籾山洋介「多義語の多様性と位置づけ」 【要旨】 単義語・多義語・同音異義語は連続体を成すこと、つまり、単義語と同音異義語を両極と し、その中間に多様な多義語が連続的に存在することを、現代日本語の言語事実に基づき明 らかにする。特に、 「単義語寄りの多義語」 「 (典型的な)多義語」 「同音異義語寄りの多義語」 が存在することを示す。 なお、多義語を暫定的に「1 つの語が複数の意味を有し、その複数の意味に関連性が認め られる」とすると、この定義の「関連性(が認められる)」に多様な程度が想定できること から、必然的に、関連性の程度に応じた多様な多義語が存在することになる。 具体的には、以下のような考察をする。 「 (典型的な)多義語」と認定する言語事実として、先行研究を踏まえて、以下の(1) ~(7)を検討する。 (1) (単義語寄りの多義語に比べて)各意味と共起する表現の自由度が高い (2) 「X という Y」の X の位置に生起可能 (3) 「X と Y」 「X も Y も」などの X(あるいは Y)の位置に生起可能 (4)反義語の違い (5)照応の同一性 (6)くびき語法(zeugma) (7) 「文字通り(の) 」の機能 「単義語寄りの多義語」については、以下の2つの場合を考察する。 1. 多義語の一方の意味の自立性が低い場合 2. 多義語のスキーマ的意味の自立性が高い場合 特に、1 と 2 のそれぞれの場合について、 「(典型的な)多義語」とは異なる言語事実が見ら れることに注目する。 「同音異義語寄りの多義語」については、以下のことなどを取り上げる。 1. 語源的に同一の語が「同音異義語寄りの多義語」になる場合がある。 2. 同音異義語の再解釈により「同音異義語寄りの多義語」になる場合がある。 特に、1 については、ある種の外来語が「同音異義語寄りの多義語」であることは必然的で あることを示す。 (参考文献は、発表当日に示します) -1-
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