SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) Citation Issue Date URL Version 社交圏の変容とコミュニティ : 社会的ネットワークの地 域性と夫婦関係 野沢, 慎司 人文論集. 47(1), p. A75-A95 1996-07-31 http://doi.org/10.14945/00008144 publisher Rights This document is downloaded at: 2015-03-31T11:15:30Z 社交圏の変容 とコ ミュニ ティ ―社会的ネ ッ トワー クの地 域性 と夫婦関係 ― 慎 1 2 3 4 コ ミュニ ティ研究 にお ける 2つ の死角 地域的な絆 と脱地域的な絆 :真 正 な コ ミュニ ティとは ? 夫婦の絆 とネ ッ トワー クの絆 :競 合 か両立か ? ネ ッ トワー クの地域性 と夫婦 の紐帯 :静 岡調査 4-1 ポス ト育児期 の女性 のネ ッ トワー ク 4-2 4-3 5 1 司 妻 のネ ッ トワー ク と夫 どの情緒的絆 磁場 としてのネ ッ トワーク と家族 コ ミュニ テ ィ解放論 を越 えて家族・ コ ミュニ テ ィ問題 ヘ コ ミュニテ ィ研究 にお ける 2つ の死 角 コ ミュニ ティ研究 は、 近年重要なパ ラダイム転換 を経験 しつつ あ る:そ れは、 コ ミュニ テ ィを、個人 を分析 の単位 とした、地理的な距離 を限定 しない第一 次 的な紐帯 のネ ッ トワー ク、 すなわちパ ー ソナル ネ ッ トワー クとして捉 えるとい う新たな視点 の導入 と密接 に結 びついて い る。 ウ ェルマンは、本来社会学 の主 要なテーマ として受 け継 がれて きた「 コ ミュニ テ ィ問題 (the community ques‐ とは、大規模 な社会 システム上の分業 が、様 々な第一 次的紐帯の組織 の され方やその内容 に与 えるイ ンパ ク トを問 うものであった と述 べ る。すなわち、 コ ミュニ ティ研究 を、社会変動論 における巨視的分析 と微視的分析 の重 要 な結 tion)」 節点 として再規定 して い るのである。 その うえで、 これ までの コ ミュニ テ ィ研 究 は、(1)規 範的 な統合 や コンセ ンサス とい う点 に社会学的 な関心 が寄せ られて きたために、連帯感 を維持す るための条件 を探 る こ とに専 心 しす ぎてお り、(2) 都市社会学 が とりわけ空間的な配 置 に関心 を寄 せて きたために、 もっば ら地域 のなかにある第一 次的紐帯 を捉 える ことに躍起 になってきた とい う (Welhnan, 従来 の コ ミュニ テ ィ論 では、地域 を超 出 した領域 が死角 となって いたた めに、 コ ミュニ ティ問題 へ の解答 が偏 った ものになっていたのではないか、 と 1979)。 ―-75- い うのが彼 の主要 な批判点 で ある。もしそ うな らば、このような 「 コ ミュニ テ ィ 問題」 の再提起 はやは り重要な意味 をもつ ことになる。 ウェルマンによれば、従来 の コ ミュニ テ ィ研究 は、研究視角 の 自己限定 ゆえ に「 コ ミュニ テ ィ喪失論 (the corrmunity lost argument)」 と「 コ ミュニ テ ィ 存続論 (the coFrmunity saved ar_ent)」 とい う対立図式 を生み出 した。 し か し、個人 の維持す る第一 次的紐帯 のネ ッ トワー ク全体 をパ ー ソナル コ ミュニ テ ィ として捉 えれば、第 二 の可能性 がみえて くる とい う。 「 コ ミュニ テ ィ解放論 (the community liberated argwnent)」 がそれで ある。ゴヒ米都市 での経験的 研究 か らは、地理的 に分散化 し、領域 ごとに分岐 したネ ッ トワー クをもち、様 々 な紐帯 か ら必要 な援助 を動員 してい る現代都市居住者 の平均像 が描 き出 されて い る。 マ クロな社会変動 は、地域 に連帯性 を保 った まま存在 し続 けるコ ミュニ ティで もな く、重要な紐 帯 の喪失 で もな く、地域性 と一元的連帯性 か ら解放 さ れた コ ミュニ ティをもた らして い るのではないか、 とい う新 たな命題 が提出 さ れてい るのである (Wellman,1979;Wellman and Leighton,1979)。 このよ うに コ ミュニ テ ィ問題 は、 これ まで視野 の外 におかれていた地域外 の 社会関係 を含 めたパ ー ソナル ネ ッ トワー ク論 と結合す る ことに よって、新 たな 展開 の方向 を見 いだす ことになった。 コ ミュニ ティ論 を個人のネ ッ トワー クの 問題 に還元 して しまうことには異論 もあるか もしれない。しか し、た とえ コ ミュ ニ ティを一定 の地理的範域 内 における社会関係 として定義 づ ける立場 を取 るに せ よ、 その地域 内 に居住す る諸個人 がその地域 を越 えて形成・ 維持す る紐帯 を 視野 に入れ る ことに よって、 はじめて地域 コ ミュニ ティの意味 の問 い直 しが可 能 になる。脱地域的 なネ ッ トワー クをもつ こととの比 較検討 を通 して、居住地 域内のネ ッ トワー クが、 どのような人々 に どのような意義 を もつ ものなのか を 明確化 で きるはずである: これ までの コ ミュニ テ ィ研究 に とって もうひ とつの重 要な死角 となっていた のは、世帯 内の紐帯 で ある。従来 の コ ミュニ テ ィ研究 は、 そのほ とん どが基本 的 に世帯外 の紐帯 (そ して、 ときには世帯間 の紐帯 )の みを説明すべ き対象 と してお り、世帯内 にある家族 の領域 は、分析対象 としての個人 が もつ地位・ 役 割 の有無 (結婚 してい るか どうか、子供 がいるか どうかな ど)や 生活状況の差 異 (子 供 の年齢 を基準 としたライフステー ジな ど)を 表す変数 として、間接的 に取 り上 げ られ るにとどまることが普通 で あった。 つ まり、同居家族間 の紐帯 を コ ミュニ テ ィを構成す る重要な部分 とみなす とい う視点 は希薄 であった。 こ の点 は、近年 のパ ー ソナルネ ッ トワー ク論 に依拠す る研究 に関 して もほぼあて -76- はまる (た とえば、Fischer ι ′αλ,1977,ch.5;WellFrlan,1985)。 しか し、 もっ とも近接 し、 もっ とも接触頻度 が高 く、 もっ とも相 互 に援助す る こ とが多 い と 思われ る世帯 内 の紐帯 を、 コ ミュニ テ ィ研究 の周辺 に追 いや る積極的理 由 はな い。上述 した ように「 コ ミュニ テ ィ問題」の焦点が第 一 次的紐帯 を巡 る問題 に あるとす るな らば、 そ こには当然代表的 な第一 次的関係 としての家族関係 が含 まれ るはず で ある。 