地域福祉再構築推進事業中間報告書

平成26年度地域福祉再構築推進事業中間報告書
平成27年3月
秋
田
県
目
次
はじめに
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
・・・
1
今後の地域福祉推進における重点課題
1 総合相談支援窓口の整備
2 多職種横断的連携システムの構築
3 制度外ニーズ対応システムの構築
4 公私協働によるアウトリーチ体制の整備
5 地域福祉を推進する専門職の養成と配置
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
2
3
4
5
6
6
・・・
7
地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
地域福祉再構築推進モデル事業の取組
1 モデル事業の概要
2 モデル地区の取組状況
(1)実施事項に基づく取組の状況
① 総合相談支援窓口の整備
② 多職種横断的連携システムの構築
③ 制度外ニーズ対応システムの構築
④ 公私協働によるアウトリーチ体制の整備
・・・ 8
・・・11
・・・11
・・・11
・・・14
・・・17
・・・20
⑤ 地域福祉を推進する専門職の養成と配置
⑥ 地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
(2)テーマ別実践事例
① アウトリーチによる取組事例
② 制度の狭間の問題への対応事例
③ 住民の力を高めるための取組事例
④ 多問題家族への対応事例
3 重点課題への取組に関する評価
・・・23
・・・26
・・・29
・・・29
・・・33
・・・38
・・・42
・・・45
関係機関との情報共有のための連携シート参考例
1 横手市社会福祉協議会「心配ごと相談カード」
2 美郷町社会福祉協議会「アセスメントシート」
3 藤里町社会福祉協議会「報告・連絡・相談 受付書」
・・・47
・・・48
・・・49
地域福祉再構築推進事業検討委員会の開催状況
1 委員会設置要綱
2 委員会開催状況
3 委員名簿
・・・52
・・・53
・・・53
は
じ
め
に
現在地域では、超高齢・少子社会の進展に伴い、地域社会や家庭機能の変化、さらに経
済情勢の厳しさなどから、社会的孤立の問題や経済困窮など深刻な生活福祉課題が山積し
ている。これまで社会保障や社会福祉制度は様々な課題に対応すべく発展してきたが、地
域社会におけるつながりの喪失、社会的孤立などに起因する課題については、十分対応し
きれていない状況にある。
こうした中、地域包括ケアシステムを地域の特性に合わせて構築していくために、県で
は平成25年度に地域福祉再構築研究会を設置し、県内における地域福祉の現状と課題を
整理しながら、課題の解決に向けて、総合相談窓口機能や制度横断的な関係機関の連携の
あり方、生活支援のための仕組みづくり、関係機関が果たすべき役割等について議論を重
ねたところである。
そこでの議論については「平成25年度医療・介護・福祉ネットワーク構築事業地域福
祉再構築研究会報告書『地域福祉の再構築に向けて』」(以下、「研究会報告書」という。)
としてまとめ、地域福祉をめぐる現状と課題、今後地域福祉が目指すべき方向性を示した
上で、主な課題と今後の取組、それに対する関係機関の役割等について整理している。
平成26年度は、研究会報告書で示した実践の具現化を目指し、モデル地区を3ヵ所指
定して重点課題を中心に2年間で地域の生活課題に関する総合相談支援機能の充実と課題
解決の仕組みづくりに着手したところであり、その1年目の取組を中間報告書としてまと
めたところである。
なお、モデル地区の実践は平成27年度までの2年間を予定しており、1年目にあたる
平成26年度は準備段階とも言える取組状況であるため、本報告書では課題の整理が中心
となっている。しかしながら、各地域で取組を進めるにあたり、先行事例の課題を理解す
ることは大切であり、その後の成果を評価するうえで欠かせないものと考える。
それぞれの地域によって、地域福祉の状況や抱えている課題、またその解決策は様々で
あるが、本報告書が一助となり地域包括ケアシステムの強化につながることを期待する。
1
Ⅰ
今後の地域福祉推進における重点課題
研究会報告書では、地域福祉をめぐる現状認識と課題、目指すべき方向を踏まえ、次の
6項目を今後の地域福祉推進における重点課題として掲げている。
1
総合相談支援窓口の整備
【主な課題】
・相談窓口がたくさんあり、どこに相談していいのかわからない
・相談機関同士の連携が取れていない
【今後の取組】
〇市町村ごとに、多様な相談にワンストップで対応できる総合相談支援窓口を整備する
〇既存の相談機関同士の連携を強化する
〇複合ニーズ世帯の支援において活用できる相談受付票やアセスメントシートを整備
する
社会福祉に関する法制度は対象別に整備されていることから、地域には様々な相談窓口
が設置されている。
県内の市町村における相談窓口についても福祉担当課は対象者別に細分化されており、
さらに高齢者支援は地域包括支援センター、障害者支援は社会福祉法人等による相談支援
事業所、児童や子育てに関する相談や支援は児童相談所や子育て支援センターで対応して
いる。その他社会福祉協議会においても民生委員等と連携した相談支援を行っているが、
住民にとっては、どの相談窓口がどのような支援をしてくれるのか分かりにくく、また相
談窓口の細分化は多問題を抱える世帯にとっては、それぞれの窓口で相談や手続きを行わ
なければならないことになる。
こうした問題を解決するため、住民からの相談をワンストップで受け止め、対応する総
合相談支援窓口の整備が求められるとともに、窓口の名称は住民にとって具体的で分かり
やすいものが望ましい。
また、物理的にワンストップの相談窓口を設置できなくても、各機関の連携を強化する
ことにより、どこに相談に行っても適切な機関につなぐ仕組みの構築を目指す。
さらには、支援において活用できる相談受付票や世帯アセスメントシート等の整備も必
要である。
2
2
多職種横断的連携システムの構築
【主な課題】
・複合ニーズ世帯に対する支援において、制度による縦割り支援になっている
・福祉や介護以外の他領域の専門機関(保健・医療・教育・司法等)との連携が十分と
れていない
【今後の取組】
〇地域包括支援センターにおける「地域ケア会議」を活用し、関係機関の連携強化を図る
〇関係機関によるネットワーク会議や個別のケース検討会等の開催によって関係者間の
横断的な連携強化を図る
〇関係機関との情報共有を図るための連携シートを整備する
〇関係機関と個人情報管理のためルールを定める
地域の中には、多様な問題を抱えている複合ニーズ世帯がある。こうした世帯に対して
は、関係機関の横断的連携による支援が不可欠であるが、社会福祉に関する法制度では、
世帯全体に対する支援をコーディネートする専門職は明確に位置づけられていない。
現状は、相談を受けた専門職が適切な機関等につないでいるものの、専門職の意識や力
量に頼るのではなく、システムとして明確に整備していくことが必要である。
そのためには、まず様々な専門職がお互いに顔と名前がわかり、相手の業務を理解して
いる関係性を構築することが求められ、こうしたことを具体的に進める機会として、地域
包括支援センターが開催する「地域ケア会議」等を活用していくことも有効である。
また、全国的には市町村社会福祉協議会に関係機関の連携をコーディネートするコミュ
ニティソーシャルワーカーを配置する先進的な取組を行っている地域もある。
大阪府では、概ね中学校区毎に1名のコミュニティソーシャルワーカーを配置し、横断
的連携を図っている。その中でも豊中市社会福祉協議会では、コミュニティソーシャルワ
ーカーが中学校区毎に「地域福祉ネットワーク会議」を年2回程度開催し、地域包括支援
センター、障害相談支援機関などが連携し、地域の特性に合った生活問題の支援方策につ
いて検討を行っている。
さらに、問題を抱えている世帯の状況について専門職による気づきを記録する連携シー
トを整備することにより、多様な生活問題の掘り起しにつながるとともに、どのように支
援したのか等の対応の経過について、支援に関わる関係機関による情報共有を促進するこ
とが期待できる。
なお、情報共有に当たっては、あらかじめ関係機関との個人情報管理のためのルールを
定める必要がある。
3
3
制度外ニーズ対応システムの構築
【主な課題】
・制度の狭間の問題に十分対応できていない
・地域の助け合いからこぼれ落ちているニーズに対して専門職が十分対応できていない
【今後の取組】
〇専門職や住民の気づきを所属組織内や地域全体で集約する仕組みを作る
〇制度の狭間の問題への対応を検討する場として、市町村レベルで部署横断的な「生活
支援総合調整会議」(仮称)を設置する
〇制度外のニーズに対応した新たな仕組みや支援サービス等を開発する
行政機関は法制度に基づいた支援を行うことが本来的な役割であるため、その法制度の
枠にあてはまらないニーズに対しては十分に対応できない。そのため、市町村レベルにお
いて制度外ニーズへ対応できるシステムを作ることが求められる。
そのため、福祉専門職が業務を通して把握した制度外ニーズへの気づきや、住民が暮ら
しの中で感じた気づきを集約する仕組みが必要であり、具体的には、そうした気づきを記
録する様式、そして対応策を検討する場の設定が重要となる。
全国的には、先進的な取組として行政の福祉関係部局(高齢、障害、子ども、生活保護
等)、消費生活、雇用、消防、警察等の関係機関の長が参加し、既存の制度では解決できな
い生活問題の情報共有を目的とした総合調整会議を行っている地域がある。このような「生
活支援総合調整会議」
(仮称)の設置を市町村レベルで進めることが考えられる。また、中
山間地域等では近隣市町村と合同で開催することも考えられる。
また、制度外ニーズへの対応では、例えば、除排雪、安否確認、買い物支援、生活交通、
日常家事支援など地域が抱える様々な問題に対して、その地域にある社会資源を活用しな
がら、新たな仕組みを開発していくことが求められる。
その場合、制度外であるが故に行政機関内で新たな仕組みの開発担当者を決めることが
できないことも考えられ、コミュニティソーシャルワーカーを市町村社会福祉協議会や地
域包括支援センター等に配置して、新たな仕組みの開発に係るコーディネートを業務の一
つとして明確に位置づけることが必要である。
4
4
公私協働によるアウトリーチ体制の整備
【主な課題】
・問題を抱えていても専門職等に相談できない、あるいは相談しない住民がいる
・周囲への気兼ねなどから福祉サービスの利用を控える住民がいる
【今後の取組】
〇介護支援専門員、保健師、ホームヘルパー、民生委員、福祉員など家庭訪問を行う機
会が多い専門職等が、世帯全員や地域の状況に一層目を配り、地域に潜在化する問題
を把握し相談機関につなぐ仕組みを作る
〇住民座談会等により、地域に潜在化する問題に対する地域住民の気づきを高める
〇専門職や住民の気づきから家庭訪問を行い、問題解決につなげていく
相談窓口を設置しても拾い上げることができないニーズがある。相談することができる
人々は、相談する力がある人々だということを考えると、相談できない、あるいは相談し
ない人々のニーズは地域の中で埋もれてしまうことになる。
そのため、支援者がニーズを持つ人々へ出向いていくアウトリーチが重要となる。公的
支援の必要性があるにもかかわらず、相談窓口につながらずに地域で埋もれてしまう人々
は、①支援の要請ができない、②支援の存在を知らない、③支援対象になっていない、④
支援を受ける必要性を感じていない、⑤支援を受けたくない、という人々である。
こうした人々のニーズに気づくことができるのは、近隣住民や民生委員、ライフライン
事業者等であり、その気づきの視点を養うとともに、気づきをどの専門職につなげばよい
かを明確にしておくことが求められる。
また、対象者の中には、近隣住民との関わりを拒む者もいる。そうした場合は、専門職
からのアウトリーチが必要である。専門職もまた日常的な家庭訪問を通して、家庭内にあ
る問題に気づき、必要な機関につなぐことが求められる。
これまでも民生委員や市町村社会福祉協議会等による家庭訪問が行われてきたが、対象
世帯の増加により既存の体制では対応が困難になってきていることから、より広く地域内
の公私協働によるアウトリーチ体制を整備することが必要である。
5
5
地域福祉を推進する専門職の養成と配置
【主な課題】
・横断的連携をコーディネートする専門職が地域にいない
・地域福祉を推進する専門職の力量が十分でない
・地域福祉を推進する専門職の必要性が十分理解されていない
【今後の取組】
〇市町村社会福祉協議会等へコミュニティソーシャルワーカーの配置を進める
〇コミュニティソーシャルワーカーや行政職員を対象とした研修の実施と資質の向上
多様な問題を抱える複合ニーズ世帯や制度外のニーズに対応していくためには、横断的
連携による支援が不可欠であり、その連携をコーディネートする専門職の配置を市町村の
地域福祉計画などに明確に位置づけていくことが必要である。
こうしたコーディネート機能を有する専門職について、国では「地域福祉のコーディネ
ーター」という名称で配置の提言を行っており、本県においては「コミュニティソーシャ
ルワーカー」という名称で、平成17年度から秋田県社会福祉協議会が市町村社会福祉協
議会職員や社会福祉施設職員等を対象に養成研修を行ってきた。
コミュニティソーシャルワーカーは、地域にある多様な生活福祉問題を把握し、関係機
関につなぐとともに、必要に応じて住民や関係機関との連携により生活支援の仕組みを作
る役割を担う専門職であるが、現状は養成研修修了者が携わる業務は様々であることから、
