
Loc.T-1 走向方向の研磨片観察及びCT画像解析(上方からみた画像)
NE
細粒部(粘土)
破砕部(断層角礫と粘土)
断層面
近接写真
(試料採取のためスケッチ時よりも掘り込んでいる)
SW
断層面
(上盤側)
断層面
細粒部(粘土)
断層面
泥岩
凝灰岩
泥岩
砂岩
試料採取位置
断層
(下盤側)
断層面
観察面
N
上
S
5cm
・研磨片観察及びCT画像解析の結果,直線性が比較的高い断層面(写真中央)について詳細観察を行った。
・CT画像解析の結果,細粒部で低密度部が認められる。
・研磨片観察の結果,幅6mm程度の灰色を呈する細粒部が見られるが,積層構造及び複合面構造は認めら
れない。
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(研磨片観察及びCT画像解析(Loc.T−1:断層の傾斜方向))
140
Loc.T-1 傾斜方向の研磨片観察及びCT画像解析
上
細粒部(粘土)
断層面
断層面
(上盤側)
細粒部(粘土) 断層面
断層面
泥岩
(下盤側)
5cm
断層面
観察面
N
上
S
・断層の走向方向と同様に,直線性が比較的高い断層面(写真中央)について詳細観察を行った。
・CT画像解析の結果,細粒部で低密度部が認められる。
・研磨片観察の結果,幅6mm程度の灰色を呈する細粒部が見られるが,積層構造及び複合面構造は認
められない。
・研磨片観察等の結果,南講武の活断層に見られる複合面構造等の特徴(詳細は,「(7)東端付近の断
層活動性」を参照)は確認されないことから,後期更新世以降の断層活動は認められない。
・更に,本地点と同様な地形要素(鞍部や高度不連続等)が認められ,断層の延長が推定される変位地
形・リニアメント通過位置付近(Loc.T-2∼3)において調査を実施し,各地点の調査結果による総合的な検
討も行い,活動性を評価した。
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P46 加筆・修正
宇井∼福浦(ピット調査(Loc.T−2))
近接写真
N
変位地形・リニアメント通過位置
141
S
流紋岩質火砕岩
デイサイト
貫入面
鞍 部
デイサイト(貫入岩)
大山松江軽石層(DMP)を
含むローム層
流紋岩質火砕岩
Loc.T-2
・変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結果,急傾斜する流紋岩質火砕岩と貫入岩との
境界を確認したが,断層は認められず,その上位には大山松江軽石層(DMP)を含むローム層が
ほぼ水平に分布している。
4.(3)宇井∼福浦
142
宇井∼福浦(Loc.T−2(火山灰分析))
【Loc.T-2における火山灰分析結果(重鉱物等)】
採取位置図
※ Opx:斜方輝石,GHo:普通角閃石,Cum:カミングトン閃石
含有量の値は,特に記載のない場合は3000粒子あたりの個数である。
【中国地方に分布が知られる広域テフラのうちGHoとCumを含むもの】
テフラ名
年代(ka)
主な鉱物※
( )は少量含まれるもの
(町田・新井(2011)から引用)
屈折率 Opx
屈折率 GHo
屈折率 Cum
大山松江 (DMP)
<130
GHo,Cum,(bi,Opx)
−
1.670∼1.676
1.656∼1.664
大山奥津 (DOP)
190±60
GHo,Opx,(bi,Cum)
1.702∼1.706
1.670∼1.675
1.660∼1.664
大山h1 (hpm1)
230±70,MIS7-6 GHo,(Cum,bi,Opx)
−
1.670∼1.677
1.660∼1.664
・町田・新井(2011)によると,中国地方に分布が知られる広域テフラのうち,GHoとCumを含むものは,大山h1(hpm1),
大山奥津(DOP),大山松江(DMP)が示されている。
・DMPについてはCumが主な鉱物とされるのに対して,hpm1とDOPについてはCumが少量含まれるとされる。
・Loc.T-2では,深度0.5mにGHo とCumが混在することから,DMPが含まれると想定した。
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(ピット調査(Loc.T−3))
変位地形・リニアメント通過位置
NE
近接写真
玄武岩
第83回審査会合
資料3-2 P47 加筆・修正
143
SW
デイサイト
貫入面
玄武岩
Loc.T-3
凡
例
デイサイト
・変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結
果,古浦層のデイサイトとそれに貫入する玄武岩が
分布しており,断層は認められない。
・ピット調査地点の西方では,変位地形・リニアメント
の延長位置付近に流紋岩質火砕岩の露頭が連続し
て分布している。
・高尾山南側(北)の変位地形・リニアメント通過位置付近における各地点(Loc.T-1,Loc.T-2,Loc.T-3)の調査の結果,Loc.T-1では断層
が認められるが,南講武の活断層に見られる特徴は認められない。更に,Loc.T-1と同様な地形要素が認められ,断層の延長が推定さ
れる地点(Loc.T-2,Loc.T-3)において,断層は認められない。
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(ピット調査(Loc.T−4(北)))
N
第83回審査会合
資料3-2 P48 加筆・修正
(北)
144
S
変位地形・リニアメント通過位置
砂岩
泥岩
Loc.T-4(北)
・変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結果,古
浦層の砂岩・泥岩が分布しており,断層は認められない。
4.(3)宇井∼福浦
第83回審査会合
資料3-2 P49 加筆・修正
宇井∼福浦(ピット調査(Loc.T−4(南)))
(南)
N
S
変位地形・リニアメント通過位置
砂岩
Loc.T-4(南)
・変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調
査の結果,古浦層の砂岩が分布しており,断
層は認められない。
145
4.(3)宇井∼福浦
宇井∼福浦(まとめ)
146
1.文献調査・変動地形学的調査【H28.1.29第324回審査会合以降にデータ拡充】
・ 美保関町宇井から福浦間では,変位地形は不明瞭であるが,北側には鞍部列を境に丘陵の南側が低い崖地形及び高度不連
続が断続的に認められる。
・ また,南側には,尾根・谷の屈曲,鞍部,直線谷が断続的に認められる。
・ 鹿野・吉田(1985)に示される高尾山リニアメントに対応する高尾山南側(北)の変位地形・リニアメントの成因について,鹿野・
吉田(1985)は,「地質断層とリニアメントが一致するものの,リニアメントに沿って確実に断層変位地形と認められるものがないこ
と及び断層両側の地層の浸食に対するコントラストが大きいことなどから,リニアメントは組織地形であると判断される。」としてい
る。
・ 今回,その他の地形要素を再確認した結果,いずれも系統的でないことを確認している。
2.はぎ取り調査(研磨片観察等を含む)・ピット調査【H28.1.29第324回審査会合以降にデータ拡充】
(1)高尾山南側(北)
・ Loc.T-1では,古浦層中に断層が認められ,その周辺には正断層センスの引きずり込み構造が認められ,断層ガウジが見ら
れるが,断層面は凹凸が著しい。また,縦ずれ優勢の条線が認められる。
研磨片観察の結果,幅6mm程度の細粒部が認められるが,複合面構造等は見られず,南講武の活断層に見られる特徴は確
認されないことから,後期更新世以降の断層活動は認められない。
