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第 19 回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集(2014 年 9 月)
OS: 身体的超臨場感
Bodily Ultra Reality
VR と超臨場感研究委員会 主催
日時: 2014 年 9 月 19 日(金)13:30~15:00(名古屋大学)
概要: 超臨場感はバーチャルリアリティの新しい概念の1つと考えられるが,本研究会(VR と超臨
場感研究会)では,身体を中心とした捉え方をしようとしている.身体を没入させることは,VR の
当初からの定義の一部のようなものであるが,本 OS では,臨場感における身体の役割を再考するた
めに,3名もの優れた講師をお招きする.首都大学東京の樋口先生には,身体行動のための環境知
覚などについて,豊橋技術科学大学の北崎先生には,オプティックフローによる自己運動知覚など
について,富山大学の佐藤先生には,agency 感と自己身体の拡張などについて,概説と最新の研究
成果を講義して下さるようにお願いした.従来,バーチャルリアリティは没入すべき現実空間を新
たに創り出す道具として理解されてきたが,
‘没入主’たる自己の身体という現実存在は,逆説的だ
が中心ではなかった.本研究委員会では,この自己の身体も没入の対象とすることができるか,と
いう作業仮説をおくこととしたので,それに関わる議論を深められれば幸いである.
OS イントロダクション: 池井
寧(VR と超臨場感研究委員会 委員長)
【招待講演 3件】
講師: 樋口貴広(首都大学東京 人間健康科学研究科 准教授)
講演題目:移動行動と身体:環境を知るツールとしての身体
講演概要: 歩行などの移動行動においては,前方移動によって自己と環境との空間関係が常に変化する特性を持つ.こ
のため移動行動においては,常に遠方の状況を早期に知覚し,それに合わせて行動を予期的に調整する必要がある.本話
題提供では,移動行動中に身体と環境の空間関係がどのようにして知覚され,安全な移動行動が実現されるのかについて,
隙間通過行動に着目した研究成果に基づき議論する.
講師:北崎充晃(豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 准教授)
講演題目:オプティックフローからの認知と行動
講演概要:自己身体の運動時に観察者の網膜に投影される運動映像をオプティックフローと呼ぶ.このようなオプティッ
クフローから誘発される自己移動感覚(ベクション;vection)は VR 空間での臨場感生成のキーの1つである.本講演で
は,オプティックフローからの自己運動知覚,オプティックフロー(視覚)と GVS(前庭感覚)との感覚統合,オプテ
ィックフローが注意に及ぼす影響,およびそれらに関連する認知神経科学的研究を紹介する.
講師: 佐藤 徳(富山大学 人間発達科学部 教授)
講演題目:agency 感と自己身体の拡張
講演概要:agency 感とは行為主体としての自己の感覚のことであり,body-ownership 感とは全身または特定の身体部位が
自己に属すという感覚のことである.一般的に,agency 感には遠心性情報と求心性情報の多感覚統合が,body-ownership
感には身体に関する求心性情報の多感覚統合が関わっているとされている.本発表では,両者に関する研究を展望した後
に,行為がいかに身体を延長するかについて論じる.