認知症対策

時 の 話 題 ~平成26年度 第22号(H27.2.27調査情報課)~
近年我が国では、高齢者人口の増加に伴い、認知症の人が増加
している。国はこれまでも様々な認知症対策を進めてきたが、認
認知症対策
知症が原因と思われる事件や事故は後を絶たない。誰もが発症す
る恐れがある認知症の概要と、国や都における最新の対策につい
てまとめる。
1
概要
(1)認知症の原因
認知症の原因となる病気には、主に
(図1)認知症の原因
「アルツハイマー病」、「脳血管障害」、
「レビー小体病」の3つがあり、もっと
も多いのがアルツハイマー病で、認知症
の原因の6割を占める(図1)。
認知症の予防になる習慣には、日頃の
適度な運動や、他人との積極的な交流が
あるとされる。また、アルツハイマー型
認知症は、早期診断による投薬で、進行
出典:図1 福祉保健局「知って安心認知症」より
を遅らせることができる場合もある。
(2)男女別、年齢別の認知症有病率と認知症患者数の将来推計
平成 24 年時点の我が国における認知 (図2)平成 24 年時点の男女別、年齢別の認知症有病率
症の患者数は約 462 万人であり、65 歳
以上の高齢者人口に占める認知症有病
率の割合は、約 15%と推定されている。
その上で、認知症有病率を男女別、年
100%
女性
80%
60%
40%
齢別に詳しく見ると、男女共に 75 歳を
20%
境に有病率が大きく上昇すること、及び
0%
同じ年代では女性の方が有病率は高い
83.7%
100%
80%
43.9%
大きく上昇
24.2%
14.1%
3.8% 4.9%
2.8%
3.9%
11.7%
50.6%
35.0%
男性
16.8%
95~ (歳)
出典:図2 国立国会図書館「認知症対策の現状と課題」より
(表1)認知症患者数の将来推計
また、平成 24 年以降も各年齢層の認
年
知症有病率が一定と仮定した場合、平成
平成24年 平成37年 平成52年 平成72年
(2012) (2025) (2040) (2060)
37(2025)年の認知症患者数は約 675
認知症患者数
462万人
675万人
万人(高齢者人口の約 19%)、平成 72
65歳以上の
高齢者人口における
認知症有病率
15%
19%
にまで増えると推定されている(表1)。
49.0%
65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94
ことがわかる(図2)。
(2060)年には約 850 万人(同 25%)
65.1%
802万人 850万人
21%
25%
出典:表1 内閣府
「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」より作成
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(3)認知症の人を取り巻く社会問題
警察庁の資料から、平成 25 年中に全
(表2)行方不明者届の原因において
「認知症」が占める割合と増加率
平成24年
人数 構成比
国の警察に行方不明者届が出された者
を見ると、
「認知症」が原因とされた者
は 10,322 人で、全体の 12.3%を占め
た。また、対前年比の増加率は 7.4%と
なり、
「行方不明者届総数」の全体の増
加率 3.5%を大きく上回った(表2)。
また、独立行政法人国民生活センタ
ーによると、特に認知症等の理由によ
って、判断能力が不十分な状態になっ
行方不明者届
81,111人
総数
原因が
認知症
9,607人
100%
平成25年
対前年比
人数 構成比 増加人数 増加率
83,948人
100%
11.8% 10,322人 12.3%
2,837人
3.5%
715人
7.4%
出典:表2 警察庁「平成 2 5 年中における行方不明者の状況」より作成
(図3)認知症等高齢者の消費者トラブル相談件数
(件数)
11,499
12,000
9,643
10,000
7,400
8,000
ている 60 歳以上の高齢者(認知症等高
8,023
8,511
22年度
23年度
6,000
齢者)の消費者トラブル相談件数は増
4,000
2,000
加を続け、平成 25 年度には初めて1万
0
21年度
件を超えた(図3)。
24年度
25年度 (平成)
出典:図3 独立行政法人国民生活センター ホームページより作成
シンポ「認知症に優しいまち」 患者と家族 地域で見守る
