III. 調査結果の概要 本事業で検討を行った2つの規格等について、Ⅱで概要を記載した調査の結果を元に検 討を行った。以下にその調査結果の概要を示す。 1. 消費者への食品事業者の商品情報の提供方法に係る規格等の原案の 調査検討 1.1 食品事業者による商品情報の提供の実態及び消費者ニーズに関する調査 (1) 食品事業者に対する調査 ① 事業者アンケート調査 a. 提供している情報の内容と手段 全体の傾向としては、「容器包装への表示」、「自社の WEB サイト」及び「電話・ メールによる問い合わせ(お客様相談窓口等)」が情報提供手段として多く用いら れている。一方、自社の携帯サイトについては、全業態平均で 10%を超える事業 者が提供している項目は「商品名」のみであることから、情報提供の媒体として 重視されていないことが分かる。(p.59 表 6) 「容器包装への表示」においては、 「消費期限・賞味期限」 、 「原材料名」、 「保存方 法(温度等)」 、 「商品名」及び「名称」について、それぞれ7割以上の事業者が提 供している。(p.64 表 11) 「自社の WEB サイト」においては、 「商品の写真」、 「商品名」、 「名称」、 「内容量」、 「販売者名・住所」、 「問合わせ先(お客様相談室等)」及び「加工・製造者名・住 所」について、それぞれ 3 割以上の事業者が提供している。(p.64 表 11) 「電話・メールによる問い合わせ(お客様相談窓口等)」においては、35 項目中 23 項目について、それぞれ 2 割以上の事業者が提供しており、他の手段と比較 して幅広い項目について情報提供が行われている。(p.64 表 11) 管理しているが情報提供していない項目としては、 「流通経路」及び「製造年月日」 の割合が 3~4 割と比較的多かった。(p.59 表 6) 業態別に見た場合、小売業及び通販において全体として情報提供の実施割合が高 く、特に「自社の WEB サイト」、 「自社の携帯サイト」及び「店員による商品説 明」による情報提供が相対的に多い。なお、本設問については業態別に回答をし ていないため、店舗での小売と通信販売を兼業する事業者が多いことから、通販 事業者のカテゴリにおいても「小売店頭での商品の近くに置かれた掲示・POP 広 告」等といった回答を得ている。(p.62 表 9、p.63 表 10) 12 商品情報の提供手段別に見た場合、 「製品の原産国」、 「主な原材料の原産地」、 「返 品の可否条件」及び「流通経路」等について、 「電話・メールによる問い合わせ(お 客様相談窓口等) 」により情報提供されている割合が、 (項目間の順位で見た場合) 他の手段と比較して高い。(p.64 表 11) b. 重視している商品情報の提供手段 事業者が商品情報の提供手段として特に重視しているものは「容器包装への表示」 である。次いで「自社の WEB サイト」及び「電話・メールによる問い合わせ(お 客様相談窓口等) 」を約 4 割の事業者が重視していると回答した。 「自社の携帯サ イト」はあまり重視されていない。 (p.65 図 6) 業態別に見た場合、通販事業者は「自社の WEB サイト」を重視する割合が高く、 小売事業者は「小売店頭での商品の近くに置かれたポスター、パンフレット等」 及び「小売店員による商品説明」を重視している。(p.65 図 6) c. 消費者からの主な問い合わせ内容 消費者からの主な問い合わせの内容としては、 「原料原産地の情報についてより詳 しく知りたい」が最も多く約 4 割であった。次いで、 「アレルギー等健康被害に関 する情報や農薬等の安全性について詳しく知りたい」及び「カロリーや塩分など 健康増進上の特定の情報について詳しく知りたい」等の問い合わせが多い。 (p.69 図 8) 業態別に見た場合、通販事業者は、他の業態の事業者に比べ、ほとんどの項目に ついて消費者からの問い合わせを受けることが多い。(p.69 図 8) ② 事業者ヒアリング調査 a. 