25 °C におけるテトラヒドロフラン水溶液の様々な ギブズエネルギーの 3

25 °C におけるテトラヒドロフラン水溶液の様々な
ギブズエネルギーの 3 次微分量
(T, p, nB)系における水溶液の過剰ギブズエネルギーGE には溶質と水分子の相
互作用の熱力学的な情報が全て含まれています.しかし,エントロピー効果と
エンタルピー効果が互いに打ち消し合うことが多く,GE が小さくなり情報が取
り出しにくくなることがよくあります.そこで,GE を T や p で微分すれば,1
次微分量である過剰エンタルピーHE,エントロピーSE,体積 VE になります.そ
れらを溶質の nB で微分すれば,2 次微分量である溶質の部分モル過剰エンタル
ピーHEB,エントロピーSEB,体積 VEB になります.2 次微分量は他にも熱容量
Cp,圧縮率κT,膨張率αp があり,これらは系内のエントロピーやエントロピー
の揺らぎ密度,それらの相互揺らぎ密度に相当します.このように,GE を微分
すれば系のより詳細な側面が見えてきます.そこで,私たちは 2 次微分量を濃
度微分した GE の 3 次微分量に注目してきました.
これまでの研究により 3 次微分量の特徴として,エタノールをはじめとした
単価アルコールのような疎水性が強い溶質の系ではピーク型の異常を,グリセ
ロールをはじめとした多価アルコールのような親水性が強い溶質の系では屈曲
型の異常を示すことがわかっています.さらに,異なる 3 次微分量でも同じ温
度であれば同じ濃度で同じ型の異常が表れます.単価・多価アルコール系では
このような傾向があらわれましたが,環状エーテルをもつテトラヒドロフラン
(THF)ではどうなるのかを調べるため,THF 水溶液について様々な 3 次微分
量,HETHF-THF,VETHF-THF,TSETHF-THF,SVδTHF を求めました.これらは HETHF,SETHF, ,
VETHF,SVδ(= Tαp)を以下の式で濃度微分したものです.
XB-B ≡ N
∂XB
∂XB
= (1 − xB)
∂nB
∂xB
ここで XB-B は 3 次微分量,XB は 2 次微分量,nB は溶質のモル数,xB はモル分率
です.
VETHF-THF は O. Kiyohara et.al., Can. J. Chem. 56 (1978) 2803-2807.に記載されてい
る VE のデータを 2 回図上で濃度微分することにより求めています.
HETHF-THF は,
デンマークの P. Westh 教授の元で疑似等温型滴定熱量計を使用して HETHF を測
定し,それを濃度で図上微分することにより得られています.TSETHF-THF は,ま
ず研究室で作成した蒸気圧測定装置からをµETHF 求め,それから得られた TSETHF
= HETHF − µETHF を濃度微分することにより求めました.SVδTHF は研究室既設の装
置により直接測定しました.
HETHF-THF と TSETHF-THF の濃度依存性を Fig. 1 に示します.点 X(xTHF = 0.02)を頂
点とした緩やかなピーク型の異常が見られます.これは,疎水性が強い単価ア
200
40
30
X
100
20
Y?
10
E
ME-ME
TS
TS
E
H ME-ME
H
E
E E
E
-1 -1
, TS, STHF-THF
/
kJ
mol
H THF-THF
/
J
mol
THF-THF
THF-THF
ルコールと同じ傾向です.続いて,VETHF-THF の濃度依存性を Fig. 2 に示します.
点 Y(xTHF = 0.044)を頂点としたピーク型の異常が見られます.しかし重要な点は
HETHF-THF と TSETHF-THF での頂点であった xTHF = 0.02 付近で,屈折型の異常が見ら
れことです.さらに,SVδTHF の濃度依存性を Fig. 3 に示します.点 Y(xTHF = 0.052)
を頂点にしたピーク型の異常があり,VETHF-THF と同様に xTHF = 0.02 で屈曲型の
異常があります.ほとんどの単価(メタノールを除いて)や多価アルコールで,
溶質が同じであれば異なる 3 次微分量でも同じ型の異常が見られたのですが,
THF 水溶液では HETHF-THF,TSETHF-THF と VETHF-THF,SVδTHF が異なる挙動を見せて
います.このような違いはメタノール水溶液の 3 次微分量にも同様の傾向が表
れています.よって THF は,メチル基と水酸基が一つずつあるメタノールと同
じように両親媒性をもち,HETHF-THF や VETHF-THF に異なる影響を与えていると考
えられます. つまり,親水性基と疎水性基からの寄与の拮抗のしかたが 3 次
微分量によって異なっていると思われます.
(吉田 康,古賀精方,稲葉 章)
000
0
0.10.02
E
THF-THF
E
H
0.2 0.04 0.3
THF-THF
0.06
0.4
0.08
0.5
xME xTHF
Fig. 1. Relationship of temperature and mole fraction at anomaly point.
Y
50
3
THF-THF / cm mol
-1
100
0
X
V
E
-50
-100
-150
0
0.05
xTHF
0.1
0.15
Fig. 2. Mole fraction dependence of VETHF in THF aqueous solution.
Y
1
SV
δTHF
2
X
0
0
0.05
0.1
xTHF
Fig. 3. The results of SVδTHF measurements at 25 oC.
発表
K. Yoshida, A. Inaba, and Y. Koga, the International Conference on Chemical
Thermodynamics and the South Africa Institution of Chemical Engineers National
Conference (ICCT / SAIChE 2014) (Durban, South Africa), oral (2014).
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