チタン錯体上で起こる炭素炭素結合切断反応 CarbonCarbon Cleavage Reaction on Titanium Complex 水上 雄貴 1、宋 志毅 1、中島 清彦 2、高橋 保 1(北大触セ 1・愛知教大 2) 炭素炭素結合切断反応は、有機化学における未 R R 開拓な素反応として近年大きな注目を集めている。 azobenzene しかし、通常は反応性が低い炭素炭素結合を活性 R R 化するのは難しく、挑戦的なテーマとなっている。 R R 2 Ti 炭素炭素結合を事前の反応部位の導入なしに選 PMe3 R 択的に切断することができれば、元の炭素骨格にと + R R azobenzene 1 らわれない新たな炭素骨格を自在に構築すること This work. R が可能となり、従来法とは異なる全く新しい合成手 One substituent R 法となり得る。 was missing! 3 当研究室では、チタナシクロペンタジエン 1 に対 し種々の反応剤を加えると、Cp 配位子とブタジエン部位のカップリング反応が進行したのち、 様々な炭素炭素結合切断反応が起こることを見出している。このとき、反応剤としてアゾベンゼ ンを用いると四置換インデン誘導体 2 が生成する[1]。 本研究ではチタノセン錯体の多様な反応性を明らかにすべく、添加剤の検討を行った。その結 果、アゾベンゼンに加え添加剤としてトリメチルホスフィンを加えると、ジエン部位と置換基の 間の炭素炭素結合がひとつ切断され、三置換インデン誘導体 3 が得られることを見出した[2]。 THF 中で調製したチタナシクロペンタジエン 1a に対し 3 当量のトリメチルホスフィンを加え、 50 ºC で 3 時間撹拌を行った。次に室温で 3 当量のアゾベンゼンを加え、12 時間撹拌を行った。 これを酸で処理したところ、三置換インデン誘導体 3a が良好な収率で得られた。また、生成物に おける Cp 配位子由来の炭素原子の位置を確認するために、Cp 配位子を 13C でラベル化したチタ ナシクロペンタジエン 1a-13C を用いて本反応を行った。すると環状の Cp 配位子由来の炭素原子 が開裂し直鎖状に並んだインデン誘導体 3a-13C が得られた。この結果から、反応完結までに 2 種 類の結合切断(置換基の脱離と Cp 配位子の開裂)が起こるということが明らかになった。 Cl 1) 2 eq. nBuLi THF, -78 °C, 1 h Cl 2) 2 eq. Et -10 °C, 3 h+ Ti Et Et Et 1) 3 eq. PMe3 50 °C, 3 h+ Et 2) 3 eq. azobenzene rt, 12 h+ Ti Et 1a-13C Et "Cp ligand" was cleaved and linearly aligned! Et Et 3a-13C ... 13C enriched carbon atoms <参考文献> 1)Takahashi, T.; Song, Z.; Hsieh, Y.-F.; Nakajima, K.; Kanno, K. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 15236. 2)Mizukami, Y.; Li, H.; Nakajima, K.; Song, Z.; Takahashi, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, Accepted. 発表者紹介 氏名 水上 雄貴(みずかみ ゆうき) 所属 北海道大学 大学院生命科学院 生命医薬科学専攻 学年 D1 研究室 有機合成触媒研究室
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