更に,本地点と同様な地形要素(鞍部や高度不連続等)が認められ断層の延長が推定される変位地形・リニアメント通過位置
付近(Loc.T-2∼3)において調査を実施し,断層の活動性を評価した。
・ Loc. T-2では,変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結果,急傾斜する流紋岩質火砕岩と貫入岩との境界を確認し
たが,断層は認められず,その上位には大山松江軽石層(DMP)を含むローム層がほぼ水平に分布している。
・ Loc. T-3では,変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結果,古浦層のデイサイトとそれに貫入する玄武岩が分布し
ており,断層は認められない。
(2) 高尾山南側(南)
・ 変位地形・リニアメントを含む幅広いピット調査の結果,Loc. T-4(北)では,古浦層の砂岩・泥岩が分布しており,断層は認めら
れない。また,Loc. T-4(南)では,古浦層の砂岩が分布しており,断層は認められない。
以上のことから,宇井∼福浦について,後期更新世以降の断層活動は認められない。
※下線部は,H28.1.29第324回審査会合以降の主なデータ拡充内容を示す。
147
4.宍道断層の調査結果(東側)
(4)福浦∼地蔵崎(再掲)
【H28.1.29第324回審査会合以降のデータ拡充内容】
・福浦∼地蔵崎
(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充)・・・150∼151
・福浦∼地蔵崎(地表地質踏査によるデータ拡充)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152∼155
・福浦∼地蔵崎(島根半島東部の地形的特徴に関するデータ拡充)・・・・・・・・・・・ 156∼157
4.(4)福浦∼地蔵崎
148
福浦∼地蔵崎(文献調査)
鹿野・中野(1985) による
断層,伏在断層
地蔵崎
美保関
風ケ浦
海崎
福浦
島根原子力発電所
2km
・鹿野・中野(1985)によると,沿岸付近海域に,伏在断層(地質断層と
しての宍道断層)が記載されている。また,陸域部に,断層(南北走向
の胴切り断層)が記載されている。
0
5
10km
4.(4)福浦∼地蔵崎
149
福浦∼地蔵崎(文献調査)
美保関地域島根半島の埋谷面図
鹿野・中野(1985)より引用
・鹿野・中野(1985)によると,美保関地域の地形・地質構造について以下のとおりとされている。
・地形について,「島根半島の東端部は最高点250m程度の東西に延びた山地である。山稜線は南側に片寄っており,
その南側は直線的な急斜面,そして北側は地層の傾斜とほぼ一致する10−30°の緩斜面となっている。」とされてい
る。
・地質構造について,「美保関地域の新第三系は境水道−美保湾に面する島根半島の南岸沿いに東西に延びた背斜
をなす。(中略)地形上,島根半島の南斜面は断層崖の特徴を備え,かつ半島南岸の海岸線が境港地域及びその西
方で確認された宍道断層(多井,1952)の延長線にほぼ一致することから,背斜の南翼は宍道断層によって断たれて
いると推定できる。鹿野・吉田(1985)によれば,宍道断層は北上りの逆断層である。また,背斜は中−後期中新世に
かけて形成され,その末期に宍道断層が生じたという。」とされている。
・分水界が南側へ偏っている等の要因について,鹿野・中野(1985)によると,中−後期中新世における地質断層とし
ての宍道断層(北上りの逆断層)の形成が関与していると推定されるとしている。
4.(4)福浦∼地蔵崎
150
福浦∼地蔵崎(変動地形学的調査)
島根原子力発電所
0
5
10km
地蔵崎
美保関
風ケ浦
海崎
福浦
尾根・谷に系統的な曲がりが認められない
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読したもの)
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読していないもの)
福浦∼風ケ浦(左図):2007年中国電力取得の2mDEM(航空レーザー測量)を使用
海崎∼地蔵崎(右図):国土地理院公開の5mDEM(空中写真測量)を使用
(注)福浦∼地蔵崎の間では,分水界より南側の地形要素を判読した。
・福浦∼地蔵崎の間では,傾斜変換線や鞍部(風隙を含む)などの地
形要素が判読される。
・地形要素はいずれも系統的ではないことから,変位地形・リニアメント
は認められない。なお,鹿野・中野(1985)による断層(南北走向の胴
切り断層)に対応する変位地形・リニアメントも認められない。
・福浦∼地蔵崎の間では,島根半島南北の水系を境する分水界が南
側へ偏る。また,分水界に発達する風隙,截頭谷が認められるが,分
水界は蛇行する。
・境水道よりも北側に段丘面は分布していない。
4.(4)福浦∼地蔵崎
(参考)福浦∼地蔵崎(変動地形学的調査)(鹿野・中野(1985)による断層,伏在断層) 151
鹿野・中野(1985) による
島根原子力発電所
断層,伏在断層
0
5
10km
地蔵崎
美保関
風ケ浦
海崎
福浦
福浦∼風ケ浦(左図):2007年中国電力取得の2mDEM(航空レーザー測量)を使用
海崎∼地蔵崎(右図):国土地理院公開の5mDEM(空中写真測量)を使用
(注)福浦∼地蔵崎の間では,分水界より南側の地形要素を判読した。
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読したもの)
地形要素
(変位地形・リニアメントを判読していないもの)
・鹿野・中野(1985)による断層(南北走向の胴切り断層)に対応する
変位地形・リニアメントは認められない。
4.(4)福浦∼地蔵崎
152
福浦∼地蔵崎(地表地質踏査(地質図))
鹿野・中野(1985)による
断層,伏在断層
分水界(風隙・截頭谷の谷頭含む)
風隙(矢印は截頭谷の流下方向を示す)
地蔵崎
美保関
風ケ浦
海崎
福浦
2km
島根原子力発電所
0
5
10km
・福浦から風ケ浦にかけては,古浦層の砂岩等が分布し,東西に
延びる山稜線のやや南側に背斜軸が想定される。
・風ケ浦から地蔵崎にかけては,海岸線沿いに古浦層の砂岩等が,
また山稜線付近には成相寺層の流紋岩質火砕岩等が分布して
いる。
・鹿野・中野(1985)に示される伏在断層(地質断層としての宍道断
層)及び断層(南北走向の胴切り断層)に近づくにつれて地層が
急傾斜する傾向は確認されず,また,地質分布の顕著な不連続
は認められない。
・分水界に発達する風隙は,大局的には地質境界付近に位置する。
4.(4)福浦∼地蔵崎
153
(参考)福浦∼地蔵崎(地表地質踏査(地質図:拡大図))
鹿野・中野(1985)による
A
断層,伏在断層
分水界(風隙・截頭谷の谷頭含む)
風隙(矢印は截頭谷の流下方向を示す)
拡大範囲
A’
海崎
風ケ浦
福浦
1km
島根原子力発電所
←N
0
5
10km
分水界(風隙)
A-A’断面
S→
4.(4)福浦∼地蔵崎
154
(参考)福浦∼地蔵崎(地表地質踏査(地質図:拡大図))
鹿野・中野(1985)による
断層,伏在断層
B
拡大範囲
分水界(風隙・截頭谷の谷頭含む)
風隙(矢印は截頭谷の流下方向を示す)
B’
地蔵崎
美保関
海崎
1km
分水界(風隙)
←N
島根原子力発電所
0
5
10km
S→
B-B’断面
3.(3)島根半島東部の地形的特徴に関する検討結果
(参考)福浦∼地蔵崎(地表地質踏査(ルートマップ:拡大図))
155
・地表地質踏査の結果,大局的には緩い東傾斜の
構造であり,胴切り断層等による構造の不連続や,
地質分布のずれ等は認められない。
拡大範囲
4.(4)福浦∼地蔵崎
156
福浦∼地蔵崎(縦ずれ断層運動)
・分水界に発達する風隙が北上がりの断層
