オウギ 黄耆

「歴代日本薬局方収載生薬大事典」(ガイアブックス、来年2月末刊行予定) 木下武司著 [本書執筆のきっかけ]拙著「万葉植物文化誌」(八坂書房、2010 年)で、いくつかの植物名について
古い時代と今日とでは大きく種認識が異なることを具体的なエビデンスを挙げて明らかにした。た
とえば、
「わらび」は古代から室町時代まではゼンマイ科ゼンマイを指し、コバノイシカグマ科(旧
イノモトソウ科)ワラビを指すようになったのは江戸期以降である。万葉集や古今和歌集ほかの歌集
ならびに源氏物語・枕草子などに現れる蕨(わらび)について、従来の注釈書は季節など不自然な
解釈を強いられてきたが、これによって不自然さが解消されることになった。これがきっかけとな
り、長い歴史のある生薬でも古い時代と今日では基原(生薬の基となる動植鉱物ならびにその薬用とする部
位を含めていう生薬学特有の専門用語)を大きく異なることがあっても不思議ではないと確信して詳細な
考証を進めたところ、これまでの生薬の専門書の記述のかなりの部分が誤りであることが明らかと
なった。前著・本書ともに 20 数年前に執筆を始め、まず 4 年前に「万葉植物文化誌」を上梓、そ
して今回本書を刊行することとなった次第である。B5版で約 820 頁を予定。
〔読者の対象〕大学・専門研究機関の生薬学を専攻する研究者および大学院生、製薬企業の生薬専
門家、漢方薬局の薬剤師、漢方薬生薬認定薬剤師ほか生薬に関心のある薬剤師・医師などの医療関
係者、和漢古典文学研究者ならびに大学院生、生薬に関心があって知識欲旺盛な一般の方々。
〔本書出版の意義〕生薬学は薬学特有の専門領域であり、一般の関心も高い分野である。しかし、
生薬の専門書は意外と少なく、薬系大学で用いられている生薬学の教科書が事実上の専門書となっ
ており、それ以上のレベルの参考書が見当たらない。生薬は長い歴史をもつ伝統的薬物であるが故
に、基原の認識は時代毎に異なるのは珍しいことではないが、これについて詳述する専門書も見当
たらない。すなわち、生薬を用いる古典医学書(漢方でいえば傷寒論・金匱要略など)は古代から存在す
るにもかかわらず、生薬の歴史を達観できるハイエンドの生薬学参考書がないため、古典処方の主
治が現在に適用できるか判定するのが困難な状況となっている。一般に生薬の出典文献は難解な漢
文・古文で記述されているので、それを読みこなせる研究者はごく限られていたからと思われる。
本書は本草書や古典医学書のほか、和漢の古典文学書も広く引用し、生薬文化誌的性格をもち、生
薬学以外の分野の和漢の古典研究者にとっても有用な情報を取り入れているのを特長とする。本書
では 300 種以上の古典文献を引用する(本文中では巻数ならびに当該条項名も記載)が、書誌学情報も巻
末に記し、その他の引用文献でも、ごく一部を除いて単行本であっても引用箇所の頁数を記し、第
三者による再考証の便を図ったところは類書にない特徴と考えている。
〔本書の内容〕生薬学一般、漢方医学・中国古典医学・民間医学、本草学、和漢古典文学など。
〔本書の体裁〕初版~第 16 改正版日本薬局方(第 2 追補も含む)に収載された生薬 303 種と漢方
方剤エキス 31 剤について次のような体裁で詳細に解説する。
第1部歴代日本薬局方に収載された生薬の歴史的来歴および文化的背景について(約 430 頁)
第 1 章 歴 代 局 方 に 収 載 さ れ た 生 薬
各項目タイトルの例:
オウギ 黄耆 ASTRAGALI RADIX 二国、VII 〜XVI 内容: [基原]原則として当該品を収載するもっとも新しい局方の記載に準じる。基原学名は最新の分類
学名(APG 分類体系)を採用するが、局方が(新)エングラー体系に準拠する学名を採用してい
るのを考慮し、括弧内に旧学名も併記する。学名は命名者名をフルネームで記載する。因みに、本
文中に登場する植物種はすべてこの規格で記載している。局方のバージョンによって基原が異なる
場合、解説の項でその変遷を明記する。学名に諸説ある場合は《備考》で記載。これまでの生薬学
教科書・局方解説書は今日では古典分類名となった学名を使い続けているが、最新の学名を記した
参考書すらなかったから、これだけでも生薬の専門家にとって相応の意義があることになる。
例 1 : マ メ 科 ( Leguminosae ) キ バ ナ オ ウ ギ Astragalus membranaceus Bunge 又 は Astragalus
mongholicus Bunge の根。
《備考》Leguminosae→Fabaceae。キバナオウギ:A. membranaceus (Fischer)
Bunge;モウコモメンヅル:A. membranaceus (Fischer ex Link) Bunge var. mongholicus (Bunge) P. K.
