農業被害を引き起こすイノシシの分布拡大シミュレーション(PDF

様式
試験研究成果普及情報
部門
病害虫
対象
行政
課題名:農業被害を引き起こすイノシシの分布拡大シミュレーション
[要約]イノシシ捕獲地点の拡大傾向を分析して、広域で個体群の分布拡大シミュレー
ションを行うことができる。千葉県内では、今後イノシシの分布が拡大し 、現状のまま
分 布 拡 大 阻 止 の た め の 対 策 が 実 施 さ れ な い 場 合 は 平 成 32 年 頃 に 、県 北 部 の 小 規 模 隔 離 個
体 群 を 除 去 し た 場 合 は 平 成 37 年 頃 に 、県 北 部 に 到 達 し て 農 業 被 害 を 引 き 起 こ す と 予 測 さ
れる。
フリーキーワード
野生動物、鳥獣被害、イノシシ、分布拡大、シミュレーション
実施機関名
主
査
農 林 総 合 研 究 セ ン タ ー・暖 地 園 芸 研 究 所・果 樹・環 境 研 究 室
協力機関
(独)農研機構中央農業総合研究センター、東京大学、
横浜国立大学、
実施期間
2007年度~2011年度
[目的及び背景]
近年、野生動物による農作物被害が深刻化しており、特に県南部の中山間地域を中心
に、イノシシの被害が増加し、県央・県北部への拡大が懸念されている。有害獣の分布
拡大状況を事前予測できれば、拡大が予想される地域での早期の農業被害防止対策や、
拡大そのものを防止するための対策検討などが可能になると期待される。そこで、現在
の分布状況をもとにイノシシの分布拡大予測モデルを構築し、それを用いて分布拡大シ
ミュレーションを行うことで将来におけるイノシシの分布拡大を予測する手法を開発す
る。
[成果内容]
1
平 成 14~ 19 年 度 に 千 葉 県 内 で 有 害 鳥 獣 駆 除 に よ り 捕 獲 さ れ た イ ノ シ シ の 捕 獲 場 所
の 分 布 情 報 か ら 、県 内 を 3 km 四 方 の メ ッ シ ュ に 分 割 し た 場 合 の 在 ― 不 在 デ ー タ を 作 り 、
これを分布拡大予測モデル構築のための元データとする(図1)
2
構 築 す る 分 布 拡 大 予 測 モ デ ル は 、イ ノ シ シ の 分 布 が あ る メ ッ シ ュ に 拡 大 す る 確 率 を 、
既存の分布メッシュからの距離(移動率)及び移動先メッシュの環境要因*(生息適
合 度 )の 積 に よ っ て 推 定 す る も の で あ り 、パ ラ メ ー タ の 推 定 に は 最 尤 法 を 使 用 す る( 表
1 )。 確 率 モ デ ル 式 は 以 下 の 通 り で あ る 。
Z i = p i ×q i
pi: 潜 在 的 な 生 育 適 合 度
qi: 分 散 の 確 率
ここで、
p i=
1
1+exp(-(α 0+Σα jXij))’
j
α0:回帰係数
X ij: メ ッ シ ュ i に お け る J 番 目 の 環 境 要 因
q i = exp(β D i )
D i: メ ッ シ ュ 間 の 距 離
β:回帰係数
3
構 築 し た モ デ ル を 平 成 22 年 の 分 布 に 当 て は め た 場 合 の 的 中 率 は 約 93% で あ る ( 表
2 )。
4
モ デ ル を 用 い て 、平 成 24~ 42 年 ま で の 千 葉 県 内 の イ ノ シ シ 分 布 拡 大 シ ミ ュ レ ー シ ョ
ンを行うと、現状のまま分布拡大阻止のための対策が実施されない場合、イノシシの
分 布 は 平 成 32 年 頃 ま で に 県 北 部 に ま で 到 達 す る と 予 測 さ れ る( 図 2 上 の シ ナ リ オ 1 )。
5
現在、県北部に存在する少規模の隔離個体群を除去した場合は、分布の拡大が5年
程 遅 れ 、県 北 部 に 分 布 が 拡 大 す る の は 平 成 37 年 頃 に な る と 予 測 さ れ る( 図 2 下 の シ ナ
リ オ 2 )。
6
県 内 に お け る イ ノ シ シ の 分 布 拡 大 の 平 均 速 度 は 、 約 2.2km/ 年 と 推 定 さ れ る 。
[留意事項]
1
本成果は、
( 独 )農 研 機 構 中 央 農 業 総 合 研 究 セ ン タ ー を 代 表 と し て 、千 葉 県 農 林 総 合 研
究 セ ン タ ー・横 浜 国 立 大 学 の 分 担 協 力 に よ り 行 わ れ た 研 究 に よ る も の で あ り 、
( 独 )農 研
機 構 に よ り 公 表 さ れ た 農 研 機 構 2012 年 度 普 及 成 果 情 報「 農 業 被 害 を 引 き 起 こ す イ ノ シ シ
の分布拡大シミュレーション」を転載したものである。
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2012/420d0_01_68.html
[普及対象地域]
県内全域、特に今後イノシシ被害の拡大のおそれのある地域
県・市町村・農業協同組合・農業共済組合等の鳥獣害担当部署及び担当者
[行政上の措置]
[普及状況]
[成果の概要]
H15
H14
図1
H18
H17
H16
H19
分 析 に 用 い た 平 成 14~ 19 年 度 の イ ノ シ シ 有 害 捕 獲 場 所 デ ー タ
表1 イノシシ分布拡大予測モデルに選択された変数(環境及び距離要因)の係数
変数
95%信頼限界
係数
2.5%点
97.5%点
(切片)
0.773
0.314
1.281
主成分1(森林率他)
1.615
0.837
1.539
0.491
1.268
-3.587×10-4
-2.892×10-4
主成分2(市街地の割合他)
-
森林率×農地率
0.860
人口密度
-
最近接分布メッシュからの距離
-3.218×10-4
表2 モデルを平成22年の分布(実測値)に当てはめて
検証した結果
実測値(メッシュ数)
分布
非分布
合計
予測値(メッシュ数)
分布
非分布
合計
的中率:0.929
171
36
207
13
469
482
184
505
689
H24
H26
シナリオ1
H24
H30
H32
H37
H42
分布拡大阻止のための特別な対策を行わず、現状のまま推移した場合
H26
シナリオ2
H28
H28
H30
H32
H37
H42
県北部の隔離個体群を駆除した場合
図2
千葉県におけるイノシシの分布拡大シミュレーション結果
注 ) ブ ー ト ス ト ラ ッ プ に よ る 500 試 行 の 中 央 値 。 色 の 濃 さ は 分 布 拡 大 の 確 率 を 示 す .
1.0: 水 田 面 積 の 30% 以 上 に 被 害 が 必 ず 生 ず る こ と を 示 す .
0.0: 水 田 面 積 の 30% 以 上 に 被 害 が 生 じ な い こ と を 示 す .
[発表及び関連文献]
1
斎 藤 、 百 瀬 ら ( 2012) Wildlife Biology、 18: 383-392.
[その他]
1
イ ノ シ シ 被 害 急 増 対 策 事 業( 県 単 独 、研 究 プ ロ ジ ェ ク ト )
「農林作物の野生鳥獣被害
軽 減 化 技 術 の 開 発 」( 平 成 19~ 23 年 度 )
2
*
環 境 要 因 ( 生 育 適 合 度 ): 森 林 率 、 農 地 率 、 市 街 地 率 、 林 縁 長 、 河 川 長 、 道 路 長 、
地上開度、人口密度等