今後はより明確にコミュニティソーシャルワーカーとしての専門性を発揮できる配置が望
まれるとともに、市町村への配置に当たっては、養成研修修了者を中心に、概ね旧市町村
単位又は中学校区を単位として体制を整えることが望ましい。
また、コミュニティソーシャルワーカーの専門性や資質の向上のための研修機会の充実
や、社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格の取得についても支援することが必要で
あるとともに、資格取得後は自ら社会福祉士会や精神保健福祉士協会などの職能団体へ加
入し相互に研鑽を積むことも資質向上を図るうえで重要である。
さらに、コミュニティソーシャルワーカーの配置やその後の円滑な活動に当たっては市
町村の理解と協力が欠かせないことから、行政職員へも研修等の機会を通じてその役割・
機能、必要性への理解を図っていく必要がある。
6
6
地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
【主な課題】
・過疎化・高齢化等により住民活動の担い手確保が難しい
・市町村地域福祉計画は11市町村が策定済み、市町村社会福祉協議会による地域福祉
活動計画は17市町村社協が策定済み(平成25年3月末現在)
【今後の取り組み】
〇小学校区あるいは町内会・自治会、集落単位で地域福祉を住民主体で進める「地区社
会福祉協議会」や「町内会福祉部」等の設置と福祉員の養成・配置を進める
〇地域福祉計画と地域福祉活動計画の策定を進める
これまで地域における住民の福祉活動は高齢者や専業主婦などを中心として展開されて
きたが、本県では高齢化、人口減少、核家族化、共働き世帯の増加等により、住民活動の
担い手の確保が難しいほか、担い手自身の高齢化も進んでいる。こうしたことから、新た
な担い手の発掘が求められており、企業や団体の就労者、子どもたちも含めて、その地域
の様々な人々が協働できる仕組みを新たに作る必要がある。
具体的には小学校区域や中学校区域に「地区社会福祉協議会」のような住民組織を設立
又は再構築していくことや、町内会・自治会単位で地域福祉を進める「町内会福祉部」を
設置し、その組織化にあたっては、市町村社会福祉協議会等による支援が重要となる。
こうした支援については、市町村が策定する地域福祉計画や、市町村社会福祉協議会が
策定する地域福祉活動計画の中に明記していくことにより、支援体制を整備していくこと
が求められる。
7
Ⅱ
地域福祉再構築推進モデル事業の取組
1 モデル事業の概要
(1)事業の目的
平成26年度にとりまとめた研究会報告書を踏まえて、モデル地区を指定して地域に
おける生活課題に関する総合相談支援機能の充実と課題解決の仕組みづくりに取り
組むとともに、全県域への波及を目指す。
(2)事業内容(モデル地区の取組内容)
モデル地区が実施する内容はアからカに掲げる事項とする。ただし、アからウは各事
項少なくとも1項目実施するものとし、エからカはその取組状況に応じて段階的に目
指すものとする。
① 総合相談支援窓口の整備
ア 多様な相談にワンストップで対応できる総合相談支援窓口を整備する。
イ 既存の相談機関同士の連携を強化する。
ウ 複合ニーズ世帯の支援において活用できる相談受付票やアセスメントシート
を整備する。
② 多職種横断的連携システムの構築
ア 地域包括支援センターにおける「地域ケア会議」を活用し、関係機関の連携
強化を図る。
イ
ネットワーク会議や個別のケース検討会等の開催により、関係者間の横断的
な連携強化を図る。
ウ 関係機関との情報共有を図るための連携シートを整備し、個人情報管理のた
めのルールを定める。
③ 制度外ニーズ対応システムの構築
ア 専門職や住民の気づきを組織内や地域で集約する仕組みを作る。
イ 制度の狭間の問題への対応を検討する場として、市町村レベルで部署横断的
な「生活支援総合調整会議」(仮称)を設置する。
ウ 制度外のニーズに対応した新たな仕組みや支援サービス等を開発する。
④ 公私協働によるアウトリーチ体制の整備
ア 家庭訪問を行う機会が多い専門職等が、地域に潜在化する問題を把握して相
談機関につなぐ仕組みを作る。
イ 住民座談会等、地域に潜在化する問題に対する地域住民の気づきを高めるた
めの場づくりを行う。
ウ 専門職や住民の気づきから家庭訪問を行い、問題解決につなげていく仕組み
を作る。
⑤ 地域福祉を推進する専門職の養成と配置
ア コミュニティソーシャルワーカーの配置を進める。
イ
コミュニティソーシャルワーカーの養成と資質向上を図る。
8
⑥ 地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
ア
「地区社会福祉協議会」や「町内会福祉部」等、住民主体で地域福祉活動を
進める組織を設置する。
イ 福祉員の養成・配置を進める。
ウ 地域福祉計画と地域福祉活動計画の策定を進める。
(3)事業の対象
県内市町村、市町村社会福祉協議会及び地域包括支援センターから申請のあった3カ
所を指定する。ただし、各市町村1カ所とする。
(4)指定期間
モデル地区として指定する期間は2年とする。
(5)秋田県社会福祉協議会の役割
秋田県社会福祉協議会は、当事業を秋田県から受託し、次の事項を中心にモデル地
区を支援する。
① 事業実施に関わる情報提供
② 専門家による実地指導等の調整・実施(年2回)
③ 人材育成のための研修会開催(広域開催)
④ モデル地区の実践事例等の収集
⑤ 委員会開催による事業の検証
⑥ 実地経過及び成果の普及・拡大
(6)事業の経費
事業実施に関わる経費はモデル地区が負担するものとする。ただし、(5)②に関す
る経費(謝金・旅費)は秋田県社会福祉協議会が負担するものとする。
(7)モデル地区の決定
県内の対象機関に対して、平成26年5月19日付けでモデル地区募集に関する通知
を行い、次の3ヵ所から申請を受理する。
その後、申請内容を精査のうえ、6月30日付けで申請があった機関全てをモデル地
区に指定することに決定。
・モデル地区:横手市、藤里町、美郷町
・実施主体:横手市社会福祉協議会、藤里町社会福祉協議会、美郷町社会福祉協議会
9
(8)モデル地区の実施予定項目
実施事項
実施予定項目
横手
藤里
美郷
多様な相談にワンストップで対応できる総合相
談支援窓口を整備する。
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
○
○
○
○
-
○
○
-
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
○
○
○
-
○
○
○
ア
①総合相談支援
窓口の整備
イ
既存の相談機関同士の連携を強化する。
ウ
複合ニーズ世帯の支援において活用できる相談
受付票やアセスメントシートを整備する。
ア
②多職種横断的
連携システム
の構築
地域包括支援センターにおける「地域ケア会議」
を活用し、関係機関の連携強化を図る。
イ
ネットワーク会議や個別のケース検討会等の開
催により、関係者間の横断的な連携強化を図る。
ウ
関係機関との情報共有を図るための連携シート
を整備し、個人情報管理のためのルールを定める。
ア
③制度外ニーズ
対応システムの
構築
専門職や住民の気づきを組織内や地域で集約す
る仕組みを作る。
イ
制度の狭間の問題への対応を検討する場として、
市町村レベルで部署横断的な「生活支援総合調整会
議」
(仮称)を設置する。
ウ 制度外のニーズに対応した新たな仕組みや支援
サービス等を開発する。
ア
④公私協働による
アウトリーチ
体制の整備
家庭訪問を行う機会が多い専門職等が、地域に潜
在化する問題を把握して相談機関につなぐ仕組み
を作る。
イ 住民座談会等、地域に潜在化する問題に対する地
域住民の気づきを高めるための場づくりを行う。
ウ
専門職や住民の気づきから家庭訪問を行い、問題
解決につなげていく仕組みを作る。
ア
⑤地域福祉を推進
する専門職の養
成と配置
コミュニティソーシャルワーカーの配置を進め
る。
イ
コミュニティソーシャルワーカーの養成と資質
向上を図る。
ア
⑥地域を基盤とし
た住民活動の支
援体制の整備
「地区社会福祉協議会」や「町内会福祉部」等、
住民主体で地域福祉活動を進める組織を設置する。
イ
福祉員の養成・配置を進める。
ウ
地域福祉計画と地域福祉活動計画の策定を進め
る。
10
2
モデル地区の取組状況
(1)実施事項に基づく取組の状況
① 総合相談支援窓口の整備
総合相談支援窓口の整備
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○身近な相談窓口として相談事業を実施している。
・心配ごと相談所事業(市内 8 カ所で月 1 回の実施)
・無料法律相談所事業(毎月 1 回が 1 ヵ所、年 4 回 7 ヶ所)
○行政や関係機関と連携し、福祉課題の解決に対応している。
・各福祉センターの他機関との連携に関する調査と相談対応時の受付カード等の状況調査
○他機関相談業務部門とのネットワーク会議等に参画し、情報共有を図っている。
・横手地域生活福祉・就労支援協議会(主催:ハローワーク)
・法テラス秋田地方協議会(主催:法テラス)
・自立支援協議会(主催:横手市)
・横手地区相談機関等ネットワーク連絡会議(主催:横手警察署)
・平鹿地域自殺予防ネットワーク協議会(主催:県平鹿地域振興局)
○在宅介護支援センター事業
実施にあたっての課題
○他機関相談部門と連携の必要性について認識に差がある。
○相談受付記録表、事例報告様式等の整備や一本化が必要である。
○専任相談員及び職員によって、相談対応の判断や解決方法(つなぎ)に差があると思われる。
今後の取組(予定)
○他機関相談業務部門や関係機関との連携強化でワンストップによる相談対応を進める。
○チームアプローチを意識し、ワンストップでの解決への取り組みを進める。
○相談受付カードやアセスメントシートの整備による情報の共有化を図る。
○職員のスキルアップを図るため、個別支援ケース検討や研修を進める。
11
総合相談支援窓口の整備
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○地域包括支援センターと地域活動支援センターを受託し、社協の相談業務や指定相談支援事業
所業務と連携することで相談窓口を一本化してワンストップ対応をしており、そのうえで行政
や他機関と連携している。
→窓口に来た相談者には伴走型相談支援により寄り添っているほか、窓口に来られない人への
アウトリーチ支援についても随時行っている。
ツールとして報告・連絡・相談用紙を活用している。
○専門相談所を月1回開設している。
→弁護士・保健師・社会福祉士等の専門職が相談対応
○相談の受付の段階では、報告・連絡・相談用紙等のシンプルな様式を使用し、相談支援の了解
を得た時点で、個別に高齢者・要介護者、障害者等の区分のもと、それぞれの制度に基づく様
式を使用している。制度の対象にならない場合のみ、社協独自の用紙を使用。
例)一人暮らし高齢者・高齢者のみ世帯等はネットワーク活動事業の福祉カルテを、障害のな
いひきこもり者等には日本地域福祉研究所の「マイいきいきプラン」を使用。
※多問題家族の場合、家族全体の情報を記録するシートを作っても、初回対応者あるいは受け
付けた機関によって視点が異なるため、家族一人一人の個別支援シートを作成し、それをす
り合わせることで共通項や妥協点を探る視点が必要。
実施にあたっての課題
○福祉の制度で対応できない相談が増えており、多重債務やギャンブル等による生活困窮やひき
こもり等の深刻な事例が多い。福祉の立場として「その他の相談」という受け止め方では事態
を深刻化・悪化させる懸念を感じている。
→その他の支援ではなく、伴走型相談支援・家計相談支援の専門性が必要
○報告・連絡・相談用紙の活用により、より一層社協内の連携や意思統一の必要性を痛感してい
る。
例)ひきこもり者A宅への訪問を繰り返してもなかなか会ってもらえない職員がいる一方で、
Aがたすけあい資金の情報を得るために度々社協に現れていたが、単なる問い合わせとし
て終わらせていたケースがあった。個人情報保護を遵守しつつ、相談受付として関連付け
が可能なシステムの必要性を感じた。
今後の取組(予定)
○福祉分野以外の困りごとに対する職員のスキルアップを図る。
例)困りごと対応事例に対する弁護士の視点等を学ぶ勉強会から始める。
○報告・連絡・相談用紙を活用できる人材(コミュニティソーシャルワーカー)を育てる。
12
総合相談支援窓口の整備
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○総合相談事業の実施
・ふれあい相談所
専任の相談員により週 1 回開催。顧問弁護士による法律相談(1 回無料)の実施。(随時)
・まちかど相談所
町内の薬局、寺院、施設等の協力による身近な場所で気軽に相談できる窓口の設置。
・福祉台帳(相談台帳)のシステム管理
要援護者情報を社協内共有のシステムにより管理し、継続相談等に対応。
○相談関係機関との情報共有
・関係機関の会議出席により、地域課題・連携等情報の共有を図った。
配偶者暴力相談支援ネットワーク会議(主催:県女性相談所)
仙北地域自殺予防ネットワーク推進会議(主催:県仙北地域振興局)
大仙美郷地区相談機関等ネットワーク会議(主催:大仙警察署)
・ふれあい相談に係る相談員会議の開催。
○在宅介護支援センター事業
・町福祉保健課、地域包括支援センター、保健センターと、相談対応の連携と情報共有
を図った。
実施にあたっての課題
○行政・社協の相談窓口をワンフロアーで実施することは難しいため、関係窓口へ確実につな
ぐ連携体制の共通認識が必要である。
