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平成26年度「職員による政策研究」報告書
グループNo17 研究テーマ
「 ワーク・ライフ・バランスを行政と企業が連携して推進し、
一人ひとりが豊かな生活を送るための社会づくりについて
~主に女性の視点から~ 」
研
究
<長野県職員>
人事課 (グループリーダー)
総務事務課
労働雇用課
人権・男女共同参画課
<民間企業、団体>
イーキュア株式会社 コンサルティング事業部
長野市市民協働サポートセンター
長野市市民協働サポートセンター
生
柿崎
茂
中瀬
古川
山崎
恭子
真弓
美和
山崎
廣田
北村
三千代
宜子
きよみ
政策研究報告書[ワークライフバランス]
目 次
第1章 はじめに
第2章 ありたい姿と現状
1 働く女性の状況
2 ワーク・ライフ・バランス推進の現状
第3章 調査と研究
1 聞き取り調査
2 課題の整理
第4章 課題の解決に向けた政策提案
第5章 まとめ
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
第1章 はじめに
少子高齢化による生産年齢人口の減少、仕事に対する価値観の多様化、仕事と育児の両立など、
一人ひとりが仕事をしながら豊かな生活を送るにあたり、直面する課題が多い時代となっている。
このような状況のなかで、仕事と家庭生活を両立しながら、男女がともに活躍し、持続的な成
長を達成する社会を実現するためには、社会全体の意識改革、一人ひとりの働き方の見直しなど、
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に向けた取組が必要となる。
なお、
「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワーク・ライフ・バラン
スの実現した社会について次のように定義している。
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
【定義】
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、
家庭や地域社会においても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方
が選択・実現できる社会」
具体的には、
①就労による経済的自立が可能な社会
②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会
ワーク・ライフ・バランスの推進について考えるとき、例えば、働く女性の約6割が第1子出
産後に離職するなど、女性は男性に比べて結婚・出産・介護といったライフイベントの影響を受
けやすく、多様な働き方・生き方の選択や実現が難しいという現状がある。
ワーク・ライフ・バランス推進の取組みには様々な視点があるが、私たちのグループでは、意
欲のある女性が企業や社会において自分の能力を生かし活躍できる環境を整えることがワーク・
ライフ・バランスの実現ために必要不可欠であると考えた。
そこで、私たちのグループは、女性が働き続けられる社会を目指す姿として、主に女性の視点
からワーク・ライフ・バランスについて研究を行った。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
第2章 ありたい姿と現状
1 働く女性の状況
(1)子育て女性の就業について
女性の就業率は、結婚・出産期に当たる年代にいったん低下し、育児が落ち着いたときに再び
上昇する、いわゆるM字カーブを描くと言われている。長野県の女性の就業率は、49.5%で全国3
位となっており、一見高いように見えるが、25~44歳の育児をしている女性の就業率に限ってみ
ると59.3%で、全国平均の52.4%は上回っているものの、低い状況となっている。
順位
都道府県
25~44歳の育児を
している女性の就業率
1
島根
74.8%
2
山形
72.5%
3
福井
72.1%
4
鳥取
71.8%
22
長野
59.3%
全国平均
52.4%
※2012年就業構造基本調査
順位
※平成26年度男女共同参画白書
都道府県
女性就業率
1
福井
50.2%
2
石川
50.0%
3
長野
49.5%
4
富山
49.1%
5
静岡・鳥取
48.9%
全国平均
44.7%
※2010年国勢調査
女性の就業継続に関しては、育児休業を取得し、出産後も働く女性は徐々に増加しているもの