こうした状況 にあるのは、 コ ミュニ テ ィ研究者 と家族研究 者の棲 み分けが、研究対象の分離固定化をもたらしたためかもしれない。 これ は、 コ ミュニティ研究 にとっても、家族研究 にとっても、 きわめて不幸 なこと である。 家族変動論 の側 からいえば、パー ソンズの「孤立 した核家族論」 (Parsons, 1956)か ら歴史社会学的な近代家族論 (た とえば、Shorter,1975)に 至るまで の研究 は、 まさに世帯内および世帯外 の紐帯 の質的変容 を問題 にしていた。 こ の ことは、社会変動論 としてのコ ミュニテ ィ問題 と家族 の変動論が、同一の現 象を別角度からみた議論 であって、いわば一枚 のコイ ンの裏表 をなしているこ とを示唆 している。ただし、 こうした家族変動論は、(1)世 帯外 コ ミュニティの 喪失 (弱 化)を 前提 とし、情緒的に強 く結 びついた、自律的な私的集団 として の近代 (核 )家 族 の出現 とその一般化を命題化するか、あるいは、(2に うした 議論へのアンチテーゼ として、 (家 族内の紐帯 の質 については触れずに)集 団 と しての家族 が もつ世帯外 の紐帯 の重 要性 を再発見す る (た とえば、Litwak, とい う文脈で主に展開 してきた。その意味で、個人 のネットワークに基 盤 をおいた新 たな コミュニティ論 の展開 と現代 の家族 の内実が、 どのようにク 1960)、 ロスするのか とい う問いに、充分な解答が得 られているとはいえない: 社会的ネットワークとい う概念をアナロジーから有効 な分析用具へ と転換 さ せ、今 日のパー ソナルネットワー ク研究 のひとつの源泉 となったボットのパ イ オニア的な研究 (Bott,1971[初版は 1957])が 、 まさに世帯内の夫婦の関係の 質 と世帯外 のネ ットワークの特性 との関連 を追究す るなかで生み出 されたもの であったことは皮肉である。とりわけ、彼女の研究 が、 「社会的環境 を考慮 しな い家族 の内部構造 についての研究 の増加 を阻止 したばか りでな く、不可能 にさ せた」 とい う点で長期 にわたる意義をもち続 けるだろう (Harris,1969,p.175; Bott,1971,p.248に 引用 されている)と 評価 されていた ことからすればなおさ らである。 この表現を借 りるならば、家族領域を考慮 しないコ ミュニテ ィ問題 についての研究 は、不可能ではない までも、やはり偏 った解答 を導 くことにな るだろう。 -77- 個人 に焦点 を据 えたネ ッ トワー ク論 は、 これ までの コ ミュニ ティ研 究 の死角 部分 をも取 り込 んだ、修 正 された コ ミュニ テ ィ問題 としての「家族・ コ ミュニ テ ィ問題」 へ の接近 に有効 な手段 を提供す るもの と考 える。本稿 の主眼 は、 こ のような視点 に立 って、 まず は地域的 コ ミュニ テ ィの意味 を再検討 し、 さらに 家族、 と りわ け夫婦の絆 との関連 か ら、家族・ コ ミュニ テ ィ研究の新たな可能 性 を探究す る ことにある。 2 地域的な絆 と脱地域的な絆 :真 正な コ ミュニテ ィ とは ? コ ミュニ テ ィ問題 の再提起 の背後 にあるのは、生活上 の援助 や精神面 での安 寧 を獲 得す るうえで一元的な連帯性 としての地域 コ ミュニ ティの存在 が不可欠 で ある とい う考 え方 に対す る懐疑 で ある。た とえば、 コ ミュニ ティ喪失論 の源 流 のひ とつで ある古典的な ワースのアーバニ ズム論 (Wirth,1938)は 、都市社 会 における二 次的な接触 の優位 が、伝統的な地縁・ 血 縁 を中心 とした連帯性 を 帯 びた コ ミュニ ティの弱化 をもた らし、 さらにはその影響 がパ ー ソナ リテ ィの 解体 にまで及 ぶ とい う理論図式 を提示 したが、 これ はまさに上述 のよ うな前提 に立 っていた とい える。 それに対 してた とえばフ ィッシャー は、経験的 デー タ をもとに「唯― の『真正 なる コ ミュニ ティ (authentic conlmunity)』 は地域 コ ミュニテ ィで ある」 とい う命題 に対 して批判的 な検討 を加 え、現代 の生活 にお いて「場所 (places)」 が もた らす意 味 について独 自の説明 モ デル を提示 してい ′αム,1977,ch。 9;Fischer,1982,ch。 13)。 る (Fischer ι デ トロイ トの男性 に関す るデー タの二 次分析 お よび北 カ リフォル ニ アでの調 査デー タ分析 な どの結果 か らフィッシャー は、(1)対 面的接触 の頻度 は、相手 と の距離 が近接 してい るほ ど高 くなる、(2)し か し、 と くに友人 な どの非親族関係 に関 して、居住地 の近接 した相手 よ りもむ しろ居住地 が地理的 に離 れてい る相 手 との関係 のほ うが、親密 で ある とみなされ る傾 向が ある、(3)頻 繁 な接触 を前 とえば、 日常的 な交 際相手 など)に 関 しては近 接 した相手 が選 ばれる傾向が あるが、 よ り深 い関 わ りを前提 とす るような援助 提 とす るような援助 の交換 の交換 (た とえば、重要な決定 をす る際 の相談相手 や緊急時 に借金 を頼 む相手 な ど)に ついてはこうした傾 向が弱 いか、あ るい はむ しろ距離 の離 れた相手 に 求 める傾向が ある、とい う知見 を導 き出 した。さらにウ ェル マ ン とウォー トリー (た も、 トロ ン トでの調査デー タか ら、対面的 な接触 の頻度 と居住地 の近接性 を合 成 した測度 で ある物理的なアクセスの程度 が高 い紐帯 ほど大小様 々 な手助 けを ・ 提供 して くれ る傾向が あるが、情緒的援助 や経済的援助 の提供 や、お しゃべ り -78- 交際 の相手 になることとは関連 がない ことを明 らか にしてい る (Wellman and Wortley,1990)。 こうした知見 は、細部 にお いて必ず しも一貫 した ものではな い ものの、 きわめて大 きなニ ーズ に対 す る援助 (深 い情緒的 な関わ りを前提 と す るものや経済的な援助 )を 提供 して くれ る相手 との紐帯 は、 た とえ居住地 が 離れ ていて も維持 され る ことを示 して い る。 こうした一連 の知見 は、地域的な (近 接 した)紐帯 に付与 されがちな特別 な 思 い入れを引 きlljが す。 これ らの知見 を解釈す るにあたってフ ィッシャー は、 現代 にお ける居住 の「場所」 (あ るい は地域 )が もつ重要な意味 は、個人 の親密 で援助的 な関係 が維持 され る範囲を縁取 る とい う点 にあるのではな く、むしろ 距離 とい うコス トを生 じる とい う点 にある と主張す る。何 らかの関係 にある相 手 との紐帯 を維持 しよ うとすれば、何 らかの相互作用 をする必要 が ある。 その 場合、相手 との距 離 が大 きければ大 きい ほ ど、相互作用 の コス ト (交通・ 通信 の金銭的費用、時間、手 間 な ど)が 増大す る。 