○福祉台帳データ管理システムについて、今後、複合ニーズの相談に対応するため、データ管理
項目の検討が必要である。
○生活困窮者自立支援事業が開始されることにより、情報共有するための相談受付票等の整備が
必要である。
今後の取組(予定)
○町福祉保健課、地域包括支援センター、保健センターや相談関係機関と情報共有・支援体制の
強化を図り、ワンストップで相談対応できる体制作りを進める。
○「まちかど相談」協力機関から相談支援がつながる体制の強化を図る。
○相談関係機関へコミュニティソーシャルワーカーの役割や位置づけ、連携について理解を図
り、相談支援体制の関係性を強化していく。
13
② 多職種横断的連携システムの構築
多職種横断的連携システムの構築
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○地域ケア会議への参画と関係機関との連携強化を図った。
・毎月の開催に参画して、福祉問題の把握と解決に努める。
○小ネットワーク会議からの個別ケース検討会等で関係者間の横断的な連携の強化に努めた。
・複合的な福祉課題等に対して、関係機関等との役割の明確化を図る。
○関係機関との情報共有連携シートを整備し、取り扱いのルール化を図った。
・関係機関との連携体制の整備を検討する。
実施にあたっての課題
○他機関と連携できるデータ管理及び「情報共有連携シート」様式等の整備が必要である。
○必要に応じて行政から情報提供してもらえる体制が必要である。
○地域ケア会議で事例等を協議できる環境が必要である。
○地域ケア会議のあり方(内容)が地域によって異なる。
○地域や関係機関との意識レベルに温度差がある。
○小ネットワークによる見守り・支援等の連携を示しているが、関係機関相互の役割分担は明確
化できていない。
今後の取組(予定)
○複合的な課題に対応できる関係機関との新たなネットワークで、解決できる体制づくりを進め
る。
○広い分野で情報を共有し、関係機関が相互に連携するとともに、情報共有できる様式の整備と
取扱のルール化を図る。
14
多職種横断的連携システムの構築
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○地域ケア会議を目的別に3層に分けて効果的な実施を図っている。
・個別ケース会議・・・個別ケース・個別課題への対応。
(第1層)
→連携を要する場合、随時ケース検討会議を開催。また、移送サービス利用者選定、生活支
援ハウス入居者決定等にあたり、利用者側・利用受入者側・運営者側と利害の相反する三
者以上の協議で決定する仕組みとしている。
・専門職会議・・・専門機関・専門職の連携。
(第2層)
→月1回の勉強会・情報交換会を開催。介護予防対象者・地域の要援護者等を決定。
・代表者会議・・・個別課題から地域課題として政策提言に結び付ける。(第3層)
→年2回、専門職会議から報告のあった地域課題について、専門機関等の代表者等で検討す
る。
○地域包括支援センターを中心に、町内の各相談支援職の連携や役割分担を行っている。
・ケアマネジメントリーダー活動支援事業により、町内ケアマネジャーの資質向上を図る。
・サービス事業所振興事業により、介護保険事業所の連携とサービスの質の向上を図る。
○多職種(医療等)連携のための共有シート(連携クリティカルパス)等の必要性。
現在は、利用者の通院時・緊急時・入院時等に、看護記録や健康チェックシート等をこちらか
ら持参することで共通シートとしている。そうすることにより、退院時等はサマリー等の情報
提供をして貰える医療機関が増えている。
実施にあたっての課題
○高齢者や障害者等の支援体制として、地域包括支援センターや地域活動支援センターを中心に
した連携を進めており、それなりの成果は得てきたが、ひきこもり者等支援を開始してからは、
若者を支援するための新しい支援体制が必要だと感じる。
○医療等との連携クリティカルパス等は、医療機関同士の共通シート開発が出来た時に初めて地
域福祉との連携も可能なのかもしれない。
(個々の医療機関によって書式が違う状態では非効
率)
今後の取組(予定)
○地域や職業の枠を越えた、広域的連携の在り方を検討するための研修会を開催し、ネットワー
クを構築する。
○福祉職を中心にした支援体制を充実させるとともに、福祉はあくまでも側面からの支援を行う
地域の福祉とは全く違う職種からなる支援体制の仕組みづくりに着手する。
○医療機関同士の共通シートづくりの進展に合わせていく。
15
多職種横断的連携システムの構築
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○地域包括支援センター「地域ケア会議」への参画及び在宅介護支援センター「地域ケア連絡会」
の開催。
・事例検討会や各事業所からの状況報告、在宅要支援者のケースモニタリング及び在宅支援
者状況確認により情報の共有を行い、連携強化を図る。
・会議のあり方やメンバー機関の業務について確認、地域・個別課題を解決するためのネット
ワーク会議の連携について共通認識を図る。
・個人情報の取り扱いや情報提供のあり方について確認する。
・介護事業所実施による介護予防アンケート結果により、住民ニーズについて共有を図る。
○多職種連携のための準備会へ参画
・地域包括支援センター主催により多職種連携に向けた進め方や内容を協議する、「多職種連
携準備会」
、
「医療介護多職種連携交流会」を開催する。
○ケースモニタリングから関係機関による緊急支援活動の連携
・行政、社会福祉協議会、介護支援専門員、訪問介護員、住民活動「おたすけマン」
、民生委
員、近隣住民等
○多職種連携によるセーフティネット事業の実施
・「認知症SOSおたすけネットワークシステム」:認知症による行方不明者の捜索支援。
連携機関:行政、警察、介護事業所、福祉施設、企業や商店等
実施にあたっての課題
○地域ケア会議や地域ケア連絡会議において横断的な連携を進めるうえで、必要に応じてメンバ
ー調整できる体制作りが必要。また、その際個人情報の取り扱いについてのルールが必要であ
る。
○連携分野が、高齢者支援中心となっている。
○関係機関と情報共有できる連携シート等の整備や連携可能な社会資源の洗い出しが必要であ
る。
今後の取組(予定)
○地域包括支援センターと多職種連携のあり方や進め方を検討し、多職種連携のネットワークを
構築する。
○認知症SOSおたすけネットワークシステムの機能強化を図っていく。
16
③ 制度外ニーズ対応システムの構築
制度外ニーズ対応システムの構築
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○介護保険事業従事職員等と情報共有するための場づくりを検討する。
○住民や福祉団体等と連携し、生活支援サービスの現状と社会資源を把握する。
実施にあたっての課題
○インフォーマル分野の調整役として実践できる事業や関わりが不明確であることと介護保険
事業所との認識の温度差と連携が不足である。
○タイムリーに情報共有や対応ができる体制づくりが必要である。
○職員間の共通認識やスキルアップが必要である。
今後の取組(予定)
○介護保険事業所職員との連携を強化し、個別ケア会議や定期的なカンファレンスの実施。
○アセスメントシートの整備による情報の共有化を図る。
○高齢者や介護分野に関わらず、広い課題への対応を図る。
○制度外ニーズへ対応する新たな生活支援サービスの事業化を検討する。
17
制度外ニーズ対応システムの構築
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○「報告・連絡・相談」用紙等を活用してのニーズ把握
例)ヘルパーやケアマネなど、家庭訪問を行う専門職は、守秘義務の観点により家庭内の問題
に立ち入らない場合が多いが、その家庭の問題やニーズが見えていない訳ではない。そう
した情報を地域包括支援センターにつなげるシステムとして、「報告・連絡・相談」用紙
を活用している。
○制度外の福祉ニーズを把握できた場合の対応システムの構築
・「報告・連絡・相談」用紙の必要な情報を共有し対応するシステムとして、週1回の部門長
会議がある。対応することを前提とした協議を行っているため、即時対応可能な場合が多い。
・即時対応することが困難な事例は、事業計画策定に向け部門長会議でニーズを集約し、異業
種交流や地域福祉活動計画策定委員等の地域の声を拾い、次年度事業計画に活かすシステム
がある。
・他の専門職や関係機関との連携が必要な場合は地域ケア会議の場を活用している。専門職の
連携・協力で対応できる場合は第1層の個別ケース会議と第2層の専門職会議を、各機関の
同意や協力、新たな事業展開が必要な場合は第3層の代表者会議を想定している。
実施にあたっての課題
○システムがあっても活用できる人材がなければ形骸化する。
○福祉的支援では対応困難な事例が増えており、より柔軟なシステムが必要になっている。
今後の取組(予定)
○地域ケア会議の在り方を再考する。
○地域の様々な職種の方々を講師に迎えて就労訓練カリキュラムを企画・実施しているが、その
講師陣との新たな連携を探っている。
18
制度外ニーズ対応システムの構築
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○住民ニーズの共有
・地域ケア会議や地域ケア連絡会議における情報交換により、住民ニーズの共有を図った。
・地域ケア会議において、介護施設実施の介護予防アンケート結果報告により、住民ニーズに
ついて共有を図った。
・「地域福祉座談会」おいて、地域住民と地域の課題について共有を図った。
・「ふれあいサロン」おいて、参加者と地域の課題について共有を図った。
○事業点検による支援サービスの定期的見直しの実施
・社会福祉協議会が実施している事業の点検を実施し、その結果を組織内で共有することによ
り、新たな支援サービスにつなげていく。
○制度外支援サービスの実施
・住民活動「おたすけマン事業」
:事業登録者による日常の困りごとに対するお手伝いを行う
生活支援活動。
・「認知症SOSおたすけネットワークシステム」:認知症による行方不明者の捜索支援。
連携機関:行政、警察、福祉施設、企業や商店等
実施にあたっての課題
○住民が一緒に課題共有できる場を工夫しながら、新たな支援サービスの開発に取り組む必要が
ある。
○新たな支援サービスの事業化には、多職種や社会資源等の連携が必要であり、情報の共有と柔
軟に対応できる体制が必要である。
今後の取組(予定)
○地域ケア会議や地域ケア連絡会議での情報交換やふれあいサロン等での意見交換により、住民
ニーズ課題の集約を図る。
○職員のスキルアップを図り、住民ニーズに気づく体制を整える。
○「総合調整会議」において、ニーズ対応への支援方法等について協議を行っていく。
19
④ 公私協働によるアウトリーチ体制整備
公私協働によるアウトリーチ体制の整備
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○介護保険事業従事職員等と連携し、行政や各種相談機関との連携体制づくりを図っている。
○住民支えあいマップを活用した小ネットワーク会議や福祉団体等と連携し、訪問等による見守
り活動を推進している。
・小ネットワーク会議(住民座談会、住民支えあいマップ作成及び更新)の開催
・いきいきサロン事業(実施サロン:120 ヵ所)
実施にあたっての課題
○社協として取組むネットワークの方針やアウトリーチ活動方針が不明確である。
○小地区ネットワーク会議などを年複数回開催できる体制づくりが必要である。
○他機関との連携を図りやすい環境づくりが必要である。
○地域住民や福祉団体関係者等が福祉活動への関心が低い。
今後の取組(予定)
○地域福祉活動(コミュニティソーシャルワーク)を行う社協職員としての意識改革とスキルア
ップを推進する。
○職員間の情報共有を進め、福祉課題の早期発見から解決を推進する。
○各種事業を活用した住民と協働での地域福祉活動の実践を推進する。
○本事業について、行政や福祉団体等と協議する場を設ける。
20
公私協働によるアウトリーチ体制の整備
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○全職員が行うアウトリーチ(平成 15 年度~)
役員や民生委員、福祉員、各種団体へのほとんど文書は、部門を問わずその時に出られる職員
が総出で手配り配布することを心がけてきた。文書を渡す際は内容の説明のほか、近隣の状況
確認に努めている。
○日常業務を活用したアウトリーチ(平成 18 年度~)
社協が行う全ての事業がニーズ把握の場でありアウトリーチの場であるとの周知徹底を図っ
ている。
例)介護者の集い事業に介護支援専門員や地域包括支援センター職員が参加することで、相談
支援の場となっている。
例)介護保険制度の改正時や新たな事業の開始時には、住民座談会に担当職員が参加すること
で相談の場となっている。
○住民活動へのアウトリーチ(平成 24 年度~)
住民主体の事業に社協職員が参画させていただくことから始める。
実施にあたっての課題
○アウトリーチは日常業務とは異なる訪問活動と捉える職員が多く、日常業務がそのままアウト
リーチの場になり得るとの共通認識を図る必要がある。
○アウトリーチ手法をまとめてマニュアル化するなどして、アウトリーチに係わることができる
職員の層を厚くする必要がある。
今後の取組(予定)
○社会福祉協議会職員が日常業務として行うアウトリーチの、より自由な発想や実践を分かりや
すくマニュアルにまとめる。
21
公私協働によるアウトリーチ体制の整備
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○ネットワーク活動の推進