の、未だ約6割の女性が出産を機に離職しており、妊娠・出産前後に退職した理由として、勤務
時間があいそうなかった、職場に仕事と家庭の両立を支援する雰囲気がなかったなどといった理
由が挙げられている。
3
政策研究報告書[ワークライフバランス]
(2) 女性の就業希望
総務省の労働力調査(平成25年)によると、女性の非労働力人口2,931万人のうち315万人が就
労を希望している。
しかし、就業を希望する末子年齢3歳未満の既婚の女性のうち、75.6%が「家事・育児や通学
のため仕事が続けられそうにない」という理由から求職をしておらず、小さな子どもを持つ女性
の多くが、再就職はしたいもの家事・育児負担から続けられそうにないとの見込みから、再就職
を困難に感じていることがわかる。
(3) 女性の就業と出産
国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国
調査(夫婦調査)
」
(2011年)によると、夫婦にたずねた理想的な子どもの数(平均理想子ども数)
は、調査開始以降最も低い2.42人であり、夫婦が実際に持つつもりの子どもの数(平均予定子ど
も数)は2.07人となっている。
また、理想の子ども数を持たない理由としては、
「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が
最も多く、60.4%となっている。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
OECD 加盟24か国における女性労働力率と、合計特殊出生率の関係を見ると、両者の間に正の相
関があり、女性の社会進出が進んでいる国及び地域ほど、合計特殊出生率も高い傾向にあるとの
指摘もある。女性の就業は、所得要因も背景に、少子化対策としても必要であると考えられる。
2 ワーク・ライフ・バランス推進の現状
国及び県、市町村等では、ワーク・ライフ・バランスの推進のため取組みを実施しており、そ
の取組内容は大きく分けて5つの政策・施策に分類される。
第1に、企業・労働者を対象とした「普及啓発」であり、セミナーやシンポジウムの開催やパ
ンフレット、ホームページ等により啓発、また、企業訪問、専門家の派遣等より制度の普及・促
進を図っている。
第2に、企業を対象とした「認定制度・登録制度・表彰」などを通じて、従業員が仕事と子育
てを両立できるような積極的な取組を行う企業に対する社会的評価やイメージアップを図ってい
る。
第3に、2つ目と関連して企業を対象とした助成金や優遇措置といった「経済的支援」であり、
企業におけるワーク・ライフ・バランスの積極的な取組を促すためのインセンティブを付与して
いる。
第4に、労働者に対する「就業支援」であり、特に働く女性の約6割が出産後に子育てを理由
に離職するという現状を踏まえ、子育て女性の再就職支援を中心とした取組が実施されている。
第5に、労働者に対する「子育て支援」であり、病児・病後児保育やファミリー・サポートセ
ンター、放課後児童クラブ等、子育てをしながら働く世帯を支援するための施策が実施されてい
る。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
ワーク・ライフ・バランスに関連する施策の一覧
<企業・労働者向け>
普
及
啓
発
・
情
報
提
供
・次世代育成支援推進法、育児介護休業法などのPR(パンフレット、HPほか)
【国・県】
・労働法規・両立支援制度等の団体会員等の周知【経済・労働団体ほか】
・一般事業主行動計画の策定・届出の促進【国・経営者協会】
・専門家の派遣、推進員の企業訪問【国、県】
・先進的な取組を行う企業の事例を周知【国・県】
・セミナーやシンポジウムの開催【国・県・市町村・団体ほか】
<企業向け>
認
定
・
登
録
・
表
彰
・一般事業主行動計画の届出企業のうち一定の基準を満たした企業を子育てサポート企業
(くるみん認定企業)として認定【国】
・従業員が仕事と子育てが両立できるような働きやすい職場環境づくりのための取組を宣
言した企業を社員の子育て応援宣言企業として登録【県】
・法定以上の制度整備や取得の実績があるなど仕事と子育ての両立の模範となる企業に対
する表彰【国・県】
<企業向け>
経
済
的
支
援
・育児休業・短時間勤務の利用があった中小企業等を対象とした助成金【国】
・融資の金利優遇(ながの仕事と子育て両立支援企業ローン)【県】