フ ィッシ ャーが主張す る よ うに、 コス トと報酬 に関する個人 の合理的 な評価 を前提 とした説明 モ デル にしたが え ば、 この よ うな コス トの増大 に もかかわ らず維持 され続 ける遠距離 の紐帯 は、 その個人 に とって コス トを上 回 るほどの大 きな報酬 をもた らす ような重要 な相 手 との紐帯 に限 られることにな る。一 方、居住地域 内 に住 む相手 との紐帯 の維 持 にかか る コス トは相対 的 に小 さい ので、近接者 との紐帯 のなか には 自分 に とって非常 に重要 な (報 酬 の大 きい)紐 帯 か らそれほ ど重要ではない紐帯 まで、 様 々な関係 にある相手が含 まれる可能性 がある。 この距離が生み出す コス トの メカニズムがt上 述のような分析結果 となうて表れているのであ り、地域 に特 別 な意味を込める「真正なるコ ミュニ ティ」命題 は支持 されない とい うのが フイッシャーの結論である。 コ ミュニティ解放論の主張 は、交通・ 通信テクノロジーの発達・ 普及 など、 現代 の重要な社会変動のい くつかの側面が、距離が現出する関係維持 のための コス トを軽減 しているとい う観察 に依拠 している。様々なメディアの発達・ 普 及が、将来的には距離の コス トを極小化 し、人口の大部分が「近接性 を必要 と しないコ ミュニティ (community withOut propinquity)」 に暮 らすようにな り、 それゆえ都市への人口集中もな くなるとい う予測 はかな り以前か ら存在 した (Webber,1970)。 しかし、 コ ミュニティの形成・維持 は、地域や空間 と無関係 に行われているわけではない。 これまでのところ都市への人口集中も大 きく解 消 されるには至っていない。少なくとも近 い将来 において、関係維持 における 距離のコス トのマネージメン トから人々が完全 に解放 され、都市が姿を消す日 -79- が来 るようにも思われない (Fischer,1984,ch。 10)。 とりわ け距離 の コス トの 負担 が相対的 に大 き くなる人 々 (低 収入層、高齢者、幼児 を抱 える母親 な ど) に とっては、 より大 きな問題 であ り続 けるだ ろう (Fischer,1982,p.175)。 ど こに住 んで い るか、 そして どこに住 む相手 との紐帯 によって 自分 のパ ー ソナル な コ ミュニ テ ィが構成 されて い るか とい う空間 に関わ る要 因 は、依然 として コ ミュニ テ ィ問題 のなかに重要な位置 を占めてい る: コ ミュニ テ ィを個人 の社会的 ネ ッ トワー ク として捉 える こ とによって拡張 さ れた研究視角 のなかで、 コ ミュニ テ ィの地域性・ 脱地域性 の問題 は、 コス トと しての距離 をはらんだ個 々の紐帯 の維持 とい うかたちで議論 の進展 をみた。距 離 の離 れた紐帯 よ りも近接 した紐帯 のほうが重 要 だ とはい えない とい う知見、 お よび長距離 の紐帯 が維持 され るのはそれが とりわ け親密 で決定的な重要性 を もつか らだ とい う解釈 は説得力 をもってい る。しか し、こうした分析 の限界 は、 個 々の紐帯単位 でのみ、地域性・ 脱地域性 を問題 にしてい る点 にある。地域的 な紐帯 を中心 としたネ ッ トワー クのなかで暮 らす ことと、脱地域的 な紐帯 の比 重 が増 したネ ッ トワー クのなかで暮 らす こととの間 には、生活 へ のイ ンパ ク ト の うえで どのような差異 が あるのか とい う点 は必ず しも充分 に検討 されていな い。 とくに前者 の場合、地域的紐帯 が、部分的 なネ ッ トワーク としてであれ、 連帯性 を帯 びる基盤 となる ことはないのか、 とい う点 は看過 されがちである。 この点 を、 さらに家族領域 との関連 か ら検討 してみ よう。 3 夫婦 の絆 とネ ッ トワー クの絆 :競 合 か両立 か ? ロン ドンの 20家 族 を対象 とした、イ ンテ ンシヴなイ ンタ ビュー調査 に基 づ く ボ ッ トの研究 が導 き出 した単純明快 な仮説 は、多 くの研究者 の注 目を集 めた。 その仮説 とは、夫婦 の役割分離 の程度 は、家族 の社会的ネ ッ トワー クの結合度 よって直接的 に変化す る、 とい うものであった。具体的 には、緊密 なネ ッ トワー クは分離的 な夫婦役割関係 をもた らし、緩や かなネ ッ トワークは (密 度 )に 合同的 な夫婦役割関係 をもた らす、 とい うのである。夫婦関係 と世帯外 ネ ッ ト ワーク との間 に この ような関連 をもた らすメカニ ズム とは何 か。 ボ ッ トの論理 の もっ とも重 要なポイ ン トは この点 にある。すなわち、密度 の高 い緊密 なネ ッ トワークは、ネ ッ トワー ク内のメ ンバ ー間 に規範的 な コ ンセ ンサ ス を生 じやす く、 そのためそれが各 メ ンバ ーに対 し、相互 に接触 を保 ち、援助 し合 う方向へ とインフ ォーマル な圧 力 を加 える。一 方、密度 の低 い緩 やかなネ ッ トワークは、 ネ ッ トワー ク内 に規範 の一貫性 が生 じに くい、 とい うので ある (Bott,1971,p. -80- しか も、こうした説明 は、ほぼ同時期 に同 じ くロ ン ドンで行われた他の コ ニ ミュ テ ィ研究の結果 とも符合 しているよ うにみ えた (Young and Willmott, 1957)。 しか し、この仮説 に着 目 した研究者たちの他 の地域での追試調査 か らは 、 60)。 この仮説 を一貫 して支持す るよ うな結果 は得 られなかった。逆 にボ ッ トの分析 枠組みの基本的問題点が明 らかにされ、後続研究 はボ ッ ト仮説 に多 くの修正 点 をつ け加 えた (た とえば、Harris,1969;Lee,1979を 参照 )。 1971年 に出版 されたボ ッ トの著作 の第 2版 には、その時点 までの後続研 究 の 彼女 自身 による包括的な レビュー と論点の整理が追加 された (Bott,1971,pp. 248-330)。 そのなかで彼女 は、ネ ッ トワーク分析 の単位 を集団 としての家族 で はな く夫 と妻個人 とすべ きで あ る とい う批 判 を受 け入 れ、夫婦役割分 離度 が ネ ッ トワー クの密度 によって規定 され る とい う仮 説 が あまりに単純 にす ぎた こ とを認 めた うえで、彼女 の仮説 の追試諸研究 の結果 を要約 し、ネ ッ トワー ク密 度 が高 い場合 にのみ仮説 が支持 され、ネ ッ トワー ク密度 が低 い場合 にはネ ッ ト ワー ク と夫婦役割関係 の関連 ははっき りしない と述 べ てい る。 この点 は、 ボ ッ ト仮説の修正・ 展開 を目指す うえで示 唆的 で ある。 