変位により形成された可能性があることか
ら,縦ずれ断層運動に関する文献に基づ
く検討を行った。
・鈴木(2012)は,縦ずれ断層運動を事例と
して分水界に発達する風隙,截頭谷の形
成過程を示している。
・福浦∼地蔵崎における分水界は蛇行し,
また,直近に断層崖等の変位地形・リニア
メントは確認されない。
縦ずれ断層運動の事例
鈴木(2012) より引用・加筆
4.(4)福浦∼地蔵崎
157
福浦∼地蔵崎(横ずれ断層運動)
・分水界に発達する風隙が横ず
れの断層変位により形成された
可能性があることから,横ずれ
断層運動に関する文献に基づく
検討を行った。
・活断層研究会編(1991)は,横
ずれ断層運動を事例として風隙,
截頭谷の形成過程を示している。
・福浦∼地蔵崎における分水界
は蛇行し,また,直近に変位地
形・リニアメントは確認されない。
横ずれ断層運動の事例
活断層研究会編(1991)より引用・加筆
・縦ずれ,横ずれ断層運動の事例を踏まえた地形的特徴に関する検討の結果,島根半島東部(福浦∼地蔵崎)の分水
界は蛇行し,また直近に変位地形・リニアメントは確認されないことから,後期更新世以降の断層活動は示唆されない。
・風隙が発達している要因は,大局的には地質境界付近に位置することから,組織地形によるものと考えられる。
4.(4)福浦∼地蔵崎
福浦∼地蔵崎(まとめ)
158
1.変動地形学的調査【H28.1.29第324回審査会合以降にデータ拡充】
・島根半島南北の水系を境する分水界が認められる。また,福浦∼地蔵崎の間では,分水界
が南側へ偏っており,分水界には風隙,截頭谷が発達する。
・今回,全ての地形要素を再確認した結果,地形要素はいずれも系統的ではないことか
ら,変位地形・リニアメントは認められない。
2.地表地質踏査【H28.1.29第324回審査会合以降にデータ拡充】
・鹿野・中野(1985)に示される断層に近づくにつれて地層が急傾斜する傾向は確認されず,ま
た,地質分布の顕著な不連続は認められない。
・縦ずれ,横ずれ断層運動の事例を踏まえた地形的特徴に関する検討の結果,島根半島東
部(福浦∼地蔵崎)の分水界は蛇行し,また直近に変位地形・リニアメントが認められないこ
とから,後期更新世以降の断層活動は示唆されない。
・分水界に発達する風隙は,大局的には地質境界付近に位置することから,組織地形による
ものと考えられる。
なお,分水界が南側へ偏っている等の要因は,鹿野・中野(1985)によると,中−後期中新
世における地質断層としての宍道断層(北上りの逆断層)の形成が関与していると推定され
ている。
以上のことから,福浦∼地蔵崎について,後期更新世以降の断層活動は認められない。
※下線部は,H28.1.29第324回審査会合以降の主なデータ拡充内容を示す。
159
4.宍道断層の調査結果(東側)
(5)美保湾及び美保関町東方沖合い(再掲)
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
美保湾及び美保関町東方沖合い(音波探査,調査位置図)
160
評価長さ
:約40km
M5
500
中国電力㈱音波探査測線(エアガン・マルチチャンネル)
(2014年調査)
(2014年調査)
(2014年調査)
鉛直1次微分のゼロコンター
鹿野・吉田(1985)及び鹿野・中野
(1985)による伏在断層(宍道断層
の海域のみ記載)
地蔵崎
福浦
森山北
宇井
下宇部尾東
森山
No.3.5
No.202
No.201
No.6
申請以降の追加調査
を含む全ての調査結
果を踏まえた評価長
さ:約25km
0
・美保湾及び美保関町東方沖合いにおいて,複数の音源を用いた音波探査により,断層の存否を確認した。
10km
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
美保湾(音波探査解析図:No.6BM(ブーマー・マルチチャンネル))
鉛直1次微分のゼロコンター通過位置
第226回審査会合
資料3 P130 加筆・修正
161
重力異常水平勾配
0.35∼
重力コンターの急傾斜部
重力異常水平勾配
0.25∼0.35
←N
S→
A
B1
B3
約250m
鉛直1次微分のゼロコンター
拡大図
No.6BM
S28
1 41 '
3 28
'
5
30
7
'
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
58
V.E.≒6
断層想定位置
(直上)
断層想定位置
(傾斜延長)
0
1km
美保湾
・B1層以上に断層活動を示唆する変位や変形は認め
られない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
美保湾(音波探査解析図:No.201BM(ブーマー・マルチチャンネル))
鉛直1次微分のゼロコンター通過位置
第226回審査会合
資料3 P124加筆・修正
162
重力異常水平勾配
0.35∼
重力コンターの急傾斜部
重力異常水平勾配
0.25∼0.35
←N
S→
陸海境界
A B1 B
3
C
約250m
鉛直1次微分のゼロコンター
拡大図
No.201BM
1 41 '
S28
3 28
'
5
30
7
'
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
58
V.E.≒6
断層想定位置
(直上)
断層想定位置
(傾斜延長)
0
1km
美保湾
・B3層以上に断層活動を示唆する変位や変形は認め
られない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
美保湾(音波探査解析図:No.202BM(ブーマー・マルチチャンネル))
鉛直1次微分のゼロコンター通過位置
第226回審査会合
資料3 P110加筆・修正
163
重力異常水平勾配
0.35∼
重力コンターの急傾斜部
重力異常水平勾配
0.25∼0.35
←N
S→
A B1 B
3
D2
C
D1
約250m
S28延長部
鉛直1次微分のゼロコンター
拡大図
No.202BM
S28
1 41 '
3 28
'
5
30
7
'
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
58
V.E.≒6
断層想定位置
(直上)
断層想定位置
(傾斜延長)
0
1km
美保湾
・S28断層延長部においてC層以上に断層
活動を示唆する変位や変形は認められ
ない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
第226回審査会合
資料3 P116 加筆・修正
美保湾(音波探査解析図:No.203BM(ブーマー・マルチチャンネル))
164
鉛直1次微分のゼロコンター通過位置
堤防からの反射
重力コンターの急傾斜部
←N
S→
A
重力異常水平勾配
0.35∼
重力異常水平勾配
0.25∼0.35
D2
B1
B3
C
鉛直1次微分のゼロコンター
拡大図
S28延長部
約250m
S28
0
1km
美保湾
1 41 '
3 28
'
5
30
7
V.E.≒6
'
58
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
・陸海境界付近まで調査するため,堤防間を通り,湾内まで調査を実施した。
・S28断層延長部においてB3層以上に断層活動を示唆する変位や変形は認めら
れない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
第226回審査会合
資料3 P102 加筆・修正
美保湾(音波探査解析図:No.200BM(ブーマー・マルチチャンネル))
165
鉛直1次微分のゼロコンター通過位置
←NE
S28想定位置