・公共調達における入札参加資格における加点付与【県】
・くるみん認定企業に対する税制優遇【国】
<労働者向け>
就
業
支
援
・厚生労働省が指定する資格を取得するための教育訓練講座の受講費用を支援【国】
・子育て女性の就職を支援するためハローワーク・マザーズコーナーを設置【国】
・子育て女性の就業相談に対応する相談員を配置【県】
・子育て女性の就職支援セミナーを開催【県・企業】
<労働者向け>
子
育
て
支
援
・子育て家庭に対する買い物等における割引や各種サービスを実施(ながの子育て家庭優
待パスポート)
【県】
・子どもの預かり、送迎など地域における子育てをサポート(ファミリーサポートセンタ
ー、放課後児童クラブ)
【国・県・市町村・NPO】
・病中、病後の子どもの預かり(病児・病後児保育)【国・県・市町村】
上記一覧表のとおり、国及び県、市町村、団体等において多種多様なワーク・ライフ・バラン
ス推進のための取組を実施してきたものの、現在まで子育て中の女性の就業率や労働者の長時間
労働などの問題は大きく改善されていない。その要因として現状の政策に次のような課題がある
のではないかという意見が出された。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
<現在の施策における課題>
① 法改正等で支援制度が整備されるも、職場において実際の活用が進んでいない
② 支援を必要としている人に対する周知が十分でなく、国・県等の政策が十分に行き届いて
いない。
③ 各団体・行政機関で同様の取組み行われているが、内容に重複したものもある(国や県、
経済団体、NPO等の連携が不足している)
。
以上のワーク・ライフ・バランス推進の現状を踏まえ、私たちのグループでは「ありたい姿(理
想)
」を以下のとおりとして、そのための具体的な政策・施策を検討することとした。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
第3章 調査と研究
1
聞き取り調査
(1)調査の流れ
メンバーで集まって議論し、テーマアドバイザーとの意見交換をすると同時に、子育て中の女
性、民間団体、行政への聞き取りや、イベント、セミナー等に参加して、ニーズ(理想の姿と現
状のギャップ)を探った。
主な聞き取り先や参加したイベント等は次のとおりである。
① 子育て中の女性への聞き取り(約50人)
こどものくに(岡谷市)こども広場じゃん・けん・ぽん(長野市)
② 民間団体への聞き取り
NPO法人子育て応援団ぱれっと、モナミ、ココノチカラ、マムズスタイル、子育てネット、うむ
うむネットなど
③ 行政への聞き取り
ハローワーク、マザーズコーナー
④ 各種イベントへの参加
子育て同盟サミット(5月30日)
、マムズスタイル企画の勉強会(6月24日)、ワーキングマザーサ
ロンへの参加(8月30日)
、女性起業サミット(7月12日)、協働創出塾「女性の働きやすい社会」
(8・
9月)
(2)調査結果
(詳細は別添資料「ヒアリングシート」を参照)
<子育て中の女性からの聞き取り>
・出産、育児で離職したが、今後再就職を考えたときに本当に仕事が見つかるのか不安。
・自分の親の世代からは妻は働かなくていいと言われる。
・祖父母など家族からのサポートがなければ子育て中の女性が仕事をすることは難しい。
・子育て中の女性は時間に制限があり、経営者からしたら使いづらいと思われても仕方ない。
・待機児童ゼロとされているが、子育てをしながら働くためには、自宅か会社の近くの保育園
で子供を預けることができる対応をして欲しい。
<企業・団体等からの聞き取り>
・仕事を辞めた後3~5年のブランクがある場合、復帰に際してPCの操作やコミュニケーショ
ンの取り方などに不安がある。
・父親が子育てに関わるには、勤務先(企業)への働きかけも大切。
・いきなりフルタイムで働くのではなく、スキルアップしながら次のステップを進むことを目
指すことも選択肢としてあった方がよい。
・制度を新たに作るのではなく、今ある制度等をもっとPR・使いやすく工夫して欲しい。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
・中小企業が多いので、助成金だけではなく、子育て女性の受け入れ体制を整えるノウハウの
支援も必要。
・企業は即戦力を求めていて、残業や土日勤務が可能な人という条件が主であり、育児中の人
敬遠されている傾向がある。
・子育て女性に対する企業の理解、意識改革が重要であり、