1978年 に行われた トロ ン トの既婚男女 20人 を対 象 とした イ ンタ ビュー調査 の結果 をもとに、 ボ ッ ト仮説 の再検討 を試 みたウェルマ ン夫妻 (Wenman and Wellman,1992)は 、コ ミュニ テ ィ解放論 の文脈 か らボ ッ ト仮説 に重 要 な修正 を 加 えた。彼 らは、 ボ ッ ト仮説 は夫婦関係 とネ ッ トワー クの関連 に関する「競合 説」 で あるとみなした うえで、対抗仮説 として「両立 (相 補 )説 」 を立て る。 そして、調査 の結果 か らは、ネ ッ トワー クメ ンバー との交際 を夫婦 で共有 して い り、世帯内の関係 を世帯外 の交際 よ りも優先 してい るために、夫婦関係 と な ネ ッ トワー クが競合 せ ず、むしろきわめて援助的なネ ッ トワー クの形成 は相互 に援助的な夫婦関係 にある場合 に限 られて い る とい う知 見 が導 かれてい る。 つ ま り、両立 説 が支持 されてい る。 ウェルマ ン夫妻 によれば、地域的で連 帯性 の強 い親族 ネ ッ トワー クの一定程 度 の残存 を前提 としたボ ッ ト仮説 が後続研究 によって検証 されなかったのは、 近 年 の社会変動 によって、1950年 代 のイギ リス社会 にみ られた状況 が一変 し、 社会移動の増大 とネ ッ トワー クの地理 的分散 の拡大、ネ ッ トワー ク構成 にお け る親族 の比 率 の低下 と非親族的 な多様 な紐帯 との交際 の増大 が もた らされた (す なわち コ ミュニ テ ィ解放化 した)た めで ある。 さらに、北米 の都市 にお け るコミュニティは、公的な場所に集まることによって形成・維持されるのでは な く、家庭 を中心 とした私的な場 で維持 され る傾 向 (す なわち コ ミュニ テ ィの -81- 家庭 中心化 )を 強 めて い るとい う。 したが って、 ネ ッ トワー ク と夫婦関係 との 間 の規定関係 は、 ボ ッ トの想定 とは逆 に、世帯内か ら (世 帯内のニーズにした がって、 とくに妻が 中心 となって)そ の外側 のネ ッ トワー クを操作的・ 選択的 に維持 す るとい う方向で働 いてい るのだ、 とい う。 これが ボ ッ ト仮説 に関 して 彼 らが提 示 した重要な修正点 である。 しか し、 トロン トの少数 の事例分析 か ら導 かれた知 見 が どこまで一般性 をも つのか とい う点 に関 しては、 ボ ッ ト仮説 と同様、疑間が残 る。夫婦間 の援助関 係 も世帯外 のネ ッ トワークか らの援助 の動員 も、 その量 は世帯内 にお けるニ ー ズの多寡 によってほぼ規定 され、 まず他 の紐帯 に優先 して夫婦 の絆 が動員 され る、 とい う説明 モデル の妥当性 の範囲 には留保 が必要 だろう。 そもそ もボッ ト が論拠 とした事例 を詳 しく見直 せば (Bott,1971,ch。 3)、 「世帯外 のネ ッ トワー クが規範的圧 力 を生 じ世帯内の関係 を規定す る」 とい うメカニ ズムは、厳密 に い えば緊密なネ ッ トワー クをもつ夫婦 にのみ妥当 し、緩 やかなネ ッ トワークを もつ夫婦 の場合 にはむ しろウ ェルマ ン夫妻 が提 示 した「世帯 がネ ッ トワー クを 動員す る」 とい うメカニ ズムが妥当 して いた とも考 えられる。 ウ ェルマ ン らの 議論 にしたが えば、 コ ミュニ テ ィ解放化 をもた らした社会変動 は、前者 が多数 を占める社会 か ら、 後者 が多数 を占める社会 へ の変化 だつた とい う ことになる。 しか し、居住環境 (都 市度 の違 い、地域社会 の住民構成 や文化、住居 の形態 な ど)の 差異 が、 コ ミュニ テ ィの解放化 のレベ ルに無視 で きない ほどの差異 をも た らしてい るとす るな らば、ネ ッ トワー クが規範性 を帯 び圧力 を生 じる ことに よって夫婦関係 に影響 を与 えるとい う可能性 をも仮説 に組 み入れなが ら、現代 における家族・ コ ミュニ テ ィ現象 の多様性 を探究す るべ きで あ ろ う。 このよう な問題設定 は、家族・ コ ミュニ ティ変動論 へ の接続 を 目指 す とい う意味 で も重 要 で あ る。 そうした研究 に向 けて、 これ までの議論 の主要 な論点 を要約 すれ ば、(1)ネ ッ トワー クが連 帯性 (規範的圧力 )を 帯 びるのは、地域的 に限定 された範域 のな かに一定 の規模 の (密 度 お よび対面的接触頻度 の高 い)ネ ッ トワークが維持 さ れてい る場合 である ことが多 い、(2)一 方、脱地域的 ネ ッ トワァ クは、(お そ らく 密度 や接触頻度 は低 いが)親 密 で重要 な絆 か ら構成 され る傾向が強 い、 とい う 2点 が導 かれる。 日本 の ように文化的 に社会変動 の文脈 を異 にする社会 におい て比較研究 を行 うとすれば、 よ り多面的 な視角が要請 される。 とりあえず、以 下の点 に注意す る必要 が ある。(1)世 帯外 のネ ッ トワークか らの影響 が どの よう な ものであるかは、少 な くとも理論的 には、ネ ッ トワー クメ ンバ ー間 に共有 さ -82- れた規範 の内容 に依存 し、夫婦関係 を分離的 にす るか どうか は自明 ではない こ と、(2)こ れ と関連 して、夫婦 それぞれのパ ー ソナル ネ ッ トワー クの夫婦間での 重 な り (共 有 )の 影響 を独立 に検討 す る必要 が ある こ と、(3)さ らに上記 2点 と 関連 して、夫婦間の紐帯 の質 は、必ず しも一元的 に分離・ 合同 の軸 に位置 づ け られ るとは限 らず、世帯外 の ネ ッ トワー ク と相互 に影響 し合 う側面が、 どうい う次元の ものであるかは検討 の余地 が ある こ と、 の 3点 である。以下 では、 こ れ らの論点 を念頭 に置 きなが ら、具体的なデー タを使 って、現代の 日本の都市 社会 の文脈 にお ける研究 の展開可能性 を探索 してみ よう。 4 ネ ッ トワー クの地域性 と夫婦 の紐帯 :静 岡調査 4-1 ポス ト育児期 の女性 のネ ッ トワー ク ここで は、静岡市 の一 地域 で収集 された比 較 的小規模 なサ ンプルか ら得 た データを使 った分析結果 を検討 し、夫婦 の絆 をコ ミュニ テ ィ問題 に接合 させ る 研究 が もつ意義 を確認 し、 上述 の分析枠組 みの 日本での応用可能性 を探索する。 対象 としたのは、静岡市 (人 口 472,196人 :1990年 国勢調査)の T町 1∼ 4丁 目に居住す る、 ポス ト育児期 の主婦層 (末 子 が小学生である有配偶女性 )で あ る。 この地区は、静 岡駅 か ら南東約 2キ ロほ どの ところに位置 し、県営団地 を 含 む 1950世 帯 (1990年 国勢調査 )が 居住す る住宅地 で ある。住民基本台帳 か ら、 上 記条件 にあてはまる と思われ る人が 171存 在す ると推定 された。 これ を母集 団 とし、 そ こか ら無作為 に 18を 除外す る こ とによって 153の サ ンプル を得 た。 