(No.200AG測線で確認された断層)
A
B1
B3
C
SW→
A
1 41 '
断層想定位置
(直上)
5
30
7
'
58
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
断層想定位置
(傾斜延長)
B1
3 28
'
V.E.≒6
鉛直1次微分のゼロコンター
C
B3
拡大図
S28
0
1km
美保湾
約250m
・S28断層想定位置においてB3層以上に断層活動を示唆
する変位や変形は認められない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
第226回審査会合
資料3 P80 加筆・修正
美保関町東方沖合い(音波探査解析図:No.3.5BM(ブーマー・マルチチャンネル))
166
←N
B1
A
B3
B1
B3
D1
D1
C
C
S→
S28想定位置
(No.3.5AG測線で確認された断層)
A
B3
B1
C
D1
3 28
'
5
30
7
'
No.3.5BM
1 41 '
約250m
'
'
14
11
'
06
16
36 '
24
'
43 23
58
・S28断層想定位置においてB1層以上に断層活動を示唆す
る変位や変形は認められない。
V.E.≒6
断層想定位置
(直上)
断層想定位置
(傾斜延長)
0
5
10km
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
(参考)美保湾及び美保関町東方沖合い(海底地形図)
第226回審査会合
資料3 P133 加筆・修正
167
標高(m)
沖ノ御前島
美保湾
※図の標高値はマイナスを正として示す
・海底地形は美保湾内では北東へ,それより沖合では北へ緩やかに傾斜しており,全般に起伏の少ない単調な
様相を呈している。
・美保湾∼美保関町東方沖合いの海陸境界付近の海底地形は,海流の変化の影響等により若干の起伏が見ら
れるが,断層活動を示唆する顕著な変状は認められない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
(参考)美保湾及び美保関町東方沖合い(B1層基底面図)
第226回審査会合
資料3 P134 加筆・修正
168
標高(m)
沖ノ御前島
※図の標高値はマイナスを正として示す
・B1層(上部更新統)基底面は,美保湾内では北東へ,それより沖合では北北東へ緩やかに傾斜している。
・美保湾∼美保関町東方沖合いの海陸境界付近では,断層活動を示唆する顕著な構造変化(断層に沿う変形,
高まり又は溝)は認められない。
4.(5)美保湾及び美保関町東方沖合い
美保湾及び美保関町東方沖合い(まとめ)
169
1.音波探査
・ 美保湾及び美保関町東方沖合いにおいて実施した音波探査の結果,少なくともB1層(上
部更新統)以上に断層活動を示唆する変位や変形は認められない。
170
3.宍道断層の調査結果(東側)
(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦(参考)
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦(文献調査)
171
島根原子力発電所
0
5
10km
Loc.M-1
Loc.M-2
調査地点
鹿野・吉田(1985) の断層(縮尺:5万分の1)
同上
推定断層
同上
伏在断層
同上
枕木山東リニアメント
中田ほか(2008) による鹿島断層
同上
鹿島断層(位置やや不明確)
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
第83回審査会合
資料3-2 P21 加筆・修正
(参考)枕木山東方(変動地形学的調査)
172
島根原子力発電所
美保関町北浦
0
5
10km
調査地点
変位地形・リニアメント(Bランク)
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
鹿野・吉田(1985)の枕木山東リニアメント
枕木町
Loc.M-1
Loc.M-2
・谷や尾根の屈曲は認められず,山地内の鞍部,直線
谷,開析された南東側低下の崖が認められる。
・当社判読の枕木山東の変位地形・リニアメントは,鹿
野・吉田(1985)に示されるリニアメントに対応する。
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方(変位地形・リニアメントの成因)
173
鹿野・吉田(1985)より引用・加筆
・鹿野・吉田(1985)によると,枕木山東リニアメントの成因について,「リニアメントを境にして北西側の
山地高度は南東側に比べてやや高く,また,リニアメントは宍道断層から派生したと考えられる地質断
層と一致し,断層の両側には断層とほぼ平行な走向をもって成相寺層の泥質岩及びドレライト岩床が
分布することから,組織地形であると判断される。」とされている。
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
第83回審査会合
資料3-2 P22 加筆・修正
(参考)枕木山東方(地質図)
美保関町北浦
島根原子力発電所
0
5
10km
174
・地表地質踏査の結果,背斜
構造を有する南東側の古浦
層及び成相寺層と,北西傾斜
の同斜構造を示す成相寺層
との間に断層が推定される。
調査地点
変位地形・リニアメント(Bランク)
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
Loc.M-1
枕木町
Loc.M-2
鹿野・吉田(1985) の断層(縮尺:5万分の1)
同上
推定断層
同上
伏在断層
同上
枕木山東リニアメント
中田ほか(2008) による鹿島断層
同上
鹿島断層(位置やや不明確)
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
175
(参考)枕木山東方(調査の概要)
美保関町北浦
島根原子力発電所
0
5
10km
1.はぎ取り調査・ピット調査
鹿野・吉田(1985)に示される枕木山東リニ
アメントに対応する枕木山東の変位地形・リニ
アメント通過位置付近において,はぎ取り調
査及びピット調査を実施し,各地点の調査結
果により総合的に検討し,活動性を評価した。
調査地点
変位地形・リニアメント(Bランク)
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
Loc.M-1
枕木町
Loc.M-2
鹿野・吉田(1985) の断層(縮尺:5万分の1)
同上
推定断層
同上
伏在断層
同上
枕木山東リニアメント
中田ほか(2008) による鹿島断層
同上
鹿島断層(位置やや不明確)
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方(ピット調査(Loc. M-2))
第83回審査会合
資料3-2 P23 加筆・修正
変位地形・リニアメント通過位置
NW
SE
近接写真
崖錐堆積物Ⅱ
泥岩
デイサイト(貫入岩)
腐植層
崖錐堆積物Ⅰ
デイサイト(貫入岩)
崖錐堆積物Ⅲ
崖錐堆積物Ⅱ
貫入面
泥岩
層理面
N22°E/61°E N66°W/12°S
・ピット調査の結果,北西側に貫入岩のデイサイト
が,南東側に泥岩が分布しており,断層は認めら
れない。
176
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方(はぎ取り調査(Loc. M-1))
第83回審査会合
資料3-2 P24 再掲
Loc.M-1
・文献や変位地形・リニアメント
を含む幅広いはぎ取り調査の
結果,一部で断層が確認され
る。
Loc.M-1付近露頭写真
177
