愛 知教 育大 学保 健環 境 セン タ ー紀要Vol.12 研究論文 保 健活 動の 中で の禁 煙支 援 ―最近の健診結果と活動を振り返る 一 田中 生雅1),荒武 幸代1) 2)間瀬 由紀1)2)、増田 康子2), 渡 邊 伸 彦1)2) 【要 旨】 愛知 教育 大 学 で は、2011年 に敷 地 内 禁 煙 を 実 施 す る な ど 、こ れま で 全 学 と し て 禁煙 を推 進し て き た。 こ の た め 保 健 環 境 セ ン タ ー は、 協 力 部 局 と し て 業 務 実 施 計 画 の中 に「 禁 煙 支援 」 を 全 学 向 け 教 育 、 職 員 健 康 管 理 の 一 項 目 と し て 組 み 込 み、 こ れ ま で に 「 断 煙 」 を テ ーマ とし た ポ ス タ ー の 作 成 や 、 教 育 実 地 研 究 前 の 事 前 指 導 、 オー プ ン キ ャ ンパ スで の保 健 環 境 セ ン ター 説 明 会 、 心 身 健 康 科 学 等 講 義 等 学 校 医 の 立 場 で 話 を す る 場 を 借 り て 禁 煙 啓 発 活 動 強化 に 取 り 組 んで きた 。 2012、2013 年 秋 に は 生 協 主 催 の 学生 健 康 祭 り に 保 健 環 境 セ ン タ ー と し て 協 働 参 加 し 、 学 生 と 教 職員 を対 象 に ス モ ー カ ラ イザ ー テ スト を用 い た 健 康 啓 発 活 動 も 実 施 し た。 現 時 点 で の 敷 地 内 禁 煙 以 降 の 本 学 の 禁煙 環 境 を 考 察 す る た め に、 今 回 健 診 時 問 診 結 果 と 活 動 を振 り返 る こ と と し 、 本 学 の 喫 煙 状 況 の 実 態 と 禁煙 活 動 の 課題 につ い て 検 討 す る こ と と し た。 キ ーワ ード : 学 校 保 健 、 禁 煙 支援 、 健康 教育 I. は じ め に Ⅱ. 禁煙 活動 の 必 要性 と は 愛 知 教 育 大 学 で は、2011 年 に敷 地内 禁 煙 を 実 施 全 国的 に禁煙 が推 進 さ れる ように なっ て久し す る な ど 、 こ れ ま で全 学 とし て禁 煙 を 推 進 し て き い 。 た ば こ 産 業 (JT ) の 「 平 成25年 全 国 た ば こ た 。 そ れ 故 保 健 環境 セ ン タ ー は、 協 力 部 局 と し て 喫 煙 者 率 調 査 」 に よ る と 、 成 人男 性 の平 均 喫煙 率 「 禁 煙 支 援」 を業 務 実 施 計画 の中 に全 学 向 け 教 育 、 は32.2% で あっ た とい う。 こ れ は、 昭和40 年 以 降 職 員 健 康 管 理 の一 項 目 とし て組 み込 み、 こ れ まで のピ ーク時 (昭 和41 年) の83.7% と 比 較 す る と、45 に 「 断 煙」 を テ ーマ とし た ポ ス タ ーの 作 成 や 、 教 年 間 で51 ポ イ ン ト 減 少 し てい る とい う。 また 、 こ 育 実 地研 究 前 の事 前 指 導 、 オ ープ ンキ ャ ンパ ス で の 調 査 で 平 成25 年 の 喫 煙 率 が一 番 高い 年 代 は40 歳 の 保 健 環 境 セ ン タ ー 説明 会、 心 身 健 康 科 学 等 講 義 代 で41 % だ っ た。 こ れ に対 し 、 成 人 女 性 の 平 均 喫 等 学 校医 の立 場 で 話 をす る 場 を 借 り て 禁 煙 啓 発 活 煙 率 は10.5% で あ り 、 ピ ー ク 時 (昭 和41 年 ) よ り漸 動 強化 に取 り組 んで きた 。 2012、2013 年 秋 に は 生 減 し てい る も の の、 ほ ぼ横 ばい とい っ た 状 況 と い 協 主 催 の学 生 健 康 祭 りに 保 健 環 境 セ ン タ ー と し て う 。 平 成25 年 の 喫 煙 率 が 一 番 高 い の は30歳 代 の 協 働 参加 し 、 学 生 と教 職 員 を 対 象 に ス モ ー カ ラ イ 14.5% 、 最低 は60歳 以 上 の6.3% であ っ た。 ザ ー テ スト を 用 い た 健 康 啓 発 活 動 も実 施 し た。 現 喫 煙 の 健康 へ の有 害 性 につ い て は 、 す で に多 く 時 点 で の敷 地 内 禁 煙 以 降 の 本 学 の 禁 煙 環 境 を 考 察 の 報 告 が な さ れ てお り、「 健 康 日 本 2 1 」( 現 在 第 する ため に、 今 回 健 診 時 問 診 結 果 と 活動 を 振 り 返 二 次 ) で も 喫 煙 は 重 点 項 目 の 一 つ と さ れ てい る。 