基礎数理 室田 基本演習 解答 第3部:位相 問題 T1. (1)任意の n ≥ n0 に対して |1/n2 | ≤ ε が成り立つようにするには,例えば, √ n0 = [1/ ε] + 1 とすればよい.ただし,[ · ] は実数の整数部分を表す. (2)任意の n ≥ n0 に対して |1/ log n| ≤ ε が成り立つようにするには,例えば, n0 = [exp(1/ε)] + 1 とすればよい. (3)収束しない.ε = 1/2 に対しては,どんな n0 を選んでも,n ≥ n0 を満たす平 方数 n が存在する.このとき |an − a| = 1/2 > ε となってしまう. 問題 T2. ある M が存在して,任意の n に対して |an | ≤ M が成り立つこと (∃M, ∀n : |an | ≤ M ) を示せばよい.数列 (an ) の収束先を a とする.任意の ϵ > 0 に対して,ある n0 が 存在し,n ≥ n0 ⇒ |an − a| ≤ ϵ である.特に,ϵ = 1 に対して,ある n0 が存在し, n ≥ n0 ⇒ |an − a| ≤ 1 であるから,M を |a1 |, . . . , |an0 −1 |, |a| + 1 の最大値とする と,|an | ≤ M が任意の n に対して成り立つ. 問題 T3. 任意の ε > 0 に対して,ある n0 が存在して,任意の m, n ≥ n0 に対して |am −an | ≤ ε が成り立つことを示せばよい.一方,仮定より,数列 (an ) はある a に収束するので, 任意の ε′ > 0 に対して,ある n′0 が存在して,n ≥ n′0 である任意の n に対して |an − a| ≤ ε′ が成り立つ.ε′ = ε/2 に対する n′0 を n0 とすると,任意の m, n ≥ n0 に対して |am − a| ≤ ε/2, |an − a| ≤ ε/2 が成り立つので,これを加え合わせると |am − an | ≤ |am − a| + |an − a| ≤ ε. 問題 T4. 任意の ε > 0 に対して,ある n0 が存在して,任意の m, n ≥ n0 に対して |am −an | ≤ ε が成り立つことを示せばよい.m ≤ n のとき 1 1 1 |am − an | = 2 − 2 ≤ 2 m n m √ であるから,n0 = [1/ ε] + 1 とすればよい.ただし,[ · ] は実数の整数部分を表す. 問題 T5. 任意の ε > 0 に対して,ある n0 が存在して,任意の m, n ≥ n0 に対して |am −an | ≤ ε が成り立つことを示せばよい. 1 1 1 1 ≤ = − 2 k k(k − 1) k−1 k に着目すると,m ≤ n のとき |am − an | = n ∑ k=m+1 1 1 1 1 ≤ − ≤ k2 m n m であるから,n0 = [1/ε] + 1 とすればよい.ただし,[ · ] は実数の整数部分を表す. 1 問題 T6. d が距離の公理を満たすことを示せばよい.d(a, b) = d(b, a) は明らか.d(a, b) ≥ 0 も明らか.等号が a = b のときのみに成り立つことも,d(a, b) = 0 ならば各 n に対 して |an − bn | = 0 となるから明らか.三角不等式 d(a, b) + d(b, c) ≥ d(a, c) は次の ように示される.実数の絶対値に関する三角不等式より,各 n に対して |an − bn | + |bn − cn | ≥ |an − cn |. ここで,d(a, b) ≥ |an − bn |, d(b, c) ≥ |bn − cn | だから, d(a, b) + d(b, c) ≥ |an − cn |. ゆえに d(a, b) + d(b, c) ≥ sup |an − cn | = d(a, c). n∈N 問題 T7. B = X \ A とおいて命題を書きなおすと, B が閉集合 ⇐⇒ ∀a ∈ X \ B, ∃ε > 0: U (a, ε) ∩ B = ∅. これの対偶 B が閉集合でない ⇐⇒ ∃a ∈ X \ B, ∀ε > 0: U (a, ε) ∩ B ̸= ∅ を証明する. [⇒]B が閉集合でないから,B に含まれる収束点列 (an )n で,その極限 a ∈ X が B に含まれないものが存在する.an → a ゆえ, ∀ε > 0 に対してある n0 が存在し て,an0 ∈ U (a, ε). 一方,an0 ∈ B. したがって U (a, ε) ∩ B ̸= ∅. [⇐]ε = 1/n に対して U (a, ε) ∩ B = ̸ ∅ であるから,各 n ∈ N に対して ∃an ∈ U (a, 1/n) ∩ B. このような点列 (an )n は a に収束する.なぜなら,任意の ε > 0 に 対して,n > 1/ε であるすべての n に対して d(an , a) < ε が成り立つからである.と ころがその極限 a は B に属さない.したがって,B は閉集合でない. 問題 T8. (an )n を Cauchy 列とする.X が点列コンパクトだから,これは収束部分列 (an(k) )k をもつ.