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方(はぎ取り調査(Loc. M-1))
第83回審査会合
資料3-2 P25 再掲
SSE
NNW
泥岩(成相寺層)
貫入岩
・断層内物質は固結し,これを切るような新しいせん断面は
認められないことから,少なくとも後期更新世以降の活動は
ないものと考えられる。
・変位地形・リニアメントは泥岩と,貫入岩との岩相差を反映
した組織地形と判断される。
178
4.(6)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦
(参考)枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦(まとめ)
179
1.文献調査・変動地形学的調査
・ 枕木山東方の枕木町から美保関町北浦間では,谷や尾根の屈曲は認められず,山地内の鞍部,直線
谷,開析された南東側低下の崖が認められる。
・ 鹿野・吉田(1985)に示されるリニアメントに対応する枕木山東リニアメントついて,鹿野・吉田(1985)は,
「リニアメントを境にして北西側の山地高度は南東側に比べてやや高く,また,リニアメントは宍道断層か
ら派生したと考えられる地質断層と一致し,断層の両側には断層とほぼ平行な走向をもって成相寺層の
泥質岩及びドレライト岩床が分布することから,組織地形であると判断される。」としている。
2.地表地質踏査
・ 地表地質踏査の結果,背斜構造を有する南東側の古浦層及び成相寺層と,北西傾斜の同斜構造を示
す成相寺層との間に断層が推定される。
3.はぎ取り調査・ピット調査
断層が推定される変位地形・リニアメント通過位置付近において調査を実施し,各地点の調査結果に
より総合的に検討し,活動性を評価した。
・ Loc.M-2では,ピット調査の結果,北西側に貫入岩のデイサイトが,南東側に泥岩が分布しており,断
層は認められない。
・ Loc.M-1では,文献や変位地形・リニアメントを含む幅広いはぎ取り調査の結果,一部で断層が確認さ
れる。また,断層内物質は固結し,これを切るような新しいせん断面は認められない。
以上のことから,枕木山東方:枕木町∼美保関町北浦について,後期更新世以降の断層活動は認めら
れない。
180
4.宍道断層の調査結果(東側)
(7)東端付近の断層活動性
【H28.1.29第324回審査会合以降のデータ拡充内容】
・東端付近の断層活動性(断層の性状比較に関するデータ拡充)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184
4.(7)東端付近の断層活動性
東端付近の断層活動性(評価内容)
第271回審査会合
資料1-2 P160 再掲
181
宍道断層の東端付近の断層活動性を評価するために,以下の観点から,各地点の
調査結果を比較・検討した。
・変動地形学的調査による谷の屈曲量・屈曲率
・断層の最新活動時期による断層活動性
・薄片観察による断層の性状
4.(7)東端付近の断層活動性
東端付近の断層活動性(谷の屈曲量・屈曲率)
第309回審査会合
資料2-2 P53 加筆・修正
182
変動地形学的調査による谷の屈曲量(鹿島町古浦∼下宇部尾)
島根原子力発電所
谷の屈曲量D
島根原子力発電所
(m)
200
100
上流の谷の長さL
0
1000
上本庄
2000
長海町
福原町
変動地形学的調査による谷の屈曲率(鹿島町古浦∼下宇部尾)
女島
a:谷の屈曲率(D/L)
D:谷の屈曲量
L:谷の上流部分の長さ
下宇部尾東
谷の屈曲率(a=D/L)
1.0
0.8
地表地震断層及び活断層に認められる変位量分布
の3つのパターン
0.6
杉山ほか(2005) より引用
0.4
谷の延長Lに対して屈曲量Dが非常に大きな
値を示し,屈曲率が相対的に大きくなってい
るが,隣接する谷では,逆に左に曲がってい
ることから,断層の横ずれ変位地形ではなく,
他の成因の可能性が高い。
0.2
申請以降の追加調査を含む全ての調査結果を踏まえた評価長さ:約25km
左に屈曲する谷または曲がっていない谷が
認められる。
・谷の屈曲量・屈曲率について,西端付近は南講武付近と比較して,次第に小さくなる傾向が認められる。東端付近は南講武付近と比較して,ばらつきが
認められるものの,大局的には,次第に小さくなる傾向が認められる。
・これらの傾向は,杉山ほか(2005)(31)で示された横ずれ断層の変位量分布のパターン(山型・複合型)と整合的であると考えられる。
4.(7)東端付近の断層活動性
第271回審査会合
資料1-2 P162 加筆・修正
東端付近の断層活動性(断層活動時期)
183
凡 例
:後期更新世以降の断層活動が認められない
:後期更新世以降の断層活動が完全には否定できない
:後期更新世以降の断層活動が認められる
日本海
美保関町東方沖合い
地蔵崎
松江市
枕木山東方
古浦∼十六島沿岸付近
鹿島町
古浦沖 古浦
佐陀本郷
尾坂
古浦沖以西
女島
男島
廻谷
佐陀宮内
仲田
福浦
美保関町
森山北
下宇部尾
手角町
中海北部
森山
宇井
[東端]
南講武
福原町
長海町
下宇部尾東
上本庄町 中海北岸付近
美保湾
中海
[西端]
女島
申請以降の追加調査を含む全ての調査結果を踏まえた評価長さ:約25km
・地質調査の結果,長海町以東から美保関東方沖合いにおいては,下宇部尾北を除いて,後期更新世以降の断層活動が認められない。
・下宇部尾北については,火山灰の再堆積を考慮した場合でも,断層は少なくとも大山松江(DMP)を含むB層(MIS5eの堆積層)の上部に
は,変位を与えていないことから,南講武(約3,000年前∼約11,000年前の間に最新の活動が認められる)と比べて,断層の活動性が低下
している。
4.(7)東端付近の断層活動性
東端付近の断層活動性(断層の性状比較)
南講武における活断層としての
特徴
(断層の走向・傾斜(測定位置))
N80E/86S,N85W/80S
(トレンチ調査)
(特徴①)
断層角礫及び断層ガウジの積層構造
が認められる。
(特徴②)
直線的でシャープな断層面を伴う断層
ガウジが認められる。
森山断層露頭の評価
N68E/87N(断層露頭)
幅2cm程度の角礫部が
認められるが,断層ガウ
ジ及び積層構造は認めら
れない。
第271回審査会合
資料1-2 P163 加筆・修正
MW-5(森山はぎ取り調査
断層露頭①)の評価
N80E/75S(断層露頭)
幅4mm程度の白色を呈する断層
ガウジは見られるが,積層構造は
認められない。
幅6mm程度の灰色を呈す
る断層ガウジは見られるが,
積層構造は認められない。
薄片観察結果においては,直線
的でシャープな断層面を伴う断層
ガウジが認められるが,断層露頭
では,断層面は湾曲しており不明
瞭で連続性は乏しい。
断層面は,凹凸が著しい。
角礫部の外側の上盤側
に,逆断層センスを示す
断層ガウジには,複合面構造は
不明瞭なR1面が認めら
認められない。
れるが,角礫部には,複
合面構造は認められない。
(特徴④)
ガウジ中の岩片は角礫∼亜円礫状を
呈する。
断層ガウジ中の岩片は,角礫主
体である。
(特徴⑤)
最新面付近では,粘土鉱物の長軸は
最新面に沿った方向に配列する。
宇井(Loc.T−1はぎ取り
調査断層露頭)の評価
N29E/72W(断層露頭)
(特徴③)
最新面付近では,複合面構造が確認
され,右横ずれセンスを示すR1面が
認められる。
断層ガウジは認められな
い。
184
・断層ガウジには,複合面
構造は認められない。
・縦ずれ優勢の条線ととも
に,断層露頭の性状より正
断層センスが認められる。
粘土鉱物の配列は認められない。
・薄片観察等の比較検討の結果,森山断層露頭,MW-5(森山はぎ取り調査断層露頭①)及び宇井(Loc.