デー タは、1993年 9月 に行われた個別面接調査 によって収集 された。有効 回答 者数 は 126(回 収率 82.4%)で あ った3 とえば、松本 ,1994a)か らは、女性 のネ ッ トワー クの規模 は、 子供 の成長段階 に対応す るライフステージによって大 きく影響 を受 けるとされ 先行研究 (た てお り、育児期 か らポス ト育児期 にか けての女性 たちは、親族関係量、近 隣関 係量 を増大 させ、逆 に地域 外 の友人関係量 を減少 させ る傾向が ある ことが示 さ れて い る。1970年 代後半 の東京郊外 をフ ィール ドとして、主婦 の社会参加活動 とコ ミュニ テ ィ形成 を調査研究 した米国 の社会学者 イマム ラは、主婦 たちが / │′ の時期 に主 に地域内に作 り上 げる友人 の多 くは、家族 内の (主 婦・ 母親 )役 罰 遂行 の一環 として情報交換や相互援助 をす る友人 で あ るとして「 (主 婦 として の)職 務上 の友人 (prOfessional friends)」 と呼 び、学生時代 な どに作 られ、多 くの場 合地域外 に住 んで い る「個人的友人 (personal friends)」 と区別 した (Imamura,1987)。 一 方、上野 らは、近年の主婦層 が分化 して い る と指摘 し、 ―-83-― ポス ト育児期 の主婦 たちの と くに就労 してい ない層 のなか に、近隣 よ りも広 い 地域内 に様 々 な活動 の場 と個人的 な友人関係 を積極的 に形成 してい る女性 たち が 出現 して きてい る ことを例証 して い る (上 野 ほか,1988)。 ポス ト育児期 にあ るわれわれの対象者 は、 日常生活圏 としての地域 のなかに比較的豊富 な社会的 ネ ッ トワー クを形成・ 維持 す ると同時 に、脱地域的 な長距離 の紐帯 を形成・ 維 持す るための制約条件 のひ とつ (育 児 )か ら解放 され つつ ある とい う点 で、あ る程度共通 の状況 に置 かれてい るが、ネ ッ トワー クの構成 の面 ではかな りの多 様性 をもつ層 で ある と推測 され る。 表 1 N= 世帯類型 基本属性項 目 と各ネ ッ トワーク (NW)規 模 の平均値 NW 地域外NW全 体 地域外友人NW 地域内NW全 体 地域内非親族NW 勁 内雛 6.70 ns 4.71 ns 1.97 ns 5。 71 ns 地域外親族NW 2.34 ns 3.37 ns 91 6.83 4.82 1.99 5.90 2.38 3.52 24 5.75 3.92 1.83 5。 29 2.38 2.92 妻方親同居 7 8.14 6.00 2.14 4.71 1.71 3.00 6.62 ns 4.64 ns 1.97*** 5.70 ns 2.37 ns 3.34 ns 7.28 4.58 2.70 5.48 2.35 3.13 5.62 4.50 1.09 6.06 2.38 3.68 6.14 5.05 1.09 5。 86 2.41 3.45 6.66 ns 4.66 ns 1.98 ns 5.74 ns 2.39 ns 3.35 ns 21 7.10 4.43 2.67 7.71 3.38 4。 51 6.00 4.41 1.59 4.23 1.86 2.37 15 7.60 5.20 2.40 6.07 2.33 3.73 37 6.95 4.91 1.97 6.57 2_57 4.00 6.64 ns 4.65 ns 1.98 ns 5.74 ns 2.39 ns 3.35 ns 6.50 4.42 2.08 5.45 2.14 3.31 6.86 5.02 1.81 6.21 2.79 3.43 6.67 ns 4.66 ns 2.00 ns 5。 2.40 ns 3.40** 2.25 家 市 県 県 出身地(中 卒時) 内 内 外 族 大方親同居 核 就業形態 フルタイム パートタイム 家族従業者 専業主婦 本人 の学歴 中学・ 高校 短大・ 大学 夫の職種 カラー ホワイト プルーカラー 80* 33 51 6.31 4.65 1.63 4.19 1.94 71 6.93 4.66 2.27 7.00 2,74 4.26 6.73 ns 4.73 ns 1.99 ns 5。 2.39 ns 3.50 ns 500万 未 満 500--700フ ゴ 5.89 4.26 1.55 7.74 3.05 4.68 7.15 5.27 1.88 4.88 2.18 2.70 700-900万 6.84 4.55 2.29 4.87 1.95 2.92 900万 以 上 6.65 4.61 2.04 7.48 2.87 4.61 世帯収入 注)一 元配置 の分散分析 による検定結果 89 ns ***P<.001,**P<.01,*P<.05 -84- この調査 では、対象 となった女性 たちのネ ッ トワー クに関 して、 「 日頃か ら何 か と頼 りにし、親 し くして い る方」の人 数 を関係 の種類別、住居の距離別 に挙 げて もらった。ここでは、パ ー ソナル ネ ッ トワー クの規模 を、地域内ネ ッ トワー ク (片 道 30分 以内の距離 に居住、 および「 近所 の方」)と 地域 外ネ ッ トワー ク (30分 以上 の距離 に居住 )の 2つ に分 けて算出 した。 さ らにそれぞれ を親族 ネ ッ トワーク (別 居 の親族 )と 非親族 ネ ッ トワー クの 2つ のカテ ゴ リーに分 け て算出 してい る8 これ らのネ ッ トワニ ク規模 が、対象者の個人・ 世帯 に関す る基本的 な属性変 数 とどの よ うに関連 してい るかを表 1に 示 した。 ここでは、各 ネ ッ トワー クの 規模 の平均値 を基本的な属性変 数 のカテ ゴ リー別 に示 し、一元配 置 の分散分析 による検定結果 を付 した。市内出身者 に地域 内親族数 が多 く、夫 がブルーカ ラー 的職業 に就 いてい る層 に地域 外 (と くに親族 )の 紐帯 が多 い とい う傾向が統計 的 に有意 で あるが、 それ以外では属性 による統計的な差異 はない。全体 として は、パ ー ソナル ネ ッ トワー クの半数弱 が 日常的社交 圏 としての地域 を越 えて維 持 されてお り、その意味で は コ ミュニ テ ィ解放論 を支持 して い る とい えるだろ う。 4-2 妻 の ネ ッ トワー ク と夫 との情緒的絆 では、 こうした世帯外 のネ ッ トワー クと世帯内の と くに夫婦間 の関係 との間 にはどの ような関連 が あるのだ ろうか。 デー タの制約上、前節 までの論点のす べ てを視野 にお さめた多面的な分析 (た とえばネ ッ トワー ク密度や接触頻度 を 含 めた分析 )は 断念 せ ざるを得 ないが、次 の 2点 に しぼって探索的な分析 を試 みた い。すなわち、(1)妻 が夫 に情緒的な援助 を多 く求 める こ とは、彼女 が地域 内 お よび地域 外 に親密 で援助 的なネ ッ トワー クを多 くもつ こ ととの間 にどのよ うな関連 が あるか。 