「子育てはキャリア」という認識を
企業に持ってもらう必要がある。
2 課題の整理
ヒアリング調査の結果、女性が出産・子育てを経て、働き続けていくうえでの不安や悩みは多
岐にわたっていたものの、大別すると以下の4点に整理され、これらの不安や悩みを総合的にサ
ポートすることが必要であると考えた。
①社会復帰への不安
仕事と育児、家事との両立ができるのかどうか、周りに相談できる環境がない、また支援策
や団体などの情報が不十分であること、身近なロールモデルの不在等がわかった。
②周りとの価値観の相違
育児家事は女性の役割である、嫁は家庭にいるべき、という固定観念が根強く存在している。
③ 企業測の理解
長時間労働が前提であり、時間的制約がある社員は敬遠される傾向が高い。女性は結婚、出
産等により離職して当然という暗黙的な前提があり、企業にとって重要な人材、戦力として認
知されていない。また両立制度があっても積極的にそれらを活用しづらい風土がある。
④ 夫の育児参加
家庭内において、夫は長時間労働により家庭内の役割を担うことが困難であるという認識が
多数。家事関連時間の多くを妻が担っているという現状が改めて浮き彫りとなった。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
第4章 課題の解決に向けた政策提案
文献による研究及びヒアリング調査から見えてきた課題を解決するため、さまざまな方策を検
討したが、国、県、市町村、団体等において既に取組みが行われているものも多いことが分かっ
た。例えば、ワーク・ライフ・バランスの推進に関連して、地域において働きたい女性と企業の
マッチングを行ったり、企業で男性向けの子育て支援講座を実施するなどの活動を行っている専
門的知識を持った団体等も数多く存在している。
「地域」でワーク・ライフ・バランスに関連する活動を行っている団体(例)
松本市・塩尻市を中心に女性の社会的な活躍の場を増やす
ため、仕事復帰・再就職を支援する「プレ・キャリアプログラ
ム」や子育て女性等を対象とした企業説明会「就活採用応援
(ココノチカラ)
お見合いフェスタ」を開催している。
長野市の「子育て」と「働くこと(起業、両立、自分磨き)を楽し
む子育て女性ためのコミュニティ。豊かな子育て・輝くママの
仕事(活動・趣味)をテーマにした各種勉強会の開催や仕事
と子育てをテーマにしたフリーペーパーの発行などを行って
(マムズスタイル)
いる。
ライフステージに合わせて働きたい女性のためのコミュニテ
ィとして、会員を対象としたセミナーや講習会等を開催。女性
のキャリア支援や仕事の紹介等の実施。
NPO 法人 ながのこどもの城
いきいきプロジェクト
長野市のこども広場「じゃん・けん・ぽん」の運営やファミリ
ー・サポート・センターの設置、子育て女性向けの各種講座・
イベントの開催などを行っている。
上田市において企業と連携した男性向けの子育て支援講座
NPO 法人子育て応援団ぱれっと
の開催や訪問型の子育て支援サービスを実施している団
体。子連れで学んで働ける事業所の開設も検討中
飯田市において子育て・高齢者サロンの運営、家事代行サ
ービス等を実施している団体。地域で病児保育を運営する
(ラブリーズ)
「ママジョブネット構想」を検討中。
東北信地域を中心とした子育て世帯向けの情報を掲載した
フリーペーパー「モナミ」を発行。
(モナミ)
編集スタッフに子育て中の女性を活用している。
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
また、ヒアリング調査などから個々の施策や取組み内容に重複しているものや、連携が取れて
いないものなどがあること、また、子育て中の女性に対して支援策等(再就職支援セミナー等)
の情報が十分に行き届いていないということが判明した。
そこで私たちのグループでは、ワーク・ライフ・バランスを推進する政策を検討するには、行
政と民間団体等の連携や情報の共有が必要であり、まずは現状の政策・取組をより効果的に発信
することが急務であると考えた。
これらの課題の解決策として、長野ワークライブバランス推進ネットの設立と、子育てから就
職までを支援するポータルサイトの開設の2点を提案したい。
(1) 長野ワークライフバランス推進ネットの設立
長野ワークライフバランスネットとは、提案行政が政策形成の段階から、専門的知識を持った
団体、企業と協力して、現場ニーズに即した政策を作り上げていくための組織である。この推進