Hsiao とする見解(YList)と A. mongholicus Bunge(Flora of China)とする見解あり。以上を A. propinquus
Schischkin にまとめる見解(The Plant List)あり。
例2:第 10 改正版までは「キバナオウギ又はその他同属植物」を基原としたが、第 11 改正版でこ
れに A. mongholicus が加わり、第 12 改正版以降は「その他同属植物」が基原から削除された。
[用途]当該生薬の主たる用途を簡潔に記載。漢方処方に配合されるものは、「一般用漢方製剤承
認基準」に収載される 294 方のうち、当該生薬を配合する処方をことごとく列挙、五十音順で配列。
[出典]当該生薬が漢薬・和薬の場合、初見の文献名・「主治」を記載。原文が漢文の場合、古文
調で訓読した。
例3:(オウギ)神農本草經上品「一名戴糝。味は甘く微温。山谷に生ず。癰疽を治し、久しき敗
瘡に膿を排して痛みを止め、大風癩疾、五痔、鼠瘻に虚を補ふ。小兒の百病(を主る)。」
[漢名]原則として古典文献に現れる名前を挙げる。異名がある場合は文献名を括弧内に記す。
例4:黃耆・戴糝(本經)、戴椹・獨椹・芰草・蜀脂・百本(別錄)、王孫(藥性論)、白水耆・赤
水耆・木耆(日華子諸家本草)、綿黄耆(圖經本草)、黃芪(本草綱目)
[解説]当該生薬の歴史的由来を詳細に記載。文献は和漢本草書・医書のほか、和漢古典など広く
引用する。洋薬の場合は西洋本草、和刻和蘭本草書の記載を引用。生薬によっては基原植物名(和
名)の語源などのトリビアも紹介する。わが国固有とされる和薬(民間薬)についてはその発生の
経緯を詳細に考証する必要があるので、第2部で詳述する。
第 2 章 局 方 に 収 載 さ れ た 漢 方 処 方 エ キ ス 剤
第1節 江戸期日本の医学事情について
漢方医学が中国医学から派生した独自の伝統医学であるという視点からその歴史を概説する。
第2節 明治~現代の漢方医学
第3節 局方収載の漢方処方(エキス製剤)概説
歴代局方に収載された 31 処方について薬剤構成、効能・効果、出典・主治とともに解説を加え
た。出典・主治では原典の記載のほか、浅田宗伯の「勿誤薬室方函口訣」も加えた。
第2部 わが国の重要生薬ならびに固有民間薬の来歴(約 310 頁)
アカメガシワ、アヘンとケシ、エイジツ、キササゲ、ゲンノショウコ、センブリ、ドクダミ(ジュ
ウヤク)、マクリ
歴代日本薬局方収載生薬 305 種 アカメガシワ、アギ、アコニットコン、アセンヤク、アニスジツ、アヘン末、アマチャ、アマニン、
アラビアゴマ、アルテアコン、アルテアヨウ、アルニカカ、アロエ、アンソッコウ、アンモニアク
ム、イオウ、イズシュクシャ、イスランドタイ、イリスコン、イレイセン、インチンコウ、インド
タイマソウ、インヨウカク、ウイキョウ、ウコン、ウヤク、ウワウルシ、エイジツ、エンゴサク、
オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カイカ、ガイシ、カイソウ、
カイメン、ガイヨウ、カオリン、カゴソウ、カシアボク、カシュウ、ガジュツ、カスカラサグラダ、
カスカリラヒ、カッコウ、カッコン、カッセキ、カノコソウ、カマラ、カミツレ、カラバルマメ、
カルドベネディクトソウ、カルナウバロウ、ガルバヌム、カールムジツ、カロコン、カンキョウ、
カンゾウ、カンタリス、カンテン、カンピ末、カンペントウ、キキョウ、キクカ、キササゲ、キジ
ツ、キナ、キノ、キョウカツ、キョウニン、キンキカ、グアヤクボク・グアヤク脂、クエンピ、ク
ガイ、クコシ、クジン、グッタペルカ、クベバジツ、クヘントウ、グルユンバルサム、クレンピ、
ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ケツメイヨウ、ゲルゼミウムコン、ケンゴシ、ゲンチアナ、ゲン
ノショウコ、コウイ、コウカ、コウジン、コウブシ、コウベイ、コウボク、ゴオウ、コカヨウ、コ
ケモモ、ゴシツ、ゴシュユ、コショウ、コソカ、ゴバイシ、コパイババルサム、ゴボウシ、ゴマ、
ゴミシ、コルヒクムシ、コロシントジツ、コロンボ、コンズランゴ、サイカク、サイカチ、サイコ、
サイシン、ザクロヒ、サッサフラスボク、サフラン、サルサ、サルビアヨウ、サレップコン、サン