認知症になっても住み慣れた地域で暮らせる街づくりを考えるシンポジウムが、埼玉県飯能市で開かれた。ベ
ルギーから来日した認知症の家族らが現地での取り組みを紹介した。
ベルギーの古都、ブルージュ市近郊で、夫を自宅で介護するエレナさん(62)はこの日、約 900 人の聴衆に語り、
家族への支援を訴えた。人口約 12 万人の同市では 2010 年から、NPO「フォトン」が中心となり、「認知症に優しい
街」の運動を進めている。同NPOの特徴は、認知症専門カウンセラーの存在だ。看護師や社会福祉士の有資格
者が定期的に家庭訪問し、当事者や家族のケアを担当する。徘徊(はいかい)対策にも取り組む。家族が事前に、
認知症の人の情報を記したファイルを用意。行方不明の際は、警察や関係機関にファイルを提供し、すぐに捜索を
始める体制を取っている。
老人ホームなどを運営する理事長の岡田京子さん(59)は、病院や施設に入らざるを得ない日本の現状に疑問
を感じ、4月にブルージュを視察。「日本でもこうした取り組みを広めたい」と、関係者に働きかけてきた。
(平成26年11月23日付 読売新聞より抜粋)
2
国の取組
(1)身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト
平成 26 年8月、厚生労働省は、身元不明の認知症高齢者
身元不明の認知症高齢者等に
関する特設サイト
等に関して、その捜索活動に資するよう、各自治体の関係
機関のホームページを集約した特設サイト、
「行方のわから
ない認知症高齢者等をお探しの方へ」を開設した。
なお都は、都内の全区市町村に対し、平成 27 年3月末ま
でに、当該区域内の身元不明者の情報について、それぞれ
のホームページ上で公開し、これを当特設サイトに掲載す
出典:厚生労働省ホームページより作成
るよう依頼している。
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(2)認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の策定
国は、厚生労働省が平成 24 年9月にまとめた「認知症施策推進5か年計画(旧オレンジ
プラン)」を改訂し、新たな国家戦略として平成 27 年 1 月に「認知症施策推進総合戦略~
認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」を策定した。新た
な総合戦略は、関係省庁が共同して策定し、団塊の世代が 75 歳以上となる平成 37(2025)
年までを対象期間として、様々な認知症対策に取り組んでいくとした。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の基本的な考え方と7つの柱
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で、自分らしく暮らし続ける
ことができる社会の実現を目指す。
(1)認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
認知症サポーター養成講座を修了した者が、復習も兼ねて学習する機会を設ける取組を推進
等
(2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
歯科医師・薬剤師の認知症対応力向上、新任の介護職員等向けの基礎研修の実施
等
(3)若年性認知症施策の強化
若年性認知症の人の居場所づくり、就労・社会参加等を支援
等
(4)認知症の人の介護者への支援
認知症カフェ(*)等の設置、介護ロボット・歩行支援機器等の開発支援
等
(5)認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
独居高齢者の安全確認や行方不明者の早期発見・保護を含めた地域での見守り体制の整備
等
(6)認知症の予防法、診断法、治療法、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
ビッグデータを活用して、地域全体で認知症予防に取り組む体系を開発
等
(7)認知症の人やその家族の視点の重視
認知症の人が必要と感じていることについて実態調査を実施
等
(*)認知症カフェとは、商店街の一角や、病院・介護事業者のスペースを利用して、医療や介護の
専門職、地域住民などが集い主体的に活動する場であり、自治体や民間でその運営が行われる。