るこ と とし 、 本 学 の 喫 煙 状 況 の 実 態 と 禁 煙 活動 の 全 て のが ん の原 因 で は 、 た ば こ30 % 、 食 事30 % と 課題 につ い て 検 討 す る こ と と し た。 喫煙 が大 き く関 連 し て い る と 言 われ る。 煙 草 の 害 で は 肺 が ん を 連 想 す る が 、 そ れ以 外 の 食 道、 胃、 肝臓 、 膵 臓 、 腎 臓 、 膀 胱 、 子宮 頚 部 、 白 血 病 な ど 2013年12月31日受理 1)愛知教育大学保健環境センター 2)愛知教育大学学務部学生支援課 全 身 の癌 に も影 響 す る と さ れ る。 が ん以 外 の疾 患 とし て、 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 や 心 筋 梗 塞 等重 要 な病 気 と も関 連 が あ り 、 幅 広 く 健 康 障 害 を 起こ す 原 因 6 1 保健 活動 の中 で の禁 煙支 援 毎の喫煙率の推移をみると(図1)、特に2011年 入学の学年で喫煙率がやや低く推移している。禁 煙活動初年度の強い呼びかけにより当時の新入生 の喫煙が抑制され、一種の防煙効果があったとも 考えられる。 また、一日の喫煙本数の調査では学生について 2013年度では2012年度で一日20本以上の喫煙者数 が少なくなり、一人あたりの喫煙本数は減ってい る。煙草を吸わない環境は整備されてきたと考え られる。 職員では2012年度の調査で喫煙率は12.1%であ り、54名(男性48名、女性6名)が喫煙している 結果であったが、図2で示すように前年度(2011 年度)と比較すると20本以上の喫煙者は少なくな り一人あたりの喫煙本数は減ってきている状況が ある。人数は少ないものの、比率は学生の喫煙者 の3倍以上あり、啓発の機会を増やして断煙、卒 と な る と 言 わ れ る。 煙 草 に は 二 コチ ン、 タ ー ル、 一 酸 化 炭 素、 ア ン モ ニ ア 、ダ イ オ キ シ ン 等4000種 類 以 上 の化 学物 質、 約200 種 類 の 有 害 物 質 、60 種 類 の発 が ん 物 質 を 含 んで い る 。 副 流 煙 を 通 じ た ほ ん の わ ず か な受 動 喫 煙 も有 害 で あ り 、 た ば こ の 煙 は 屋 外 で も17メ ー ト ル以 上 先 まで 広 が る な ど 拡 散 し や す い もの で あ る こ と が わ かっ て きて い る 。 そ の た め 、 健 康 増 進 法 ( 実 施2003年5 月 ) や 通 達 (2010年2 月 ) に よっ て 、 き ち ん とし た受 動 喫煙 対 策で 、 たば こ を 吸 わ ない 人 の 健康 を 守 るこ とが 求 め ら れる よう に なっ た。 特 に 二 コ チ ン は 精神 依 存 と 身体 依存 を持 つ 依存 性 物 質 で あ り、 耐性 もあ る こ と か ら煙 草 を 吸っ た 効果を得るために、喫煙者は徐々に使用量を増や し た り 、 より 強 い 煙 草 を 吸 う よ う に な る性 質 があ り 、 止 め ら れず に 二 コ チ ン依 存 症 に な っ て い く 側 面 を理 解 す る 必 要 が あ る 。 禁煙 の 方 法 に は 、 ① 自 己 の 意 志 で の 禁 煙 実 践 、 図2 ② 集 団で の禁 煙 の実 践 、 ③ 禁 煙 指 導 や 禁 煙 マ ラ ソ ンに参加、④ 薬局で 禁煙補助 剤を購入し て禁煙、 職 員2012 ・学 生2013 の 喫 煙 本 数 の 分 布 (喫煙者の平均本数:職員11、2 本、学生75本) ⑤ 禁煙 外 来 の受 診 な ど が現 在あ る 。 禁 煙 の 成功 に は 、 本 人 の 禁煙 へ の 意志 と前 向 き な心 持 の 維持 が と て も大 切 であ り、 そ の た め 健康 管 理担 当 者 に よ る 支 援 が 重 要 と な る し 、 こ の こ と が我 々 が 健康 支 援に係る理由であろう。 Ⅲ. 本 学 の 喫煙 状 況 (2013 年 度 学 生 定 期 健 康 診 断 。 2012 年 度 職 員 定 期 健 康 診 断 か ら ) 煙 を 進 め る必 要 があ る。 学 生 の 喫 煙 率 は2010 年 の4.2% か ら2011 年 に3, Ⅳ. 学 内 での 健 康支 援 活 動 から 7 %、2012 年 に3.4% 、2013 年 の3.4% と こ の3 年 で 漸 減 し て きて お り 、 喫 煙 者 実 数 は141 名 (男 性124 2012、2013年は、秋に開催される生協健康祭り に協働参加し、保健環境センタースタッフはス モーカライザーテストを担当した。