T−1はぎ取り調査断層露頭)には,南講武の活断層に見られる複合面構造等の特徴は認められない。
4.(7)東端付近の断層活動性
第309回審査会合
資料2-2 P27 加筆・修正
(参考)南講武(研磨片観察)
N
走向
研磨片
(断層の走向方向)
研磨片
(傾斜方向)
断層面
観察面
185
断層面
観察面
上
角礫部②
60°
傾斜
ガウジ①②
角礫部①
角礫部②
角礫部②
ガウジ②
ガウジ②
ガウジ①
ガウジ①
角礫部②
ガウジ②
角礫部①
ガウジ①
角礫部①
角礫部①
断面図と方向を合うように研磨片写真および薄
片写真を左右反転させて表示している
5cm
(H27.4 作成)
5cm
(H27.4 作成)
・研磨片観察の結果,角礫部①,角礫部②,母岩の角礫を含むガウジ①,細粒化の進んだガウジ②の積層構造が認められる(特
徴①)。
・細粒化の進んだガウジ②は直線的でシャープな断層面を伴う(特徴②)。
4.(7)東端付近の断層活動性
第309回審査会合
資料2-2 P28 再掲
(参考)南講武(薄片観察(断層の走向方向,最新面付近))
研磨片
(断層の走向方向)
薄片全体
断層面
拡大写真位置
最新面
最新面
ガウジ②
ガウジ②
186
拡大写真位置
ガウジ②
ガウジ②
観察面
ガウジ①
上
ガウジ①
ガウジ①
ガウジ①
角礫部②
角礫部①
角礫部①
角礫部②
直交ニコル
単ニコル
ガウジ②
10mm
ガウジ②
ガウジ①
角礫部①
角礫部①
10mm
拡大
ガウジ①
薄片作成位置
角礫部①
最新面
最新面
ガウジ②
角礫部①
ガウジ②
0.5mm
単ニコル
0.5mm
直交ニコル
最新の運動による
面構造の凡例
5cm
(H27.4 作成)
・薄片観察の結果,細粒化の進んだガウジ②中のもっとも直線性に富む面(最新面)付近で右横ずれセンスを示すR1面が認めら
れる(特徴③)。
・また,ガウジ②中の岩片は,角礫∼亜円礫状を呈する(特徴④)。
4.(7)東端付近の断層活動性
第309回審査会合
資料2-2 P29 再掲
(参考)南講武(薄片観察(断層の走向方向,最新面付近))
研磨片
(断層の走向方向)
薄片全体
断層面
最新面
拡大写真位置
最新面
ガウジ②
ガウジ②
187
拡大写真位置
ガウジ②
ガウジ②
観察面
ガウジ①
ガウジ①
ガウジ①
上
ガウジ①
角礫部②
角礫部①
角礫部①
角礫部②
直交ニコル
単ニコル
ガウジ②
10mm
ガウジ②
ガウジ①
角礫部①
角礫部①
10mm
拡大
ガウジ①
薄片作成位置
ガウジ②
ガウジ②
角礫部①
角礫部①
最新面
単ニコル
5cm
0.2mm
最新面
0.2mm
直交ニコル
:粘土鉱物の配列
(H27.4 作成)
・薄片観察の結果,角礫部付近では,粘土鉱物は散在していることに対して,最新面付近では,粘土鉱物の長軸は最新面に沿っ
た方向に配列している(特徴⑤)。
4.(7)東端付近の断層活動性
第309回審査会合
資料2-2 P30 再掲
(参考)南講武(薄片観察(断層の傾斜方向))
研磨片
(傾斜方向)
断層面
上
薄片全体
角礫部①
ガウジ①②
角礫部①
角礫部②
ガウジ①②
188
角礫部②
上
観察面
60°
角礫部②
拡大写真位置
ガウジ①②
拡大写真位置
角礫部②
角礫部①
単ニコル
角礫部①
ガウジ①
ガウジ②
角礫部②
角礫部①
10mm
直交ニコル
ガウジ①
ガウジ②
10mm
拡大
ガウジ②
角礫部②
ガウジ②
ガウジ②
ガウジ①
最新面
最新面
角礫部①
5cm
ガウジ②
断面図と方向を合うように研磨片写真および薄
片写真を左右反転させて表示している
単ニコル
ガウジ②
0.5mm
直交ニコル
・薄片観察の結果,最新面付近では,粘土鉱物の長軸は最新面に沿った方向に配列している(特徴⑤)。
0.5mm
:粘土鉱物の配列
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)森山断層露頭(研磨片観察及び薄片観察(断層の走向方向))
研磨片
断層面
薄片全体
第271回審査会合
資料1-2 P136 再掲
拡大
角礫部
角礫部
観察面
N
S
拡大位置
拡大位置
上
角礫部
NW
SE
単ニコル
単ニコル
角礫部
薄片作成位置
角礫部
角礫部
拡大位置
5cm
直交ニコル
・ 研磨片観察の結果,幅2cm程度の角礫部が認められる。
・ 薄片観察の結果,複合面構造は認められない。
直交ニコル
189
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)森山断層露頭(研磨片観察及び薄片観察(断層の傾斜方向))
研磨片
断層面
単ニコル
薄片全体
第271回審査会合
資料1-2 P137 加筆・修正
190
拡大
単ニコル
角礫部
上
観察面
S
N
拡大位置
上
上
せん断面(不明瞭)
角礫部
SE
NW
直交ニコル
直交ニコル
角礫部
逆断層
センス
逆断層
センス
薄片作成位置
拡大位置
R1
Y
せん断面(不明瞭)
5cm
角礫部
・ 研磨片観察の結果,幅2cm程度の角礫部が認められる。
・ 薄片観察の結果,複合面構造は認められない。なお,角礫部の外側の上盤側に,逆断層センスを示
す不明瞭なR1面が認められる。
4.(7)東端付近の断層活動性
第271回審査会合
資料1-2 P144 再掲
(参考)森山はぎ取り調査(CT画像解析及び研磨片観察)
浅
左側面
N22E/62W
深
191
N N22E
62W
研磨片作成方向
断層の走向方向
断層の傾斜方向
右側面
浅
断層面
断層面
観察面
観察面
N22E/28E
浅
N N22E
低密度部
上
低密度部
N
N22E
深
深
5cm
コア箱左側面から
5cm
コア箱上方から
CT画像解析の結果,幅4mm程度の低密度部が認められる。
2.5cm
2.5cm
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)森山はぎ取り調査(研磨片観察及び薄片観察(断層の走向方向))
192
拡大
薄片全体
研磨片
(走向方向)
第271回審査会合
資料1-2 P145 再掲
N
N
拡大写真位置
細粒部
細粒部
泥岩に認められる左横ず
れセンスを示す変位
単ニコル
単ニコル
10mm
1mm
細粒部
薄片作成位置
拡大写真位置
細粒部
細粒部
5cm
直交ニコル
10mm
直交ニコル
1mm
・研磨片観察の結果,幅4mm程度の白色を呈する細粒部が認められる。
・薄片観察の結果,複合面構造は認められない。
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)森山はぎ取り調査(研磨片観察及び薄片観察(断層の傾斜方向))
研磨片
(傾斜方向)
薄片全体
第271回審査会合
資料1-2 P146 再掲
193
拡大
上
上
拡大写真位置
単ニコル
単ニコル
10mm
1mm
細粒部
細粒部
泥岩に認められる逆断層
センスを示す変位
薄片作成位置
拡大写真位置
細粒部
直交ニコル
5cm
直交ニコル
10mm
1mm
細粒部
細粒部
・研磨片観察の結果,幅4mm程度の白色を呈する細粒部が認められる。
・薄片観察の結果,複合面構造は認められない。
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)宇井∼福浦(研磨片観察及びCT画像解析(Loc.T−1: 断層の走向方向)) 194
Loc.T-1 走向方向の研磨片観察及びCT画像解析(上方からみた画像)
NE
細粒部(粘土)
破砕部(断層角礫と粘土)
断層面
近接写真
(試料採取のためスケッチ時よりも掘り込んでいる)
SW
断層面
(上盤側)
断層面
細粒部(粘土)
断層面
泥岩
凝灰岩
泥岩
砂岩
試料採取位置
断層
(下盤側)
断層面
