KR14-06 航海報告:北西太平洋シャツキー海台南東方

岩手県大槌湾の地形地質的特徴
○八木雅俊・坂本泉・横山由香・難波真人(東海大学)
・藤巻三樹雄(沿岸海洋調査㈱)
・笠谷貴史・
藤原義弘(海洋研究開発機構)
東海大学では、2012 年度より東北マリンサイエンス拠点形成事業の一環として、岩手県の沿岸域に
おいて、総合的海洋地質調査を実施してきた(八木ほか,2014)。3 年目となる 2014 年度では、新た
に大槌湾における調査を実施した。本発表では、2014 年度大槌湾での調査結果を報告する。
大槌湾は、三陸海岸中部に位置する東に開けた湾である。奥行き約 8km、湾口約 3.5km の幅をもち、
東西に伸びた形状を成している。主要な流入河川は、西側の鵜住居川、北側の大槌川,小槌川の 3 河
川である。これらの流域には、北東から南西に向かい北上北帯の中・古生層、早池峰構造帯の変成岩
類・超塩基性岩類、北上南帯の中・古生層(藤岡ほか,1988)の地質体が順に分布している。湾に供
給される堆積物はこれら中・古生層または深成岩体を起源としていると考えられる。また、2011 年の
東地方太平洋沖地震に伴って生じた津波により、湾頭北側に位置する大槌川河口において、高さ
T.P.+6.4m の河川堤防が破堤(加藤ほか,2012)している。
本調査では、マルチビーム音響測深機を用いた海底地形マッピング(以下 MNB)、高分解能地層探
査装置を用いた海底下浅部の地質構造把握(以下 SBP)、バイブレーションコアサンプラーを用いた柱
状試料採取(以下 VCS)、スミスマッキンタイヤによる表層堆積物採取(以下 SMS)をそれぞれ実施
した。
MNB では、約 1.8km2 にわたる海底地形データ取得により水深 6~42m までの詳細な海底地形マッ
ピングを行った。大槌湾の海底地形は、水深 0-35m 付近まで緩斜面(平均傾斜:約 1m/70m)が続き、
水深 40m 付近で一度平坦に近くなる。その後水深 50m 付近から傾斜を増し、湾口で 100m の深さま
で落ち込む(平均傾斜:約 1m/90m)
。また、その水深 50m 以浅では海底面に突起物(幅約 4m、比高
約 30cm)が散在し、その周囲には浸食痕状の凹地が形成されている。これらの凹地は全体として約 6
~9m の幅をもち、その形状は円形から一方向に伸長するものと多様である。分布は水深 20m 付近に
最も集中している。
SBP では、海域全体を網羅する測線を設定し、測線は長短含め計 43 本、調査距離は計 69km 程度
となった。取得した記録断面の反射パターンから、4 枚の堆積層を認定し、それぞれ上位からⅠ,Ⅱ,
Ⅲ,Ⅳ層とした。1)Ⅰ層は最上部層にあたり、淡い反射を呈し乱れた内部反射をもつ。層厚は 1m 程
度であるが沖に向かい薄くなり、水深 30m 以深ではせん滅する。また、Ⅰ層は下位層を削り込む堆積
構造が認められることから、何らかのイベント堆積物であることが推定される。2)Ⅱ層は数条の内部
反射面が海底面と平行に数十 cm 間隔で成層構造を成している。従って、静穏時に堆積したものである
と考えられる。また、Ⅱ層上面はⅠ層による削り込みにより起伏に富んだ形状を成し、この境界面は
明瞭な反射面で表現されている。3)Ⅲ層はⅡ層の下位にあたる層で、白く抜ける反射で特徴づけられ
る。層厚は概して 1m 程度である。4)Ⅳ層の上面は起伏に富んだ形状を成し、内部には数条の平行な
反射面が認められる。また、この層から下位は場所により不明瞭になることからⅣ層上面を音響基盤
面とする。
VCS では、水深 10~25m 付近までの間で、計 5 本の柱状試料採取を実施した。ここでは最も沖合
の 14OTV-5 の結果を示す。14OTV-5 を岩相から上位より Unit1~4 に区分し、Unit1 は下位より 1a,1b
に細区分した。それぞれ上位から、1)Unit1b(0-20cm)
:シルト~中粒砂層で級化が認められる。2)
Unit1a(20-62cm)
:上部に細粒砂~粗粒砂層で級化が認められるが、全体として粗粒砂~極粗粒砂層
で中粒砂を狭在する。3)Unit2(62-95cm)
:極細粒砂層。4)Unit3(95-125cm)
:シルト層。5)Unit4
(125-163cm):細粒砂層である。Unit1 と Unit2 の間には明瞭な岩相変化が認められた。
SBP 記録断面(14OT-31)と VCS コア試料(14OTV-5)の対比を行った結果、14OTV-5 で認めら
れた Unit1 と Unit2 の境界はⅠ層基底の強反射面に対応し、Unit1a と 1b の境界はⅠ層の内部反射面
にそれぞれ対応した。また、Unit3 と Unit4 の境界はⅡ層の内部反射面に対応した。
以上の結果から、粗粒砂で構成される Unit1 は下位層を削り込み、その分布が距離・水深により規
制され、また海底面には浸食痕状の凹地が形成されていることから、Unit1 は津波起源堆積物である
と考えられる。
図 1.
VCS コアと SBP 記録断面との対比