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熊本市動物愛護センター「ハローアニマルくまもと市」
視察レポート
日時:平成26年8月22日(金)13:00~
場所:熊本県熊本市東区小山2丁目11-1
熊本市動物愛護センター「ハローアニマルくまもと市」
参加者:冨士岡剛、岡野英克、山口美佳、大西幸
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0.はじめに
全国で初めて動物の殺処分ゼロの取り組みを始めた熊
本市動物愛護センター(http://doubutsuaigo.hinokuninet.jp/)についての記録「ゼロ! 熊本市動物愛護セン
ター10年の闘い (集英社文庫)」を数人の管理人が読み感
銘を受けたこと、及びペット信託専門行政書士の服部薫
先生(http://www.fukuoka-animalgyouseisyoshi.com/)からの強い推薦もあり、同セン
ターの視察を計画、4人のGS管理人による視察を実施
した。
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1.GSの紹介
視察に先立ってセンターの方にGSの簡単な紹介文をFAXして
いたが、改めてGSのグループとしての成り立ち、理念、今後の活
動方針について、村上センター長に説明。
GSには現在4,300人を超えるメンバーが全国におり、同センター
のような実績のある自治体の取り組みを応援し、また協働できる事
業があれば協働していきたいということを伝える。
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2.熊本市動物愛護センターについて(スライド資料により説明)
村上所長より同センターの取り組みや実績についてスライドにより説明を受ける。細かい
統計等の説明は別添資料に譲るが、強調すべきは殺処分数の激減とそれに至る過程で行政、
民間(獣医師会、愛護団体、ペット業界等)との連携ができており、その根底には相互の信
頼関係があるということ。行政が法の縛りによってできない活動を民間が補い、逆に条例づ
くり等民間ではできないような部分を行政が補うといういい相互補完関係ができている。最
初は、どこの自治体でも同じように行政と民間の間の不信感からくる敵対関係であったが、
「不幸な命を減らしたい」という考えは共通であるという認識のもと協働がスピードアップ
し、試行錯誤を繰り返しながらも少しづつ実績をあげていき、理解や賛同を得ながら様々な
ところからのサポートも得られるようになっていった。
村上所長曰く「殺処分ゼロ」は目的ではなく、目標。最終的には同センターのような施設
が必要となる事を目指したいとのこと。また、動物に関する問題は地域のコミュニティが崩
壊しているという問題と地続きであり、同じ根っこから独居老人の問題、孤独死、いじめ、
環境問題として顕在化している。結局のところ、ご近所さんとの付き合いが希薄になった地
域コミュニティの問題が動物の問題にまで先鋭化している。昔のように動物を飼っている家
庭が普通にあって、お互いに迷惑をかけないよう互いに配慮した飼い方を心がけるような環
境があれば現在のような問題は格段に減ると思われる。
殺処分の数は順調に減少しているが、迷い犬等収容される頭数はずっと横ばいで、これは
迷子札をつけるなどといった簡単なことさえ面倒と考えてしない飼い主の問題が大きい。
とにかく、一人でも多くの人にセンターに来てもらい、見てもらって、知ってほしいとのこ
と。
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3.同センターの特筆すべき特徴や取り組み
・同センターの実績が全国の自治体から注目され、年間約50件の視察を受け入れている。
・持ち込まれた犬猫を安易に引き取らず、里親探しをするよう飼い主の説得を試みている。
・他の自治体で標準的に行われている二酸化炭素による殺処分を中止している。
・行政、民間のメンバーで構成された「熊本市動物愛護推進協議会」を中心として、行政・民
間それぞれの意見を集約、発展的な事業の取り組みを行っている。このような一体的な形式で
の取り組みをやっている自治体は他にはないと思われる。
・嘱託職員を7名雇用しており、うち5名がトリマー。収容された動物をトリミングすることで
譲渡の可能性が飛躍的に高まるという効果あり。
・取り組みに関する情報を報道を通じて発信し啓発につなげることにより、それがまたセン
ターの取り組みに反映されるといういい循環を生んでいる。
・協議会として迷子札推進の周知活動を行っており、カード、公用車、Tシャツなどを媒体と
してペットに迷子札をつけることを推進している。
・協議会のFBページを立ち上げ、譲渡対象犬猫について継続的に細かく情報を発信している。
