Japan tax alert 8月6日号

2014年8月6日
Japan tax alert
EY税理士法人
2014年インド中央政府予算案における
移転価格税制改正案
EY グローバル・タックス・
アラート・ライブラリー
EYグローバル・タックス・アラー
トは、
オンライン及びpdfで以
下のサイトから入手可能です。
http://www.ey.com/GL/en/
Services/Tax/InternationalTax/Tax-alert-library%23date
エグゼクティブ・サマリー
2014年7月10日、インド財務大臣(財務相)は、2014-15インド予算案の一部として2014年中
央政府予算案
(FB 2014)
をインド国会審議前に公表しました。財務相は、
インドの居住者・非居
住者の納税者の双方にとって、
現在移転価格税制
(TP)
が税務訴訟の主要分野となっていること
に言及しています。TPに係る税務訴訟を減少させ、
納税者に税務の予測可能性と明確性を提供
することを目的として、
以下の移転価格税制に係る改正案が今次予算案に盛り 込まれました。
における遡及適用条項の導入
• 事前確認制度
(APA)
• APA審査を迅速にするための事務体系の強化
• 独立企業間価格の算定にレンジの概念及び複数年度のデータ使用を導入
• みなし国際取引の定義を変更
に対するペナルティ賦課権限の付与
• 移転価格調査担当官
(TPO)
本稿では、
インドにおける今回の移転価格税制に係る改正案をまとめています。
APA関連条文
みなし国際取引の定義変更
APAの規定は、2012年度財政法においてインド税法に導入さ
れました。現行の規定では、将来5年間を最長としてAPAを締
結することができるものとしており、現時点では遡及適用の制
度はありません。
現行規定において、TPの対象になる国際取引は、一方又は両
方の関連当事者が非居住者である二者以上の関連企業(AE)
間の取引と定義されています。さらに、みなし規定として、非
関連者と行われた取引で、事前の取決めがあった場合又は取
引の条件を実質的にその非関連者とAEの間で決めた場合の
取引が、国際取引とみなされています。現行の規定では、二者
又はそれ以上の企業間の取引で、いずれも非居住者ではない
場合、その取引は国際取引(又はみなし国際取引)
とはなりま
せん。
FB 2014 ではAPAに
長期化するTP訴訟の削減を目標として、
遡及適用の導入を提案しています。これは、将来年度に対する
APAにおいて、APA開始事業年度前の事業年度(過去4事業年
度まで)
の実際に行われた取引に適用されるものです。遡及適
用の要件、手続き及び具体的な適用の内容はまだ明確にされ
ていませんが、
この改正については、2014年10月1日からの
実施が提案されています。加えて、
APAの申請処理を迅速にす
るための事務体系の強化策も併せて提案されています。
独立企業間価格
(以下ALP)
の算定
現行の規定では、最適な方法を使用して複数の価格が算定さ
れた場合、
ALPはこれらの価格の算術平均とすることとされて
います。また、ある一定の範囲内に入れば独立企業間価格と
みなす規定があり、納税者の移転価格実績値のプラスマイナ
ス3%以内に独立企業間価格が入っているかを検証することと
なっています。
財務相は、予算案の公表において、適切な場合には、
レンジの
概念を使用することを認めるよう現行の規定を改定する必要
があることを示唆しました。また、比較対象会社の数が不十分
な場合には、
統計手法として算術平均の使用を継続することに
も言及しています。具体的な規定がどのようになるか引き続き
注視することが必要です。
複数年度のデータ使用
インドのTP規則では、国外関連取引と独立企業間取引の比較
可能性分析に使用されるべき情報は、当該国外関連取引の行
われた課税年度に係るものとされています。
しかし、課税年度
前の2年以内の情報であれば、
当該情報が対象とされている国
外関連取引の価格決定に影響を及ぼしていることが明らかな
場合には、
比較可能性分析に使用されうるとされています。
財務相は、比較可能性分析で複数年のデータ使用を認める規
定への改正を提案しています。当該規定が改正に最終的に盛り
込まれるかどうかはまだ未確定です。
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| Japan tax alert 2014年8月6日
上述のみなし国際取引において、
企業又はAEのいずれか又は
両方が非居住者の場合、非関連者が非居住者であるか否かに
かかわらず、その取引を国際取引とみなすように関連規定を
改正し、2014-15課税年度から施行することが提案されてい
ます。
TPOへのペナルティ賦課権限の付与
現行のインドのTP規則では、
要求されたTPの文書化又は情報
の提出がなされない場合、
査定担当官又は下級審判当局が、
国
外関連取引の価格の最大2%のペナルティを賦課する権限を有
しています。FB 2014では、
TP調査は通常TPOによって行われ
ることから、TPOにも同様にペナルティ権限を与えることが提
案されています。この改正については、2014年10月1日から
の発効が提案されています。
影響
インド財務相は、
TPが納税者にとって税務訴訟の主要分野とな
っていることを認識しており、税務上の予測可能性と明確性を
提供するために、
今回の改正案を提示しています。
APAにおいて過去の未調査年度を解決するための遡及適用が
できるようになることは、
一般的にAPAを行おうとしている納税
者にとってのインセンティブとなります。遡及適用によって進行
中のTP争訟を解決するための費用対効果の高い道が開けるも
のと考えられます。2012年にインドでAPAが導入されて以来、
遡及適用ができないことが、
多くの納税者にとっての懸案事項
として挙げられてきました。そのため、APAの遡及適用を可能
とする今回の提案は歓迎されるべきものであり、
インドのAPA
制度をより有意義なものとすることが期待されています。
レンジの概念及びTP分析での複数年度のデータ使用が認めら
れることにより、
納税者にとって、
自らの移転価格の取り決めが
独立企業原則に則していることを主張する上でのより大きな柔
軟性がもたらされると期待されます。
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