・ネットワーク活動を基盤に関係機関や専門職と情報を共有して支援体制の充実を図った。
・民生児童委員協議会定例会に毎月地区担当のコミュニティソーシャルワーカーが出席し、地
域課題の把握と要援護者の情報共有を図っている。
○相談機関等との連携体制
・まちかど相談所参画機関や警察、宅配業者、地域住民等からの情報提供により、必要に応じ
て訪問を行い、見守り支援や世帯の支援を行う。
・関係機関との同行訪問により詐欺被害の防止等の呼びかけや相談窓口の周知を図った。
○地域住民の気づきを高めるための場づくりの実施
・地域福祉座談会、ふれあいサロン、社会福祉大会、介護教室の開催。
地域の課題を共有し、地域ぐるみの見守りや気づき活動の啓発を図った。
・一斉除排雪活動の実施
活動者:中学生、高校生、地域住民、福祉施設、企業等
中・高校生が地域の現状を把握することで、地域の一員として地域見守り活動へ参画を図る。
実施にあたっての課題
○訪問介護サービス関係者や宅配業者等による異変の気づきの声の連絡経路について、ケア会議
等関係機関で情報共有し、家庭訪問につなぐ体制を整える必要がある。
○ネットワーク活動を基盤としたアウトリーチの重要性について、職員の共通理解が必要であ
る。
今後の取組(予定)
○アウトリーチの重要性について、職員の共通理解が進むようスキルアップを図っていく。
○ネットワーク活動を基盤にアウトリーチを徹底し、関係機関・専門職と情報共有しながら支援
体制の強化を図る。
22
⑤ 地域福祉を推進する専門職の養成と配置
地域福祉を推進する専門職の養成と配置
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○コミュニティソーシャルワーカーの専任配置には至っていないものの、その位置付けや役割機
能の発揮に向け、組織内部の理解促進を図っている。
○コミュニティソーシャルワーカーのスキルアップを図るため、個別支援のケース検討や内部研
修を強化している。
○県社会福祉協議会及び他市町村社会福祉協議会との情報交換、合同職員研修の実施
・地域福祉再構築モデル事業 美郷町・横手市合同研修会(平成 27 年 10 月 22 日)
実施にあたっての課題
○コミュニティソーシャルワーカーは本来の社協地域福祉職員のあるべき姿であり、その点を他
の職員や地域の方に知ってもらうことが必要である。
○コミュニティソーシャルワーカーを専任で配置する組織体制の整備が必要である。
○秋田県社会福祉協議会が行うコミュニティソーシャルワーカーの研修に、日程上出席できない
場合もあるので、当社会福祉協議会独自でコミュニティソーシャルワーカーのスキルアップを
図るための研修が出来ればよい。内部研修のあり方について検討が必要。
○相談業務や事例検討の場で主任相談員等、スーパーバイズを行える職員がいない。
○社会福祉協議会職員に対して各種専門資格取得の推奨が必要である。
今後の取組(予定)
○コミュニティソーシャルワーカーとして個々の職員のスキルアップを図るため、個別支援の
ケース検討等の内部研修を進める。
○チームアプローチを進めるにあたり、担当地域に止まらず圏域を広くした取り組みへと展開
を進める。
23
地域福祉を推進する専門職の養成と配置
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
地域福祉を推進する社会福祉協議会職員である以上、職種や雇用形態を問わず全ての職員がコミ
ュニティソーシャルワークの視点で職務を行う必要があると同時に、そのための専門性を有する
必要があるとの考えのもと、専門性を身に着けるための支援を行っている。
○外部研修・資格取得等への積極支援
・職員個々の研修計画を策定するなどし、外部研修等への積極的な参加を奨励している。
・介護支援専門員・社会福祉士・精神保健福祉士等の資格取得に関しては受講料等の支援制度
があるため、職員個々の経験年数等に基づき申込みが可能な職員には通知している。
○内部研修の充実
・社協全体、部門別、課題別等、定期的な内部研修を実施している。
・「報告・連絡・相談」用紙等から共通理解を図る必要があると判断した時は、随時勉強会を
開催している。
・コミュニティソーシャルワーク実践の視点を確保するため、経験年数に応じたケース検討を
含む内部研修を開催している。
○その他
・業務分掌の役割分担会議から人事考課まで、職員個々に求める評価はコミュニティソーシャ
ルワークの視点に基づき行っている。
実施にあたっての課題
○個々の資質や職務内容により、コミュニティソーシャルワーク実践の視点そのものの習得が困
難な場合もある。
○一律的な研修体系では形骸化する可能性が高い。職員個々の経験値や理解度に応じて必要かつ
効果的な研修になるよう柔軟に運営することはできるものの、その体系化は難しい。
○中間管理職や評価する側の育成が難しい。
今後の取組(予定)
○職員個々の能力や資質を最大限に高めることが地域福祉実践の要であるため、専門性の確保の
ための職員育成に向け出来ることを積み重ねていく。
24
地域福祉を推進する専門職の養成と配置
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○コミュニティソーシャルワーカーの理解促進
・行政(福祉保健課)にコミュニティソーシャルワーカーの役割、必要性について説明し、社
会福祉協議会の専門職としての位置付けに対する理解促進を図った。
○コミュニティソーシャルワーカーの養成と資質向上
・コミュニティソーシャルワーカー養成講座基礎編・応用編への参加。
・課題別研修や生活困窮者自立促進支援等に関する研修会に参加し、実践報告や演習を通しコ
ーディネート能力の向上を図っている。
○社会福祉協議会の組織内において、コミュニティソーシャルワーカーが地域福祉を推進する専
門職であることの認識を高めた。
○他市町村社会福祉協議会との情報交換・合同職員研修の実施
・地域福祉再構築モデル事業 横手市・美郷町合同研修会(平成 26 年 10 月 22 日)
実施にあたっての課題
○社会福祉協議会の組織として地域福祉を推進する専門職コミュニティソーシャルワーカーの
役割、位置付け、必要性について、職員が意識を持って活動することが必要である。
○社会福祉協議会本来の業務を担当する専門職のコミュニティソーシャルワーカーの配置に向
け、組織体制や業務の見直しを進める必要がある。また、行政の理解も必要である。
○複雑多様化するニーズを支援するためには職員の技量が求められるが、一部の職員のみに過度
な負担がかからない体制が必要である。
今後の取組(予定)
○職員の共通理解のもと、コミュニティソーシャルワーカーの配置に向け、行政等関係機関へ必
要性の理解・周知を図っていく。
○職員全員がコミュニティソーシャルワークを常に意識できるよう、職員のスキルアップを図っ
ていく。
25
⑥ 地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
横手市社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○福祉協力員会や民生児童委員協議会の活動範囲を基盤とした「福祉推進委員会」の設置に向け
た検討。
・第2期地域福祉計画・地域福祉活動計画に「推進委員会(仮称)
」設置案を提案。
○福祉協力員活動の推進。
・活動助成金の交付、ボランティア活動保険の加入。
・運営委員会の開催(平成 26 年 6 月 18 日)
○第2期地域福祉活動計画と地域福祉計画の一体的策定。
・第2回 策定委員会(平成 26 年 6 月 26 日)
・第3回 策定委員会(平成 26 年 7 月 28 日)
・第1回 作業部会全体会(平成 26 年 8 月 21 日)以降、4 作業部会で協議を進める。
・第4回 策定委員会(平成 26 年 12 月 19 日)
・第5回 策定委員会(平成 27 年 1 月 22 日)
実施にあたっての課題
○福祉協力員の高齢化が進み、協力員の人材の確保が難しい。
○住民活動に対する支援体制の方針が不明確である。
○民生委員・福祉協力員間でお互いの認識に温度差がある。
○基盤となる地区組織(サロンや各サークルなど)の構築と支援が必要である。
○福祉協力員やサロン世話人などの担い手不足の解消と住民の意識づくりが必要である。
今後の取組(予定)
○第4期(平成 27~29 年度)福祉協力員の改選及び設置を進め、住民主体の福祉活動を推進す
る。
○福祉協力員会の機能や体制の見直しにより、活動の活性化を図る。
○民生委員と福祉協力員の連携を強化し、小地域での福祉課題の早期発見から解決を推進する。
○第2期地域福祉活動計画の推進のため、圏域毎の「福祉推進委員会」設置を進め、住民主体の
福祉活動を推進する。
○本事業について、行政や福祉団体等と協議をする場を設ける。
26
地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
藤里町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○福祉員の配置と養成
51の行政区毎に福祉員を配置しており、福祉員研修を年3回、先進地視察を年1回実施する
ことで資質向上に努めている。地域のアンテナ役として、社協の広報やチラシの配布を行う中
で気になる情報が社会福祉協議会に入る仕組みを作っている。
○ボランティア団体連絡協議会の活動支援
毎年ヘルパー養成講座を行い、その都度修了生がボランティア団体を組織して新規加盟してお
り、最盛期は16団体会員300名を超えていた。しかし、近年は修了者の大半が就職するた
め、ボランティア団体が組織化されず高齢化が進んでいる。
○シルバーバンク事業の活動支援
高齢者の生きがいづくりを趣旨とするシルバー人材センターではなく、地域貢献を趣旨とする
シルバーバンクとして活動を進めている。
○こみっとバンクの発足
ひきこもりや不就労等の方々が社会復帰のために活動する「福祉の拠点こみっと」に登録者に
よる人材バンクを発足。農家や個人事業主から仕事を請け、職員の支援を受けながら仕事を行
っており、シルバーバンク事業と連携することで相乗効果が生まれている。
実施にあたっての課題
○福祉員、シルバーバンク会員、ボランティア団体連絡協議会会員ともに、高齢化が著しく、会
員の減少が続いている。
○高齢化率が42%を超えた町で、若者が高齢者を支える発想では住民活動が成り立たない。
今後の取組(予定)
○シルバーバンクやボランティア団体連絡協議会の若返りを目指していては、超高齢化の住民活
動においては限界があるため、高齢化を受け入れ、出来ることでの参加を進めていく。
○支援する側とされる側との見方をするのではなく、支援される側であっても支援する側にもな
れるという発想で住民活動を推進する。
例)シルバーバンクが若者を支える。買い物弱者の問題は、商店街の問題でもある。
→プラチナバンク構想(41ページ参照)
27
地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
美郷町社会福祉協議会
これまでの主な取組(概要)
○福祉委員活動の推進
・地区単位ごとに福祉委員を配置、地域の福祉活動の推進を図った。
○住民活動事業の推進
・スタッフが活動継続できるよう支援体制について検討し、活動の推進を図った。
・「ふれあいサロン」事業の活動支援
・「おたすけマン」事業の活動支援
○空き店舗活用「まめだ屋」事業の推進
・空き店舗を拠点とした住民主体のふれあい・生きがい活動を支援し、活動の推進を図った。
・「パソコン教室」活動の支援。
・誰でも気軽に参加できるサークル活動(囲碁・将棋・手芸)の支援。
○第2期地域福祉活動計画の点検評価
・社会福祉協議会の地域福祉活動計画事業の点検評価を行い、事業計画へ結びつけている。
実施にあたっての課題
○住民主体の地域福祉活動を進めるためにはリーダーと協力者、地域住民の意識作りの啓発活動
を積極的に進めていく必要がある。
○介護保険法改正により、小地域においての住民主体による地域福祉活動の組織作りと支援が必
要である。
○社会福祉協議会の第3期地域福祉活動計画と町の次期地域福祉計画が一体的に策定できるよ
う、行政と共通理解を図る必要がある。
今後の取組(予定)
○住民活動の地域福祉活動を支援し、活動の発展を推進する。
○社会福祉協議会の第2期地域福祉活動計画の点検・評価を行いながら、関係機関連携による要
援護者の早期発見から支援に繋がるセーフティネットの体制を推進する。
28
(2)テーマ別実践事例
① アウトリーチによる取組事例
アウトリーチ体制の整備
横手市社会福祉協議会
○相談者
50代、男性、一人暮らし、無職
在宅で両親の介護をしていたが、両親が亡くなり単身となる。車を所有しており、買い物は自
身で行うなど貯蓄で生活していた。ハローワークに通うなど、仕事を探したが50代という年
齢から仕事が見つからない状況であった。近隣付き合いなし。
○相談内容
近隣住民同士が手を組み嫌がらせ(玄関の戸や窓を叩かれる、車庫に雪を入れられる、家の中
の異臭、脅し、敷地に薬品を撒くなど)を受けているので、早急に嫌がらせをやめさせてもら
いたい。(定期的に同相談の電話・来所あり)
○経過・対応
・初期相談時
嫌がらせを受けていることを警察や親族等に相談したが、相談者が納得する対応が得られ
ず、来所した。
→同町内の関係者に情報提供し、異変発見時には連絡をしてもらうよう可能な範囲で見守り
を依頼。近辺を通る際は、異変がないかを確認。
・中期相談時
相談内容は同様であるが、嫌がらせがエスカレートしているとの訴えがあり睡眠不足や食事
もしていない様子。ただし、訪問時には、異臭や目視による被害を受けた跡は確認できない