観察面
N
上
S
5cm
・研磨片観察及びCT画像解析の結果,直線性が比較的高い断層面(写真中央)
について詳細観察を行った。
・CT画像解析の結果,細粒部で低密度部が認められる。
・研磨片観察の結果,幅6mm程度の灰色を呈する細粒部が見られるが,積層構
造及び複合面構造は認められない。
4.(7)東端付近の断層活動性
(参考)宇井∼福浦(研磨片観察及びCT画像解析(Loc.T−1:断層の傾斜方向))
195
Loc.T-1 傾斜方向の研磨片観察及びCT画像解析
上
細粒部(粘土)
断層面
断層面
(上盤側)
細粒部(粘土) 断層面
断層面
泥岩
(下盤側)
5cm
断層面
観察面
N
上
S
・断層の走向方向と同様に,直線性が比較的高い断層面(写真中央)について
詳細観察を行った。
・CT画像解析の結果,細粒部で低密度部が認められる。
・研磨片観察の結果,幅6mm程度の灰色を呈する細粒部が見られるが,積層
構造及び複合面構造は認められない。
4.(7)東端付近の断層活動性
東端付近の断層活動性(まとめ)
第271回審査会合
資料1-2 P164 加筆・修正
196
宍道断層の東端付近の断層活動性を評価するために,各地点の調査結果を比較・検討した結
果,以下のことを確認した。
1.谷の屈曲量・屈曲率の比較
・変動地形学的調査による谷の屈曲量・屈曲率を比較・検討した結果,東端付近は南講武付近
と比較して,ばらつきが認められるものの,大局的には,次第に小さくなる傾向が認められ,杉
山ほか(2005)で示された横ずれ断層の変位量分布のパターン(山型・複合型)と整合的である
と考えられる。
2.断層活動時期
・地質調査の結果,長海町以東では,下宇部尾北を除いて,後期更新世以降の断層活動が認
められない。下宇部尾北については,火山灰の再堆積を考慮した場合でも,断層は少なくとも
大山松江(DMP)を含むB層(MIS5eの堆積層)の上部には,変位を与えていないことから,南講
武(約3,000年前∼約11,000年前の間に最新の活動が認められる)と比べて,断層の活動性が
低下している。
3.断層の性状比較【H28.1.29第324回審査会合以降にデータ拡充】
・薄片観察等の比較検討の結果,森山断層露頭,MW-5(森山はぎ取り調査断層露頭①)及び宇
井(Loc.T-1はぎ取り調査断層露頭)には,南講武の活断層に見られる複合面構造等の特徴は
認められない。
以上のことから,断層活動性について,東端付近は南講武付近と比べて低下していると考えら
れる。
※下線部は,H28.1.29第324回審査会合以降の主なデータ拡充内容を示す。
197
余白
198
5.宍道断層の評価(東端)
5.宍道断層の評価(東端)
(1)宍道断層の調査結果(東側),重力異常に関する検討結果(まとめ)
拡大図
森山北
・ピット調査等の結果,断層が認められるものの,
後期更新世以降の断層活動は認められない。
下宇部尾東※
・ボーリング調査の結果,変位地形・リニアメント及び
中田ほか(2008)による鹿島断層に対応する断層は認
められない。
・幅広のはぎ取り調査の結果,断層は認められない。
また,ボーリング調査の結果,貫入岩及び貫入境界 森山北
付近に,貫入後の断層活動は認められない。
下宇部尾北
森山
下宇部尾東
申請以降の追加調査を含
む全ての調査結果を踏ま
えた評価長さ:約25km
※:H28.1.29第324回審査会合以降のデータ拡充内容
を次頁に示す。
0
2km
【島根半島東部の重力異常に関する検討】※
・検討の結果,重力コンターの急傾斜部付近にお
いて後期更新世以降の断層活動は認められな
い。また,重力コンターの急傾斜部は,新第三紀
中新世に形成された断層に伴う構造的な落差を
反映したものと考えられる。
宇井∼福浦(高尾山南側(北))※
鹿野・吉田(1985)によると,当該付近のリニアメントは組織地
形であると判断されている。
Loc.T-1
・はぎ取り調査の結果,引きずり込み構造を呈し正断層センス
を有する断層が認められるが,断層面は凹凸が著しい。
・研磨片観察等の結果,細粒部が認められるが,複合面構造
はなく,南講武の活断層に見られる特徴は認められない。
・本地点と同様な地形要素が認められる個所(Loc.T-2∼3)の
調査によると,後期更新世以降の断層活動は認められない。
Loc.T-2,Loc.T-3
・ピット調査等の結果,変位地形・リニアメントと同走向の貫入
岩が存在し,断層は認められない。
Loc.T-2
199
中田ほか(2008)による鹿島断層
原子力安全委員会のワーキンググループ3第17回参考資料
第2号(2009)に記載された推定活断層の位置
変位地形・リニアメント(Cランク)
変位地形・リニアメント(Dランク)
既往調査地点
追加調査地点(H26.5∼)
鹿野・吉田(1985)及び鹿野・中野(1985)による
断層,推定断層,伏在断層
音波探査測線
福浦∼地蔵崎※
・変動地形学的調査の結果,変位地形・リニア
メントは認められない。
・地表地質踏査の結果,地質分布の顕著な不
連続等は認められない。
地蔵崎
美保湾
Loc.T-3
Loc.T-1
Loc.T-4
第271回審査会合
資料1-2 P165 加筆・修正
福浦
美保関町
東方沖合い
日向浦
宇井
宇井∼福浦(高尾山南側(南))
ピット調査等の結果,断層は認め
られない。
美保湾及び美保関町東方沖合い(海域活断層に関する追加調査結果より)
・海陸境界を含む音波探査の結果,後期更新世以降の断層活動を示唆
する変位や変形は認められない。
森山※
1.CMP490付近に想定される伏在断層
ボーリング調査地点∼トレンチ調査地点∼断層露頭に連続すると考えられる一連の断層について,後期更新世以降の断層活動は認められない。
(1)断層露頭調査結果
・断層には,明瞭なせん断面は認められず,断層を覆うDMP降灰層準と考えられる崖錐堆積物3層に変位・変形は認められない。
・薄片観察等の結果,角礫部が認められるが,複合面構造はなく,南講武の活断層に見られる特徴は認められない。
(2)ボーリング調査及びトレンチ調査結果
・ボーリング調査で認められた2条の断層(A断層,B断層)のうち,A断層はMIS5eより古いシルト質礫層,B断層はMIS5e以前の礫混りシルト層
に変位・変形を与えていないことから,後期更新世以降の断層活動は認められない。
2.はぎ取り調査で認められた断層
はぎ取り調査で認められた断層について,後期更新世以降の断層活動は認められない。
(1)はぎ取り調査等結果
・推定活断層通過位置付近の断層露頭①には,細粒部が認められるが,複合面構造はなく,南講武の活断層に見られる特徴は認められない。
(2)ボーリング調査結果
・断層露頭①の走向・傾斜延長付近に明瞭なせん断面は認められず,断層の連続性は乏しい。
(3)反射法地震探査結果
・基盤岩上面,完新統及び南側に分布する上部更新統には断層活動を示唆する変位や変形は認められない。
5.宍道断層の評価(東端)
(1)宍道断層の調査結果(東側),重力異常に関する検討結果(まとめ)
下宇部尾付近
【下宇部尾西トレンチ(北),下宇部尾西ト
レンチ(南),下宇部尾トレンチ】
・トレンチ調査の結果,断層は認められな
い。
【下宇部尾北トレンチ】
陸域 ・トレンチ調査の結果,断層が認められ,
後期更新世以降の断層活動を完全には
調査
否定できない。
下宇部尾東※
森山北
・ボーリング調査の結果,・トレンチ調査等の結果,断層は認められ ・ピット調査
変位地形・リニアメント るものの,後期更新世以降の断層活動は 等の結果,
断層が認め
等に対応する断層は認 認められない。
められない。
・はぎ取り調査等の結果,断層は認められ られるもの
・はぎ取り調査の結果, るが,南講武の活断層に見られる特徴は の,後期更