ネットでは行政と団体・企業が本県のワーク・ライフ・バランスの推進という共通の目的の下、
集まってアイデアを出し合い、個々の取組の情報を共有するとともに、例えば、
「効果的な情報発
信の方法」など団体・企業と行政が連携した政策を検討することをイメージしている。この推進
ネットへの参画を団体・企業自らの活動の一助にしてもらえることを目的としている。
なお、推進ネットは本県の地域特性から県下4ブロックごとに分けて活動し、組織の運営方法
については、設立当初は県に事務局を置くものの、将来的には民間主導で行うことを想定して設
立したい。県及び市町村等行政はこの組織の活動を側面的に支援することになるが、県としても
この推進ネットとの連携をスムーズに行うためワーク・ライフ・バランスを担当する部局横断的
な窓口を設置する必要があると考える。
長野ワーク・ライフ・バランス推進ネットの概念図
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
(2) 子育てから就職までを支援するポータルサイトの構築
当サイトは、行政や団体・企業が個々に行っている取組を全て網羅し、就職、結婚、出産、子
育、再就職まで、必要な情報を、必要としている人に届けるためのツールであり、設立・運営に
当たって以下の3点に留意する必要がある。
第1に、利用者への認知が重要である。サイトは利用者側で自ら見るという意思が必要となり、
最初は、コンテンツを充実させること、広報に費用をかける必要があること、引き続きコンテン
ツを更新するための維持費が必要となるためである。
第2に、運営方法について、サイトを運営する主体の充実が必要である、サイト自体はデジタ
ルであるが、コンテンツについてはアナログなため、ニーズに合った情報を集め編集し掲載する
という作業が必要となる。この役割を前述の長野ワークライフバランス推進ネットが一時的に担
い、最終的には広島県の子ども未来財団のような財団法人を設立し、運営を移行していくことを
目指している。
第3に、国、全ての市町村、団体、企業等との関係をつくり、情報を一元化することである。
県内の同一市内でも個々の団体等が同じような子育て期の女性向けのセミナーを同じような時期
に開催しているが、参加者にとっては個別に調べる必要があり労力を要する。
行政として様々な施策がうちだされているが、それぞれ縦割りで「横串」が通っていないとい
うことを解消すれば、より効果的に支援をしていくことができると考える。支援にはきめ細かい
ニーズに応じた多くの選択肢が必要であるが、すぐに対応することは難しい。まずは支援策や各
機関、団体の横の繋がりを結びつけることで、支援を強化していくことが重要である。
ポータルサイト概念図
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政策研究報告書[ワークライフバランス]
第5章
まとめ
我々のグループが提案したポータルサイトの費用は初期投資を2千万円程度、年間の必要経費
を4百万円程度と見込んでいるが、女性が就業を継続したことにより得られる効果は女性個人と
社会全体の双方にメリットがある。例えば内閣府「国民生活白書」
(平成17年)によれば,就業を
継続した場合の生涯所得が大卒平均で2億7,645万円になるのに対し,出産退職後パート・アルバ
イトとして子どもが6歳で再就職した場合の生涯所得は4,913万円となり,逸失率は82.2%にもな
ると推計されており、賃金が低下してく中で世帯収入の維持・向上につながると考えられる。
また、IMFのレポートによると、日本が女性による労働参加をG7(日本とイタリアを除く)
のレベルに引き上げられれば、一人当たりのGDP は、ベースシナリオに比べ恒久的に約4%増とな
ると推計されている(IMF2012)
。
女性の労働参加により得られる効果は女性だけでなく、人口減少社会を迎える中で、人材確保
や経済成長を維持するといった視点から男性や企業にとってもメリットであると考えられる。
また、ライフスタイルに応じた多様な働き方・生き方(起業やテレワーク等)ができる環境が
整備されダイバーシティが実現されれば、県民誰もが持てる能力を最大限に活かすことのできる
社会を目指す長野県の大きな強みとなる。
今後益々取組が行われ、本県が全国有数のワーク・ライフ・バランス推進県となるとともに、
社会全体がより良い方向に進んでいくことを期待している。
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