提供している情報の内容・提供手段 小売店舗及びインストアの製造業等は、若年層の消費者は食品に対する知識が不 十分であることに応じて、以前は常識であった調理法及びレシピの提案並びに食 育に係る情報等も情報提供するといった配慮をしている。 インターネットモールにおいては、インターネットモール運営事業者によって、 出店者に対し異なる情報項目の提供が求められる。一方、商品の容器包装に表示 された情報をインターネットモールにおいて提供するかは、出店事業者の判断に 委ねられている場合がある。 カタログ通販においては、記載内容が多くなりすぎる傾向があり、消費者からも 「情報が多すぎて分かりにくい」といった指摘がある。このため、記載内容の絞 り込みが課題となっている。 製造業・流通業において、栄養成分(塩分) 、アレルギー(推奨 18 品目)及びア レルギー原因食品のコンタミネーション(意図せざる混入)について、取引先に 情報提供を求めたり、消費者から情報提供を求められたりする機会が増えており、 13 情報提供項目に対する要求は増える傾向にある。 法人間の取引においても、JAS 法等により表示が義務付けられた事項以外の情報 について、各社ごとに定めた規格書や E ベース等の商品規格書システムを用いた 提供及び共有がなされている。 b. 商品情報の提供のコスト・制約 小売業では、消費者からのニーズに応じ、加工助剤の使用やアレルギー原因食品 のコンタミネーション(意図せざる混入)の可能性及びアレルギー原因食品の使 用等の情報を取引先(製造業者・卸売業者等)からできる限り入手し、提供すべ きと考えられる。しかし、小売業の取引先は中小企業であることも多く、コスト の問題から対応されない等課題も多い。 インターネットモールでは、原則的に出店事業者の判断に委ねられており、法律 に反しない以上、それよりも厳しい運用を求めることは難しい。また、期限表示 等のネットではかえって情報提供が難しい項目については、一部の事業者が自ら の努力で情報提供を行なっている。仮にインターネットモール運営事業者が出店 事業者に対し、消費・賞味期限の提供を推奨又は依頼した場合、多くの事業者に とって在庫管理上等の点から負担が大きい。 カタログ通販では、紙面に制約があるため重要な情報を商品ページに掲載し、詳 細な原材料等については巻末に小さい文字で掲載するなどの工夫を行なっている。 製造業・流通業は、商品の容器包装の面積は限られていることから、容器包装に 記載された情報以外の情報を商品の規格書によって取引先に伝達している。しか し、事業者ごとに商品の規格書の様式等が異なるため、取引上の大きな手間を生 じている。 製造業は、消費者のニーズに基づく情報提供が必要であると認識している。しか し、小売店等の過剰な要求に応じて情報提供を行うことによって自らが培ったノ ウハウの流出を危惧している。その他、材料メーカーが情報を開示しないために、 情報提供したくてもできない場合もある。 生鮮食品の卸売業は、取り扱っている生鮮食品の栄養成分等の情報を提供したい と考えている。しかし、実測データを保有していても、栄養成分は商品ごとに異 なるために提供していない場合も多い。 c. 消費者からの問合せ内容・手段 販売店や価格といった一般的な問合せ以外では、カロリーや他の栄養成分及びそ れぞれの栄養成分の機能、アレルギー食品・添加物・遺伝子組換え食品の使用の 有無、アレルギー原因食品の意図せざる混入、残留農薬の検査結果及び解凍後の 消費期限等に関する問い合わせもある。 産地偽装の疑義や、異物混入による健康被害の疑い等のクレーム事案について、 水産物への DNA 検査や成分分析による異物混入の検証を求める消費者が少なか 14 らず存在する。 インターネットモールにおいては、運営者が個別店舗に対する問合せに回答でき ないため、原則として各店舗に問合せを回送している。 (2) 消費者に対する調査 ① 消費者アンケート調査 a. 食品購入全般 ア. 食品購入の傾向 回答者の約半数は、ほぼ毎日、もしくは週に 4~5 回程度、食品を購入・調理し ていると回答した。一方、月に 1 回以下、もしくは全くしないという回答は約 2 割を占めた。(p.90 図 25) イ. 