断層は認められない。 認められず,また,ボーリング調査の結果, 新世以降の
断層活動は
また,ボーリング調査の 断層の連続性は乏しい。
結果,貫入岩及び貫入 更に,反射法地震探査の結果,基盤岩上 認められな
境界付近に,貫入後の 面,完新統及び南側に分布する上部更新 い。
断層活動は認められな 統には断層活動を示唆する変位や変形は
認められない。
い。
宇井∼福浦※
福浦∼地蔵崎※
【宇井∼福浦(高尾山南 ・変動地形学的調査の結果,
側(北))】
南側へ偏る分水界が認めら
・はぎ取り調査等の結果,れるが,分水界は蛇行し,ま
断層は認められるが,南 た変位地形・リニアメントは
講武の活断層に見られ 認められない。
る特徴は認められない。 ・地表地質踏査の結果,地
・各地点の調査の結果, 質分布の顕著な不連続等
後期更新世以降の断層 は認められない。
活動は認められない。
【宇井∼福浦(高尾山南
側(南))】
・ピット調査の結果,断
層は認められない。
美保湾
沿岸
付近
海域
活動性
森山※
第271回審査会合
資料1-2 P166 加筆・修正
―
・谷の屈曲量・屈曲率等の検討の結
果,東端付近の下宇部尾付近は,南
講武付近と比べて,断層活動性が低
下していると考えられる。
【中海北岸】
200
―
―
美保関町東方沖合い
・海陸境界を含む音波探査の結果,後期
更新世以降の断層活動は認められない。
宍道断層の延長部に対応する断層は認められない。
(森山断層露頭,森山はぎ取り調査及び宇井はぎ取り調査で確認された断層は,南講武の活断層と性状が著しく異なる。)
【中海北岸以東】
・重力コンターの急傾斜部は,中海のF- ○陸域(下宇部尾東∼福浦)
C断層及びF−B断層の位置と概ね対応 ・重力コンターの急傾斜部は,下宇部尾東以東の変位地形・リニアメントの分布位置と概ね対応し,変位地形・リニアメントはCランクまたはDランクである
とともに,いずれの調査地点においても後期更新世以降の断層活動は認められない。
し,これらの断層に後期更新世以降の断
層活動は認められない。
重力異常に
関する検討 【中海北岸以西】
○沿岸付近海域(美保湾∼地蔵崎付近∼美保関町東方沖合い)※
・重力コンターの急傾斜部は,宍道断層に ・重力コンターの急傾斜部と,鹿野・吉田(1985)による伏在断層(地質断層としての宍道断層)は概ね一致すると推定し,重力コンターの急傾斜部付近に
対応する変位地形・リニアメントの分布位 おける音波探査の結果,後期更新世以降の断層活動は認められない。
置に対応せず,背斜をなす島根半島主部
の南縁付近における中新統の急傾斜位
置付近と概ね対応する。
申請以降の追加調査を含む全ての調査結果を踏まえた評価長さ:約25km
※:H28.1.29第324回審査会合以降のデータ拡充内容を下表に示す。
下宇部尾東
変動地形学的調査(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充)
森山
変動地形学的調査(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充),断層露頭(堆積環境及び堆積物の形成年代の推定に関するデータ拡充),
トレンチ調査(堆積環境及び火山灰分析(同定)に関するデータ拡充)
宇井∼福浦
変動地形学的調査(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充),はぎ取り調査Loc.T-1(研磨片観察等による断層性状に関するデータ拡充)
福浦∼地蔵崎
変動地形学的調査(変位地形・リニアメントを判読していないものを含む地形要素のデータ拡充),地表地質踏査,島根半島東部の地形的特徴に関する検討
中海北岸以東
重力データ解析(重力異常の構造と地質断層としての宍道断層の位置関係の確認)
5.宍道断層の評価(東端)
第271回審査会合
資料1-2 P166 加筆・修正
(2)東端の評価(まとめ)
201
凡 例
:後期更新世以降の断層活動が認められない
:後期更新世以降の断層活動が完全には否定できない
日本海
:後期更新世以降の断層活動が認められる
美保関町東方沖合い
地蔵崎
松江市
枕木山東方
古浦∼十六島沿岸付近
鹿島町
古浦沖 古浦
佐陀本郷 尾坂
古浦沖以西
女島
男島
坂浦
美保
廻谷
佐陀宮内
仲田
福浦
美保関町
手角町
中海北部
森山北
下宇部尾
森山
宇井
[東端]
南講武
福原町
長海町
下宇部尾東
上本庄町 中海北岸付近
美保湾
中海
[西端]
女島
申請以降の追加調査を含む全ての調査結果を踏まえた評価長さ:約25km
「中国地域の長期評価(H28年7月)」を踏まえても,「下宇部尾東」を東端とすることは妥当と考えられる。
5.宍道断層の評価(東端)
(参考)宍道断層による地震の地震動評価(基本震源モデル,破壊伝播区間の不確かさ)
202
○基本震源モデル
宍道断層の地質調査結果等に基づき,後期更新世以降の断層活動を考慮し,断層端部としては西端を女島,東端を下宇部尾東に
設定し,断層長さは25kmとする。
○破壊伝播区間の不確かさ
宍道断層の東端以東における重力異常による構造不連続の区間については,後期更新世以降の断層活動は認められないものの,敷
地近傍に宍道断層が位置することに鑑み,中国地域の長期評価(H28年7月)における「活断層の可能性のある構造(青線)」を考慮すると
ともに,中海北岸付近の重力コンターの急傾斜部よりも東側に位置する美保関町東方沖合いの当社音波探査結果を踏まえ,破壊伝播区
間の不確かさとして,断層の東端を美保関町東方沖合いに設定する(破壊伝播区間の不確かさ:39km)。
参考文献
203
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資料D・1-No.502
(6)中田高・今泉俊文・岡田篤正・千田昇・金田平太郎・佐藤高行・高沢信司(2002):1:25,000都市圏活断層図「松江」,国土地理院技術資料D・
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(7)佐藤高行・中田高(2002):鹿島断層の変位地形−一括活動型活断層のモデルとして−,活断層研究 21号,pp.99-110
(8)地質調査総合センター編(2013):日本重力データベースDVD版,地質調査総合センター
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本地震学会,p.50
(10)鹿野和彦・中野俊(1985):美保関地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所
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(12)地震調査研究推進本部 地震調査委員会(2016):「中国地域の活断層の長期評価(第一版)」で評価対象となった活断層で発生する地震
の予測震度分布(簡便法計算結果)
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(17)町田洋・新井房夫(2011):新編日本の火山灰アトラス(第2刷),東京大学出版会
(18)松井健(1993):地史における土壌圏の発生発展と,その生物環境保全機能について,地学雑誌,第102巻,第6号,pp.723-744
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参考文献
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総合研究事後評価「地震災害軽減の強震動予測マスターモデルに関する研究」