(https://www.facebook.com/kumamoto.doubutsuaigo?fref=ts)
・同センター内にモデルルーム形式の部屋を設置し、猫の室内飼育の推進を図っている。
・平成21年度から、市内の小学校を対象に「ふれあい訪問教室」を開催し、感受性が豊かで情
報の吸収が早い子供を対象に動物愛護教育を推進している。
・このような取り組みは上司である市長の理解も得ているとのことで、協議会には年間30万円
の業務委託費が計上されているとのこと。
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4.施設見学(愛護棟、収容棟、管理棟)
吹き抜けになった中庭。屋外
なので日光浴もできます。
一頭一頭別れた入口から入っ
て順番を待っています。
芝生の上でエサをもらい、リ
ラックスできるドッグラン。
猫の室内飼育環境を教
える為のモデルルーム
研修室にある「迷子札運動」
のポスター。ここで視察研修
を受けます。
もちろんスタッフのT
シャツにも「迷子札運
動」の告知が。
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愛護棟全景。よく見る
病気(この犬は疥癬)
と肉球が。
が疑われる個体は隔離
して飼育される。
番号ではなく一頭一頭
名前をつけられ、丁寧
に飼育されている。
管理等入ってすぐのと
こには引き取られたね
こ達が。
これが悪名高き「ドリーム
ボックス」の操縦版。現在
は稼働していない。
収容棟の前にある死ん
でいった動物たちの慰
霊碑。
5.所感
まず思ったのは、「殺処分ゼロ」を達成するためには行政、民間それぞれの取り組みだけでは限界があ
るということ、そしてお互いがお互いの主張をしてばかりでは現状から先に進むことはできないというこ
とである。
それぞれの立場やできることが違うのは当たり前で、それを前提にお互いができない部分を補完し合っ
て初めて新しい取り組みができるいうことである。そのためには共通の理念、すなわち「不幸な命を減ら
す」ということを共有すればお互いの信頼関係が生まれ、そこから新しいことが生まれていく。
熊本市でも最初はいがみ合っていた行政と民間も「殺処分をゼロにしたい」と考える人がそれぞれにい
たからこそその具体的な行動として協議会の設立、啓発活動などにつながっていった。
そしてもう一つは、このような問題の解決には時間がかかるということである。理論上は法律を変えて
しまえば殺処分制度はすぐに廃止できるだろう。しかし、残念ながら殺処分制度を前提としたさまざまな
仕組みや利害関係が出来上がってしまっており、それらを覆すのは容易ではない。 実際問題として、G
Sが殺処分廃止に向けた活動を進めれば進めるほど様々なところからの抵抗も予想される。そのような抵
抗に対しての防波堤の役割を行政は担ってくれるということも忘れてはならない。したがって、行政との
関係は対立ではなくて協働でなければならない。
村上所長が言われていた「どんな職員も動物を殺処分なんかしたくない」という言葉は印象的で、それ
は行政・民間という垣根を超えて共通の認識である。そうであれば協働はそんなに難しいことではないし、
実際に熊本市はそれで殺処分を激減させることに成功している。
やるべきことはこのモデルを全国に広めていくこと、そして、行政も民間も自分たちの主張だけでなく
相手の意見も聞きながら同じ立場でやり方を考えていくことである。村上所長はまた「行政だけではでき
ない部分もたくさんある。そこは民間の方の力をお借りしたい。」と率直におっしゃっていた。その部分
はまさにGSができる部分だと考える。
とりあえずは、GSの存在と理念も認識してもらえたし、私たちも熊本市動物愛護センターの考えを理
解した。今後具体的にどのような活動をやっていけるかは分からないが、とりあえずお互いを知ったとい
うことは非常に貴重な一歩であることは間違いない。
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資料1:熊本市動物愛護センター犬・猫処分数(出典:「熊本市動物愛護センター視察用資料」)
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資料2:熊本市動物愛護センター犬・猫処分数(グラフ)(出典:「熊本市動物愛護センター視察用資料」)
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資料3:熊本市動物愛護センター新愛護棟完成記念式典フライヤー(表・裏)
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資料4:熊本動物愛護推進協議会の取り組み(抜粋)
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