キライ、サンザシ、サンシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンダラック、
サンヤク、ジオウ、ジギタリス、シゴカ、ジコッピ、シコン、シタン、シツリシ、シナカ、シャカ
ンゾウ、シャクヤク、ジャコウ、ジャショウシ、シャゼンシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュク
シャ、ショウキョウ、ショウシ、ショウズク(ソウズク・ビャクズク)、ショウブ、ショウマ、シ
ョウリク、ジョチュウギク、シンイ、スイテツ、ストロファンツス、精製セラック・白色セラック、
セキショウシ、セッコウ、セッコツボクカ、セネガ、セルペンタリアコン、センキュウ、ゼンコ、
センコツ、センソ、センナ、センブリ、ソウジツ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソボク、ソヨウ、ソ
リシ、ダイオウ、タイソウ、ダイバク、タクシャ、ダツラ、タマリンド、ダンマール脂、チクセツ
ニンジン、チモ、チョウジ、チョウトウコウ、チョレイ、チンピ、テレビンチナ、デンプン、テン
マ、テンモンドウ、トウオウ、トウカ、トウガシ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ドク
カツ、トコン、トショウジツ、トチュウ、トラガント、トルーバルサム、トロロアオイ、トンコマ
メ、ニガキ、ニクジュヨウ、ニクズク、ニホンケイヒ、ニンジン、ニンドウ、バイモ、バクガ、ハ
クズイコウヒ、バクチヨウ、バクモンドウ、ハズ、ハチミツ、ハッカ、バッカク、バニラ、ハマボ
ウフウ、ハマメリスヨウ、ハンゲ、ヒキオコシ、ヒドラスチス、ビャクゴウ、ビャクシ、ビャクジ
ュツ、ビャクダン、ヒヨス、ビワニン、ビワヨウ、ビンロウジ、ファルファラヨウ、ブクリョウ、
ブシ、フセキ、ブッコヨウ、フラングラヒ、ベラドンナコン、ベラドンナヨウ、ベルバスクムカ、
ペルーバルサム、ヘンズ、ボウイ、ボウコン、ボウフウ、ボクソク、ホコウエイ、ボダイジュカ、
ボタンピ、ホップ、ポドフィルム脂、ホミカ、ボレイ、マイカイカ、マオウ、マクリ、マシニン、
マチコ、マンナ、ミツガシワ、ミツロウ、ミョウバン、ミルラ、メリッサヨウ、メンマ、モクツウ、
モッコウ、ヤクチ、ヤクモソウ、ヤボランジヨウ、ヤラッパ、ユウタン、ユーカリ、ヨクイニン、
ラウオルフィア、ラクツカリウム、ラタニアコン、ラベンダーカ、リュウガンニク、リュウコツ、
リュウタン、リュウドウソゴウコウ、リョウキョウ、レンギョウ、レンニク、ロジン、ロートコン、
ロートソウ、ロートヨウ、ロベリア、ローマカミツレ、ローヤルゼリー、ワダイオウ
生薬大事典を有効に使うために
第一部
1.日本薬局方生薬に関する正確で精緻な基本情報を調べることができる
生薬の名前のすべてがわかる
標準和名(日本語名)とラテン名(世界標準名)
古名:和籍の古字書・本草書・古典文学に出てくる名前
日本語古名の語源がわかる
漢名:漢籍の古字書・本草書・古典文学に出てくる名前
西洋生薬の古名(ディオスコリデスの薬物誌など)
巻末の充実した索引・附属資料を利用して
生薬・植物の和名・古名・漢名・ラテン名から調べることができる
難読漢名の読みを画数索引から調べることができる
漢和辞典にない漢字でも画数で調べて読みがわかる
学名から植物名やどんな生薬に用いられているか調べることができる
各生薬の局方における履歴(第○版で収載、削除)が一目でわかる
生薬の歴史的由来(文化史)がわかる
西洋薬 古代西洋本草がどう薬効を記載しているかわかる
原産地がどこかわかる
中国に渡来したのはいつかわかる
中国本草で薬効をどう記載しているかわかる
日本にどういう経緯でいつ渡来したかがかわかる
日本の本草書では薬効をどう記載しているかわかる
漢薬 奈良・平安時代の生薬の生産地の情報がわかる
(正倉院文書・延喜式の記載を引用)
中国での発生した時代およびその後の歴史的変遷がわかる
初めて記載した薬物書(本草書)の薬効がわかる
漢方医学でどんな処方に使われているかがわかる
日中間で相異があればどうしてそうなったかがわかる
2.これまで誰も知らなかった生薬の新情報が満載!