本年の活動日 程と当日の参加者は下記の通りである。 名 、 女 性17 名 ) で あ る 。 2011年 の 大 学 敷 地 内 全 面 禁煙後の禁煙活動の影響を見るために、入学年度 図1 日程: 平成25年11月11日、12日、15日 各11 : 45∼13 : 15 場所: 第一福利施設前(生協前) 担当: 保健環境センター 保健部門 参加者数: 11月11日 40名 11月12日 42名 11月15日 42名 計 124 名 構成: 学生 113名 教職員12 名 男性 86 名 女性 48 名 6 2 愛知 教育 大 学保 健環境 セ ン ター紀 要Vol.12 図3 参加者における喫煙者の内訳 健康祭りでは、他のブース内で体力測定やスト レ スチェック等学生が興味を持つ企画が行われ ており、今回この祭りの中で明るい雰囲気の中、 CO濃度チェックを兼ねて「喫煙は健康に良くな い」という健康啓発を行った。 生協学生や職員の手伝い、参加者呼び込みもあ り、参加者も100名を超え、運営もスムーズに実 施ができた。(写真1)職員や学生との良い交流 の場となり、保健環境センターの存在を知らせる 広報活動としても役立った。 活動を通して、特に吸わない学生のスモーカラ イザーテストヘの参加が多く、健康への意識の高 さや喫煙の健康への影響への関心の大きさを実感 した。普段断煙テーマのポスター作製(図5)を 通して健康啓発を行っているが、吸わない環境や 禁煙を目指す環境作りに役立っていると信じた い。また、本活動を通じて、学生が同世代のニー ズを的確に把握して良質の企画を立て運営する姿 には見習うべきものがあったことは特筆すべき点 として記す。 ス モ ー カ ラ イ ザ ー テ ス ト と は、 呼 気 中 のCO濃 度を 測 定 す る こ と で 、 喫 煙 の 健康 へ の 影響 を みる 簡 便 なテ スト で あ る 。 今 回 の 参 加 者 にお け る 喫煙 者 の内 訳 (図 3 ) で は 、 現 在 吸っ てい ない 者 が 最 多 であ り、 家 族 や 友 人 の 喫 煙 か ら の受 動 喫煙 の 影 響 を知 り たい もの や ス モ ー カ ラ イ ザ ー テ スト そ の も の へ の興 味 か ら 参 加 し た もの が多 か っ た。 一 方 過 去 に 喫煙 習 慣 の あ っ た 学 生 や 現 在 喫 煙 習 慣 のあ る 学 生 も 関心 を 持 っ て 少 なか ら ず 参 加 し た 。 ス モ ー カ ラ イザ ー テ ス ト の 結 果 ( 図 4 ) で は 、 現 在 吸 っ て い な い も の は 、O ∼6ppm と 呼 気 中 の CO濃 度 は低 く (非 喫 煙 域 )、 受 動 喫 煙 の 影 響 が み ら れる 者 も な かっ た。7 ∼10ppm ( 要注 意域 )、11 ∼15ppm (喫 煙 域 ) に 相 当 す る 者 は3 名 お り 、 い ず れ も一 日10 本以 上 の 喫煙 者で あ っ た。 呼 気 中 の CO濃 度 が15ppm 以 上 の 高 濃 度 域 の 者 は い な か っ た。 テ ス ト の 場 で は、7ppm 以 上 と なっ た3名 に は、 健康 を 考 え て の 禁 煙 を 強 く 勧 め た が、 残 念 な が ら セ ン タ ーで の 禁 煙 指 導 を 希 望 す る 者 は 無 かっ た。 図4 スモーカライザーテスト結果 図5 断煙テーマのポスター 作 学生支援課 増田康子 V . お わり に 最近の健康診断問診票の結果と生協健康祭り参 加の活動から本学の喫煙問題に関する実態につい て述べた。法改正や国の指針の動向に注目しつつ 今後も活動に取り組みたい。 謝辞 学生健康祭り実施にあたり、お世話になりまし た生協委員の学生、生協職員、保健環境センター スタッフの皆様にお礼を申し上げます。 写真1 生 協健康 祭りでの スモーカライザ ーテストの 様 子 6 3 保健 活動 の中 で の禁煙 支 援 参考 文献 1 ) 産 業 医 科 大 学 産業 医 実 務 研 修 セ ン タ ー 編、 健 康 教 育 ・ 労 働 衛 生 教 育50 選、 一 般 社 団 法 人 日 本 労 務 研 究 会 2013 2 ) 厚 生 労 働 省 、 健 康 日 本21 ( 資 料 ) 3) 厚 生 労 働 省 、 健 康 日 本21 ( 第 二 次 )( 資 料 )
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