ことから、他に抱えている悩みがないかを聞き取りしたところ、両親を亡くしたことによる
寂しさや金銭面での不安から精神的に不安定になっているようだった。
→働く意欲はあるが、体調不良が見られたため、食事管理を行うこと、精神面を含め専門の
医療機関を受診すること、気晴らしに外出することなど、相談があるときは訪問し、話を
聞きながら助言・提案するなど、精神面の緩和を優先することとした。
・後期相談時
専門医療機関を受診していないとのことで、更に精神的に不安定な状態の悪化が見られるよ
うになり、訪問中も「屋根から音がする、においがする」など被害を訴えるようになってき
たため、早急な専門職による精神面の緩和が必要となった。受診しない理由に金銭的に余裕
がなくなってきたことも関係していることが分かったため、関係機関と連携し、精神面と経
済面の両方で関わっていくこととした。
→精神面に関しては早急な専門医療機関の受診の必要性があったため、保健師による専門職
としての助言と、兄弟・親族からも一緒に話を聞いてもらうなど、相談者の状態を理解し
てもらったことで、専門医療機関の受診に結びついた。医療費の心配もしていたため、生
活保護担当からも関わってもらい、生活保護の受給に至った。
○近況
生活保護の受給により、定期的に医療機関を受診することができるようになり、精神的にも落
ち着いてきている。また、医療機関関連の通所サービス・就労支援を週5日利用することで、
嫌がらせを受けなくてもいいという安心感と、一緒に通う話し相手がいることも精神面の緩和
につながっているようだ。食事も安定し、睡眠不足も解消され、健康状態も良好であり、就労
意欲の高まりも伺える。
29
地域課題等の情報を把握するための取組
横手市社会福祉協議会
○要援護者・地域課題等の情報を把握するための取り組み
・アウトリーチ事業
各地区で開催している小ネットワーク会議等において要援護者とされている方や地域との
関わりが少なく最近の状況が分からない方などを確認し、その方の生活状況や心配ごと・困
りごとを把握するための訪問活動を行った。
訪問活動の結果は、在宅介護支援センターへ報告しているほか、必要に応じて民生委員や地
域ケア会議、小ネットワーク会議にて報告するとともに必要な支援について協議を行った。
実施状況:34件を訪問(平成 26 年 4 月 1 日~平成 26 年 12 月 31 日)
・小地区ネットワーク会議・住民支えあいマップ作成事業の実施
小地区ネットワーク会議の内容から行政区ごとに住民支えあいマップを作成しており、要援
護者世帯(地域によっては要援護者の身体状況や支援者・要援護者の連絡先なども記載)や
見守り活動等を行う支援者などを記載している。マップは各地区の小地区ネットワーク会議
に関わる福祉関係者(地区役員・民生委員・福祉協力員など)が保有しており、マップによ
って情報を共有しながら要援護者世帯に対して日常的な見守り活動を行っている。
小地区ネットワーク会議は年1回開催しており、福祉関係者が持ち寄ったマップを確認しな
がら、見守り活動や訪問活動を行っている要援護者の状況について情報交換を行うほか、災
害時の避難支援体制などについて協議を行っている。
実施状況:9地区で小ネットワーク会議を実施(平成 26 年 4 月 1 日~平成 26 年 12 月 31 日)
・福祉団体との連携事業
福祉課題を早期に発見・対応するため、地域内の高齢者や障害者の多くが加入している福祉
団体に対し、ネットワーク活動に対する理解と協力を依頼した。
なお、老人クラブ役員には地域の小地区ネットワーク会議に出席していただいているほか、
老人クラブの友愛訪問活動等へつなげていただいている。
実施状況:老人クラブ、身体障害者福祉協会、遺族会へ説明と協力依頼を行った。
○他機関との連携事例
閉じこもりや物忘れがある高齢者夫婦世帯の夫について民生委員から情報提供があった。
民生委員からアドバイスされることが気に入らないと、夫は民生委員の訪問を拒む。
・その後の対応の流れ
①在宅介護支援センター・地域福祉係がたびたび訪問を行い、夫の状況を確認。
閉じこもり、物忘れ、1年以上入浴していない、失禁、足の一部が黒く膿んでいる、健診
を受けていない等。
②地域ケア会議で報告・協議。
③妻に地域の福祉センターへ来ていただき、病院・地域包括支援センター・地域局・在宅介
護支援センター・地域福祉係と一緒に今後について検討。
④地域局保健師・地域福祉係が訪問し、健康チェックや夫の状況を確認。
⑤妻・地域局保健師・地域福祉係が夫を説得のうえ病院に同行し、受診。
⑥入浴施設で入浴。
(入浴には支援が必要だった)
⑦妻と在宅介護支援センターで相談のうえ、夫の介護保険を申請。
⑧夫は介護認定を受け、現在は定期的にデイサービスを利用している。
30
情報提供のためのアウトリーチ
藤里町社会福祉協議会
○ひきこもりなど様々な理由で現在就労していない方々に、福祉の拠点こみっと※での就労支援
の情報を届けている。ひきこもりに至った理由を問い、悩みを聞くという訪問ではなく、あく
までも情報提供をするという、福祉の専門職にできるアプローチをしている。
○届けた情報の中から、当事者がこの訓練を受けたいという意思表示をしたときには、制度があ
るなしにとらわれず、全力で支援をしている。こみっとに出てきて就労支援を受けている登録
生が編集している「こみっと通信」は2か月に1度発行される。この「こみっと通信」や、様々
な情報を、そのたびごとに何回も訪問して玄関先に届けている。
○「報告・連絡・相談」や、民協、ネットワーク会議などさまざまなところから地域包括支援セ
ンターに寄せられる情報をもとに、社会福祉協議会職員が訪問している。
※福祉の拠点こみっと
平成22年4月開設。県の発電事務所を町が購入し、社会福祉協議会に無償貸与したもので、
日本財団の助成により食堂、調理室、会議室、相談室、サークル室等を整備。
開設に先立って社会福祉協議会が実施した訪問調査により、18歳から55歳までの町民
1,293人の8.74%にあたる113人が、仕事に就けない状況で、自宅などに引きこも
っていることが判明した。
31
一人暮らし聴覚障害者支援事例
美郷町社会福祉協議会
○対象者について
・70代、男性、一人暮らし
・子供(長男40代・県外在住、長女40代・県内在住)はいるが、長女が3歳の時に離婚。
子供の親権は妻へ。そのため子供とは不仲。本人は4人兄弟で仲は良く、次男に連絡すれば
三男、四男へ連絡がいく。
・聴覚障害4級(病名―混合性難聴)
。言葉が出にくく会話での意思疎通はできない。
・これまで、春から秋は農業、冬期間は出稼ぎで生計を立ててきた。
・性格は真面目。仕事も手を抜かず働くタイプ。除雪作業も計画を立て、体に負担をかけずに
綺麗な作業をする。
・福祉サービスの利用は、5年前からの配食サービスのみである。
○相談者
隣家の同級生と近所の同級生、従兄弟、民生委員
○概要
・平成26年12月中旬、同級生2人に本人からFAXが届く。
「俺は亡く・・・」の文面から始
まり、
「自ら一生に寂しい、一生独り暮らしだ」で終わっており、お寺名、送迎バス、葬儀・
おとき場所、財産(田畑、農機具)等の処分の仕方を「遺書」と題して送信されたため、自
殺したのではないかと大騒ぎになる。
・翌日、社会福祉協議会に隣家の同級生から電話相談が入る。同日午後に保健師と社会福祉協
議会職員2名が訪問して届いたFAXを確認後、本人宅を訪れた。
・本人が健在であることを確認。FAXの内容に関することや近隣にそれを送った理由などを
伺った後、良い正月を迎えて欲しい旨を伝えて笑顔で分かれた。
・本人は、長く一人暮らしを続けてきたところで、ある程度の年齢になったら寂しさが募った
ようだ。子供と話をしたいものの、若い時に会いたがる子供を拒絶してきたため、「いまま
でゴメン」と言う言葉を言えず、耐えしのぐしかないと悟る。迷惑とは思いつつ、自分の死
後の後始末を同級生、兄弟、親族に知ってほしい思いで生前に思いを込めてFAXしたのだ。
・死にたい気持ちはなく、自らの死後に対する不安の思いだけであった。ここまで思い込ませ
た理由は、5~6年前までは難聴とはいえ聞こえていたし、話もできた。しかし、今は筆談
のみでの会話で、感情や思いが伝わらないのが悔しいらしい。
・現在、本人とは行事や悪天候等に「どうしてる」「困ったことはないか」などいう内容のや
り取りをFAXで往信しているほか、配食サービス配達者へメモ書き通信連絡で状況を判断
している状態。近隣の同級生、民生委員とも連絡を取り合い、保健師も同地区訪問時に様子
伺いしている。
○今後の対応
・親子間の感情は相当なものではあるが、良好な関係を築くために近隣、同級生、民生委員、
保健師等を含めたネットワークづくりを進める。
・生きがいづくり。
(以前は、カラオケ、グランドゴルフを生きがいとしていたが、会話不成
立状態となった後は活動中止状態)
・自宅への来客訪問増加に向けた支援。
・自己実現に向けた支援(本人は施設入所希望であるが、身体が丈夫なため非該当)
32
② 制度の狭間の問題への対応事例
制度外ニーズ対応システムの構築
横手市社会福祉協議会
○これまでの取組状況
民生委員や各福祉団体等と連携した、地域課題や福祉問題を抱える世帯の把握と解決を図るための
取り組み
・高齢者世帯調査(民生委員による対象世帯個別訪問調査及び台帳整備、ニーズ把握等)
・民生委員・福祉協力員合同研修会、住民支えあいマップづくり、住民座談会の開催(地域住民に
よる見守り支援体制における役割等の確認、専門職からの話題提供による地域課題解決策の検
討、各地域の要支援世帯の把握と情報交換・共有化、地域住民主体の見守り支援体制からの早期
発見・通報の重要性、地域福祉関係者と町内会の連携強化のあり方の検討等)
※いきいきサロンでも地域内の情報を把握し、地域課題の解決策の検討を行っている。
○平成26年度の新たな取組事例
高齢者世帯火の元検査(消防署員)と同行しての要支援世帯の把握・調査と困りごと相談対応
・春・秋の年2回、社会福祉協議会職員が同行して実施。(年次計画により全地域実施予定)
・火の元検査が主目的であるが、地域で孤立がちな世帯の把握や内在している生活・福祉課題の聞
き取り・掘り起しをすることができる。⇒気になる世帯や相談の依頼があれば、個別対応をして
いる。必要があれば地域関係者と連携し、地域住民による見守り支援体制の強化を図ったり、行
政機関や専門職への情報提供や支援等の協力・要請等を行っている。
○相談対応事例
・対象世帯:80代、女性、一人暮らし
・相談主訴:自宅隣接空き地のイチョウの大木の枝が自宅屋根に覆いかぶさってきていて、屋根の
腐食や枯れ枝の落下等で困っている。(風・雪の日は特に心配)
・支援経過:脳梗塞の病歴があり、軽度の言語障害と両手のしびれあり。日常生活に支障はないが、
神経質で内向的な性格で他者へ相談するのを億劫としていた。今回の火の元検査に社会福祉協
議会職員が同行したことにより相談に至った。相談を受け、家族状況、近隣や援助者等の把握
と並行しながら、行政へ隣接する空き地の管理者の照会を依頼したが、個人情報保護の観点か
ら情報提供は不可であったため、関係者から情報を集め、管理者の親族の所在と連絡先の把握
に至った。本件は、当事者間の協議で解決することになる旨を説明したが、本人と子の意向で、
社会福祉協議会職員から管理者の親族に現状・主訴等を伝えてほしいとの依頼を受ける。
→親族で相談するとのことで、回答待ちとなる。その後、数ケ月経過しても連絡がなく、再度
対象世帯から相談あり。→数回、本人の依頼で相手側と連絡をとるが、管理者と親族の不仲等
を理由にたらい回しの状態が続く。更に、本人の弟夫婦からも、行政や社会福祉協議会で枝を
撤去してほしいとの要請を受ける。→本件はあくまでも個人の財産管理の事案であって、当事
者間で協議を進めるべきものであり、行政等の介入は難しいと再度説明(本件については、地
域局福祉担当にも相談し、一緒に家族への説明等の対応をしたところ)。法律上は、相手管理
者の許可があれば枝の撤去(請求)は可能であることを伝えたところ、その交渉を依頼され社
会福祉協議会職員が対応し、管理者の同意を得る。→その後、家族や親類等と再度検討するこ
とに至った。→親類の支援で一部枝を撤去した。
「助言・提案」介護認定申請手続き、配食サービスの利用等。
「見守り強化策」福祉協力員、民生委員に、声かけ等を依頼。
・課題:子が遠方におり、継続的な援助を受けるのが困難。相手の管理者も高齢者80歳代。地域
内や市内には空き家、空き地が増え、同様の事案や空き家の管理(冬期)の相談や困難事例も
増えてきている。
・今後の取組:制度外の課題の相談対応・解決には、当事者・地域・関係機関と一緒に検討してい
く姿勢を見せることが重要だと考える。また、身寄りのない方や緊急性がある場合の解決方法、
救済制度の立案等の検討をする必要がある。社会福祉協議会の役割は、地域の声や相談をまず
傾聴し、自立を支援することである。こうした事例を積み重ね、関係機関と更に連携を深めな
がら相談業務を進めていきたい。相談業務関係機関のネットワーク強化を図りたい。
33
一人暮らし高齢者世帯支援事例
横手市社会福祉協議会
○対象者:高齢者、女性、一人暮らし
○在宅介護支援センターが出席し、地域の方や関係機関とケース会議を実施。
(平成 25 年 11 月)
・弟が施設入所したことから単身高齢者世帯となる。
・知的障害がうかがわれる。
出来る事:ご飯を炊く、電気ポットでお湯を沸かす、薪で風呂を沸かす、電話に出るなど
出来ない事:読み書き、電話を掛ける、金銭管理、ごみ出しなど
・金銭管理は県外在住の妹が行っている。
※妹からは地域包括支援センターや地域局へ興奮した状態で電話があり、定期的な関係機関
による訪問活動を行う事の依頼や支援体制の確認をされる。