「旧オレンジプラン」で普及がうたわれ、国や都の設置補助金が活用できる。
認知症カフェ 触れ合いと予防の場
認知症の人や家族を地域で支えられないだろうか―。専門医ら認知症のプロと連携しつつ、川崎市宮前
区の土橋町内会が主体となって始めた「土橋カフェ」。先月、手探りの開業から1年を迎えた。
昨年9月、同区の土橋会館で認知症カフェを始めた。同会館の二つの広間をぶち抜いた 50 畳ほどのスペ
ースが即席のカフェ。会費はお茶代の 100 円。おかわりは自由で、赤いエプロン姿のボランティアスタッフが
届けてくれるお茶やコーヒー片手に、あちこちでよもやま話に花が咲く。その様子は仲間同士で楽しむ地域
のコミュニティカフェそのもの。認知症の人や家族は 1 割程度。参加者の多くは地域のお年寄りで、おしゃべ
りの輪に加わってもらうことで認知症予防につなげる狙いもあるという。
「人間関係を築き、楽しんでもらうことは認知症に有効で、これを表の顔とすれば、問題解決のシナリオを
提示できる専門職の存在が裏の顔です」。カフェに立ち上げから関わってきた専門医の高橋さん(51)は話
す。この日も、談笑の合間に、数人のお年寄りがやってきて、それぞれ相談に応じた。初期の兆候が見られ
れば受診を促す。機会がなければ症状が進みかねなかった。 (平成26年10月3日付 朝日新聞より抜粋)
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3
都の取組
(1)若年性認知症総合支援センター
都は、若年性認知症(*)の人やその家族の相談を受けて、情報の提供、関係機関との
連携、各種手続きの支援を行うため、平成 24 年度に「東京都若年性認知症総合支援センタ
ー」を設置し(目黒区)、若年性認知症への対策を積極的に推進している。
(*)若年性認知症とは、18 歳から 64 歳までに発症した認知症疾患を総称して言う。我が国全体で、
約4万人、都内では約 4,000 人の若年性認知症疾患の患者がいると推計されている。
(2)
「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」の作成
都は、認知症の早期発見・診断・対応を進めるため、
「自分
パンフレット
「知って安心認知症」の表紙
でできる認知症の気づきチェックリスト」を平成 26 年5月に
作成した。同チェックリストは、パンフレット「知って安心
認知症」の中に掲載され、10 項目からなる質問に回答する形
で、本人や家族など身近な方が、認知機能や社会生活の支障
の有無を簡易に確認できる。
出典:福祉保健局ホームページより
(3)東京都長期ビジョン
都は、平成 26 年 12 月に策定した「東京都長期ビジョン」において、
「認知症高齢者グル
ープホーム」の定員増加に向けた施設整備、地域の保健医療・介護関係者等との連携の推
進などに向けた「認知症疾患医療センター」の指定数の増加などを掲げた。
東京都長期ビジョンにおける主な認知症対策の概要
数 値 目 標
その他の認知症対策
4
事項
目標年次
目標値
認知症高齢者グループホームの整備
平成37年度末
(2025)
(平成25年度末 8,582人分)
認知症疾患医療センターの設置
平成27年度末
(2015)
地域拠点型 12施設
地域連携型 41施設
定員2万人分
・ 東京都健康長寿医療センターに、
「認知症支援推進センター」を設置し、医療従事者等に対
する研修や、島しょ地域への訪問研修等を行い、地域の認知症対応力向上を図る。
・
区市町村に「認知症支援コーディネーター」を配置し、認知症の人とその家族の支援を行
うとともに、支援が困難で受診に結びつかない場合は、認知症疾患医療センターに配置する
医師、看護師、精神保健福祉士等で構成されるアウトリーチ(必要な援助を自発的に申し出
ない人々に対して、公共機関などが積極的に働きかけて支援の実現を目指すこと)チームが
訪問支援を実施して、診断につなげる。
今後の課題
認知症患者による様々な問題が深刻化する中で、国は新たな国家戦略を策定した。その
ような中で、認知症対策の柱となるのは、認知症の人ができる限り住み慣れた地域で、自
分らしく暮らし続けることができる社会の実現に向けた取組である。都は、区市町村や関
係機関との協力をより一層進めるとともに、認知症の人とその家族の視点に立った施策を
着実に進め、誰もが安心して暮らせる社会を実現しなくてはならない。
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