食品購入の際に入手している情報の内容と手段 選択肢として挙げた 36 個の加工食品の商品情報の提供手段について、 「容器包装 への表示」を選んだ割合が 9 割以上を占めたのは、高いものから順に「消費期限・ 賞味期限」、「製造年月日」、「内容量」、「保存方法」、「原材料名」、「商品名」、「栄 養成分」、 「製品の原産国」及び「名称」であった。次いで、 「開封後の取扱い方法」、 「主な原材料の原産地」、「アレルギー物質」、「開封後にいつまで食べられるか」、 「販売者名・住所」、 「遺伝子組換え食品」及び「問い合わせ先」が8割を超えた。 (p.95 表 14) 生鮮食品では、選択肢として挙げた 23 個の生鮮食品の商品情報の提供手段につ いて、 「容器包装への表示」を選んだ割合が 9 割以上を占めたのは、高いものから 順に「消費期限・賞味期限」、「内容量」、「原産国・原産地」、「商品名」、「保存方 法」及び「名称」であった。次いで、 「価格」、 「栄養成分」 、 「養殖/天然(水産物)」 及び「遺伝子組換え食品」が8割を超えた。(p.98 表 15) b. 通信販売での食品購入 ア. 食品購入の傾向(通信販売) 通信販売の利用経験が少なくとも 1 回以上あるとした回答者のうち、通信販売で 食品を購入した経験があると回答したのは約 8 割であった。(p.100 図 30 ) 通信販売で食品を購入した経験があるとした回答者が利用したことのある具体的 な通信販売サービスは、 「インターネットモール」が最も多く約 8 割を占め、次い で「健康食品を主に販売している通信販売」、「メーカー直販による通信販売」及 び「通信販売専門の事業者」が約 4 割を占めた。(p.101 図 31) イ. 食品購入の際に重視している情報(通信販売) 通信販売で食品を購入した経験があり、かつ、その主な用途が「自分や家族が日 常的に食べる」とした回答者が自分や家族用に加工食品及び生鮮食品を通信販売 15 で購入する場合に重視する情報としては、 「価格」という回答が特に多く約 9 割、 次いで「消費期限・賞味期限」及び「内容量」が多かった。 (p.105 図 35) ② 消費者フォーカスグループインタビュー a. 小売店での食品購入の際に利用している情報手段・内容 共通して見ている情報は、価格、消費・賞味期限、産地及び添加物等の限られた 情報であり、そのほかの情報の利用については、回答者や購入する商品によって も異なる。 利用している情報提供手段は、容器包装への表示が主で、WEB や問い合わせ等の 利用は日常的には行われていない。 b. 通信販売で食品を購入する際の商品情報の入手 通信販売では容器包装が確認できず、小売店での購入に比べて入手できる情報は 少ないが、信用できる事業者(大手ネットスーパー等)からなじみのある商品を 買うか、特売品やユニークな新製品等を「試しに」購入しているため、情報の量 又は質を問題視している傾向は見られなかった。 1.2 規格等の原案の検討及びその内容の妥当性の調査 検討会で規格等の原案を検討するとともに、その内容の妥当性に関して調査を行った。 検討会での主な発言の概要を以下に示す。 (1) 第一回検討会 ① 消費者へ提供されるべき情報について 消費者にとっては、商品の容器包装への表示だけが重要なのではない。消費者の 誤解により、事業者が不利益を被ることもあるので、容器包装への表示だけでな く様々な媒体で情報を提供し、消費者に現状を知らせるべきである。 加工食品のコロッケやハンバーグなどでは、調理方法等の食べ方に関する情報も 任意のものとして必要とされている。 販売ルート別に必要な情報は異なる。 ② 規格等に盛り込むべき情報について 食の情報提供に関する事業者の取組姿勢を伝えることも重要と考えている。事業 者と消費者との間に信頼関係があれば、商品に多くの情報を表示する必要はなく なるはずである。事業者は、まず、自社の取組姿勢を伝えることによって消費者 との信頼関係をある程度築いた上で、商品についての情報提供を行うことが重要 である。 義務的な表示は法令に基づく制度で決め、任意の情報提供は事業者と消費者の信 16 頼関係に基づいて行うのがよい。