Tax update 平成27年度税制改正大綱 EY税理士法人 税理士 山極 誠 • Makoto Yamagiwa 2007年9月、EY税理士法人に入所。グローバル コンプライアンス アンド レポーティング部に所属。日系企業や外資系企業に対する法人 税等の申告書作成業務および税務アドバイス業務に従事。 Ⅰ はじめに 2. 欠損金繰越控除制度の改正 大法人の繰越欠損金の当期所得に対する控除上限 昨年12月30日に、平成27年度与党税制改正大綱 (現行:当期所得の80%まで)が、平成27・28年度 が公表されました。衆議院選挙が平成26年12月に実 は65 %に、平成29年度以降は50 %に引き下げられ 施されたため、例年に比べてその取りまとめ・公表が ます。繰越期間(現行:9年間)は、平成29年度以降 遅れたものの、大綱で明らかにされた主要な改正項目 に生じる欠損金について10年になります。なお、中 は秋口あたりから議論されていた内容におおむね沿っ 小法人等には原則として上記の改正は適用されません。 たものです。以下、法人に関連する主要な改正項目を 再建中の法人や新設法人(大法人等の100 %子法人 中心に説明します。 を除く)については、7年間は所得の全額を控除可能 なお、一部項目については、国会での法案審議の過 とする特例が導入されます。 程において、修正・削除・追加などが行われる可能性 があることにご留意ください。 3. 受取配当金益金不算入制度の改正 株式の保有比率区分ごとの益金不算入額が<表1> のように改正されます。保有比率が5%以下の株式に Ⅱ 法人課税 ついては、益金不算入割合が50%(現行)から20% に大幅に引き下げられます。 1. 法人実効税率の引下げ 法人税の税率が平成27年4月1日以後開始事業年度 から23.9 %(現行:25.5 %)に引き下げられます。 ▶表1 これにより、国・地方を通じた現行の標準的な法人実 100% 効税率34.62 %は32.11 %に引き下げられます。こ 1/3超100%未満 受取配当金額の全額(負債利子控除あり) の引下げは、法人事業税所得割の税率引下げ(7.2% 5%超1/3以下 受取配当金額の50%(負債利子控除なし) から6.0%へ)も加味しています。引下げを織り込ん 5%以下 受取配当金額の20%(負債利子控除なし) 保有比率 益金不算入額 受取配当金額の全額(負債利子控除なし) だ改正税法が平成27年3月31日までに公布された場 合には、3月決算法人は、決算時の繰延税金資産・負 債の計算に留意する必要があります。 なお、平成28年度改正においては31.33 %へのさ らなる引下げが行われ、数年で20 %台まで引き下げ ることが目指されます。 2 情報センサー Vol.102 March 2015 なお、保険会社については、特例として、「保有比 率5 %以下」の株式の配当金額について40 %が益金 不算入とされます。 また、株式投資信託の分配金は、全額益金算入とな ります(特定株式投資信託の分配金は80%益金算入) 。 Ⅲ 国際課税 4. 所得拡大促進税制の改正 適用要件のうち、雇用者給与等支給増加割合要件が タックスヘイブン対策税制における低税率国の判 <表2>のように緩和されます。 定基準である実効税率(いわゆるトリガー税率)が ▶表2 「20 %以下」から「20 %未満」に変更されます。こ 現行 の改正は、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後 改正案 中小企業者等 中小企業者等以外 に開始する事業年度から適用されます。 平成26年度 2% 2% 2% 外国子会社配当益金不算入制度において、子会社所 平成27年度 3% 3% 3% 在地国の法令上損金算入の対象となる配当は益金不算 平成28年度 5% 3% 4% 入の対象から除外されます。 平成29年度 5% 3% 5% 5. 外形標準課税の改正(法人事業税) (1)税率 法人事業税の税率が改正されることになり、所得割 と外形標準課税(付加価値割・資本割)の割合(現行 は3:1)が段階的に見直されます(平成27年度は5: 3、平成28年度は1:1)。 Ⅳ 消費課税 1. 消費税率の再引上げ 現行の8%から10%への再引上げは平成29年4月1 日まで延期されました。再引上げ時には、消費税の軽 減税率については、関係事業者を含む国民の理解を得 た上で、税率10 %時に導入することを目指すことと (2)付加価値割 されています。 所得拡大促進税制における給与等支給増加額を付加 価値割の課税標準から控除する制度が創設されます。 2. クロスボーダー役務提供等の消費税課税見直し また、一定規模以下の法人において、外形標準課税の 海外事業者から日本居住者・日本法人への電気通信 拡大により負担増となる場合、2年間に限り、負担変 役務の提供(電子書籍や音楽・広告の配信等)につい 動の軽減措置が講じられます。 て、平成27年10月1日から消費税が課せられるように なります。いわゆるB to C取引(消費者向け取引)に (3)資本割 ついては、国外事業者申告納税方式により課税が行わ 資本割の課税標準が、「資本金等の額」と「資本金 れ、B to B取引(事業者向け取引)については、原則 と資本準備金の合計額」のいずれか大きい額に改正さ としてリバースチャージ方式により、サービスの提供 れます。 を受ける国内事業者が申告納税することになります。 6. 研究開発税制の見直し いわゆる「総額型」の法人税額に対する税額控除限 度額(30 %:平成26年度末まで)が25 %に引き下 げられます。一方、特別試験研究費(一定の共同・委 託研究費等)にかかる税額控除率は引き上げられ、法 人税額に対する税額控除限度額が別枠(5%)で手当 お問い合わせ先 EY税理士法人 グローバル コンプライアンス アンド レポーティング部 Tel: 03 3506 2480 E-mail:[email protected] てされます。また、税額控除限度超過額の繰越が認め られなくなります。 情報センサー Vol.102 March 2015 3
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