○小ネットワーク会議を実施。対象者に対する地域の見守り状況を確認。
(平成 26 年 3 月)
・地域でも気にかけている方であり、除雪や買い物で外に出ていることから安否を確認してい
る。しかし、訪問活動などについては余計な助言や支援を行うと妹から何を言われるかわか
らないからと消極的。
○ケース会議(地域包括支援センター、地域局、在宅介護支援センター、地域福祉係)
(平成 26
年 6 月)
・妹からの要望
地域局が4月から安否確認の訪問を行っていたところ、妹から再度電話があり、訪問を行っ
ている証拠として月1回対象者宅から妹宅へ電話を掛けてほしいとの要望があった。
・今後の対応について協議
定期的な訪問や生活支援、見守りにつながるよう妹へ介護保険の利用について相談する。
ブレーカーがすぐに落ちてしまうため、アンペアの容量を上げて良いか妹へ確認する。
(地域局で訪問した際に数回ブレーカーが落ちていたことがあり、電気が使えない状況で生
活していることがあった。対象者は停電している状態でも特に困ることが無い様子)
妹は精神的に不安定な所が見受けられるため、住んでいる地域の市役所保健師へ訪問しても
らったほうが良いか今後検討が必要。
○地域包括支援センターより報告(平成 26 年 12 月)
・介護保険については妹に了承してもらえなかった。
(主は介護を必要としないし、介護保険を使わなくても行政機関が安否確認の訪問を行うの
は当然とのこと。また、近所の方たちによる安否確認は拒否するとのこと)
・アンペアの容量を上げる事は了承し、15アンペアから20アンペアに変更。
○ケース会議(地域包括支援センター、地域局、在宅介護支援センター、社会福祉協議会地域福
祉係が訪問)
・生活状況を確認し、その場で地域包括支援センターが妹宅へ電話により報告した。また、会
議参加者が交代で訪問し、月一回妹宅へ報告の電話を行うこととした。
34
住民活動「おたすけマン」による緊急支援
美郷町社会福祉協議会
○「おたすけマン」事業
登録者による日常のちょっとした困りごとに対する生活支援活動。
30分程度の支援活動で、利用料300円。
支援内容は、買い物、薬の受取り、診察受付、ゴミ出し、精米、灯油の取り扱い(購入や給油)、
電球や電池の交換等。
○緊急支援事例
・対象者
60代、男性、一人暮らし、脳梗塞により半身麻痺の後遺症あり、未婚、介護サービス等の
利用なし
・支援経緯
外出はタクシーを利用しており、タクシー会社より失禁状態の情報提供あり。役場障害担当、
包括支援センターと社協で状況確認の訪問する。本人の状態は、お酒を主とした偏った食生
活、入浴している様子が無い、常時失禁している。半身麻痺のため一日中座椅子に座ったま
ま。居間や台所は物が乱雑、居間の引き戸は障子やガラスは破れた状態。失禁あるため畳等
腐敗している箇所あり。地域でも誰も訪問しなくなっている。障害者年金で生活しているが、
用事はタクシーを利用したり、不必要なお金の使い方をしたり等で、生活が苦しくなってき
ている。
まず、食生活の改善と生活場所の改善を本人に説明、本人も今の生活環境から抜け出したい
意思があり、介護保険申請を進め、申請手続きし訪問介護サービス利用することとする。あ
わせて配食サービス利用も申請する。
訪問介護サービスを利用開始するも、部屋や台所に物が散乱しており、あまりの量のため片
付けに手間取り、本来のサービスが提供できない状況であった。片づけ依頼先としてシルバ
ー人材センターがあるが、あまりのゴミの量と障子張りや建具の修理等もあるため料金が膨
大になる可能性があるので、今の経済状態では依頼できない。また、居間や台所、トイレ汚
れも酷く清掃も必要な状態である。
地域ケア会議ケースモニタリングにより支援内容について検討する。部屋の片付けについ
て、親族の協力は姉がいるが病身のため難しい。他に親族はいない。
→片づけをおたすけマンに依頼。おたすけマンの本来の活動内容でないため緊急会議を開
き、本人の状況から片づけを承諾する。
→大掃除プロジェクト会議の開催、おたすけマンを中心に、地域包括支援センター、町福祉
保健課障害班、社会福祉協議会、介護福祉専門員、民生委員、隣家協力のもと大掃除を行
う。本人の入浴は大掃除当日、入浴施設に連れて行き入浴させる。大掃除当日まで、玄関
を通れるようごみの移動をヘルパーに依頼する。
→大掃除当日は、おたすけマンを中心に作業分担し、生活範囲の居間、台所、トイレ、風呂
の清掃、片付け、建具修理を行い、生活可能な状態とした。
→大掃除により、訪問介護サービスの提供が可能となった。配食サービスの利用により安否
確認の支援も開始する。玄関先、居間がきれいになったことにより、隣家でも声をかけや
すくなった。
→生活費の管理について、不必要な支出もあり、本人に節約の仕方を説明するも、今までの
習慣が抜けず、日常生活自立支援事業を説明し、利用申請する。
→日常生活自立支援事業の利用決定となり、専門員・生活支援員の訪問開始となる。
・今後の対応
理解力が低下してきており、また、家の傷みがひどく(傾きや床の抜け落ち等)、今後の生
活の場所をどうするのか、施設入所も含めて本人へ説明し、検討していく。
35
気づき・見守り・発見のつなぎ機能強化
美郷町社会福祉協議会
○事業名
認知症SOSおたすけネットワークシステム
○事業内容
認知症を抱える家族の支援と、地域における認知症の理解を深め、認知症の方が安心して暮ら
し続けることができるよう、地域全体で「見守りネットワーク」を構築し、徘徊のため行方が
わからなくなった方を、できるだけ家族の元へ帰れるようにするシステム。
○利用対象者
認知症により徘徊のおそれのある高齢者等
○相談機関
社会福祉協議会、地域包括支援センター、警察(行方不明時)
○協力機関
新聞・牛乳・ヤクルト・郵便・ガスの事業者、JA店舗や食材配達、タクシー会社、宅配・運
送業者、清掃業者、建設業、電気工事業、コンビニ、スーパー、道の駅、薬局、理容店、寺院、
商店、書店、呉服洋品店、酒店、菓子店、介護・障害者施設、認知症サポーター
○協力機関の役割
日常業務の中で、緊急支援として徘徊行方不明者一斉メールによる目撃情報の提供と見守りネ
ットワーク活動の日常見守り支援。
○利用方法
徘徊により行方不明となった認知症の家族からの捜索依頼届出により、写真付きメールにより
協力機関に目撃情報を呼びかける。
(警察へ捜索願を届けていることを確認)
○実施内容
・地域福祉座談会で認知症への不安や介護の限界等地域の課題を共有、新たな地域の支えあい
の仕組みづくりが必要との声により、見守りネットワークの再構築を図った。
・地域福祉座談会や福祉委員会議、ふれあいサロン、社会福祉大会等において、認知症に対す
る理解と地域ぐるみの見守り助け合いの重要性について、認識の共有を図り、自分達が地域
でできることを再確認した。
・地域住民による見守りネットワークに、各種事業者等が加わることにより、異変に気づく大
きな力となり地域全体で見守る緊急支援体制が強化されている。
・おたすけネットワークを通じて、徘徊を繰り返す方へ協力機関の気づきによる日常見守りの
声かけの体制の強化が図られ、介護者の不安が軽減される一助となっている
36
制度の狭間の問題への対応
藤里町社会福祉協議会
○基本的な姿勢
・様々な制度のもとに相談所が設置されている中で、社会福祉協議会は地域に向けて日常の困
りごと、その他の相談に対応するとうたっている以上、社会福祉協議会が行う様々な事業や
業務の範囲内で対応可能なケースには対応するのが原則だと考えている。
・上記努力では対応できない時、それらの制度内では対応できない問題(地域課題)として、
社会福祉協議会の事業としてあるいは行政・社会福祉協議会以外の事業所の事業として、事
業化の可能性を探る提案をし続けるのが社会福祉協議会の存在意義と考えている。
○日常業務を活用した対応事例
・若年の身体障害者から機能訓練がしたいとの相談があった際、高齢者デイサービスの設備や
機能を利用して対応した。
・ゴミ屋敷化した一人暮らし高齢者に対し、近親者を中心にしたチーム、ヘルパーを中心にし
たチーム、ボランティアを中心にしたチーム等の中から、本人の選択に基づき対応し、その
後、整理整頓の習慣が身に着くまでの間はヘルパーやシルバーバンクで対応した。
○地域課題に対する対応事例
・これまで、新たな地域課題に対して社会福祉協議会主体の事業を開発して対応してきたほか、
住民の主体的な活動に対する支援や他機関が実施する事業に対して支援してきた。
例)介護保険制度の施行により、ヘルパーが業務として窓ふきや居室以外の清掃等が出来な
くなり、地域に困っている人がいる場合
→シルバー人材センター会員に働きかけ、地域貢献として低料金でヘルパー的な仕事を受
けても良いという会員の登録をお願いし、シルバーバンクでそうしたニーズに応える仕
組みを作る。
例)ゴミの分別が細分化されたことにより、ゴミ捨てに困っている方がいる場合
→ゴミ捨ての問題としてゴミ屋敷化を未然に防ぐために、ヘルパーや民生委員を中心にし
た対応チームを作り、各地域に呼びかけて予防的な対応を行う。
例)知的障害者の親の会(育成会)が、会員の減少と高齢化で活動が困難になっている場合
→育成会が会員に誘いたい人、誘っても断られている人の情報を社会福祉協議会に提供。
その情報に基づき社会福祉協議会が「知的障害者家族交流会事業」へ勧誘を行う。事業
に参加した方は育成会にも加入するケースが多い。
37
③ 住民の力を高めるための取組事例
地域の気づきを高める場と関係機関につなぐ仕組みづくり
横手市社会福祉協議会
○いきいきサロン
いきいきサロン実施地区における「住民座談会」開催と「住民支えあいマップ」作成
・住民座談会
いきいきサロン参加者の他、地域関係者(町内会役員・民生委員・福祉協力員等)を参集し、
情報交換を通じて地域の現状と課題を把握し、課題に対する地域内での解決策の検討や、気
になる世帯に対する近隣の係わり方と関係者、関係機関との連携体制についての確認など、
地域における支援体制づくりの重要性を再認識した。
・住民支えあいマップ
「住民座談会」に関連した「住民支えあいマップ作成」の取り組み。高齢者世帯や関係者だ
けでは把握するのが困難な世帯(高齢者以外の問題を抱える世帯等)について近隣の支援者
を確認しながらマップに記載した。気になる世帯に対しては、町内会としてどのように見守
り支援で関わっていくことができるのか、話し合いの場を設けたいとの意見も出されるな
ど、地域内で支援していくという意識の向上につながっている。
高齢化率が高く、災害が心配される地域では、災害時(川の氾濫、土砂崩れ)の要援護者世
帯の避難所までの迅速な避難誘導が懸念され、マップでの危険箇所や要援護者世帯を把握
し、災害発生時の避難誘導体制について確認した。町内会として、避難訓練の必要性がある
のではとの意見が出され、今後、避難訓練の実施について検討していくこととしている。
○福祉協力員会
・福祉協力員・民生委員合同研修会
福祉協力員会として実施している「年末安心パトロール声かけ運動」の実績から高齢者世帯
以外の支援が必要と思われる世帯(障がい者世帯、兄弟の二人暮らし)が増えてきていると
いう実態を受け、地域ごとに関係者による地域の内在する気になる世帯状況や対応事例につ
いて情報交換を行った。
※研修会からの事例(民生委員より)
事例として、家族同居であるが、世帯主からのみ相談があった(同居家族からの訴えはな
い)内容は隣家から物を投げられるなど、嫌がらせを受けているとのことだった。町内会
長に相談したところ情報収集などに協力してくれるとのことだった。研修会を通して福祉
協力員にも情報提供することができ、現在は町内会関係者と連携しながら見守ることと
し、緊急時には早急に関係機関につなげられるような体制ができている。
・協力員会(研修会)
認知症に関する話題が増えてきていることから、地域での認知症に対する見守り(徘徊見守
り等)に関心を持っているとの意見を受け、関係機関による講話・見守り体制についてのグ
ループワークを行うなど、地域内の「気づき・見守り・つなぎ」体制づくりを推進した。今
後の取り組みとして、認知症予防に関する研修会や徘徊見守り訓練の実施について検討して
いく方向である。
38
住民の力を高めるための取組
横手市社会福祉協議会
○小地区ネットワーク会議・住民支えあいマップ作成事業の実施
小地区ネットワーク会議の内容から行政区ごとに住民支えあいマップを作成しており、要援護
者世帯(地域によっては要援護者の身体状況や支援者・要援護者の連絡先なども記載)や見守
り活動等を行う支援者などを記載している。マップは各地区の小地区ネットワーク会議に関わ
る福祉関係者(地区役員・民生委員・福祉協力員など)が保有しており、マップによって情報
を共有しながら要援護者世帯に対して日常的な見守り活動を行っている。
小地区ネットワーク会議は年1回開催しており、福祉関係者が持ち寄ったマップを確認しなが
ら、見守り活動や訪問活動を行っている要援護者の状況について情報交換を行うほか、災害時
の避難支援体制などについて協議を行っている。
※実施状況:9地区で小ネットワーク会議を実施(平成 26 年 4 月 1 日~平成 26 年 12 月 31 日)
○福祉団体との連携事業
福祉課題を早期に発見・対応するため、地域内の高齢者や障害者の多くが加入している福祉団
体に対し、ネットワーク活動に対する理解と協力を依頼した。
なお、老人クラブ役員は地域の小地区ネットワーク会議に出席してもらっているほか、老人ク
ラブの友愛訪問活動等へつなげてもらっている。
※実施状況:老人クラブ、身体障害者福祉協会、遺族会へ説明と協力依頼を行った。
○除雪ボランティア事業
自力での除雪が困難な高齢者世帯等に対し、中学校生徒による除雪ボランティア活動を実施し
ている。なお、実施にあたってはボランティア活動のPRやボランティア活動終了後も対象世