必要とする消費者が非常に少ない情報は、義務 的な提供をする必要はなく、問合せを受けた際に対応すればよい。必要とする消 費者が多い、又はアレルギー原因食品の使用に係る情報等の生命に関わるような 情報は提供すべき。世の中から求められる情報は移り変わりがあり、制度ができ たときには、既に必要とされない場合もあるので、義務付ける情報については慎 重に考えるべきである。 根拠が曖昧な情報と事実に基づく情報は分けて考えるべきである。 「塩分控えめ」 は使い方の根拠が定められているが、事実に基づく情報については、根拠を持っ て情報提供ができればよい。 (2) 第二回検討会 「開封後の賞味期限」などは、事業者にとっては情報提供が難しい。しかし、消 費者アンケートではニーズが高い結果になっており、提供するのは良いことであ る。 「衛生的な管理の方法」や「適切な保存の仕方」等のように、消費者から強い要 望がないかもしれないが、しっかり消費者に伝えることが重要な情報もある。 「必須項目」と「努力項目」という形で規格等を分けるのは、実際には線引きは 非常に難しいのではないか。項目を「基本」や「応用」に分けることも考えられ る。 マーケティング情報については、 「誤認を招かない配慮」等を前提として、規格等 に含めることも考えられる。 (3) 第三回検討会 ① 店頭販売と通信販売を分けて考えることについて 店頭販売と通信販売とを分けることに異論はない。 通信販売では店頭販売ほど情報が必要とされていないと言い切ることはできない。 小売店の店頭であれば商品を手にとって見られるが、通販では購入の際に容器包 装への表示を見て購入できないという問題意識から、本議論がスタートしている。 店頭販売と通信販売を分けて議論し、結果として両者が同じということであれば、 規格等を統一すればよいのではないか。 たとえば、まず店頭販売と通信販売を分け、通信販売については利用が多いと思 われるインターネット通販を中心に考える等、対象を絞ってから検討することが 効率的なのではないか。 ② 通信販売について WEB ではより多くの情報が提供されるべきではないか。商品の容器包装に表示さ れている情報は提供すべき。WEB は自由度が高いので、ニーズが無い情報であっ ても全て提供することは可能でないか。 17 ほとんどのインターネット通販事業者は、商品の情報提供に様式を使っていると 思う。このため、新たに情報を提供する場合は、様式の変更等のコストがかかる。 また、分かりやすい様式を工夫して作成するとさらにコストがかかる。カタログ 等紙媒体の場合は、スペースの問題もありコストに響く。 事業者が取扱う全ての商品に規格等に基づく情報提供を行うかどうかによっても コストは違う。例えば、5 千点の商品を販売する事業者が、取扱う商品全てにつ いて規格等にに基づく情報提供するのは大変な作業である。一方、限られた商品 にのみ規格等に基づく情報提供するのは対応できる。 消費者が注目すべき情報を分かりやすくするため、安全に関する情報とその他の 商品選択の材料になる情報は分けて提供するのがよい。 実際は様々な形態の通信販売がある。通信販売に係るルールを作るのであれば、 どのような形態があるのか実態を調べるべき。たとえば、携帯電話サイトを通じ た通信販売では、多くの情報の掲載を義務にすると(商売上の)制約になる場合 もある。 表示に色分けをすればわかりやすいという指摘が消費者グループインタビューで 出されているが、商品によっては既に赤を基調としたデザインパッケージの商品 もあり、例えば危険=赤ということを統一的に決めることができるかは検討され るべき。また、缶では実際に使われているのは 4 色程度である。色を増やすとコ ストがかかる。 ③ 店頭販売と通信販売の両方について 環境情報は不要という意見もあったが、情報提供は、消費者にとって有益かどう かだけで行うのではなく、消費者が商品選択を通じて社会のあり方を変えていこ うという考えもある。環境情報の提供は必要と考える。消費者からのニーズはな くとも、責任ある消費者の行動を促すために重要という考えである。