その極限を a とすると,∀ε > 0 に対して,∃k0 が存在して,∀k ≥ k0 に対 して d(an(k) , a) < ε/2. 三角不等式より d(an , a) ≤ d(an , an(k) ) + d(an(k) , a). 右辺第2項は,k ≥ k0 ならば ε/2 で抑えられる.第1項については,(an )n が Cauchy 列であることを使う.∀ε > 0 に対して,∃n0 が存在して,n, m ≥ n0 ならば d(an , am ) < ε/2. ゆえに n(k) ≥ n0 が成り立つような k と n ≥ n0 を満たす n に対して d(an , an(k) ) < ε/2. したがって,n(k) ≥ n0 かつ k ≥ k0 が成り立つような十分大きい k と n ≥ n0 を満たす n に対しては, d(an , a) ≤ d(an , an(k) ) + d(an(k) , a) < ε/2 + ε/2 = ε. すなわち,∀ε > 0 に対して,∃n0 が存在して,∀n ≥ n0 に対して d(an , a) < ε が示 された.任意の Cauchy 列が収束するから,(X, d) は完備である. 2 問題 T9. ∫ +∞ −∞ Kn (y)dy = 1 に注意すると, ∫ +∞ fn (x) − f (x) = Kn (y)[f (x + y) − f (x)]dy −∞ (x ∈ R). 関数 f の連続性より,任意の ε > 0 に対して,ある δ > 0 が存在して,|y| ≤ δ ⇒ |f (x + y) − f (x)| ≤ ε. n0 ≥ 1/δ を満たす n0 をとると,任意の n ≥ n0 に対して ∫ +δ |fn (x) − f (x)| = Kn (y)[f (x + y) − f (x)]dy ∫ ≤ −δ +δ −δ ∫ ≤ ε Kn (y) |f (x + y) − f (x)| dy +δ −δ Kn (y)dy = ε. したがって,limn→∞ fn (x) = f (x). ∫ +∞ 問題 T10. −∞ Kn (y)dy = 1 に注意すると, ∫ +∞ fn (x) − f (x) = Kn (y)[f (x + y) − f (x)]dy −∞ (x ∈ R). 関数 f の連続性より,任意の ε > 0 に対して,ある δ > 0 が存在して,|y| ≤ δ ⇒ |f (x + y) − f (x)| ≤ ε/2. この δ によって積分領域を二つに分けて, ∫ +∞ ∫ ∫ Kn (y)[f (x + y) − f (x)]dy = + −∞ |y|≤δ |y|≥δ とすると,第1項は ∫ ∫ K (y)[f (x + y) − f (x)]dy ≤ Kn (y) |f (x + y) − f (x)| dy |y|≤δ n |y|≤δ ∫ ε ε Kn (y)dy ≤ . ≤ 2 |y|≤δ 2 第2項については以下のように評価する.関数 f の有界性より,ある M > 0 が存在 して,任意の z ∈ R に対して |f (z)| ≤ M . (この時点で,ε, δ, M が決まっている が,これらに応じて)ある n0 が存在して,任意の n ≥ n0 に対して ∫ ε Kn (y)dy ≤ 4M |y|≥δ が成り立つ(n が大きくなると,Kn は原点付近に集中してくるから).したがって, 上の第2項は ∫ ∫ ≤ Kn (y) |f (x + y) − f (x)| dy K (y)[f (x + y) − f (x)]dy |y|≥δ n |y|≥δ ∫ ≤ 2M Kn (y)dy |y|≥δ ≤ 2M · 3 ε ε = . 4M 2 したがって,任意の n ≥ n0 に対して |fn (x) − f (x)| ≤ | 第1項 | + | 第2項 | ≤ ε/2 + ε/2 = ε となる.ゆえに limn→∞ fn (x) = f (x). 問題 T11. F : I → I が縮小写像であることの定義は,ある µ (0 ≤ µ < 1) が存在して |F (x) − F (y)| ≤ µ|x − y| (∀x, y ∈ I) である.F が滑らかな場合には,平均値の定理が使 えるので,開区間 (a, b) において |F ′ (x)| ≤ µ が成り立てばよい.いま,F (x) √ = ′ ′ 2 x − f (x)/f (x) = x/2 + 1/x, F (x) = 1/2 − 1/x であるから,例えば,a = 5/2, b = 2 とすると,x ∈ I のとき F ′ (a) = −3/10 ≤ F ′ (x) ≤ F ′ (b) = 1/4√であり, µ = 3/10 a < F (a) = (13/20) 5 < b, √ にとることができる.なお,このとき, √ a < F ( 2) = 2 < b,a < F (b) = 3/2 < b が成り立ち,任意の x ∈ I に対して F (x) ∈ I であることも確かめられる. 以上 2014-07-07 4
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