平成 26 年度 鹿児島大学理学部生命化学科 AO 入試 試験問題

平成 26 年度
鹿児島大学理学部生命化学科
AO 入試
試験問題
【化学】
試験時間:13 時 30 分~14 時 30 分
解答上の注意
 配布物は,問題冊子(2枚),解答用紙(2枚),下書き用紙(1枚)です。
 解答は,すべて解答用紙に記入すること。
 問題文の文頭に,解答する問題の選択について書かれているので,注意すること。
 すべての解答用紙と下書き用紙に,受験番号,氏名を記入すること。
 解答用紙の裏面に記入する場合は,表面の右下にある(裏面に続く)を○で囲むこと。
 試験終了後,問題冊子,解答用紙,下書き用紙を回収します。
【1】:必答問題
【2】~【4】
:1問を選択して解答しなさい。解答用紙には選択した問題番号を記入すること。
【1】次の(1)から(4)に示す混合物から,少量の不純物を取り除くためには,それぞれ
どのような方法を用いれば良いか,例にならって簡潔に説明しなさい。
(例) 少量の砂が混入した食塩
答 水を加えて食塩を溶かした後,ろ過して砂を取り除く。得られた食塩の水溶液を濃縮
して水分を除き,純粋な食塩を得る。
(1)少量の水が混入したジエチルエーテル
(2)少量の酢酸が混入したアニリン
(3)少量の鉄粉が混入した銅粉
(4)少量の二酸化炭素が混入した水素
【2】食酢(濃度約 3%の酢酸水溶液と考える)中に含まれる正確な酢酸濃度を,酸塩基滴定
実験によって求めたい。この実験を行うために必要な試薬と実験器具,および実験手順
について,簡潔に説明しなさい。必要に応じて図示しても良い。
【3】アンモニアはきわめて重要な化学物質であり,全世界の年間生産量は約 1.6 億トンであ
る。
(1)アンモニアはどのような化合物か。その性質と主な用途を述べなさい。
(2)アンモニアは主にハーバー・ボッシュ法で生産されている。これはどのような反応か,
説明しなさい。
【4】酢酸とエタノールの混合物に少量の濃硫酸を加えて加熱すると,酢酸エチルと水が生成
する。
(1)この反応を化学式で示しなさい。
(2)この反応における濃硫酸の役割について説明しなさい。また,濃硫酸を加えなかった
場合,この反応はどうなるか,説明しなさい。
解答例(出題の意図)【化学】
【1】主成分である物質と,混入している物質の性質の差を理解しているか,またそれを利用し
て分離操作を説明できるかを問う。
(1)水とエーテルの沸点差を利用して,蒸留によって分離する。もしくは,水とエーテ
ルの極性の違いを利用して,吸湿剤(無水硫酸マグネシウムなど)によって水分を
除去する。
(2)酸性を示す酢酸と,塩基性を示すアニリンの性質の差を利用して分離する。アルカ
リ性水溶液を利用した抽出操作など。
(3)鉄と銅の希酸に対する溶解性の違いや,磁性の違いを利用して分離する。
(4)気体の溶解度の差を利用して分離する。気体の密度の差を利用しても良い。
【2】中和滴定の実験操作を具体的に記述できるかを問う。試薬,手順については,食酢の濃度
から計算して,定量的な記述があれば,高く評価する。図は器具の特徴をつかんでいるこ
と。
【3】
(1)アンモニアの分子式 NH3 を明記していること。水に溶けやすく,水溶液はアルカ
リ性を示すなど,物性について説明してあること。窒素肥料などに利用されるなど,
用途について記述してあること。
(2)窒素と水素ガスからアンモニアを合成する方法であること。触媒(鉄など)存在下,
高温,高圧で反応させる必要があること。平衡反応であることが記述してあること。
【4】
H2SO4
(1)
CH3COOH
+
C2H5OH
CH3COOC2H5
+
H2O
(2)濃硫酸が触媒であることを説明してあること。反応の活性化エネルギーと反応速度
についても言及してあることが望ましい。濃硫酸を加えなかった場合でも反応は進
行するが,その反応速度は遅いことを述べていること。十分に長い反応時間をとれ
ば,生じる酢酸エチルと水の量は触媒を加えた場合と同じであることについても記
述してあれば,高く評価する。
平成 26 年度
鹿児島大学理学部生命化学科
AO 入試
試験問題
【生物】
試験時間:15 時 00 分~16 時 00 分
解答上の注意
 配布物は,問題冊子(2枚),解答用紙(2枚),下書き用紙(1枚)です。
 解答はすべて解答用紙に記入すること。
 すべての問題を解答すること。
 すべての解答用紙と下書き用紙に,受験番号と氏名を記入すること。
 解答用紙の裏面に記入する場合は,表面の右下にある(裏面に続く)を○で囲むこと。
 試験終了後,問題冊子,解答用紙,下書き用紙を回収します。
【1】密閉した透明なプラスチック容器のなかにアサガオとネズミを閉じ込め,光をあてた状
態で 1 週間放置するという実験を行った。その結果,ネズミは1週間後も生存していた。
これに更なる実験を追加することにより,次の3つの仮説が正しいかどうかを確かめた
い。
(5)ネズミが生き延びた理由は,アサガオが放出した酸素を吸うことにより窒息をまぬが
れたからである。
(6)アサガオによる酸素発生には,光が必要である。
(7)光をあてると酸素を発生するという性質は,植物には一般的である。しかし,他の生
物にはこの性質はない。
(1)から(3)の仮説が正しいということを証明するためには,それぞれについてど
のような追加実験を行い,どのような結果が出る必要があるかを説明せよ。各項目につ
いて追加実験は2つ以上あげ,証明ができるだけ厳密になるように考慮すること。
【2】抗ガン剤は,ガンを治療する為の薬品である。これが,実際にガンの治療に有効である
ことはどのようにして示されると考えるか,説明しなさい。次のことを考慮すること。
(1)抗ガン剤の毒性
(2)動物を使った実験
(3)人間にたいして有効かどうかの検証方法
出題の意図【生物】
【 1 】
主張したいことを証明するために必要な対照実験を考える力と、論理的な思考力を問う。生物の大まかな
分類群を理解しているかを問う。
【 2 】
抗ガン剤が実際にガンを治療する効果があるかどうかは、
「調べてみないとわからない」ことであるが、まず、
このことが認識されているかどうかが問題である。
1. 抗ガン剤が実際に使われるに当たっては、それが毒性を持つかを調べる事が必要である(実際に多くの抗
ガン剤は強い毒性を持つし、それによる医療事故もしばしば起こっている)。毒性を調べる為には、細胞や動
物個体を用いた実験が行われる。ここでは、常識的に様々な量の抗ガン剤を細胞もしくは動物に投与して、死
亡率を調べることになるだろう。そこで、「様々な濃度」の抗ガン剤を「様々な細胞、動物」に投与して調べ
る、というような実験系を考える事が出来るかが最初の問題となる。
2. 次に、抗ガン剤が、毒性のない状態で「効く」かどうかが問題となる。ここでは、ガンを発症させた動物
を材料として、投与群、非投与群での生存率を見ることになるだろう。つまり、対照実験という概念が理解され
ているかが問題となる。
3. 最終的に人間にたいして投与して、有効かどうか、ここでも投与群、非投与群に分けて調べることになるが、
ここではできれば心理的な影響を考慮することが望ましい。