帯に対する見守りや地区住民による除雪支援につながるよう、地区長に対象世帯の状況を伝え
るとともに、ボランティア活動の際には地区の福祉関係者に協力してもらいたい旨を説明・依
頼を行った。
※実施状況:中学生ボランティア、地区の区長、民政委員、福祉協力員、社会福祉協議会職員
により単身高齢者世帯の除雪ボランティアを実施(平成 27 年 1 月 24 日)
39
異世代交流による住民の力を高める取り組み
美郷町社会福祉協議会
○事 業 名
一斉除排雪活動事業
○事業内容
単身高齢者世帯等を対象に、中学校、高等学校、地域住民、福祉施設、企業、団体等の協力の
もと地域連携による除排雪活動を行い、高齢者が住みなれた地域や家庭において安心して冬の
暮らしができるよう支援する。
○協力機関
地域住民、民生委員、老人クラブ、消防団、中学生(1・2年生)
、高校生(1年生)
、介護保
険施設、障害施設、企業、建設業協会、技能・板金組合、役場職員、社会福祉協議会職員
○実施内容
・活動を通して誰もが安心して暮らせる地域づくりに向け、地域ぐるみの助け合いの必要性に
ついて実感するとともに認識を共有し、また、単身高齢者世帯等と中学生・高校生との異世
代交流による声かけやふれあい活動にもつながっている。
・活動実施前に、一斉除排雪活動事業の協力機関の代表者による検討会や福祉教育推進連絡協
議会において、高齢化等による地域課題の解決に向けて、地域ぐるみの支えあいの重要性に
ついて説明。地域・企業等連携による支援体制作りについて認識の共有を図り、事業に取り
組んでいる。企業の中には、一斉除排泄活動を地域貢献事業として位置付けて参加している
企業もある。事業終了後は、参加協力機関の代表者による報告会を開催し、活動の課題等に
ついての協議や利用者からの感謝の声を報告し、活動の必要性を再確認し次年度継続実施の
体制を整えている。
・地域住民に、企業や団体等が加わることで、支援世帯の状況を共有し、気づき見守りネット
ワーク活動の強化を図ることができる。
・中学生や高校生が、地域住民や企業等と一緒に地域の現状を把握し活動することで、地域課
題解決について共助による支えあいの重要性の認識を図るとともに、地域の一員として見守
り活動や支援活動への参画を図っている。
・中学生、高校生は、訪問世帯の高齢者から直接感謝の言葉をかけられることで、活動の達成
感や満足感が得られ、ボランティア意識の向上が図られている。
40
プラチナバンク構想
藤里町社会福祉協議会
○地域課題
・高齢化率の上昇による問題
・若者が減少し、若者にとって住みにくいまちになっている問題
・シルバーバンクの会員減少の問題
・ボランティア団体連絡協議会の高齢化と活動が困難になってきている問題
○プラチナバンク構想の検討
・過疎化・高齢化を支えるための、生涯現役を目指す人づくり
・デイサービス利用者でも老人クラブ活動が困難になった人でもひきこもりでも参画可能な
仕事づくり
・若者が高齢者を支え、同時に高齢者が若者を支える、ともに支え合うまちづくり
41
④ 多問題家族への対応事例
複合ニーズ世帯への支援体制整備
横手市社会福祉協議会
○相談者
70代、女性、弟と二人暮らし、無職
資金貸付事業を利用していたが、現在は償還済み。二人とも年金暮らしで、弟は仕事があると
きは出かけるがほとんど家にいる。二人とも近所付き合いはない状況。
○生活状況
償還の際は、移動手段がないため社会福祉協議会職員が訪問して受領していた。その際に年金
暮らしによる生活苦(低所得世帯)で悩んでいるとの相談があった。本人は、リウマチのため
月1回、医療機関に通院しており、年金のほとんどを医療費と交通費に充てている状況。子か
らは、買い物や通院などに送迎してもらうなどの援助は受けられているが、金銭面では子の家
庭状況もあり、援助が受けられない。子に遠慮している様子もうかがえた。
弟は、相談者よりも年金収入が多く、農作業の手伝い等もしているため、多少の収入があるが、
浪費癖があり、自分の気に入った物はすぐに購入してしまい、食費等の生活費も出さない。人
付き合いが苦手で誰の話も聞かず、一人で過ごすことが多い。気に入らないことがあるとすぐ
に怒ることもある。健康状態は良くないが、通院を嫌っている。おそらく軽度の知的か発達の
障害があるのではとのこと(軽度の障害者世帯)
○経過
相談者は低所得であったが、同居している弟にはある程度の収入があるため、生活保護の相談
をしたが対象外であった。同居していながら、生活に係る経費はそれぞれで支出しており、年
金収入が少ない相談者に負担がかかっている。
→お互いに協力しながら生活できるよう弟との話し合いの必要性があったが、人付き合いを拒
むことや話を理解することが困難であること、相談者も話し合いの機会を設けることを拒ん
でいることにより、弟との直接的な関わりが困難であった。また、親戚関係からも協力を得
られることが困難な状況である。相談者は一人暮らしであれば生活保護の対象となるが、軽
度の障害がある弟が一人では生活できないことから、自分ができる限り弟の面倒を見なけれ
ばならないという意識があり、今の生活を続け、大変な時は相談したいとのことだった。
○今後の対応
・今後、二人とも更に高齢になっていくこと、弟に軽度の障害があることなどから、地域関係
者による見守り支援強化と関係機関への情報提供。
・定期的な訪問による相談者の精神面のケア。
42
「報告・連絡・相談」用紙の活用
藤里町社会福祉協議会
○「報告・連絡・相談」用紙により、社協内外の情報は全て地域包括支援センター(障害者自
立支援法による地域活動支援センター機能も持つ)に上げるシステムとしている。
○各職員、各部門で対応できる問題は即時対応し、部門間の連携や多機関との連携が必要な場
合は地域包括支援センター(または地域活動支援センター)が支援対象家庭を訪問し、支援
方針について説明のうえ同意を得る。
○ケース検討会議の開催により部門間・多機関で情報共有を図るとともに役割分担をする。
例)本人には介護支援専門員、訪問介護、通所介護が支援に入り、キーパーソンを訪問介護事
業所のサービス提供者とする。介護者(子ども)に対しては保健師が自宅以外の場所で相
談にのり、孫には介護者の同意を得られた時点で保健師と指定相談事業所職員が訪問する
など、細部に至る役割分担を行う。
○役割分担を決めた後、本人の同意を得た範囲内で(緊急時は超える場合もあり)、地域包括支
援センターが窓口になって随時必要な情報交換を行う。
○一連の対応等から、不足しているサービスや事業等は何かを話し合う場を設けている。
43
情報共有による支援体制
美郷町社会福祉協議会
総合相談事業等において、多問題ケースや支援が必要なケースについては、福祉保健課(行政)、
地域包括支援センター、保健センター等と相談対応の連携と経過報告等に関する情報共有また同
行訪問をするなどして連携して対応している。
例)叔父の介護に困った甥の相談から(在宅介護支援センターへ相談)
・世帯の状況
3人世帯、相談者(甥)60代、母80代(叔父を介護)、叔父70代(知的障害者)
相談者は、買い物はするが家事等は一切しない。
・相談内容
母が介護疲れから体調を崩し救急搬送される。叔父の体に触ると大声を出すため介護でき
ない。
・支援経過
在宅介護支援センターが状況確認のため世帯訪問。
猫が20~30匹いるうえに、不衛生で部屋に入れる状態ではなかった。
↓
地域包括支援センター及び社会福祉協議会に在宅介護支援センターから連絡が入る。
↓
関係者による世帯訪問。
社会福祉協議会が民生委員から世帯の状況について情報収集。
↓
個別ケア会議の開催。
(地域包括支援センター、行政障害担当、介護支援専門員、民生委員、社会福祉協議会)
情報共有のうえ支援対応にあたる。
(介護保険、親族、見守り等)
↓
地域ケア連絡会においてケース検討。
↓
地域ケア連絡会において状況報告、ケース検討を継続。
44
3
重点課題への取組に関する評価
(1)総合相談支援窓口の整備
これは、複合的なニーズを抱える人が相談に来た時にたらい回しにせずに、ワンスト
ップで対応できる仕組みを作ることである。藤里町社会福祉協議会のように各相談支援
センターの機能を1つの窓口に集約できればよいが、それが難しい場合には、相談を受
けた専門職が適切な機関に確実につなぐことで補う必要がある。
具体的には、つなぐ機関へ電話で確認した上で紹介したり、一緒にその機関へ相談に
行ったり、また、その機関に来てもらって対応するというような確実な連携がモデル地
区で取り組まれたことは重要である。また、ニーズを見極め、連携すべき相手を判断で
きるような初回面接の重要性もモデル地区から挙げられた。
今後、各専門職の相談支援技術の向上とともに、総合相談支援窓口や総合相談支援体
制について地域福祉計画等の行政計画に位置づけることが重要である。
(2)多職種横断的連携システムの構築
多職種との横断的な連携について、モデル地区の高齢者支援では地域ケア会議等を通
じて保健・医療分野の専門職との連携が図られていた。また、司法との連携については
従来の相談事業等を通して弁護士との協力関係が築かれていた。そして新たな動きとし
て若者支援を通じて商工会との連携が試みられている。
しかし、子育て支援における教育分野との連携については十分とは言えず、スクール
ソーシャルワーカー等を媒介にしながら連携をより強化していく必要がある。また、連
携するためにはプライバシーに配慮した情報共有が不可欠であり、専門職間や住民も含
めたチーム内での情報共有のルールについて今後各地の取り組みをもとに生かしてい
く必要がある。
(3)制度外ニーズ対応システムの構築
現在、様々な会議が行われているが、既存の制度では対応困難なニーズへの対応を議
論する場が十分に整っていない状況にある。また、こうした問題に対応する専門職自体
が明確になっていないという問題もある。
今後は制度外ニーズに対応していく専門職や、新たな社会資源の開発を視野に入れた
検討会議を地域福祉計画等に位置づけていくことが重要である。また、地域ケア会議等
の既存の仕組みを生かしていくことも検討すべきである。そして制度の枠内だけで支援
を考えず、制度の狭間のニーズに気づく力を専門職と地域住民の双方で高めていくこと
が求められる。藤里町社協が「報告・連絡・相談シート」を活用して専門職の気づきの
力を高めていることは注目すべき取り組みである。
今後、住民の気づきの力と合わせて制度外ニーズを「集約し、対応を検討し、実施し
ていくシステム」を地域福祉計画等に位置づけていく必要がある。
(4)公私協働によるアウトリーチ体制の整備
アウトリーチによるニーズ把握について、モデル地区では大きく二つの方法が行われ
ていた。一つは、住民が行っているサロンへ出かけていったり、小地区ネットワーク会
45
議に参加するなど住民が活動している場へ出向いてニーズ把握を行う方法である。もう
一つは、本人や家族からの電話相談を受けたり、周りの人々や専門職からの情報提供に
基づいて、支援を必要とする者の家庭を訪問する方法である。
戸別訪問では、本人や家族が支援を求めていない場合の声かけや関係形成に関する高
度なスキルが求められる。モデル地区でも、戸別訪問を得意とする職員と不得意とする
職員がいるため、アウトリーチによるニーズ把握や関係形成のスキルを確立し、困難事
例に対応していく力を高めていくことの重要性が挙げられていた。
長期不就労の若者支援や虐待ケースにおけるアウトリーチ実践が蓄積されてきてお
り、今後こうした実践知をまとめ、共有していくと同時に、組織としてアウトリーチす
る職員を支える体制を整えることが必要である。
(5)地域福祉を推進する専門職の養成と配置
コミュニティソーシャルワーカーを専任で配置することは理想的であるが、たとえ専
任配置できたとしてもその人任せにせず、多様で複雑な課題を解決するため、その職員
を組織全体で支えていく必要があり、そのための体制を整えることが重要である。
モデル地区では、コミュニティソーシャルワーカーを専任配置せず、社会福祉協議会
職員全員で取り組んでいる。専任配置が難しいという事情もあるが、その場合は横断的
な連携や制度の狭間の問題へのチーム対応によってその機能を補うことが重要になる。
また、コミュニティソーシャルワーカーの養成については、これまで秋田県社会福祉
協議会が継続的に取り組んでいるが、研修修了者に対するフォローアップ研修やスキル
アップ研修のプログラム開発も検討すべき段階に来ている。
(6)地域を基盤とした住民活動の支援体制の整備
これは、小地域を単位とした地区社会福祉協議会のような住民組織を新たに立ち上げ
ていくことや、自治会や町内会の中に福祉部を設置して継続的な住民活動を展開できる
仕組みを整えていくことである。
地区社会福祉協議会については、全国的には小学校区など学校区を範囲に組織化され
ることが多いが、県内では学校の統廃合により学校区が非常に広域になっている場合も
ある。また今回のモデル地区のように人口規模も様々である。そのため、組織化のエリ
アは他の住民活動のエリア設定や生活状況を踏まえて設定していく必要がある。
また、これまで秋田県社会福祉協議会では地域福祉トータルケア推進事業を通して、
サポート運営委員会の立ち上げに取り組んできたが、今後進めていくにあたっては、全
戸を対象としたアンケート調査やヒアリング調査によって、ニーズ把握や活動の担い手
の発掘を行っていくこと、かつ住民自身が多様な世代のニーズに応える活動を通して次
世代の担い手を育てていくこと、企業や福祉施設・事業者との協働を進めることなどを
課題として取り組んでいくことが求められる。
46
Ⅲ
関係機関との情報共有のための共有ツール参考例
1
横手市社会福祉協議会「心配ごと相談カード」
心 配 ご と 相 談 カ ー ド
秘
No.
