台湾交通大学での留学に関する報告書 奈良先端科学技術大学院大学 河村敏和 1) 研究面:概要 糖尿病の進行を抑える上でグルコースセンサは重要な役割を果たす。従来の 持続血糖測定技術の課題である短寿命(1 週間以下)に対して、グルコース応答性 蛍光ハイドロゲルは 120 日以上の長期連続測定が可能であると報告されてい る。本研究ではこの蛍光ゲルを用いたグルコースセンサの無線化を行う。この ハイドロゲルの蛍光強度は従来、経皮的に外部測定されており、直接測定可能 なデバイスは存在しない。本プロジェクトでは、独自の体内埋込 CMOS イメー ジセンサの設計および、ハイドロゲルとの組み合わせによって完全埋込型血糖 値センサの実現を目指している(図 1 参照)。現在までに有線型プロトタイプに よって、基本測定原理を実証した。次に無線化による体内完全埋込みの実現が 必要である。無線化により完全に体内に埋植することが可能となり、現在利用 されている半埋植型と比較すると感染症のリスクを低減できるようになる。 Power receiver module Wireless module Glucose Sensitive Fluorescent Hydrogel CMOS image sensor LED (Excitation light) Syringe Injection Driver circuit ≦Φ0.9 mm 図 1 実現を目指すグルコースセンサのコンセプト 本研究プロジェクトを通して無線でイメージセンサに電力供給を行う際に 重要な送信部と受信部の各回路の構成を、Peter Wu 先生の研究室の開発スタ イルを参考にして学んだ。特に送受信に必要不可欠となるインダクタの Q ファ クタ等の特性を算出するために電磁界シミュレーションソフトによって行った。 研究プロジェクトの目的と意義の完成度 達成度は 90%程度である。本研究プロジェクトを通して無線でイメージセン サに電力供給を行う際に重要な送信部と受信部の各回路の構成および、送受信 に必要不可欠となるインダクタの Q ファクタの求め方を学んだ。 送信用回路は図 2 左に示すようにバッテリー、パワーアンプ(PA)によって生 成した高周波をインダクタに通過させることで無線伝送が可能となる。無線伝 送された高周波は受信用インダクタンスによって受信した高周波を、フルブリ ッジ型 DC-DC コンバータ、整流器を通過させることで任意の定電圧電源を効 率良く得ることができることを学んだ。また、HFSS という電磁界シミュレー ションを用いて大きさ、巻き数等インダクタの条件を決定させてレイアウトし (図 3 参照)、シミュレーションすることでインダクタの重要なパラメータであ る Q ファクタを求めることが出来た。 謝辞 ラボステイの間、Wu 先生および Madoc 君の多大なるサポートによって無線 給電を学ぶことが出来ました。この場をお借りしてお礼申し上げます。 図 2 無線によるイメージセンサに電力供給を行う際の回路構成 図 3 HFSS を用いた送信用インダクタのレイアウト図 完成度の原因と理由 学会等が重なった時期が一部分あり、その折には受け入れ先研究室でのパー トナーのフェロー学生が大変多忙となったため。 2) 生活面:報告および感想 研究生活について、所属研究室の学生は各自自由にリフレッシュする時間を 取得でき、スポーツ、外食等を行った。研究活動に関しても自由に学会の聴講 に参加できる環境で、各自研究室を休んで聴講に参加した。この研究生活に関 して、自律して研究を進行させる必要があるため自身で責任を持つ必要がある ものの、ノンストレスで研究活動を行うことが可能なため日本でもこの様な自 由な時間を多く取り入れて研究者に対してストレスを軽減させられると考えた。 文化、生活習慣での体験談 週末の休日を利用して九份、北捕、淡水等に行き、観光した。九份は台北の 北東に位置する町で、一説では映画『千と千尋の神隠し』のモデルと言われて いる場所である。赤提灯と瓦葺屋根の組合せがノストラジックな印象を与える 綺麗な場所で、多くの日本人観光客が観光に来られて賑わっていた(図 4 参照)。 北捕は新竹の東にある客家という漢民族の一支流で形成されている町である。 緑茶、白ゴマ、黒ゴマ、落花生を擂棒で擂り、ペースト状にしたものにお湯を 加えて飲む擂茶はほのかな甘味があり、体力回復効果があった(図 5 参照)。淡 水は台北の北西に位置する海岸に接する場所で、図 6 に示すような風景が楽し めた。 謝辞 アシスタントの Annie さん、Wen さんと博士学生の Ivy さんのサポートに よって安全かつ快適な留学および観光が出来ました。この場をお借りしてお礼 申し上げます。 図 4 九份の町並み 図 5 北捕擂茶を作る様子 図 6 淡水の風景
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