各 論 1 編 2 第1章 高齢者が元気で活躍する 70 歳現役社会づくり 我が国は、戦後の経済成長による生活水準の向上や、医療や福祉・介護制度の整備 により、世界に誇るべき長寿社会を築き上げてきました。我が国の平均寿命は、平成 25 年現在、男性 80.21 歳、女性 86.61 歳と、この半世紀で大きく伸びてきました。 60 歳以上を対象にした国の「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」では、 仕事をしたいと思う年齢についての質問に対し、 「70 歳ぐらいまで」、 「75 歳ぐらいま で」又は「働けるうちはいつまでも」と回答した人が併せて併せて6割を超えていま す。4人に1人が高齢者という時代になっていますが、多くの高齢者は元気で意欲に あふれています。 平成 25 年には 15 歳から 64 歳までの「生産年齢人口」が 32 年ぶりに8千万人を割 り込みました。生産年齢人口 2.5 人で1人の高齢者を支える騎馬戦型の人口構造とな っています。平成 37 年(2025 年)には2人で、平成 52 年(2040 年)には 1.5 人で 1人の高齢者を支える肩車型の時代がくると予測されています。 福岡県では、元気で意欲にあふれる高齢者の気持ちに応えるため、年齢に関わりな く、それぞれの意思と能力に応じて、働いたり、NPO・ボランティア活動等に参加 したり、活躍し続けることができる選択肢の多い「70 歳現役社会」づくりに取り組ん でいます。「70 歳現役社会」を実現することは、現役世代の負担の軽減にもつながり ます。 また、高齢者の雇用・就業機会の確保や職業能力の開発、社会参加の基盤づくり、 地域活動等への支援のほか、生涯学習の促進、文化・スポーツ活動の推進などに取り 組み、高齢者の活躍の場が広がるような環境づくりを進めます。 併せて、高齢者の社会参加の基本となる健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限 されることなく生活できる期間)を伸ばし、元気にいきいきと暮らせるようにするた め、生活習慣病の予防など、健康づくりを推進します。 1 高齢者の雇用・就業機会の確保 (1)多様な形態による就業機会の確保 県では、70 歳まで働ける企業の拡大や再就職支援、派遣やシルバー人材センター 等の多様な就労への支援など、「高齢者がいきいきと働くことができる仕組みづく り」を進め、高齢者の就業を促進します。 このため、平成 24 年4月に全国初の高齢者のための総合支援拠点「福岡県 70 歳 現役応援センター」 (福岡オフィス)を福岡市に開設し、平成 25 年5月には北九州 市に北九州オフィスを設置するとともに、筑後地区(久留米市)、筑豊地区(飯塚市) において定期出張相談を行っています。 33 【今後の取組】 ○ 70 歳まで働ける企業の拡大や高齢者向け求人開拓を行います。 ○ 再就職や派遣、シルバー人材センター等の多様な就労への支援などを進めま す。 ○ 行政、経済団体、労働者団体、高齢者関係団体、NPO法人・ボランティア 団体(以下「NPO等」という。)等により幅広く組織される「福岡県 70 歳現 役社会推進協議会」において、官民一体となって「70 歳現役社会」づくりを推 進します。 ○ 高齢者の就労や社会参加を促進するための拠点である「福岡県 70 歳現役応援 センター」において、各種事業の展開を図ります。 ※SOHO … Small Office Home Office の略 自宅や自宅近在の事務所等において、パソコン等の情報 通信機器を活用して企業からのアウトソーシング業務を 請け負う働き方 (参考) ● 福岡県 70 歳現役社会推進協議会 70 歳現役社会づくりに賛同する行政、経済団体、労働者団体、高齢者関係団体、 NPO等 17 団体によって構成される協議会 ● 福岡県 70 歳現役応援センター 高齢者の皆さんが多様な活躍の機会を得られるよう、就業や社会参加を支援す 34 る総合拠点です。 70 歳現役応援センターでは、「70 歳まで働ける企業」の開拓など高齢者の活躍 の場の拡大、専門相談員による就業からNPO・ボランティア活動まで多様な選択 肢の提案・仲介、企業向けセミナーや中高年従業員向けセミナーの開催に取り組み、 社会で活躍したい高齢者を総合的に支援しています。 