講演概要PDFファイル - 一橋大学商学部・大学院商学研究科

研究集会「非線形現象の数理」
- 流体力学・ 地球流体力学・ 気象学・ ウ ェ ーブレ ッ ト 解析・ 力学系 -
講演概要
(2014 年 12 月 24 日更新)
石本 健太(京都大学数理解析研究所)「精子遊泳と 受精のダイ ナミ ク ス: 流体力学的ア プロ ー
チ」
精子は鞭毛と 呼ばれる 細長い毛のよ う な 器官を 動かすこ と で流体中を 泳いでおり , 半世紀以
上も 前から 流体力学的解析が行われて き た . 本講演では, 生物の運動 に 関する 流体力学的
な 制限である 帆立貝定理を 紹介する 形で, ミ ク ロ ス ケ ールの流体力学を 概観し , 精子遊泳と
受精のダイ ナミ ク ス に 対する 流体力学的ア プロ ー チに ついて , 自身の最近の結果を 踏ま え
な がら 議論し た い.
長山 雅晴(北海道大学電子科学研究所)「自走粒子系に現れる 集団運動の数理解析」
樟脳溶液を ろ 紙に 染みこ ま せた樟脳ろ 紙を 複数個円環状水路に 浮かべる と , 集団運動と し て
玉突き 現象や渋滞現象が観察さ れる . こ れら の集団運動が出現する 機構を 数理科学的視点か
ら 明ら かに する . 具体的に は, 2 個の樟脳ろ 紙運動に 対する 数理モデルを 解析する こ と で樟
脳ろ 紙運動に 見ら れる 運動の発現機構を 明ら かに する . 次に , こ の解析結果から 3 個以上の
樟脳ろ 紙運動の出現機構を 議論する .
石岡 圭一(京都大学大学院理学研究科)「回転球面上の流体計算に関す る いく つかの話題」
回転球面上の減衰性 2 次元乱流の数値実験を 世界に 先駆け て 行っ た 研究と し て , Yoden and
Yamada (1993, JAS) は今でも 被引用件数の多い論文である . こ の論文に 関連し て , 講演者が
こ れま で行っ て き た 数値ラ イ ブラ リ の開発の経緯や , そ の応用例と し て の帯状流の安定性の
研究およ び浅水系強制乱流から の赤道ジェッ ト 形成の研究に ついて 紹介し た い .
芦野 隆一(大阪教育大学教養学科)「ウ ェ ーブ レ ッ ト 解析と そ の応用」
ウ ェ ーブレ ッ ト 解析と は, ウ ェ ーブレ ッ ト と 呼ばれる ひと つの波形から 平行移動と 拡大縮小
に よ っ て 生成し た波形を 使っ て 行う 時間周波数解析である . 本講演では, ウ ェ ーブレ ッ ト 解
析に 関し て 簡単に 概観し , ウ ェ ーブレ ッ ト 解析のブラ イ ン ド 信号源分離への応用に ついて 述
べる .
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國府 寛司(京都大学大学院理学研究科)「力学系の位相計算的時系列解析法と そ の気象学への
応用の試み」
力学系の位相計算的方法と は, (散逸) 力学系のパラ メ ータ 族に 対し , そ の相空間やパラ メ ー
タ 空間の大域的構造の粗い情報を , モース 分解や Conley 指数な ど の位相的概念・方法と 計
算機援用解析を 組合せて 与え る こ と を 指す. 講演者は, そ のア イ ディ ア を 力学系から 得ら
れる 時系列データ に 対し て 用いる こ と で, 力学系の情報が, 必ずし も 数理モデルに よ っ て
与え ら れて いな い場合に も , 同様の情報を 得る た めの方法を 模索し て いる . 力学系の時系
列解析法と し て は, 時間遅れ座標に よ る ア ト ラ ク タ の埋め込み定理に 代表さ れる Takens や
Sauer-Yorke ら の方法が良く 知ら れて いる が, 我々 の時系列解析の方法は, そ れでは取り 出
せな い不安定な 不変集合の情報を 取り 出せる と いう 意味で, 従来の方法を 補完する も のであ
る と 考え ら れる . こ の講演では, 我々 の試みのいく つかと , そ の方法の気象データ な ど への
応用事例を 紹介する .
