31 寄稿・随想 機能性ディスペプシア 津 端 聖 美 最近よく取り上げられる機能性ディスペプシ 臓を意識すればドキドキ、呼吸を意識すれば息苦 ア。ガイドラインや保険適応の新薬が出て、治療 しく、胃腸を意識すれば様々な胃腸症状、体温を しやすくなったということのようです。しかし例 意識すればカッカ、揺れるかなと思うとなお揺れ えば某先生の医学雑誌特集論文の結論―どんなに る。確かにその辛さは、 自分にしか分かりません。 検査をしても確定診断は困難、半数以上に有効な でもあなたに責任は無いのです。天候のヤロー、 治療法は無い、自覚症状からの診断・治療は容易 ストレスのヤローと発散して下さい。生きるため でない―等に違和感を覚えます (細々した問診票、 に自律神経は自然に本来の働きを取り戻し、必ず 機械的な対応マニュアルにも)。専門家自身がお 治ります。心配ありません。でも不安になったら 手上げと言っているに等しい病態。わざわざ消化 いつでも来院して下さい」と。ポイントは、 “あ 器症状だけで機能性ディスペプシアと名付け、 “病 なたに責任は無い”と“必ず治る”です。患者さ 気”にする必要性があるのでしょうか。 んに笑顔が戻れば、投薬など不要。勿論、はっき 私は、気圧・気温変動やストレス等での自律神 りした胃食道逆流症には PPI、恒常的な胃もたれ 経調節障害による一症状と考えています。身体所 にはイトプリド塩酸塩、落ち込みが強ければクロ 見や症状に応じて消化器・循環器・内分泌などの チアゼパム・スルピリドなどを補助的に処方しこ スクリーニング検査をし、異常が無ければ次のよ れで充分です。機能性ディスペプシアが保険病名 うに説明します。 「自律神経は神経自体が自律し、 となり、治験できたから新薬となったアコチアミ その人の思い通りにはなりません。心臓、肺、胃 ド塩酸塩水和物 (アコファイド) 。 作用からすれば、 腸、体温、平衡感覚など人間が生きていく上で必 イトプリド塩酸塩(ガナトン)と殆ど同じです。 要なものを調節しているからです。例えば、心臓 薬を絶対視し、使う順序を決める治療指針は無意 を止めようとしてもできないでしょう?胃腸の動 味。そして良くならなければ他科に紹介され、患 きも同様です。任せておけば良いのです。ただ脆 者さんの病名と薬だけが増えることになりかねま いところがあって、気圧や気温の変化やストレス せん。これ迄の経験から、本当の意味の自律神経 などに弱い。これらのために自律神経が瞬時に反 失調を理解することで、患者さんは諸症状から解 応できないと、体全体のバランスが微妙に狂って 放されています。 きます。そして自分がコントロールできないこと (三条市:津端内科医院) を意識すると、その症状を一層悪化させます。心 新潟県医師会報 H26.12 № 777
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