ここに挙げるのはその一部にすぎません
華岡青洲が外科手術で用いた世界初の麻酔薬→インドタイマソウ・ダ ツ ラ
桜の古訓がカニハというのはなぜ?→オウヒ
端午の節句(五月五日)とヨモギ・ショウブ→ガイヨウ・ショウブ
トコロテン・寒天の話→カンテン
重陽の節句(九月九日)と菊酒・呉茱萸→キクカ・ゴシュユ
ゴボウが伝わって駆逐された古代の根菜アザミ ゴボウシ
イネを表す用字は稲だけではない!→コウベイ
正倉院に納められた漢方の要薬厚朴は偽品であった!→コウボク
梅毒治療に用いた水銀剤の解毒剤→サルサ・グアヤクボク・サンキライ
お屠蘇の風習の起源の話→サンキライ
漢字でグミを茱萸と書くのはなぜ?→サンシュユ
江戸期の漢方医も用いたとびきりの劇薬→ジギタリス・カイソウ
西洋のペオニィの薬効は東洋のシャクヤクとそっくり→シャクヤク
路傍の雑草オオバコは汎世界的薬用植物→シャゼンシ・シャゼンソウ
専門家すら混同するカルダモンとショウズク→ショウズク
古代では香辛料であったコブシの実→シンイ
心不全の薬になる成分を外敵からの防護に利用する哺乳動物→ストロファンツス
古代朝廷の食卓に供されたスイレン科コウホネの根茎→センコツ
長らく誤解された蒼朮と白朮の基原→ソウジュツ・ビャクジュツ
昔はダイオウの両品は滅多に入手できなかった→ダイオウ・ワダイオウ
竹節人参は帰化明人が発見したという証拠はどこにある!→チクセツニンジン
猪苓はカシワ・クヌギの根の一部と考えられていた→チョレイ
みかんに充てられた橘・柚・柑・橙はどう区別する?→チンピ
益軒が朝鮮から伝わったと勘違いした番椒→トウガラシ
国産当帰は最高品質で中国にも輸出された!→トウキ
蘇民将来伝説と深い関わりがあるモモ→トウニン
小野蘭山も太鼓判を押したマサキは杜仲の一種?!→トチュウ
トウセンダンの代用に梶原性善が発掘した苦木→ニガキ
享保の改革の目玉:徳川吉宗が推進したニンジンの国産化→ニンジン
千年以上の歴史がある奈良大神神社の「くすりまつり」→ニンドウ
万葉集でヤマスゲと詠まれたのはジャノヒゲのこと!→バクモンドウ
弘法大師伝説が生み出した薬物延命草→ヒキオコシ
千三百年以上の歴史のある奈良率川神社の「ゆり祭り」→ビャクゴウ
うけら焚きとお屠蘇の風習と神仙の霊薬白朮→ビャクジュツ
江戸時代では定番の夏負けの妙薬であった枇把葉湯→ビワヨウ
ビロウ(古名アジマサ)は檳榔と勘違いされてつけられた名→ビンロウジ
フキ、ヤマブキ、ツワブキの名前の複雑な相関→ファルファラヨウ
古代のブシの需要の大半は矢毒か?→ブシ
防已・防巳・防己のどれが正しい?→ボウイ
なぜわが国では柏をカシワとするか?→ボクソク
牡丹の古和名をヤマタチバナというわけ:髪削ぎの義→ボタンピ
江戸時代まで麻黄の真品とされたイヌドクサ!→マオウ
大翹・小翹の二種あった古代の連翹→レンギョウ
コラム1→ザクロヒ
日中間で異なる見解:海石榴はツバキ、ザクロのどちら?