米田 剛(東京工業大学大学院理工学研究科)「2 次元渦度方程式に対す る 数学解析: 三波相互
作用と Lagrangian deformation」
本講演では, 2 次元渦度方程式に 関する 最近の数学解析に ついて 紹介する . 一つ目は山田道
夫先生と の共同研究の紹介であり , フ ーリ エ級数展開に よ る 三波相互作用を 数学的に 追求し
て いる . 二つ目は Notre Dame 大学の Gerard Misiolek 氏と の共同研究の紹介であり , 2 次元
渦度方程式と Lagrangian deformation と いう 概念を 使っ て , オイ ラ ー方程式の局所非適切性
を 追求し て いる .
竹広 真一(京都大学数理解析研究所)「ガス 惑星大気の縞状パタ ーン について –回転転球面上
の 2 次元強制乱流と 回転球殻熱対流」
木星と 土星の表面に 見ら れる 縞状パタ ーン と そ れに 伴う 東西ジェッ ト 流分布の成因は , 惑星
表層のほぼ 2 次元的な 流体運動を 想定し た 「浅いモデル」 と , 惑星深部から の熱流に よ り 駆
動さ れる 熱対流を 表現する 「深いモデル」 の 2 種類の流体モデルでこ れま でに 研究さ れて き
て いる . こ れら 2 系統の研究の歴史を そ れぞれ振り 返り つつ最近の研究結果を 紹介する .
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岡本 久(京都大学数理解析研究所)「加藤敏夫先生 (1917–1999) のノ ート について 」
2011 年 3 月 11 日, 奇し く も 東日本大震災と 同じ 日に 加藤敏夫先生の未亡人であ る 瑞枝さ ん
がお亡く な り に な り ま し た. 加藤先生の研究日記・ ノ ート の類はそ の後紆余曲折を 経て , 現
在京都大学の岡本の研究室で保管し て おり ま す. そ の中から 皆さ んの興味を そ そ る と 思われ
る いく つかのお話を 紹介し よ う と 思いま す.
河原 源太(大阪大学大学院基礎工学研究科)「乱流現象への力学系ア プロ ーチ」
発達し た乱流およ び亜臨界乱流遷移現象に 対する , 力学系理論に 基づく ア プロ ーチに ついて
話題を 提供する . こ れま でに 得ら れた結果を 紹介する と と も に , 今後期待さ れる 結果に つい
て も 展望し た い.
大木谷 耕司( School of Mathematics and Statistics, The University of Sheffield)
「Euler 方程式の Clebsh 表示と そ の応用」
Clebsch potenial を 用いた 非線型性の低減の特徴づけ, およ び, そ の特異点集合の意味を 考
え る . 滑ら かな 渦度場が生成的な ゼロ 点を 持つ場合, そ の点の回り では Clebsch potential は
存在し な い事が知ら れて いる Graham-Henyey(2000). つま り , そ こ で Clebsch potential は
特異点を 持つ .
Taylor-Green 渦な ど 特殊な 初期値で具体的に Clebsch potential を いく つか構成し , 特異点
は, 上の条件以外でも 存在する こ と を 示す . そ の上で, 特異点集合を separatrix と 捉え る こ
と が出来る 事, さ ら に 渦線の Lagrange 的保存則から separatrix は Euler 方程式の時間発展
で保た れる 事を 示す . こ う し て , 本来運動学的に 決ま っ て いる 特異点集合の動力学的な 意味
を 考察する .
山田 道夫(京都大学数理解析研究所)「流れの安定性から のいく つかの話題」
流れの線形安定性理論に 端を 発し たいく つかの未解決の疑問に ついて 議論する . 数学や流体
力学では線形の安定性/不安定性の理由を 尋ねる こ と は少な いが, 気象学や宇宙物理な ど で
はし ばし ば不安定性の物理的理由が論じ ら れる . こ れは多く , 大域的性格を 持つ固有値問題
を 局所的な 力学で説明し よ う と する 試みである が, そ の説明の成功/不成功の理由がど こ に
ある のか, 茫洋と し て いる . 昔, 非線形力学やウ ェ ーブレ ッ ト に 興味を 持つ動機と な っ たこ
の問題を 含め, 解け な い疑問のいく つかを 議論し た い.
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