と りわ け、地域的なネ ッ トワー ク と地域 を超出 した ネ ッ ト ワー クとで は、関連 の仕方 に何 らかの差異 が存在す るのか どうか。(2)も し何 ら かの差異 が存在 するな ら、 それ はどの ようなメカニ ズムに よって生 じてい るの か。 と くに、妻 の友人 ネ ッ トワークが大 と重 なる (共 有 され る)程 度 との関連 か ら考察す る。 妻 が夫 か らの情緒的援助 に依存す る程度 を示す変数 として、(1)グ チをこぼ し た い よ うな とき夫 に話す頻度 、(2)判 断 に迷 った り確信 が持 てない とき夫 に相談 す る頻度、(3)将 来 の生活設計 について夫 に意見 を求 める頻度、の 3項 目 (各 0∼ 2 点 )の 合計得点 によって尺度 を構成 した α =3.77,SD=1.72,α ―-85-― =.75)。 さら 属性変数等 の効果を調整後 の各NW規模 地域外 NW全 体 ** 地域内NW全 体 ** \ 5.3 地域内非親族 NW* ノN=:=二 5.4 1事 ‐ ■ 4.6 3.0 地域 内親族 NW* 地域外親族 NW* 1.9 地域外友人 NW 夫への情緒的依存 の程度 注)分 散共分散分析 の結果 **p<_01,*p<.05 図 1 夫への情緒的依存 と各ネッ トワーク(NW)の 規模 (調 整後) 「中程度 (3∼ 4点 、N=44)」 、 にこの尺度 の得点 か ら、 「低 い (0∼ 2点 、N=21)」 、 ゴ ー い 3カ リ を N=41)」 の テ 6点 作成 し、 これ を夫 へ の情緒的依存 「高 (5∼ 、 の程度 を示す変数 とした。 図 1は 、上 記 6種 のネ ッ トワー ク規模変数 をそれぞれ従属変数 とし、妻 の夫 へ の情緒的依存 の程度 お よび表 1に 示 した 6つ の基本属性項 目変数 を独立変数 7 とし、 さらに従属変数 としたネ ッ トワー ク以 外 のネ ッ トワーク規模 を共変量 (独 立変数 の主効果 と同時 に処理 )と した多重分類分析 の結果 を示 した もので ある。 この図 の数値 は、他 の独立変数・ 共変量 の影響 を調整 し取 り除 いた場 合 の、夫へ の情緒的依存度 の違 い (低・ 中・ 高)に よる、 6種 のネ ッ トワークの 規模 の予測値 を表 して い る。 また、 これ らのネ ッ トワーク規模 に対 して、基本 属性変数 お よびそれ以外 の関係 量 による効果 とは独立 に、夫 へ の情緒的依存 の 程度 が効果 を及ぼ してい るか どうか を検定 した結果 (分 散共分散分析 )を 付 し た: 一-86-― 夫 へ の情緒的依存 の程度 は、地域 内ネ ッ トワー ク と地域外ネ ッ トワー クの規 模 いずれに対 して も、他 の変数 の効果 とは独立 の効果 をもた らしてい る。 ただ し、 その関連 の仕方 は地域内ネ ッ トワーク と地域外ネ ッ トワー ク とでは対照的 で ある。情緒的依存度 が 中程度 のカテ ゴ リー と高 いカテ ゴ リー間 にはほ とん ど 差 がないが、夫 へ の情緒的依存 が もっ とも低 い カテ ゴ リーにおいては、 地域 ネ ッ トワー クは小 さ くな り、地域外ネ ッ トワー クは大 き くなってい る。親族 ネ ッ ト ワー クと非親族ネ ッ トワー クに分 けてみる と、地域外友人 ネ ッ トワー クに関 し てのみ統計的有意性 がな くなるが、地域 内ネ ッ トワーク と地域外ネ ッ トワー ク との間 にみ られる対照的 な傾 向 は親族・ 非親族 いずれ に関 して も一貫 してい る ことがわ か る。 つ まり、情緒的依存 が一定 レベル以上の夫婦関係 にある妻たち の世帯外ネ ッ トワー クは、地域 内の紐帯 が相対的多数 を占め、地域的 コ ミュニ テ ィに暮 らす傾向が あ る。一 方、情緒的 に夫 に頼 る ことが とくに少ない妻の世 地域 内の関係 が半減 し、逆 に大部分 が地域 外 の紐帯 によっ 帯外 ネ ッ トワー クは、 て構成 され、 いわば脱地域的 なパ ー ソナル コ ミュニ ティをかたちづ くる傾向が ある。 一定規模 の地域的なネ ッ トワー クに取 り囲 まれて い る ことが夫婦関係 に競合 す るような規範的 な圧力 を生 み出す基盤 で ある とい う前提 に立 つ限 り、 この よ うな分析結果 はボ ッ ト説 にまった く反 して い る。地域的 なネ ッ トワー クは、夫 婦関係 を分離的 にし、夫婦相互 の援助関係 を弱 めるのではな く、 む しろそれ と 両立・ 並行 してい るか らだ。 この点 で は、 ウ ェルマ ン夫妻の説 が支持 され るよ うにみ える。一 方、われわれ のデー タは、脱地域的 な紐帯 の豊富 さが、夫婦間 の情緒的援助関係 と競合す ることも示唆 して い る。 しか も、夫 へ の情緒的依存 の程度 と夫婦関係 に関す る満足度 とは、 かな り強 い正の相関 (γ =。 31)を 示 し て い る。 この ことは、夫 か ら情緒的 な援助 を得 られない妻 が、夫婦関係 に不満 をもち、代替的 に地域外 の紐帯 を広 げる とい う解釈 を導 く。 こうした知見 は、 遠距離 の紐帯 ほど選択的 に維持 されて い るもので ある とい う前提 に立つ限 りで は、世帯内 の関係 と両立 的 に世帯外 のネ ッ トワークが操作 され る とい うウェル マ ン・ モ デルか らも大 き く逸脱 す る。 4-3 磁場 としての ネ ッ トワー ク と家族 夫婦間のネ ッ トワー クの重 な りは、 こうした点 とどのよ うに関連 してい るだ ろうか。 この調査 では、妻 が とくに親 し くしてい る友人 3人 の うち夫 を交 えて 話 をす る ことが ある友人 を答 えて もらったが、 ここで は これを夫 との共有友人 ―-87-― と呼び、 その人数を妻のネットワークの夫 との重な りを一定程度反映 した変数 とみなす。夫への情緒的依存度 に代えてこの友人共有数を独立変数に加 え、図 1と 同様 の分析 を行った結果を示 したのが図 2で ある。友人共有の程度が他の 独立変数や共変量の効果 とは独立 の効果 をもったのは、地域内ネットワーク全 体 の規模 に対 してのみであった。共有友人のまった くいないカテゴ リーで、顕 著 に地域内ネットワーク規模 が小 さ くなる傾向が見 いだされた。地域外親族 ネットワーク規模 との関連 の仕方 は不規則的であり、統計的 には有意ではない が、共有友人数が最低 (0人 )の カテゴ リーでのみ脱地域的な紐帯数が地域内 の紐帯数を上回っていることが注目される。 さらに、多重分類分析から、先の 6つ の基本属性変数を調整 した場合の、夫への情緒的依存の程度差 による共有 友人数の予測値を示 したのが図 3で ある。 これは、世帯や個人の属性変数の影 響を除いても、夫 に情緒的 に頼 ることの多い妻ほど重要な友人を夫 と共有す る 傾向があることを表 している。 