万葉歌と隋の暴君煬帝の詩に登場する海石榴はツバキのこと!
遣唐使が唐皇帝へ贈呈したツバキ油は古代日本の特産品!
不死薬の一つ海石榴油は海産物?!
日本に普通にあっても古代中国になかったツバキ!
中国産トウツバキの発見で海石榴はザクロと勘違いされた!
ツバキの朝鮮名冬柏は日本名を音訳したもの!
コラム2→ニンジン
江戸期ニンジン(朝鮮人参)ブーム:歴史家も知らないその内情
元禄バブルの象徴ニンジンブームとそれが起きた背景
巨額の貿易赤字で幕府財政を逼迫したニンジンブーム
徳川吉宗の秘策「ニンジンを国産化せよ! 」
ニンジン国産化の最大の功労者対馬藩は自縄自縛の被害者であった!
チャングムの誓いでお馴染みの東医宝鑑の刊行は対馬藩を救うため!
コラム3→ヒキオコシ
かつてガンにも効くとされたフジコブは仏法説話から生み出された!
コラム4→ミルラ
江戸庶民にもてはやされた西洋の珍奇薬ミイラ?!
「ミイラ取りがミイラになる」なる諺を生み出したミイラブーム
国産化も検討されるほど加熱したミイラブーム!
中国独特の解釈:ミイラを蜜漬けと解釈した!
ミイラの語源は?
第二部
まず各章の「まとめ」を読むことを推奨します
第1章
どこにでもある雑木アカメガシワの樹皮は胃潰瘍の妙薬!
アカメガシワ樹皮の薬用記録はどこにもない!
日本ではアカメガシワとキササゲ(梓)が混同された!
明治の漢方医浅田宗伯が推奨した梓白皮は吐逆胃反の妙薬!
梓白皮の誤用からアカメガシワの抗潰瘍作用が発見された!
アカメガシワは純粋の日本オリジナルの民間薬!
第2章
江戸期の日本でアヘンを配合した売薬が流行した!
鎮痛薬ではなく下痢止めの妙薬であったアヘン! 芥川龍之介はアヘン配合の売薬を用いたと書簡に書きしるしていた!
歴史学者も知らない中国でアヘン禍が起きたわけ!
第3章
エイジツは漢薬起源なのに中国では使われたことにない瀉下薬!
弘法も筆の誤り:陶弘景はエイジツをノイバラの実と勘違いした!
陶弘景の勘違いを鵜呑みにした結果、瀉下薬エイジツが生まれた!
万葉集にみる瀉下薬エイジツの痕跡!
江戸時代にエイジツに特化した研究書があった!
第4章
中国原産なのにキササゲの実は中国で薬にならなかった!
キササゲ(実)は日本オリジナルの利尿薬!
中国人すら食べなかったキササゲの実を食べた日本人!
キササゲの食用経験を通して利尿作用を発見した!
第5章
当初は有毒植物と誤認されたゲンノショウコ
中国・朝鮮に薬用情報がまったくないゲンノショウコ
有毒の牛扁を「たちまちぐさ」と名づけた平安の薬物書
「たちまちぐさ」を「現の証拠」と解釈した貝原益軒
救荒植物の牻牛兒とゲンノショウコはよく似た植物であった!
ゲンノショウコの食経験から下痢止め作用を発見した!
第6章
当初は駆虫薬であった健胃薬センブリ
中国・朝鮮に薬用情報がまったくないセンブリ
室町の狂歌合書に初めて登場するセンブリの漢名当薬!
当薬はセンブリとはまったく別の植物に充てられ駆虫薬だった!
センブリを苦味健胃薬に仕立てた「良薬は口に苦し」なる諺
第7章
民間薬であり漢方薬でもあるドクダミ(ジュウヤク)
中国では古くから野菜とされたドクダミ
ドクダミを外用に用いるのは中国の民間療法に由来する!
ドクダミを茶剤として服用するのは日本オリジナルの用法である!
江戸期の漢方医が梅毒の治療に登用して漢方薬となったドクダミ!
第8章
「まくり」と「かにばば」は日本の産育に固有の概念
「まくり」に海人草を用いたのは江戸期以降である!
「まくり」に繁用してから海人草をマクリと称するようになった!
胎毒は中国起源だが、胎毒下しは日本独特の発想である!
以下、詳しくは本書をお読みください。