相談受付日
相談方法
平成 年 月 日( )
来所・電話・その他
利用経路
利用歴
初回・継続・再来
相談者氏名
性別
住所
横手市
年齢
歳
職業
面談所要時間
同伴者
氏名
家相
男 ・ 女
性別
名
年齢
続柄
連絡先
氏名(同伴者)
性別
年齢
続柄
族談
構者
成の
相
談
の
主
訴
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
生
債
職
業
・
生
業
住
土
財
相
結
離
D
V
家
人
権
・
法
律
事
医
精
健
苦
そ
相
談
事
計
務
被
宅
地
産
続
婚
婚
害
族
合
計
神
の
衛
故
療
生
康
情
他
項
解決
処
理
状
況
再来
民生
委員
関係
機関
その
他
紹介先(関係機関)
相談員氏名
□ 無料法律相談(○○月○○日)
□ 医療機関( )
□ 市福祉事務所( 課)
□ 警察署( )
□ 市包括支援センター( ○部 )
□ 消防署( 分署)
□ 市地域局( 課)
□ その他( )
㊞
センター長
地域福祉担当者
㊞
㊞
□ 市社協(地域福祉・在介センター・介護保険事業所・ )
※裏面に特記事項欄あり
47
2
美郷町社会福祉協議会(美郷町地域包括支援センター)「アセスメントシート」
地域ケア会議・アセスメントシート
独
氏名
要介護度
男・女
有効期限
住所
検討テーマ
(介護に影響を及ぼす健康状態について)
健康状態
(上記に対して介護スタッフの役割)
個人因子
(生活に支障をき
たす要因・因子)
家族環境
環境因子
(生活に支障をき
住環境
たす要因・因子)
世帯収入
経済的環境
個人因子からの課題
問題点
課題
環境因子からの課題
(短期目標・支援内容)
支援計画
(中期目標・支援内容)
短期 1~3か月
中期 3~6か月
長期 6か月~1年
(長期目標・支援内容)
平成
年
月
48
日
記入者
高
他
3
藤里町社会福祉協議会「報告・連絡・相談 受付書」
上席事務局長
事務局長
包括センター
部門責任者
報告・連絡・相談
平成
年
月
日(
記入者氏名
報
告
連
絡
相
談
内
受付書
平成
所属
□デイ
□ヘルパー
□ケアマネ
□こみっと
区分
)
担当者
年
月
日(
記入者氏名
□事務局
□包括
□ぶなっち
□くまげら館
所属
□デイ
□ヘルパー
□ケアマネ
□こみっと
容
)
□事務局
□包括
□ぶなっち
□くまげら館
対策・回答
□苦情
49
□ヒヤリ・ハット
□相談
□その他
※「報告・連絡・相談 受付書」について
当該様式については、ニーズ把握とその対応状況の把握などを主目的とした様式であり、
相談受付やアセスメントに用いる様式とは主旨が異なることから、以下においてその取り
扱い等に関するポイントを紹介する。
導入経緯
○導入
地域ニーズに対する気づきと、それに的確に応えるための手法を試行錯誤するなか、か
つてヘルパー事業所で使用していた様式に対応結果を明記する形にリニューアルし、平成
17年度から全ての社会福祉協議会職員が使用を開始する。
主な使用例






地域住民や民生委員、福祉員等から情報が寄せられた場合
相談受付の初期対応時(本格的な支援に移行する際は専用様式で対応)
ケース記録に記録するには適さない内容だが、気になることがある場合
業務日報に記載するにあたり3行以内で書ききれない場合
複数の職員で対応したため誰が報告すべきが判断に悩む場合(関わった全員が記入)
その他、些細な気づき全般
取り扱いの流れ
○取り扱いの流れ
① 各職員が記入
②
③
④
⑤
⑥
部門長が内容を確認 (必要に応じて部門長が対応を指示)
地域包括支援センターが情報を集約(内容及び対応結果を確認)
何らかの対応を要すると判断した場合は必要な対応を指示
連携を要するケースについてはケース検討会議で協議(情報共有、役割分担)
対応結果を情報提供者に報告(情報提供があった場合)
記入にあたっての留意点と対応のポイント
○記入にあたっての留意点と対応のポイント
 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)の徹底を図っている。導入
当初は記入に戸惑う職員が見られたものの、現在ではそれが定着している。
 どの区分(報告・連絡・相談)に記載するか判断に迷うケースについては、どこに記載
しても良いこととし、後日記録をチェックした職員が適切な区分に振り分けることとし
ている。
 個人情報保護の観点より、デイサービスの情報を直接ヘルパー事業所に伝えるなどとし
た各事業間で情報のやり取りは一切せず、必ず公的機関である地域包括支援センター
(自立支援法による地域活動支援センター機能あり)が情報を集約し、必要に応じて各
部門に対応を指示するしくみをとっている。
 「内容」欄に記載した事項は、必ず「対策・回答」欄にその対応結果まで記述するなど、
個々の責任ある対応に対する意識化を図っている。
 民生委員や福祉員等から情報提供があった場合は、出来なかったことも含めて対応結果
を必ず報告している。自身が提供した情報に社会福祉協議会が真剣に対応したというこ
50
とを実感することで、その後一層情報が入るようになり、ニーズキャッチ機能の向上に
つながっている。
 部門長及び地域包括支援センターは、コミュニティソーシャルワークの視点により内容
を確認している。
 特に注意が必要なことは、週1回開催している部門長会議で情報共有し、そこから各職
員に周知徹底を図っている。
効果と課題
○効果
 職員の気付きの力が高まった。当初は何を記入したら良いか戸惑っていた職員であって
も、報告内容をしっかりと受け止め、その結果を返すことで徐々にモチベーションが上
がり、報告件数の増加につながっている。
 管理職候補者に対してはその職制に求める視点を意識したチェックを行っており、それ
に対する対応を繰り返すなかでソーシャルワーク技術が向上している。
 地域包括支援センターが情報を一元管理していることや、必要な情報が部門長会議等を
介して共有されているため、職員間の情報共有が容易になった。
 取り扱い件数が年々増加していることが成果であると同時に課題ともなっている。ただ
し、現在では対応ノウハウが定着しつつあるため、各部門長の段階で大部分の対応は出
来ている。
参考データ
(1)取扱件数
各職員の意識と資質が向上したことに伴い、取り扱い件数は飛躍的に増加している。
(単位:件)
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
1,036
1,935
3,288
3,628
4,407
5,310
8,039
7,002
197
(2)組織体制
次の4部門6セクションで組織されている。なお、部門長は各セクションに配置されて
いる(兼務あり)。
事務局部門
デイサービス部門
・デイサービス事業
所
地域福祉・総務
相談支援部門
こみっと
相談支援部門
・在宅福祉促進事業 ・こみっと、くま
・ボランティア育成
げら館運営
・団体育成
・お食事処「こみ
・源さんクラブ事業
っと」
・シルバー、こみっ ・舞茸キッシュ販
とバンク
売
・配食サービス事
業
・総合相談
・地域包括支援
センター
・地域支援事業
・地域活動支援
センター
・指定相談支援
事業所
・求職者支援訓
練事業
51
ケアマネ
・ケアマネ事業所
・訪問調査
ヘルパー部門
・ヘルパー事業所
・ぶなっち運営
Ⅳ
地域福祉再構築推進事業検討委員会
1 委員会設置要綱
(目的)
第1条 平成25年度医療・介護・福祉ネットワーク構築事業地域福祉再
構築研究会報告書に基づき、地域における生活課題に関する総合相談支
援機能の充実と課題解決の仕組みづくりを進めるために必要な実践のあ
り方を検討することを目的とする。
(構成)
第2条 委員会の委員は、次に掲げる機関に所属する者等の中から秋田県
社会福祉協議会会長が委嘱し、7名以内で構成する。
(1)市町村社会福祉協議会
(2)地域包括支援センター
(3)関係団体
(4)市町村行政
(5)学識経験者
2 委員会には、委員の互選により委員長1名を置く。
3 委員長は、会務を総括し、委員会を代表する。
(任期)
第3条 この委員会の委員の任期は、平成26年9月1日から平成27年
3月31日までとする。
(会議)
第4条 委員会は、必要に応じて秋田県社会福祉協議会会長が招集し、委
員長が議長を務める。
(費用弁償)
第5条 委員には費用弁償として、秋田県社会福祉協議会委員等の費用弁
償規程に準じて支給する。
(庶務)
第6条 委員会の庶務は、秋田県社会福祉協議会において処理する。
(その他)
第7条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は
委員長が別に定める。
附 則
この要綱は、平成26年9月1日から施行する。
52
2
3
委員会開催状況
第1回 期
日
会
場
協議事項
平成26年9月30日(火)
秋田県社会福祉会館
・地域福祉再構築推進事業について
・モデル市町村の取り組みについて
・関係機関との情報共有に向けた取り組みの
あり方について
第2回
期
日
会
場
協議事項
平成26年12月12日(金)
秋田県社会福祉会館
・モデル市町村の取り組みについて(推進課題)
・関係機関との情報共有のあり方について
・中間報告書骨子案について
第3回
期
日
会
場
協議事項
平成27年2月25日(水)
秋田県社会福祉会館
・中間報告案について
・今後の方向性について
委員名簿
No
区分
所属・職名
1
学識経験者
日本社会事業大学
社会福祉学部福祉計画学科准教授
菱沼
幹男 ◎
2
市町村行政
横手市健康福祉部社会福祉課課長
金田
紳一
3
地域包括
支援センター
美郷町地域包括支援センター管理者
皆川
信之
4
関係団体
飯坂
正美
5
市町村
社会福祉協議会
髙橋
祐行
6
市町村
社会福祉協議会
社会福祉法人藤里町社会福祉協議会
7
市町村
社会福祉協議会
社会福祉法人美郷町社会福祉協議会
独立行政法人地域医療機能推進機構
秋田病院附属介護老人保健施設支援相談員
社会福祉法人横手市社会福祉協議会
本部地域福祉課地域福祉係長
常務理事兼上席事務局長
事務局長
任期:平成26年9月1日~平成27年3月31日
53
氏 名
菊池 まゆみ
渋谷
真弓
◎委員長
秋田県健康福祉部福祉政策課
(業務受託:社会福祉法人秋田県社会福祉協議会)
〈福祉政策課連絡先〉
〒010-8570 秋田県秋田市山王四丁目1番1号
電
話 018-860-1316
ファックス 018-860-3841
Eメ ー ル
[email protected]
54
55