属性変数等 の効果を調整後 の各 NW規模 地域内NW全 体 * 地域外親族 NW 3.9 r∬ 饗聖整NI 地域内親族NW J2 2.6 3人 の親 しい友人 の うち夫 と話 す人 数 注)分 散共分散分析の結果 *p<.05 図 2 夫 との友人共有 と各 ネ ッ トワー ク (NW)の 規模 (調 整後 ) -88-― 夫婦間 の情緒的 な絆 の強 さは、少 な くとも妻側 の友人 ネ ッ トワークに関す る 夫婦共有化 を ともない なが ら、妻 の地域 内 の絆 の豊富 さと並行 してい るようだ。 静岡 のポス ト育児期 の妻 たちに関 す る限 り、 (イ マム ラの表現 を借 りれば)日 常 的 な主婦役割遂行 に有用 な、地域内の「職務 的」 ネ ッ トワー クは、夫婦間 の情 緒性 の強 い相談関係 と並行的 であ り、 ボッ トが見 いだ した ような夫婦 を分離的 にす るような規範的圧力 の存在 はみ られない。 ウ ェルマ ンのい うような世帯内 関係 を中心 とした選択的なネ ッ トワー ク動員が一般化 してい るとみるべ きか も しれない。 しか し、逆 に豊富 な地域 内 ネ ッ トワー クに取 り囲 まれてい る ことに よって、夫婦 が ともに関 わ るような社会的世界 が創出・ 維持 され、 その結果 と して夫婦間 の相談関係 が増大 してい るとい う解釈 の可能性 も否定 しきれない。 とりわけ、欧米 と日本 の社会・ 文化的差異 に着 目すれば、町内会 のような日本 の伝統的地縁集団が世帯単位 の関 わ りを要請す る性格 をもち、また伝 統的 な (地 縁性 の強 い)親族関係 が夫方の親族集団へ の妻 (嫁 )の 取 り込 まれ を前提 とし 人︶ 属性変数 の効果を調整後 の共有友人数 ︵ 中程度 夫へ の情緒的依存 の程度 iい 注)分 散分析 の結果 図3 p<.05 夫への情緒的依存 と共有友人教 (調 整後 ) ―-89-― て い る ことか らも、地域的ネ ッ トワー クヘ の広範 な関 わ りが夫婦共通 の生活領 域 とネ ッ トワー クを確保 し、それが ある種 の規範的圧力 を帯 びることによって、 情緒的 な夫婦 の相談関係 をむ しろ強化 してい る可能性 が ある。 こうした圧力 を 生 じる磁場 としてのネ ッ トワー クの残存・ 創出あるい はそ こか らの離脱 とい う 視点 こそが、 日本の家族・ コ ミュニ テ ィの変動論 との重要な接点 で あるか もし れない:コ ミュニ ティ解放論 を前提 とした ウェルマ ンのモ デル は、家族 をいわ ば磁場 を形成 し得 る唯―の場 とみな してい るわ けだが 1° このモ デルが 日本 の現 実のなかでどこまで一般的な妥当性をもつのかも間われなければならない。こ うした点は、今回の調査データからはこれ以上追究できないが、経験的な研究 による究明が急がれる興味深い論点である。 夫婦 間 の情緒的 な絆 と競合関係 にあるようにみえたのは、脱地域的なネ ッ ト ワークで ある。これは、ウ ェルマ ン流 の、世帯 を中心 とした家族・ コ ミュニ ティ ・ モ デル の妥当性 が、 や は り現代 の日本 の現実 に照 らして修 正 され る可能性 を示 唆 してい る。長距離の紐 帯 は一般 に対面的接触頻度 も少 ない とみ られ ることか ら、 こうした関連 が規範的な圧力 をはらんだネ ッ トワー クによって生み出 され た もの とは考 えに くいが、 はっき りした こ とはい えな い。 この脱地域的ネ ッ ト ワークに含 まれ る紐帯 の多 くが、イマム ラのい う「個人的な」関係であ り、北 米 での研究知見 が示 す よ うに親 密度 の高 い紐帯 で ある と仮定すれば、そして夫 婦間 の情緒的絆 の弱 さが夫婦関係 の満足度 の低 さを ともな う傾向を考慮するな らば、何 らかの理 由 (夫 の職業上、ネ ッ トワー ク上の特性 な ど11)か ら夫婦関係 に代替する情緒的紐帯 が必要 となった妻個人 によって選択的 に維持 された もの が こうした地域外ネ ッ トワー クなのだ と考 えられ る。 もしそうな らば、 そこに は、家族 内 の磁場 のある種 の欠落状態 とい った ものが、世帯外 の脱地域 ネ ッ ト ワー クの形成・ 維持 を促進す るメカニズムが み られ る ことになる。 この点 に関 して も、た とえば距離 を超 えた親密 な関係 の維持 を支援す る電話 な どのパ ー ソ ナル・ メデ ィアによる接触 な どを視野 に含 めて、経験的研究 を進める必要が あ る。 5 コ ミュニテ ィ解放論 を越 えて家族・ コ ミュニテ ィ問題 ヘ コ ミュニ ティ論 のなかで これ まで比較的等閑視 されて きた地域外の紐 帯 と世 帯内の紐帯 を視座 に含 める必要性 を論 じ、 と くに具体的なデー タ分析 の一例 か ′ ら、その有用性 を示唆 して きた。使用 したデー タはかな り限定的 な ものであ り、 その知見 の解釈 についてはさらに検討 され るべ き問題 が数多 く残 されている。 ―-90-― しか し、一 地方都市 におけるポ ス ト育児期 の女性 のネ ッ トワー クと夫婦関係 の 分析 のなかか ら浮かび上が る、家族・ コ ミュニ テ ィ複合 の一端 をみるだけで も、 一枚 の コイ ンの両面 としての家族変動 とコ ミュニ テ ィ変動 を統合的 に把握す る 調査研究 が重要 かつ必要 で ある ことが理解 で きる。地域 を越 えた親族・ 非親族 的紐帯 を含むパ ー ソナルネ ッ トワー ク とい う概念 は、 こうした研究 を進 め るに あた って きわめて有用 な道具 で ある。 これ を夫婦関係 な ど世帯内関係 を視野 に 含 む まで に拡張す る ことで、 これ まで互 いが互 いの変動 の前提条件 としてのみ 扱 われる こ とが多 かった家族 とコ ミュニ テ ィ・ ネ ッ トワー クの相互連関 を、有 機的 かつダイナ ミックに究明 してい く道 が 開 ける。 現代 の家族・ コ ミュニ テ ィが どうい う方向 に動 いて い るのか とい う問 い は、 とりあえず現状 が どうなってい るのか、 どの ような多様性 を見 せているのか、 そうした多様性 は何 によって もた らされて い るのか とい う問 いの解明 か ら始 め ざるをえないだ ろう。 よ り多様 な (地域 )社 会、社会層、変数群 を対象 として 展開 され る必要が あるも その点 では、今回 の分析 は原初的な段階 に とどまって い る。夫側 か らの情報 を欠 いて い る ことか らも、物語 の半面 にす ぎない。 それ ぞれ 固有 のパ ー ソナ ル ネ ッ トワー クを もつ夫 と妻 の両面 か らの研究 が望 まれ る。 さらに、イギ リスのボ ッ トに始 ま り、北米都市 での コ ミュニ テ ィ解放化 の 波 の もとで モ デル化 されて きた家族・ コ ミュニ ティ問題 は、1ヒ較社会・ 文化的 に再構成 されなければな らない。 そ もそ もコ ミュニ テ ィの解放化 は、社会 の ど の部分 で どの ように進 んで い るとい えるのか。 い った い何 か らの解放 なのか。 