産業組織論 II 第2講 練習問題

産業組織論 II 第 2 講 練習問題
練習問題の答え合わせがしたい場合は,解いたノートを持参しオフィスアワーに研究室まで来ること.
(部分的な解答でも構
わない.
)もしくは個別にアポイントメントをとること.
2.1 (偏微分) 以下の二変数関数 f (x, y) を x について偏微分せよ.
(1) f (x, y) = 2xy.
(2) f (x, y) = x2 + 3xy 3 .
(3) f (x, y) = 5y 2 + 2y.
2.2 (クールノー競争) 同質財市場における二企業間(企業 A と企業 B)による数量競争を考える.特に講義で扱ったケー
スとは異なり,企業間で生産技術に差があるケースを考える.具体的には企業 A の費用関数は CA (qA ) = 10qA ,企業
B の費用関数は CB (qB ) = 20qB と仮定する.逆需要関数は P (q1 , q2 ) = 70 − q1 − q2 で与えられており,各企業は 0
から 60 までの任意の値を生産量として同時に決定すると仮定する.このとき以下の問いに答えよ.
(1) このクールノー競争を同時手番ゲームとして定義せよ.
(2) 各企業の利潤関数をそれぞれ求めよ.
(3) (2) で導いた利潤関数に利潤最大化の一階条件を適用し,各企業の最適反応関数をそれぞれ求めよ.
(言い換えれ
ば企業 A の最適反応を企業 B の戦略 qB の関数として表わせ.
)
(4) このクールノー競争におけるナッシュ均衡を求めよ.
(5) ナッシュ均衡における各企業の利潤を求めよ.またその結果と講義で紹介した両企業の生産技術が等しい場合の
利潤を比較し,そこから得られる結論を簡潔に述べよ.
2.3 (クールノー競争) 注: 本問を解くには練習問題 1.4 の知識が必要となる.まずはそちらを参照せよ. 本問では講義で
紹介したクールノー競争モデルが本質的には囚人のジレンマ・ゲームと同じであることを解説する.囚人のジレンマ・
ゲームの特徴は,
「各プレイヤーがお互いに協力した場合両者にとって最も好ましい状況が実現するが,互いに利己的
に行動してしまう結果両者にとって好ましくない状況が実現する」点である.この特徴はクールノー競争・ベルトラ
ン競争の双方が持つ.その一方で囚人のジレンマ・ゲームのもう一つの特徴は,
「ゲームの解として支配戦略を採用す
ることが出来る」点である.言い換えれば強支配される戦略の逐次消去によってゲームの解が一意に定まる.本問で
はこの後者の特徴をクールノー競争が有していることを議論する.モデルの設定は講義で紹介したものと同様のもの
を用いる.
(費用関数は共通で Ci (qi ) = 10qi で,逆需要関数は P (q1 , q2 ) = 70 − q1 − q2 .各企業は 0 から 60 までの任
意の値を生産量として同時に決定する.
)以下の問いに答えよ.
(1) 両企業が協力して独占価格の下での生産量を折半するように行動すると仮定する.この場合の各企業の生産量,
独占価格,並びにその下での利潤を計算過程を含めてそれぞれ求めよ.
1
(2) ナッシュ均衡における各企業の利潤を計算過程も含めてそれぞれ求めよ.
(3) このクールノー競争を強支配戦略の逐次消去で解く.次ページの図を参考にしながら以下の問いに答えよ.
i. ステップ 1: まず企業 A にとって最適反応になり得ない戦略を全て答えよ.同様に企業 B にとって最適反応に
なり得ない戦略を全て答えよ.具体的にこれらの戦略は qA = 30 または qB = 30 によって強支配される戦略
である.したがってこれらの戦略は合理的なプレイヤーならば絶対に選択しない戦略と言える.
ii. ステップ 2: 理性的なプレイヤーはステップ 1 で行った消去のプロセスを正しく予測することが出来る.具体
的に企業 A は,ステップ 1 で求めた qB = 30 に強支配される戦略を企業 B が選択することはないと正しく
予想することが出来る.そのため企業 A は,企業 B がそれらの戦略を選択してくる可能性を完全に排除し
た上で自身の戦略を決めることとなる.この予想を所与とすると,企業 A にとって最適反応になり得ない戦
略が新たに出てくる.その戦略を全て求めよ.
(具体的にそれらの戦略は qA = 15 に強支配される.
)企業 B
も同様の予想の下で,自身の戦略をさらに絞ることが出来る.言い換えればこの予想の下で企業 B の最適反
応になり得ない戦略を消去する.企業 B によって消去される戦略を全て求めよ.
(これらの戦略は qB = 15)
に強支配される.
iii. ステップ 3: ステップ 2 で行った消去プロセスを各企業が正しく予測した場合,各企業にとって更に消去す
ることの出来る戦略が存在する.各企業のそれらの戦略をそれぞれ全て求めよ.具体的にはそれらの戦略は
qA = 22.5 と qB = 22.5 によって強支配される.
iv. このプロセスを繰り返した場合,最終的に導かれる戦略の組み合わせ(即ち,強支配戦略の逐次消去で得ら
れたゲームの解)を答えよ.
qB
60
企業 A の最適反応
30
企業 B の最適反応
0
30
60
qA
2.4. (ベルトラン競争) 同質財・生産能力への制約なし・同一の固定限界費用を持つ二企業間(企業 A, と企業 B)による複
占市場を考える.企業 i の生産技術は費用関数 Ci (qi ) = 20qi で与えられている.
(i は A,または B を指す.
)また同
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質財の市場需要は,逆需要関数 P (q) = 50 − q/2 で与えられている.各企業は 0 から 50 までの任意の値を価格として
同時に設定する.
(注:正の整数だけとは限らない.
)このとき以下の問いに答えよ.
(1) このベルトラン競争を同時手番ゲームとして定義せよ.
(2) 以下の価格の組み合わせが本問におけるナッシュ均衡かどうか判定せよ.またナッシュ均衡の場合はその理由を,
ナッシュ均衡でない場合はどのプレイヤーがどのように逸脱する可能性があるのかを明示的に述べよ.
(i) (pA , pB ) = (20, 20).
(ii) (pA , pB ) = (10, 10).
(iii) (pA , pB ) = (40, 30).
(iv) (pA , pB ) = (36, 37).
(3) (2) で挙げたナッシュ均衡における各企業の利潤を求めよ.またなぜそのような結果になるのか,簡潔に述べよ.
2.5 (ベルトラン競争) 2.4 の設定を変更し,企業間で限界費用の値が異なっている状況を想定する.具体的には,企業 A の
費用関数は CA (qA ) = 20qA ,企業 B の費用関数は CB (qB ) = 10qB と仮定する.
(つまり企業 A の限界費用は 20 であ
り,企業 B の限界費用は 10 である.
)またもし二社の価格が一致した場合,限界費用の安い企業 B が市場需要を独占
できると仮定する.この状況における各企業のナッシュ均衡価格・利潤を求めよ.また 2.4 の結果と比較し,その違
いを簡潔に述べよ.
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