また、高齢者が地域の子育て現場で活躍するため、 「ふくおか子育てマイスター」 の養成も行っています。 ● ふくおか子育てマイスターとは 高齢者が持つ豊かな知識や経験を活かして 「子育て支援の分野」で活躍いただくための 福岡県独自の制度です。 子育て支援に意欲のある60歳以上の人を対 象に、子どもの身体や心の発達、けがや病気 への対応、事故防止、相談ノウハウ、若い世 代の親との関わり方など計30時間の研修を行 い、修了者を「ふくおか子育てマイスター」 に認定します。 (2)中高年齢者の職業能力の開発 雇用情勢は着実に改善していますが、特に中高年齢者の再就職については、企業 が高い技能・技術・ノウハウを持つ人材を求めることが多いため、失業期間が長期 化する傾向にあります。 【今後の取組】 ○ 新たな職への就業が困難な中高年齢者に対し職業訓練を行い、ニーズに適合 した技能を修得させることにより、雇用の安定を図ります。 ○ 県立高等技術専門校において、早期再就職を目指す中高年齢者に対して、自 らの経験と技術・技能等を活かせるよう、6か月又は1年の職業訓練を実施し ます。 35 2 高齢者の積極的な社会参加の促進 (1)地域活動など社会参加の基盤づくり 高齢者になっても、社会や地域の中で役割を持つことによって、生きがいと喜び が生まれ、生活の満足感は高まります。また、退職後も健康で元気な高齢者が増え ており、多くの高齢者は、何らかの形で社会参加をしたいと考えています。 一方で、各地域では、世代間交流の希薄化や地域コミュニティの弱体化等によっ て、地域の活力が失われつつあり、地域が持っていた助け合い、支えあう共助の機 能が低下しています。 このような中で、元気な高齢者には、希薄となった世代間の交流や、援助を必要 とする人々への支援を行うボランティアなど、「支える側」としての役割が期待さ れています。 このため、身近な地域において、高齢者が生きがいをもって活躍できる場の拡充 を図り、高齢者の社会参加を進めるとともに、地域活動を活発化させることによっ て、共助社会づくりを推進します。 【今後の取組】 ○ 県内で 26 万人の会員を有する老人クラブの活性化を図るとともに、老人クラ ブが行う趣味やスポーツ活動、友愛訪問活動等を支援し、高齢者の「生きがい づくり」、「健康づくり」、「仲間づくり」を進めます。 ○ 福岡県NPO・ボランティアセンターにおけるNPO法人の設立から認証、 運営、活動までの一貫した支援や、情報誌「Con te」やホームページ「ふ くおか協働ひろば」を通したNPO等の活動等に関する情報提供やボランティ ア募集情報の幅広い発信を行います。 ○ 福岡県 70 歳現役応援センターにおいて社会参加を希望する高齢者の相談に応 じ、NPO・ボランティア活動や地域活動などの情報提供、仲介を行います。 ○ 高齢者の地域づくり活動への参画を促進するために、市町村が実施する事業 に対して支援します。 (2)生涯学習の促進 生涯学習のニーズについては、自分の余暇を楽しもうとする人から、地域課題の 解決に取り組もうとする人、就業のための知識・技術の習得や資格の取得を目指し ている人まで、多岐にわたっています。高齢者をはじめ、県民が豊かな人生を送れ るよう、だれもがその生涯を通じて、学習したいときに学習に取り組める環境づく りが必要となっています。 36 【今後の取組】 ○ 行政機関や大学、民間企業など様々な機関や組織が提供している生涯学習に 関する情報を一元的に提供するホームページ「ふくおか生涯学習ひろば」の一 層の充実や、学んだ成果を地域課題の解決につなげるための学習機会の提供な どにより、県民が学習したいときに学習に取り組める環境をつくります。 (3)高齢者のスポーツ・文化活動の促進 はつらつとした高齢社会を実現するためには、スポーツや文化活動を通じた高齢 者の「生きがいづくり」、「健康づくり」、「仲間づくり」を支援するとともに、世代 を超えた交流を深め、社会参加を促進することが大切です。 このため、 「福岡県ねんりんスポーツ・文化祭」の開催などに取り組んできました。 【今後の取組】 ○ 子どもから高齢者まであらゆる年齢層の人々が、「いつでも・だれでも・気軽 に」、それぞれのライフスタイルに応じたスポーツを実施できるよう、 「多種目・ 多世代・多志向」という特徴を持つ総合型地域スポーツクラブの育成・支援に 努めます。 ○ 「福岡県ねんりん・スポーツ文化祭」の開催をはじめ、市町村やスポーツ・ 文化関係団体等と連携し、高齢者が参加できるスポーツ・文化イベントの開催 を推進します。 ○ 高齢者の健康と福祉の祭典である「ねんりんピック」(全国健康福祉祭)に、 県選手団を派遣します。 37 3 健康づくりの推進 (1)「いきいき健康ふくおか 21」の推進 県民の平均寿命は、公衆衛生の向上や医学の進歩等により年々延びていますが、 それに伴い、糖尿病等の生活習慣病になる人や介護を必要とする人も増えています。 健康で自立して暮らすことができる期間である「健康寿命」を伸ばすためには、 生活習慣病を予防するとともに、高齢者になっても可能な限り社会生活を営むため の機能を維持することが重要です。 また、高齢期に現れる運動器等の機能の低下を遅らせるため、高齢者の状態に応 じた健康づくりの推進が必要です。 このようなことから、県民の健康寿命を延ばすことを目的として、健康増進法に 基づき「いきいき健康ふくおか 21」(福岡県健康増進計画)を策定し、生活習慣改 善の目標値を掲げるなど、県民の自主的な健康づくりを支えるための環境づくりを 推進してきました。 【今後の取組】 ○ 「いきいき健康ふくおか 21」(平成 25 年3月改訂)に基づき、生活習慣の改 善や生活習慣病の発症予防と重症化予防に取り組むとともに、県民の自主的な 健康づくりを支えるための環境づくりを推進します。 ○ ロコモティブシンドローム(運動器症候群)(以下「ロコモ」という。)につ いて、 「福岡県健康ポータルサイト」でロコモの自己チェックやロコモに関する 知識・予防のための簡単な運動(ロコトレ)を紹介するとともに、県が養成し たロコモ予防推進員による普及啓発を行い、高齢者の健康づくりを推進するな ど、市町村の介護予防に対する支援等に取り組みます。 (2)特定健診・保健指導等の促進 糖尿病等の生活習慣病患者や要介護者が増加する中で、医療保険者に対し、40 歳 から 74 歳までの被保険者及び被扶養者を対象として、生活習慣病の予防に着目し た「特定健康診査」及び「特定保健指導」の実施が義務づけられています。 生活習慣病の予防には、できる限り多くの県民に特定健康診査を受診してもらい、 適切な保健指導を実施することが大切であり、多くの県民が集まる場において、健 診の受診勧奨を行うとともに、特定保健指導従事者研修会を開催するなどして、保 健指導の効果を上げてきました。 また、75 歳以上の人については、後期高齢者医療広域連合において、健康診査及 び保健事業が行われています。 38 【今後の取組】 ○ 市町村が行う特定健康診査及び特定保健指導にかかる費用を一部負担します。 ○ 特定健康診査の受診率や保健指導の実施率を向上させるため、多くの県民が 集まる場(イベント等)において福岡県健康ポータルサイトの健康チェックを 体験してもらうとともに、生活習慣改善メニューの紹介や健(検)診の受診勧 奨を行っていきます。 ○ がん検診や特定健康診査を同時に受診できる総合健診を実施する市町村を増 やすとともに、市町村や保険者協議会における取組などを支援します。 (3)健康増進事業の促進 県内の市町村においては、住民の健康の増進を図るため、健康増進事業として、 ①40 歳以上の住民に対する健康手帳の交付、②40 歳から 64 歳までの住民に対する 生活習慣の改善のための健康教育・健康相談及び心身機能の低下を予防するための 機能訓練・訪問指導、③40 歳以上の医療保険に加入できない住民に対する健康診査、 ④がん検診が実施されています。 県では、これまで市町村が実施する健康増進事業に助成するとともに、地域の特 性を踏まえて円滑かつ効果的に実施されるよう、市町村に対して必要な助言、技術 的支援、連絡調整等を行ってきました。 また、事業所等の保険者や医師会等の地域の健康づくり関係団体、行政機関等で 構成する地域・職域連携会議等を通じて、特定健康診査・特定保健指導との連携を 図ってきました。 【今後の取組】 ○ 市町村が実施する健康増進事業に助成するとともに、地域の特性を踏まえて 円滑かつ効果的に実施されるよう、市町村に対して必要な助言、技術的支援、 連絡調整を行っていきます。 ○ がん検診については、「福岡県がん対策推進計画」に基づき、がん検診受診 率の更なる向上に努めます。 39
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