この規格等 の目的と異なるなら、入れなくてもよいが、単に消費者からのニーズがないから 入れないというものではない。 これまでの検討は、限られた調査に基づくものであることに注意が必要である。 多方面の事業者を対象にヒアリングすれば、更にいろいろな意見が出てくるかも しれない。本検討における資料についても、調査した範囲内のものであることを 前提として明示すべき。 アレルギー表示については、既にかなりの原因食品が義務表示の対象になってい る。最近のアレルギー原因食品が理由での回収の事例は、原材料に想定していな かった小麦や卵等が含まれていたケース等である。原因食品ごとのアレルギーの 患者数、影響の大きさなど詳細調査が必要である。 18 2. 食品事業者が提供する商品情報の正確性を確保する体制の規格等の 原案の調査検討 2.1 食品事業者による商品情報の正確性を確保する体制の実態に関する調査 (1) 事業者アンケート調査 ① 商品情報の正確性確保のための取組 商品情報の正確性を確保するために社内で実施している取組として、 「商品情報の 根拠を一定期間保管している」が最も多く約 7 割の事業者が行っていた。次いで、 「サンプル検査を行っている」が多く、約6割の事業者が取り組んでいる。(p.73 図 10) ロット管理については、 「仕入れ先と出荷先を商品ロット情報と照合できるように している」及び「商品の製造・加工・保管などを商品ロット情報と照合できるよ うにしている」それぞれの取組を約5割程度の事業者が行っていると回答した。 (p.73 図 10) ② 取引先や社内における監査 取り扱っている商品の情報の正確性を確保するため等の適正な取引のための監査 (商品情報の正確性確保以外の目的で監査している監査も含む)については、そ れぞれ約半数の事業者が「社内において内部監査を実施している」及び「取引先 から監査を受けている」と回答した。一方で、約 2 割の事業者が監査は実施して いないと回答した。(p.74 図 11) (2) 事業者ヒアリング調査 ① 商品の企画・開発 社内の品質管理部等が、商品の容器包装への表示について十分な判断が出来ない 場合には、所管の保健所や農政事務所等に確認を行う。 取引先から栄養成分等のデータを求められた場合には、出来る限り社内又は外部 検査機関に委託して成分分析を実施する。 ② 商品の製造(委託含む) 製造委託先が海外である場合には、コミュニケーションのギャップによる事故を 防止するために、ラベルや包材等の印刷物等の製作時には複数回の確認を行う。 ケース単位、時間単位、最低でも日単位でのロット管理を行い、ロット情報が原 材料から出荷単位まで関連付けられるように生産プロセスを組み立てる。 自社で製造を行う場合は、製造ラインの衛生管理や、品質管理等に関する内部監 19 査を実施する。また、取引先から監査を申し入れられた場合にはこれに応じる。 取引先に対する監査は出来る限り定期的に実施し、伝票管理、生産管理及び衛生 管理等の状況を確認する。 ③ 商品の出荷・納品 商品の出荷・納品時にサンプリングによる検品を実施する。特に輸出入を伴う場 合には荷崩れや保存状態等について確認をする。 小売業者及び流通事業者間の出荷・納品時には伝票により産地情報、ロット管理 番号等の情報伝達が行われている。また小売店においては伝票以外の外装(ダン ボール等)に情報がある場合には販売終了まで保管を行う。 ④ 媒体の製作 新商品の発売時や、ロットの切り替えに伴い容器包装が変わる際には、商品内容 が同じであっても商品情報の更新が必要か確認を行う。 カタログや商品規格書等の項目の十分性を確認する部署又は担当を設ける。 カタログや商品規格書等の最終原稿は、複数の部署又は担当者による確認を行う。 通販事業で提供した商品情報に誤りや変更があった場合、WEB サイトに提供した 情報であれば即時訂正を行う。軽微な修正である場合には、配送時にお詫びと訂 正の通知を行う。 通販事業では、情報過多により消費者が商品選択の困難となる場合があるため、 提供する情報の優先順位を設定した上で、提供方法を配慮する。 ⑤ 商品に関する問合せ・事故発生時の対応 取扱う商品に事故が発生した場合、ロット情報に基づく原因究明が可能な体制を 確保する。 誤植等のケアレスミスは必ず発生するため、事故が発生した場合の対応方法につ いて予めルールを設ける。 インターネットモール運営事業者においては、商品情報に関係する電子データは 時限的バックアップを行い、取引先もしくは消費者からの問合せに対応できる準 備をしている。 小売事業者や流通事業者においては伝票等の帳票は、一定期間(5年等)保管さ れており、製造業者においても商品の規格書が保管されている。 商品販売時の問合せへの対応は、商品裏面の情報や小売店が保有する商品規格書 の情報に基づき対応する他、必要に応じて商品開発や委託製造先に確認を求め、 出来る限り消費者の問い合わせに対応する。 20 2.2 規格等の原案の検討及びその内容の妥当性の調査 (1) 第一回検討会 提供した情報の正確性を担保するためには、フードチェーンに関わっている各社 がそれぞれで情報を管理することが前提でないか。 自社で製品を製造していない販売業者がどのように正確な情報を得るかは課題で ある。 しっかりと取り組んでいる事業者が消費者から評価される仕組みが必要と考える。 (2) 第二回検討会 (3) 第三回検討会 第二回、第三回ともに、本項目については特に議論は行われなかった。 21 3. 両規格等に共通する調査検討 3.1 事業者に対する調査 (1) 事業者アンケート調査 ① 商品情報の提供におけるコスト・手段 消費者への情報提供を行う際に、約半数の事業者が、最もコストや手間が大きい 項目は「成分等の科学的分析」と回答した。次いで、 「取引先との提供する情報に ついての確認・調整」も約4割の事業者が回答した。(p.78 図 13) 「提供した情報に関する消費者からの問合わせへの対応」について、コストや手 間が大きいと考えている事業者は 1 割程度であった。(p.78 図 13) ② 規格・ガイドライン等策定の主体 消費者に対する情報提供の手段・内容・方法等について、規格やガイドライン等 必要ではないと回答した事業者は約3%であった。また、規格やガイドライン等 を定める主体は、国及び業界団体という回答が多く、それぞれ約4割を占めた。 (p.81 図 15) ③ 規格・ガイドライン等の在り方 消費者に対する情報提供の規格やガイドライン等の在り方としては、約4割の事 業者が「情報提供に関する指針をガイドラインとして示すべき」と回答している。 (p82 図 16) (2) 事業者ヒアリング調査 ① 規格・ガイドライン等策定の主体 ガイドライン策定の主体として、大きく分けて「国」に期待する事業者と「業界 団体」に期待する事業者に分かれる。業界団体に属していない企業、所属業界団 体が小さい企業又は規制に近い形のガイドラインを望む企業は「国」への期待が 高い。一方、業界団体に属している企業、業界における固有の課題や問題意識が あり、実行性の高いガイドラインの作成を求める企業は、 「業界団体」にガイドラ インの策定を求めている。 例えば、全国食肉公正取引協議会の「食肉の正しい表示」及び「食肉の公正取引 のための指針」について業界団体による取組として指摘された。 ② 規格・ガイドライン等の在り方 実務的な Q&A や情報提供の事例を示す等、出来る限り具体的で活用の容易なも のを期待する事業者が多い。 22 現在実際に情報提供が行われるようになりつつある項目に関するガイドラインの 制定は求められている。一方、問合せ数の少ない項目についてガイドラインに含 めることは求められていない。 インターネットモール運営事業者が、出店事業者に対し、情報提供の推奨や依頼 を行うことは可能である。しかし、情報提供について法的義務のない事項の提供 を求めることは困難。 ガイドラインに基づく情報提供を行う事業者であることを認証マークの使用等に より示す仕組みが、事業者利益に資するものとして期待されている。 