JAPAN News 2007年新潟県中越沖地震による柏崎市聖ケ鼻の地すべり。斜面崩壊 Landslides in Hijiriqahana induced by the Niigataken Chuetsu-oki Earthquake in 2007 (杜)日本地すべり学会調査団 Research Team of the Japan Landslide Society 1. 2007年新潟県中越沖地震 2007年7月16日10時13分頃,新潟県中 越沖(新潟市の南西約60km)を震源と する地震が発生した(図-1)。震源の 深さは約17km,地震の規模を示すマグ ニチュードは6.8,最大震度は新潟県長 岡市(旧小国町),柏崎市(旧西山町), 刈羽村,長野県飯綱町(旧三水村)でそ れぞれ震度6強を観測した。最大加速度 (全方向合成)は,新潟県柏崎市西山町 池浦において1018. 9 galを観測した。 2007年新潟県中越沖地震(以下,中越 沖地震)による新潟県内の主な被害状況 (新潟県災害対策本部:平成19年9月5 日15時現在)は,死者11名,重軽傷者1, 960 名,住宅被害(全壊,大規模半壊,半壊, 一部損壊の合計) 38, 834棟である。斜面 写真-1 聖ケ鼻南西側斜面の斜面崩壊。樹木の伐採・除去後の7月23日に撮影 災害は少なく,比較的規模の小さい斜面 表層の崩壊が主体である。今回の中越沖 写真-2 聖ケ鼻の北東-北側の斜面で発生した地すべり 図- 1 2007年新潟県中越沖地震の震央(本 震)と調査地域の位置図(国土地理 院1 /25, 000地形図「柏崎」に加筆) J. of the Jpn. Landslide Soc, Vol.44, No.3 189 (2007) 写真-3 聖ケ鼻の北東∼北側の斜面で発生した地すべり。駐車場より撮影 45 地震では,国道8号線が長岡市大積町千 中には基岩由来の砂岩,泥岩の岩塊が多 本で発生した地すべりにより寸断された。 数含まれ,海岸部の急崖に多くみられた また,柏崎市青海川のJR青海川駅では 斜面表層の崩壊とは特徴を異にする。崩 斜面崩壊が発生し,信越本線が不通と 壊土砂は聖ケ鼻の駐車場へ至る道路を寸 なった。この他にも斜面崩壊による土砂 断し,さらに下方へも流下し,不安定な の堆積によって,数カ所の幹線道路が通 状態で堆積していた。 定土砂の相当量が下方へ滑動していた。 今後,調査団では,より詳細な調査結 果を報告する予定である。 謝辞 新潟大学の山岸宏光教授,丸井英明教 行止めになった。海岸部の急崖では,料 地すべりは,聖ケ鼻の北東∼北向き斜 揺,用達洋教授,権田豊准教授には,有 面表層の崩壊が多数みとめられた。しか 面で発生している(写真-2,写真-3)。 益なご指摘をいただいた。とくに,丸井 し,それらのほとんどは崩壊土砂量が小 聖ケ鼻周辺は景勝地であり,聖ケ鼻へ至 教授,権田準教授とは現地に同行してい さいこと,あるいは重要施設の無い海岸 る稜線の鞍部は広い駐車場となっている。 ただき,ご助言をいただいた。日本応用 で発生していること等により重大な災害 その駐車場の東端を含む北東∼北側斜面 地質学会北陸支部の方々には,現地の状 には発展していない。中遁沖地震での斜 が幅約250m,最大延長約200mの区間に 況や調査結果に関する有益な情報を提供 面災害は極めて限定的であり,重大なも わたって滑落している。この区間では, していただいた。以上の方々に記して感 のは,上述の国道8号線の地すべりとJR 少なくとも3つの地すべりブロックが識 謝申し上げます。 青海川駅の斜面崩壊による災害である。 別できる。頭部には高さ8m程度の分離 2.柏崎市聖ケ鼻の斜面崩壊と地すべり 崖(写真-4)もみられた。地すべりの 参考文献 基岩は聖ケ鼻層と呼ばれる砂岩優勢の砂 気象庁(2007) :気象庁ホームページ「「平 調査団による緊急調査は7月17日∼21 岩泥岩互層であり,補聴層を挟在する。 成19年(2007年)新潟県中越沖地震」 日にかけて行い,調査対象地城は,新潟 地層の走向はほぼE-W,傾斜は25-30 の特集. 県箱崎市,刈羽郡刈羽村,長岡市の計15 Nである。地すべりの主体は地層の傾斜 (http : //www.seisvol.kishou.go.jp/ 地区20箇所に及んだ。ここでは,中越沖 方向-,下位の泥岩層と上位の砂岩層の eq/2007_07_ 16_chuetu-oki/mdex. 地震で発生した斜面崩壊・地すべりの中 境界に沿って発生している。そのため, で,比較的規模の大きい柏崎市聖ケ鼻地 すべり面(下位の泥岩層の層理面)が広 html) (参照2007年9月6日) 日本応用地質学会北陸支部・富山応用地 区(米山地区,上輪地区)の斜面崩壊と く露出している(写真-5)。移動土塊 質研究会(2007) :日本応摺地質学 地すべり(図-1)について取り上げる。 は旧い崩積土と基岩の砂岩泥岩互層から 会北陸支部「新潟県中越沖地震災害 箱崎市聖ケ鼻において比較的親模の大 なる。頚部分離崖は,基岩である砂岩泥 一次調査」中間報告. きい斜面崩壊と地すべりが発生した。斜 岩互層と旧い崩積土とみられる土層から (http : //wwwsoc.nii.ac.jp/jseg/r_ 面崩壊は,聖ケ鼻-伸びる稜線の南西側 形成されている。また発生当初,斜面上 new/news/2007/chuetsuokiィep-No 斜面(釆・山集落側)で発生している(写 には旧い崩積土からなる不安定土砂の堆 真- 1)。受け盤の斜面において稜線付 積や残存する砂岩泥岩互層の岩塊が見ら l.pdf) (参照2007年9月6日) 新潟県災害対策本部(2007) :平成19年 近から発生した崩壊である。崩壊土砂の れたが,数日後の調査では,とくに不安 7月16日に発生した新潟県中越沖地 震による被害状況について(第154 報). (原稿受付2007年9月7日, 原稿受理2007年9月7日) *早川嘉一(新港支部長),稲葉一成(新 潟支部,新潟大学大学院自然科学研究科) , 渡部直喜(新潟支部,新潟大学災害復興 科学センター,執筆責任者),野崎保(新 写真-4 聖ケ鼻の地すべりの分離崖 46 写真-5 聖ケ鼻の地すべりのすべり面。泥 岩の層理面をすべり面としている 潟支部, ㈱ア-キジオ) J. of the Jpn. Landslide Soc, Vol.44, No.3 190 (2007)
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