日本の社会・ 文化的文脈 においては、 おそら く解放 の起点 となる家族・ コ ミュ ニ テ ィの原型 としての規範 を帯 びたネ ッ トワー クの所在やその変化・ 変奏 の軸 が異 なるので はなぃか。換言すれば、世帯外 ネ ッ トワー クお よび家族 の磁場構 造 とその相互連 関が、既存 の説明 モ デル におけるそれ とはかな り異質 なのでは ないか、とい うのが本稿 の分析結果 か ら導 かれた問題提起 で ある。家族・ コ ミュ 2 ニ テ ィ問題 は、 まだ問 い直 されたばか りで あると ,王 1 松本 (1994b)は 、 1980年 代 の都市 コ ミュニ ティ論 を概観 した際 に、 この時 期 を「『パ ラダイム転換』 の予兆 が現 れた時期 で あ った」 と述 べ てい る。 2 こぅした試 みの例 として、野沢 (1992b)、 野沢・ 高橋 (1990)を 参照。 3 これ らの点 については、都市 コ ミュニ テ ィ研究 と都市家族研究 の接点 をパ ー ソナル ネ ッ トワー ク論 に求 めて既存研究 をよ り詳細 に ンビュー した、 野沢 (1992 ―-91-― a)を 参照されたい。 4 こぅした視点 は、コ ミュニティ解放論の思潮のなかにある一連 の研究 に含 ま れている。たとえば、都市度 とネットワークの特性 との関連を追究 したフィッ シャー (Fischer,1982)の 北 カ リフォルニアでの調査研究は、その代表的研究 と位置づ けられる。 ただし、 そ こでの結論 のひとつは、居住地の都市度 の違 い は、生活のスィイル (ネ ットワークの選択性など)の 差異をもたらすが、生活 の質 (ネ ッ トワー クの援助性や親密性、心理 的状態 な ど)に お ける差 をもた ら すわけではない とい うものであった (pp.258-261)。 有効 回答者 の年齢 は 30歳 か ら 50歳 にわた り、平均 年齢 は 39.3歳 5 (SD= 3.70)で ある。調査項 目等 の詳細 については、木村・ 野沢 (1994)参 照。 6 ここでは、「地域」を日常的 な社交圏 とい う意味 で捉 え 、操作的 に片道 30分 とい う範囲 に置 いた。 こうした地域 内・ 地域 外 のネ ッ トワークか らは職場・ 仕 事関係 の紐帯 を除外 して い る。 なお、「地域 内非親族 ネ ッ トワー ク」には近所の 人 と地域 内友人 を含 むが、地域 外 の非親族 は友人 のみで あるため、以下 ではこ れ を「 地域 外友人 ネ ッ トワー ク」 と呼 ぶ。 7 た とぇば、地域内親族 ネ ッ トワー ク規模 を従属変数 とした分析 の場合、それ 以外 のネ ッ トワー ク全体 (地域 内非親族 ネ ッ トワー ク、地域外ネ ッ トワー ク全 体、 および職場 ネ ッ トワーク)の 規模 を共変量 とし、 その影響 を除 いて い る。 8 なお、情緒的依存度 に代 えて、夫 へ の実用的な援助 依存 を表す変数 として夫 の家事参加度 (1週 間 に参加 した家事項 目数 :「 1項 目以下」 と「 2∼ 7項 目」 の 2カ テ ゴ リー)を 使 い、 これ と同様 の分析 を行 ったが、 いずれのネ ッ トワニ ク規模変数 とも有意 な関連 はみ られなかった。 この点 では、 ボ ッ ト説 もウェル マ ン説 も支持 されない ようにみえる。 9 ここで は、 「磁場」とい う用語 を、連帯性 の強 いネ ッ トワー クが個人 を一定 の 行動 に向かわせ るような規範的 な力 を帯 びて い る状況 を指 し示 す もの として用 いてい る。 あえて この比 喩的 な用語 を使用す るのは、パ ー ソナル ネ ッ トワー ク 論 の多 く (と くに コ ミュニ テ ィ解放論的主張)が tネ ッ トワー ク内の紐帯 を個 人 に とっての利用可能 な資源 としてのみ捉 える傾向が強 い こ とに対 して、ネ ッ トワー クが個人 を規定す るとい う側面 に着 目 したボッ トの視点 を対置 させ、強 調す るためで ある。 さらに、同機利 とい う語 の応用可能性 の大 きさもある。実 際 には様 々 な規範 内容 をもった、多様 な ンベル の磁場 が成立可能である。伝統 的 な地縁・血 縁 の紐帯 ばか りでな く、「近代家族」的 な世帯内の紐帯、 さらには フ イッシャーのい う「下位文化 」 (職業的世界 を含む)も 磁場生成 の基盤 のひ と -92- つで ある。 フ ィッシャー による下位文化 の概念規定 は、 ここでい う「磁場」 が 含意 する ところ と重 なる部分 が大 きいが (Fischer,1982:195f)、 磁場現象 に着 目す る ことによって分析 の可能性 が広 が る。特定 の下位文化 へ の コ ミッ トメ ン トやメ ンバ ー としての個人 のアイデ ンテ ィティの強化 とい う側面 か ら個人 と下 位文化 の関連 を分析す る際 には、個人 のパ ー ソナル ネ ッ トワー ク (の 一部 )が 磁場 を生 じて い る とみる と理解 しやす い。 と くに、個人 のネ ッ トワー クを構成 す る複数 の領域間 (た とえば、職湯 ネ ッ トワー ク と家族内の紐帯 )の 影響関係 か ら、個人 のアイデンテ ィテ ィ構造や行動、心理的状態 を分析す る際 に有効 な 視点 を提供す る。 また、ネ ッ トワー ク としての下位文化 が、都市 において強化 され (磁場 を生 じ)、 特定 のアイデンテ ィテ ィをもった (磁 気 を帯 びた)個 人 を 都市 へ移動 させ る (引 きつ ける)と い う現象 に対 して も、磁場 としての ネ ッ ト ワークとい うアナ ロジーは有用であ ろ う (Fischer,1984:37参 照 )。 多義的 な 使用 の可能 な「磁場 」 とい う用語 を分析概念 として洗練 させ、応用す る こ とは 今後 の課題 で ある。 この点、家族 を情緒的 に強 く結 びついた凝集性 の高 い集団 ととらえる近代 1° 家族 モ デル の一般化 を前提 としているといってよいだろ う。 H 職場 ネ ッ トワー クの分析 は、 これ までの コ ミュニ テ ィ研 究 にお ける もうひ とつの死角 で ある。 と くに夫の職場 が、パ ー ソナル ネ ッ トワーク内 にどのよ う な位置 を占めるのか、 それは どの ような磁場 をな してい るのか とい う問 い は、 日本 にお ける家族・ コ ミュニ テ ィ研究 に とって重要 で あ り、比較社会学的 な分 析 のひ とつ の焦点 になると思われ る。 12 本稿執筆後 の研究展開 としては 、野沢 (1995a,1995b)を 参照。 文献 1971[1957].動 物物 απグ S,σ勿′ハ診サ 勿ο滋 : Rο ′ θ 島 乃 勿 s 例″ Lttηaα ′Rι ttκο %sあ ゎs tt Orれα ttα υ %乃 %,:う es.2nd edno New η Bott,E。 York:Free Press. 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