3.2 消費者に対する調査 (1) 消費者アンケート調査 ① 商品情報の提供にかかるコストの価格への反映 欲しい情報が提供されている商品と提供されていない商品を比べた場合、価格が 同じであれば前者を購入するという消費者が最も多く、約半数を占めた。前者が 後者の 1.3 倍までであれば購入するという回答が2番目に多く、回答の約 2 割を 占めた。(p.111 図 41) ② 規格・ガイドライン等策定の主体 食品事業者による商品の情報提供方法については、「行政(国・自治体)による義 務的ルールを作るべき」という回答が約 4 割で最も多く、次いで「行政(国・自 治体)によるガイドラインを作るべき」 (約 3 割)という回答が多かった。(p.112 図 42) (2) 消費者フォーカスグループインタビュー ① 商品情報に関する規格・ガイドライン等の必要性 小売、通信販売のいずれに対しても、欲しいときに情報がなんらかの手段で取れ ればよいと感じている。日常的に情報が入手できずに困っているという状況には ないため、制度を必要と強く考えている状況ではない。 提供される商品情報の量と提供の方法については、最低限の情報がすぐに確認で きるところにあり、追加の情報は WEB や問い合わせ等により入手できればよい とする意見が多かった。しかし、情報提供方法はわかりやすく統一的な様式を用 いたほうがよいという要望もあった。 ② 商品情報の信頼性確保 事業者の自社ルールによる情報提供では提供される情報は十分信頼できないとい う意見がほとんどであり、第三者評価が重要とされた。一方で、行政主導による 提供ルール策定についても賛否両論であった。 認証制度を作った場合、同じ価格であれば認証された商品を買うが、価格が高く 23 なるようであれば積極的に買わないとする意見が多かった。 3.3 規格等の原案の検討及びその内容の妥当性の調査 (1) 第一回検討会 ① 本検討の範疇に入るものについて 第一の論点は、消費者が食品を購入する際にどのような情報を提供するかである。 商品に関連した情報を主な対象とするが、製造工程の工夫や衛生上の取組なども 含まれる。 必須情報と付加的に提供する情報は区別すべきである。付加情報については、消 費者に優良誤認を与えないようにする点も議論の対象になる。 子ども用や高齢者用などの特定用途の食品も含めて幅広に検討する。 ② 本検討の範疇に入らないものについて 本規格等については、食品を購入する際に消費者が必要とする情報を対象とする ので、リコールなど緊急時の情報提供は除く。 通信販売の WEB サイト等で提供されている「お客様のレビュー」については、 事業者が提供する情報ではないので除く。 ③ 規格等のあり方について 事業者団体が、各々の立場で規格等を作る事が効率的なのではないか。 事業者に対し、規格等に基づく情報提供をすすめるためのインセンティブの提供 も一つの論点である。 規格等は中小企業であっても利用可能な内容とする。 (2) 第二回検討会 ① 規格等のあり方について 規格等への対応は商品ごとに行っていることを伝えればいいのではないか。輸入 品等色々な製品があり、企業が自社製品の何%について取り組んでいることを示 す方法も考えられる。 販売者としては、企業や店舗が「規格等を満たした情報提供を行っている」とい う事をアピールしたほうがいい。 企業を認証するか、商品を認証するかというところが問題である。 日本は公的なルールに対する国民の信頼が相対的に高い。逆に言えば企業に対す る信頼が低い。国に規格等を決めてもらいたいという意見も多い。 消費者は個々の大企業を信頼しているのだろう。しかし、日本の食品産業は大部 分が中小企業で占められている。従って、この中小企業による情報提供方法につ いては、国の関与が求められるのではないか。 公的な規格等であるということと、第三者認証によって認証されていることは異 24 なる。消費者としては違反時の罰則に対する期待もある。事業者の実際の改善に 繋がるように考える必要がある。 (3) 第三回検討会 本項目については、特に議論は行われなかった。 25
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